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2019/11/11

香港デモは犠牲者出すも進化中。しかし中国軍の介入を懸念。 

  香港のデモは収まる気配なく、先週2019年11月5日(火)には警察との衝突の中、デモ参加の学生が死亡、一部の過激な市民が中国政府容認派議員に対する傷害事件も。警察側の過剰な対応への批判が強まる中、香港情勢は益々混迷が深まる模様。しかし、2014年の雨傘革命の失敗を教訓に、デモ戦術は進化。中国政府や香港政庁の各種締め付けを掻い潜り、あの手この手で捕まらずに強靭に対抗中。しかし、私見ながら、中国政府はいつまでも黙って待ってはいない、と人民解放軍による介入を懸念しています。
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June 9 demonstration, at Arsenal Street, capturing Hennessy Road, Admiralty. 
(ウィキペディア「2019年香港民主化デモ」より)

<状況> まずは状況から。
(2019年11月9日付VOA記事「Protests Expected at Hong Kong Shopping Malls One Week After Violent Clash」参照)
① 香港の反政府デモは収まる気配なく、先週も市内の各所でデモがあったが、一部の過激な市民が中国政府容認派議員に対してナイフで切りつけ、議員の耳を噛みちぎるなど事件も起き、デモと警察と衝突が各所で生起。そんな中、デモ参加者と見られる学生が重体で見つかり、病院で死亡、6月以来の反政府運動で初の犠牲者が出た。

② 11月9日(土)に香港政庁の直近にあるタマラ公園にて、犠牲者となった学生の死去を悼む夕べが営まれ、何千もの多くの市民が参列し、静かに追悼の誠を捧げた。

③ 香港警察は、会見にて学生の死亡への関与を全面否定。学生は建物から誤って落下したものと見られ、そこに警察は立ち入っていなかった旨声明。しかし、市民の反発や疑念は根強く、追悼の夕べをよそに「報復」を言明する者、月曜からのストを呼びかける者、各所でデモやバリケードを築く者をはじめ、早くも警察との衝突なども散見された。
  (※11月11日現在、VOA記事にはないが、今朝ほど警官が学生に発砲して重体、という事件が発生。状況は急変するかも…)

<私見ながら>
◯ 進化によって生き延びる香港デモ
  香港の反政府デモは、初の犠牲者を出してしまったことで益々混迷しそうです。実は、私はつい最近まで香港デモは早晩収まるだろうと、タカをくくっていました。2014年の雨傘デモの際の収まり方と同様、デモの過激化と長期化で市民の心が逐次デモから離反し、デモ長期化で香港のそもそもの経済活動が停滞し、中心人物達も中国政府と香港政庁にうまく押さえ込まれて終息していくのだろう、と思っていたのです。
  ところが、香港のデモは2014年の雨傘革命の教訓に学び、良い意味で「モグラ叩き」のように神出鬼没のデモ戦術に進化を遂げています。優秀な香港警察の一枚も二枚も上手をいき、官憲に捕まらず、AIの顔認証カメラにも認識されず、各種システムやデジタル的な痕跡からの追跡をも免がれ、今のところ香港警察を翻弄して反政府デモをPRした上で逃げ切るしたたかさを誇っています。

  では、何を学んで如何に進化したか?2014年の雨傘革命の際、香港の中心部にバリケードを築き長期間占拠したこと、デモは公然たる中心人物の指示で動いていたこと、デモ参加者は中国政府による各種システムや電子情報的な追跡で個人が特定されたこと、の3点で綻びを生じました。  
  香港経済中枢の長期にわたる占拠は市民の離反を生み、デモの首謀者が公然とアジったりしたことでデモの中心人物が逮捕されてデモの支柱が欠け、更にデモ参加を中国政府に特定された市民は様々な個人特定の報復・妨害に会いました。
  これら3点に学んで、まず、特定地の長期占拠を辞め、香港の英雄ブルース・リーの「水のように変幻自在にあれ」という名言を肝に銘じ、デモの仕方も定型なく神出鬼没かつ変幻自在に変えました。
  次いで、デモには特定の中心人物はなく、指揮命令系統なし。割と穏健派も参加できるデモもあれば、勇武派と言われる一部過激な攻撃・襲撃をする一派まで、参加形態もいろいろ。雨傘革命の当時の中心人物も姿を現わしますが、彼らは指導者ではない。あれ?これって「踊る大捜査戦:レインボーブリッジを封鎖せよ!」で見ませんでした?テロ的な犯罪があちこちで起きる一連の事件、この犯人たちには指揮命令系統のピラミッドなんかない、水平的な組織、いやそもそも組織がないのかも。そんな、誰にも命令されず、ただ自分の考えで神出鬼没、変幻自在な事件が起きるという話でした。もはやプロファイリングや捜査による犯行組織の次の行動の読みや犯人像の絞り込みなどができない世界。あれを思い出しましたよ。
  そして第3に、中国政府顔負けの国家主導ハッカーばりの電脳化を遂げ、中国政府にトレースされないよう情報伝達を工夫。警察の行動の情報共有やいつどこで如何なるデモ戦術をするか、参加者間で意見交換するなど、あの手この手を駆使。世界に冠たるサイバー攻撃能力を有する中国政府をもってしても手を焼くネットワークを構築しています。更に現場では、手信号で前進、攻撃、退避、催涙弾処理などを伝達したり現場に必要な物資の調達・配給をしたり。
  香港デモは、このように強靭にしてしなやかなデモ戦術に進化し、市民に離反されず一蓮托生となった息の長い戦いを継続しています。全く、素晴らしい進化を遂げ、勇敢に戦う香港市民。心から応援したいと思います。

◯ 香港デモの展望: 私見ながら中国政府の軍による介入を懸念!
  進化しつつある香港デモに、今後如何なる展望が考えられるでしょうか。

  望ましくは、この香港市民の勇戦敢闘を国際社会がバックアップし、中国政府の弾圧・鎮圧を思い留まらせ、民主化要求を中国政府に飲ませること。
  しかし、このブログを書いている11月11日現在で、デモと警察の衝突で警官が取り押さえようとした学生に発砲し学生は重体、という事件が起きました。

  私見ながら、最大の懸念は「もはや香港警察では抑えられない」と中国政府が香港警察を見切り、人民解放軍の奇襲的・圧倒的な介入によって香港を戒厳令下に置くことです。勿論、国際社会から非難されるでしょうが、それを中国政府が恐れるか?「否」という話だと思います。中国政府にとって、香港問題は中国の内政問題、死活的国益です。国際的非難を恐れて、香港の市民に民主化の譲歩するか?ここで譲歩したら、台湾問題は勿論のこと、中国のあちこちで市民の反抗が始まるかもしれない。中国政府=中国共産党一党支配の国是として、あり得ない。残酷なようですが、現実的にそれが中国の本質です。

  従って、香港市民の皆さんには、デモは過激にならず穏健に細々と息長く、国際社会へのPRを重視して、慎重に頑張ってもらいたいと思います。中国政府をなめても信用してもいかん。まだ香港政庁を相手にしている方がなんぼも「まし」ですから。
  本当に、気をつけてね・・・・。

(了)

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2019/11/03

焦れる北鮮、トランプは塩対応

焦れる北鮮、トランプは塩対応

 2019年10月31日(木)、北朝鮮はまたもミサイル発射。これに対し、相変わらず、米国トランプ大統領は全く音無しの構え。今回の発射は、北朝鮮が一向に進展しない米国との交渉に苛立ちを見せているものと思われます。
 朝鮮側の複雑な思惑の交錯について、2019年11月1日付VOA記事「Eyeing Impeachment Inquiry, North Korea Pushes US on Denuclearization Deadline」が報じています。
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FILE - President Donald Trump reacts to the crowd after speaking during his reelection kickoff rally at the Amway Center, June 18, 2019, in Orlando, Fla. 本年6月に再選に向けてのフロリダ州でのキックオフにて(上記VOA記事より)

<状況>
① 10月31日(木)、北朝鮮は再びミサイルを発射、ミサイルは日本海の日本の排他的経済水域内に落下。北朝鮮は、米朝交渉が本年末に期限を迎える前に、非核化と引き換えの経済制裁の先行的緩和などの一定の進展を促すため、これらの一連の段階的に高いプレッシャーをかけているものと思われる。事実、北鮮政府は発射前に同趣旨の声明を出している。

② 本年(2019年)2月のハノイでの米朝首脳会談の後、特段の進展なく、10月のストックホルムでの事務レベル交渉でも進展なく、北朝鮮高官は期限を無視するのは米側にとって「重大な誤り」であり、いつでも交戦に至る可能がある旨、警告している。

③ これらの背景として、北朝鮮では複雑な思惑が交錯。北朝鮮にとって弾劾審査は左程重視しておらず、むしろ来年の次期大統領選を最重要視。北朝鮮は、来年の選挙を見越して本年末の交渉進展期限を設定。トランプの再選なき場合、米朝関係は逆戻りの可能性もある。よって、現トランプ政権のうちに交渉を進め制裁緩和を獲得したい、と企図。他方、金正恩にとり、歴代の米大統領は北朝鮮との直後交渉を拒んでおり、首脳会談まで実施できたのはトランプ大統領のみであり、実は再選が望ましい。交渉の足踏み状態への焦れあるものの、トランプを国内的窮地に追いやることは避けたい。複雑な思いで状況を見極めている模様。

④ 他方、トランプ米大統領は、9月以来弾劾問題(※)への対応に全力投入、現在下院において弾劾審査の手続きの渦中。北朝鮮との非核化交渉で米側が先行的に譲歩し、経済制裁を緩和するような政治的にリスクが高いことは何もしないであろう、と見られている。(※次期大統領選の有力候補バイデン氏の子息のウクライナ国内での問題の捜査をめぐり、トランプ米大統領が同国への援助をテコに恣意的に関与した、との疑惑)

<私見ながら>
◯ 北朝鮮が、米朝交渉の暗礁乗り上げ状態に対して、焦れに焦れていることは明白ですね。これまでもミサイル発射は数度に及んでありましたが、もはや「テスト(=発射実験)」や「データ収集のため」の段階のものではなく、必要ないのに政治的メッセージの発信という手段になっています。これまでも、政治的メッセージとして国営放送で相手を口汚く罵ったり、国連や交渉後のぶら下がり会見で北朝鮮高官が不快感や要求などのコメントを発することがありました。また、ワザと米本土に届く長射程化や潜水艦発射化、弾頭の多弾頭同時多目的攻撃可能化などをPRしたこともありました。今回のは、PRすべきほどの驚愕のものはなく、発射時間もこれまで早朝だったのに今回は夕暮れ時。結局、焦れや不快感をPRしているとしか、今回の発射理由の解釈の仕様がない感じです。
   他方で、金正恩のトランプに対する愛憎合わせ持つ複雑な心境は、十分に理解できます。

◯ では、その気持ちはトランプに伝わっているのか? 全く伝わらないないでしょうね。状況④の通り、トランプさんは今、バイデン氏の息子をウクライナ政府に不当な圧力をかけて捜査させたとの疑惑でてんやわんや。大統領としても本来の内政政策や外交政策を脇において、この問題への対応のために報道官を新たに採用したり、CMを作ったり、共和党議員と次々に会ったり、・・・。なぜなら、つい2ケ月前くらいまでは弾劾はないだろうと言われていたこの案件が下院で可決され、上院で審査となるのはほぼ確実。歴史上この境遇になった人はトランプさん以前には、南北戦争時代のアンドリュー・ジャクソンとクリントン、そして上院の弾劾の前に辞任したニクソンの3人しかいないのですから。何とか、そんなことで歴史に名を残すことがないように、とトランプ大統領の頭にはこれしかありませんよ。

   自分のケツに火の粉がかかった状態ですから、恐らく北朝鮮への対応などout of 眼中。トランプ米大統領は、北朝鮮のミサイル発射の報を受け、まず初めは「この忙しい時になんてバカなことを・・・」と内心激怒し、それでも落ち着いて側近の説明や分析を聞き、言いたいことはグッと丸呑みして、マスコミの前では大人の対応。いやー、トランプさんも成長しましたね。結果的に、焦れったくてミサイル発射し、「期限」を振りかざして米国の譲歩=制裁緩和〜解除を期待したって、トランプ米大統領は相変わらず塩対応なのです。
   実質的な対応は何もしないでしょう。北朝鮮のいう「期限」とは、米国が一方的に制裁を解除することが非核化のスタート、とでも考えているようです。その一方で、米国の考えでは、まず北朝鮮が非核化の具体的なプロセスとして実質的な核実験施設や核の濃縮技術などの核開発施設の廃棄を進めるとか、そういった非核化の実質的推進の証拠を見せない限り、制裁は解かないと終始明言しています。 よって、「期限」を振りかざしたところで何も動かない。結局、北朝鮮の「片思い」ないし「一方的な思い込み」の強い瀬戸際外交としか言いようがありません。

   怖いのは、北朝鮮が更に焦れて、「おい!期限を無視すんじゃないよ!」とばかり、例えばグアム島やハワイ諸島の近所にミサイルを撃つとか、そんな状況を見誤ったことをしたら、さぁ大変。トランプ大統領は必ず実力行使に出るでしょう。むしろ、直接軍事衝突の一歩手前を演出して、弾劾が吹き飛ぶような危機を作り、対北朝鮮で米国の国論を統一するかも・・・・。北朝鮮がそうした愚挙に出なければいいのですが。

(了)


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2019/10/28

クルド撤退地域をロシア軍が巡察: ロシアの深謀遠慮

クルド撤退地域をロシア軍が巡察: ロシアの深謀遠慮

   トルコがシリア侵攻・クルド討伐の停戦に合意し、クルド人勢力はトルコ-シリア国境から30km以南に撤退することになり、今の所大事なくクルドも撤退しトルコも停戦を守っているようです。その物理的兵力分離に一役買っているのがロシア軍でした。ロシアがシリアのアサド政権を擁護していることは公然の事実ですが、ロシアがトルコと握っていて、人間の盾となって兵力分離役をしているとはビックリ。和平創出という点ではロスケながら立派ですね。しかし、プーチンの内心には米国の間隙を縫って影響力を浸透させる深謀遠慮が見え隠れします。
   2019年10月24日付VOA記事「Russia Begins Ground Patrols in Northeastern Syria」が事実関係を報じています。
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Russian forces patrol in the city of Amuda, north Syria, Oct. 24, 2019. (2019年10月24日付VOA記事「Russia Begins Ground Patrols in Northeastern Syria」より)

まず事実関係から
<状況>
① 10月24日(木)から、トルコ-シリア国境以南のクルド人勢力の去った地域をロシア軍がパトロールを開始。以前、クルド人勢力がISから開放したクルド人口の多い街や村をロシア軍のパトロール車両が巡察し、クルド勢力の撤退を確認。

② トルコのエルドアン大統領とロシアのプーチン大統領との間で、トルコ側の停戦・撤退とトルコ-シリア国境以南の緩衝地帯でクルド人武装勢力が緩衝地帯以南に撤退したかをロシアとトルコが共同でパトロールすることが合意された。ロシアは憲兵276名、装甲車33両の部隊を派遣し、緩衝地帯の巡察任務を実施中。しかし、クルド側の反発もあり、トルコはパトロールに参加せず、ロシア軍パトロール車両には地元官憲(クルド人)が随行。

③ ロシアのプーチン大統領の思惑について、ワシントン研究所の中東専門家アンナ・ボルシェブィツカヤ女史は次のように分析。「プーチンは、自らの任期中にシリアのクルド問題を解決し、シリアのアサド政権の基盤の盤石化を企図している模様。この際、アサド政権に、内戦で弱体化したシリア国軍という弱みを、クルド勢力と協調関係を取ることで補完し、もって政権安定化に資すのではないか。」

<私見ながら>
◯ トルコにとってロシアの介在はむしろ最適解!
   前項③は、なるほどトルコのシリア侵攻-クルド人武装勢力の問題の最適解かもしれませんね。
   トルコにとって、国境地帯でのクルド勢力にいることが許しがたい脅威であったので、国際法のタブーを犯してでもシリアに越境してクルド勢力の討伐を実施したわけです。しかし、いずれ停戦せざるを得ない訳で、その際はクルドの緩衝地帯以南の撤退の確証が欲しかったでしょう。その意味で、ロシアが間に入ってくれることはもっけの幸い、これぞトルコにとって最適解。トルコにとって、ロシアは歴史的な目の上のタンコブでもありますが、クルド勢力や周辺国のいずれの国にも睨みの効くロシアというファクターは、まさに仲介としてうってつけな訳です。ロシアが介在することで、トルコの言うことを聞かないクルド勢力もロシアには従うでしょう。実効性のある兵力分離部隊の介在により、エルドアン大統領は国民に過早撤退と批判される心配もなくなります。

◯ プーチンの深謀遠慮、恐るべし。敵ながら天晴れ!
   ロシアにとっても最適解ですよ。シリアのアサド政権の強烈なバックアップをしているロシアの国是として、アサド政権を容認しない米軍がこの地域に駐留していたこと自体が厄介な存在でした。その米国が去り、トルコのシリア侵攻の仲介を良き口実にロシアがシリアに駐留できる、しかもpeace-makerとして大義名分を高らかに掲げて。
   つい先日まで米国の盟友としてISと勇敢に戦ってきたクルド勢力を、米国を見限らせ味方にできるチャンスでもあります。更に、内戦で弱体化しているシリア政府軍をトルコやクルドと戦わせずに、むしろこの機会に協調関係を醸成させられるチャンスでもあります。シリアに侵攻してきたトルコをシリア政府軍と敵対させずに早期に撤退させ、またシリア政府軍にとって対IS闘争で培った米軍仕込みの戦闘能力と比較的最新装備を有する精強なクルド勢力との武力衝突も避けられます。それどころか、ロシアが中に立つことでシリア軍はクルド勢力と協調関係を半ば安心して組むことができます。内戦で力が落ちたシリア政府にとっても有り難い話です。
   また、憤懣やるかたないクルド勢力にとっても、ロシアの介在を容認する代わりに半ばロシアと協調して後見役となってもらい、シリア政府軍と円満にシリア国内に一定の自治を許される安住の地を得られるでしょう。クルドはロシアに感謝し、米国を恨みロシアの友人になることでしょう。
   プーチン大統領は、この状況を読んでいたのではないかと思います。トルコの侵攻以前に大方のあらすじを描いていたのでしょう。それ通りにトルコのエルドアン大統領は狂言回しを演じてくれました。先週、プーチンはエルドアンと会談し、その場でこの仲介案を持ち出し合意を得て、数日後には兵力分離部隊を展開させる離れわざ!立ち回りが鮮やか過ぎますよ。アンタ読んでて事前に部隊に準備させていたでしょ?

   プーチン大統領、一本取られた。あなた凄いよ。敵ながら天晴れ‼

(了)


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2019/10/24

トルコ停戦、米軍シリア撤退、クルド戦線異状なし

 10月17日にトルコが米国と交渉の上で5日間の停戦を決めて以来、細々とは事象は起きているものの、概ねトルコ-クルドの状況に異状は無い模様です。勿論、米軍のシリア領内クルド人地区からの撤退に際し、クルド人から腐ったイモを投げつけられたり、トルコ-クルド間で小さな衝突が起きたり、いろいろ起きてはいます。しかし、トルコ-クルド双方に大きな停戦合意違反があったり大きな軍事衝突に至るような事象は起きていません。 2019年10月21日付VOA記事「US Military Crosses Into Iraq From Syria 」及び同年同月21日付VOA記事「US Keeping Troops Near Syrian Oil Fields」の報道から、その状況を整理し、私見を述べさせていただきます。

<状況>
① 10月21日(月)、シリア領内クルド人地区に駐留していた米軍部隊の100両を超える車両縦隊が、シリアからイラクへと撤退。米軍部隊は米国へ帰国するわけではなくイラクに留まり、イラクのみならずシリアでのISのテロや復活抑止に従事する模様。

② トルコは、これまでの停戦期間に概ね停戦合意通りに矛を収めており、対するクルド人勢力側も概ね停戦合意を守って緩衝地帯以南に離脱している。

③ トランプ米大統領は、トルコの停戦合意違反が起こらないよう、違反した場合には直ちに経済制裁を課す旨発言。トルコのエルドアン大統領は、クルド側が停戦期間内に緩衝地帯以南に撤退しなければ再び戦闘を開始すると豪語。(ちなみに、VOA記事には言及がないものの、日本のマスコミ報道では、クルド民主防衛部隊側は撤退の意思を表明している。)

④ この間、小規模の停戦合意違反や軍事衝突は双方で発生した模様。また、クルド人による撤退する米軍部隊への抗議の意を込めた立ち塞がりや物を投げるなどの行為が散見された。しかし、いずれも大事に至らず。

⑤ 米国は、シリア領内クルド人地区の米軍約700名を撤退させた一方、シリア領内の油田地帯をクルド民主防衛部隊の要員とともに防護している旨、明らかにした。ここを防護しても、石油そのものはクルドでも米国でもなく、シリア政府の所有となる。

<私見ながら>
○ 見通しは「不透明」「混乱」?、私見ながら楽観視しています
日本のマスコミ報道には、停戦の行方に「不透明」、「早くも相互に隔たり」、「情勢は混乱へ」等の見方が多いようです。ジャーナリストっていうのは、不安をあおると言ったら言い過ぎかもしれませんが、不透明性・不確実性・不安定性をものの見方の尺度にしているようです。例えば、10月19日付の日経新聞「シリア停戦合意、米・トルコで解釈に隔たり」では、見出しの通りトルコと米国の不協和音を報じています。勿論事実に基づく報道なので、見方によってそう捉えてもおかしくはないと思いますが。しかしながら、私は、私見ながら楽観視しています。

○ 退くのも方便、クルドは死なず。必ずやまた立ち上がりますよ。
勿論、クルド人にとって今回の米軍撤退やトルコのシリア侵攻やクルド人勢力討伐は、憤懣やるかたなく悔しいと思います。共にIS打倒のために戦った米軍に裏切られたかのように傍から離れられ、国境を挟んで同じクルド人同志で半ば自由に行き来できるこの世の春を謳歌していたのにトルコに追い立てられ、それはそれは我慢の限界を超える悔しさの中で毎日を過ごしていると思います。しかし、だからと言ってトルコと徹底抗戦するしかないのか?というと、その道には地獄しか待っていない。トルコ軍とクルド民主防衛部隊の正規戦に勝ち目は全くない。だったら、停戦の間に追い立てられない緩衝地帯以南に移動して、シリア内で生活基盤を再設定する方がまし。可哀想だが、これが現実的な生き残りの道ではないでしょうか。シリアでの生活も、シリアのアサド政権は決して温かくはないでしょう。また弾圧されることも十分考えられます。
   でもですね、可哀想だが本当の話、クルド人はこれまでずっとその悔しさに耐えてこの地に生きてきた民族なのです。これまでの現実の歴史がそれを証明しています。(ヤジディの民も同様)よって、今回の悔しさも噛みしめながら耐える道を選ぶものと思います。それは、クルドが実は芯が強い戦う民族だから。シリアのダマスカスに銅像があるアラブやイスラムの英雄サラディーンはクルド人。十字軍の遠征からイスラムを、アラブを、そしてエルサレムを守り切った英雄です。私のブログの前々回の写真見ました?これがクルドの戦士の顔。

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Members of the Kurdish-led Syrian Democratic Forces (SDF) are pictured during preparations to join the front against Turkish forces, near the northern Syrian town of Hasakeh, Oct. 10, 2019.(2019年10月14日付VOA記事「Kurds Strike Deal with Syrian Army to Counter Turkey」より)

   見てくださいよ、この顔。彼らの顔は打ちひしがれた流浪の民のそれではなく、戦い続ける少数民族の侍たちの顔ですよ。偉いなと思うのは、荒んでない。アジアで言えばグルカ兵の顔ですね。見ていてください、彼らは、当面はシリアのアサド政権に従って、ロスケ(ロシア)にも取り入って、必ずや、シリア領内に辛うじて自治を勝ち取りますよ。クルドの老若男女に生計を立てる基盤を確保し、力をつけるでしょう。彼らがシリア内で力をつけることが、あちこちの国にいるクルドのコミニティの精神的支柱となるでしょう。世が世なら、共に戦いたいくらいですよ。それも面白いかもしれませんね。
   これまでも歴史的にこれに類したことが何度もあったのです。オスマントルコの崩壊で、西欧に人為的国境を作られ、羊や山羊とともに山岳地帯を放牧して歩く民だった戦闘民族クルドの民は、分断されて各国に住むようになり、各国の事情でクルドの言葉や文化を否定されたりする抑圧を受けながら生活してきました。戦闘民族クルドのことなのでその都度、抵抗しては弾圧されて。一方、したたかな一面もあるクルドは、ソ連に取り入って第二次大戦直後にイラン領内に国を持ったこともありました。しかし、庇護していたソ連軍が去った後にイランに攻め込まれて結局は幻に終わったことも。あれ?今回に似てませんか?彼らは不屈の魂で、多民族の圧政や弾圧に耐えながらも、ずっと頑強に抵抗し、時に徹底的なゲリラ戦やテロでその国を苦しめてきました。そんな素朴にして我慢強く、それでいてしたたかで不屈の頑強さを持つ戦闘民族、それがクルド。
   ・・・そんな読みをしているのは、私の感情移入でしょうか。しかし、クルドよ、ここは我慢のしどころ、退いた方がいい。力をつけて、また立ち上がろう!、という私の勝手な思いかもしれませんが。

○ クルド戦線異状なし、その心は「いろいろ小事はあっても、大事に至らず。それを軍事では『異状なし』と呼ぶ。」
   「西部戦線異状なし」というヘミングウェイの傑作がありますね。「異状なし」で片づけられる報告に、その裏ではいろんなドラマや悲劇があるわけです。それでも、国際情勢、国際紛争、安全保障や危機管理の現実論から言えば「異状なし」程度のことなのです。
   国際情勢、安全保障、危機管理を学ぶ若い皆様には、国際情勢の実相にウェットに感情移入する情熱と、それでいて客観的な現実論から俯瞰する視点の両方を持っていただきたい。そんなことを学ぶ上で、今回のクルド戦線は良い題材です。

(了)



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2019/10/18

トルコが停戦に合意! エルドアンの深謀遠慮


 トルコのエルドアン大統領がトルコが遂に停戦合意しましたね。
 2019年10月17日付VOA記事「Turkey Agrees to Halt in Offensive on Kurdish Fighters in Northern Syria」が以下のように報じています。

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エルドアン大統領-ペンス米副大統領会談(2019年10月17日付VOA記事「Turkey Agrees to Halt in Offensive on Kurdish Fighters in Northern Syria」より)

<状況>
 ① トルコのエルドアン大統領は、ペンス米副大統領との延長した会談の後、120時間の一時停戦に合意した。この時限停戦は、クルド人武装勢力にトルコとの国境30キロ幅の緩衝地帯以南に下がる時間的猶予を与えるもの。

 ② ペンス米副大統領によれば、米国とトルコは、領地に関することと両国のIS勢力との対テロ作戦における協調関係の維持についての和平交渉を持つことに合意。これを受け、トランプ米大統領はこの停戦合意によりトルコに対する経済制裁は必要がなくなった旨、述べた。

③ トランプ米大統領はツイッターにて米国の外交努力を自画自賛
  「This deal could NEVER have been made 3 days ago. There needed to be some “tough” love in order to get it done. Great for everybody. Proud of all! 」(= この取引は、3日前にはあり得なかった。成果を得るにはタフな愛が必要だったのだ。交渉に関わった各位の努力を誇りに思う。)
  他にも、「大統領というものは、民主党・共和党両議員達から批判にあうものだが、トランプ大統領(自分で自分を評して)は敢えて米軍の撤退を宣言したのだ。」などなど。

④ トランプ米大統領は、撤退後のトルコのクルド人勢力への攻撃を懸念して、エルドアン大統領に「バカな真似はやめるべきだ。」と書簡を送付した。トルコからの情報ではエルドアン大統領はトランプ大統領からの書簡をゴミ箱に捨てたという。

<私見ながら>
◯ 結局エルドアン大統領も自制へ
  いやー、めでたしめでたし、です。
  トランプの自画自賛は笑い話のようですが、珍しくpeace-makerとして機能したので、まぁ評価できますね。
米国の課した経済制裁が致命的であったかはわかりませんが、国際的な批判にさらされたトルコとしては、ここらが潮時だったかもしれません。自ら主張するところはPRもできたことだし、実質的にトルコの獅子身中の虫だったクルド人勢力と、その家族のクルド人と、ISの囚人達と、そしてシリアからの何百万人もの難民達を、概ねシリア側に追い出すことができ、一定の成果を得て作戦終了というところでしょうか。

◯ エルドアン大統領の深謀遠慮?
  深読みすると、エルドアン大統領の読みの通りにことが進んだのかもしれませんね。
エルドアン大統領は、トランプ米大統領が早いところシリアから米軍を撤収したいことを知り、米軍が撤収するのを待ち、撤収後電撃的にシリア侵攻作戦を開始。クルド勢力の討伐と追い出し、ISの残党の追い出し、シリア難民の追い出し、という国家としての懸案が100%でないにしても大方達成したわけです。国内世論からは、支持されることすらあれ、早すぎるとは非難されないでしょう。シリア侵攻-クルド討伐作戦は、開始した瞬間から国際的批判を浴びることは分かっていたはずです。国民世論を後押しに侵攻-討伐し、国際的批判に対しては一歩も怯むことなく、トルコの国内的論理を大統領が代弁する。そりゃあ、国民世論はヤンヤの喝采でしょうよ。ギリギリ潮時まで突っ張って、米国の仲介の顔を立てて停戦に応じる。しかも条件は、憎きクルド人勢力を国境の、更に緩衝地帯以南に、追い出すこと。
  エルドアン、抜け目のない奴ですね。

(了)


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