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2022/05/25

ウクライナ戦況の実相:今様「西部戦線異状なし」 実は今だに一進一退

メディアの報道では分からない戦況の実相
 メディアの報道ぶりを紙面やTV画面で斜め読みしていると、ともするとドンバスの戦いは終わったかのような錯覚に陥りますが、とんでもない話です。 米国のInstitute of Study of War(戦争研究所)の最新情報(参照: 2022年5月24日付ISW記事 「Ukraine conflict updates (May 23, 2022)」)の戦況の細部を確認したところ、ウクライナの全正面で実は今だに一進一退の戦闘が続いている状況がよく分かります。確かに戦勢(勢い)上はウクライナが辛勝したと言えますが、実際の戦場ではロシア軍とウクライナ軍は各戦線で対峙しており、まだ戦闘は継続中なのです。

一進一退の戦闘が各地で続く
 以下、戦況を説明するに当たり、便宜上、侵攻(攻撃)側のロシア軍の作戦構想で下記の4正面を分けて説明します。(戦争研究所の戦況分析は、ウクライナ軍、米軍からの情報に加え、ロシア内の独自情報源によるものです。下記の戦況は、戦争研究所の前掲戦況資料に基づき、私の解釈を加えています。)
スライド1

 ザックリ言うと、各正面の概要は次のような状況です。
 ロシア軍の攻撃は、
  主作戦正面①: 東部(ドンバス地域)正面(イジュームとドネツク及びルハンシク正面における対ウクライナ軍包囲作戦)
  支作戦正面②: マリウポリ正面(マリウポリの完全掌握のためのアゾフスタリ製鉄所の掃討戦)
  支作戦正面③: ハルキウ正面(ハルキウから部隊を北に転じて東部正面の取作戦正面のための後方補給線の確保)
  支作戦正面④: 南部正面(へルソン州の確保)。

 総じて言うと、東部正面(ドンバス平原)においてロシア軍は引き続き各地域で攻撃を継続しており、一部では突破し、局地的に新たな獲得地を得たり、ウクライナ軍を包囲・撤退させている模様です。ウクライナ軍にしてみれば、概ね陣地線を維持しつつも、一部で奪取された地域もある激戦が続いている状況です。ハルキウ正面では、ウクライナ軍がロシア軍を押し戻したものの、同正面にロシア軍は一部を維持し、主作戦正面への後方連絡線(補給線)を維持、マリウポリ正面及び南部(へルソン)正面では、ロシア軍は「防勢転移」の態勢と言えましょう。
 図の見方として、ここ数日の攻防の進展として、水色部分がウクライナがここ数日で反撃して奪還した地域、黄土色(オレンジ?)がロシア軍がここ数日で新たに突破・奪取した地域です。
  
<① ドンバス平原正面>
スライド2
スライド3
 東部戦線ドンバス正面のロシア軍の作戦目的は「ドネツク州及びルハンシク州2州の完全掌握」であり、そのための作戦目標は「ドンバス平原に主力部隊を集結させたウクライナ軍を包囲・殲滅する」ことである。しかし、現在の戦況ではロシア軍の攻撃衝力は勢いを失しているものの、局地的に戦力を投入して攻撃を仕掛けてきており、局地的な突破口が形成されると形勢が逆転する可能性もあるギリギリのせめぎあいである。
 具体的には、23日、イジューム南東部への空爆と砲撃を強化し、ロシアの各地からの増援部隊を投入し、スロビャンスク地区での突破を目指した攻撃を再開する模様。イジュームの南東、ディブロヴェ、ヴィルノピリヤ、ボゴロディチネ、フサリフカ、チェピル、ドリーナ、ストゥデノク、スヴィアトリルスク周辺のウクライナ軍陣地への偵察をしている。ロシア軍がイジューム南東20kmのドヴェンケ地区での突破を図ったが、ウクライナ軍が阻止している。ロシア本土~ハルキウ東部~イジュームに伸びる後方連絡線(Line of Communication/要するに補給線)を確保するため、ハルキウからイジュームの地域に潜むパルチザン(ロシア支配地域にいる親ウクライナ一般市民のゲリラ)のテロ攻撃を封殺するため、この地域にロシア軍治安部隊を投入し、厳戒態勢と摘発体制を強化している。

 また、セヴェロドネツク地区では、ロシア軍の攻撃に進展あり。セヴェロドネツク北東のシチェドリシチェヴェで局地的に突破、さらに、ゾロテでも突破し、南からセヴェロドネツクの局地的包囲を遂げ、この地域でのウクライナ軍に対する局地的な包囲に成功した模様。ロシア軍は、この局地的成功に勢いづき、ポパスナ周辺のトシキフカ、コミシュヴァカ、ニルコヴェ、ヴァシリフカ、ノヴァ・カミャンカ、ミロニフスキー地域での突破を図り、バフムートに向かって西進する企図がある模様。包囲されたウクライナ軍はヴォロディミリフカからソレダールまで西に撤退した模様。ロシア軍は、さらにドネツクとルハンスクの行政国境付近で前進し、バフムートの南東にあるミロノフスキーを攻撃奪取した模様。今後、南と西の両方からバフムートに攻撃する可能性あり。

 また、ライマン地区でも部分的な突破に成功しライマンの一部を支配、次なる目標としてアヴディイフカの攻略を目指している模様。ここが奪取されると、スロヴィャンスクへの高速道路を確保されるため、ウクライナ軍は警戒している。

<② マリウポリ正面>
  (画像なし)
 マリウポリ正面のロシア軍の作戦目的は「マリウポリの完全占領」であり、そのための作戦目標は「ウクライナ軍守備隊の縮小」である。大きな戦闘は起きていないが、アゾフスタリ製鉄所のアゾフ連隊の残留部隊の掃討戦が続いている。
具体的な動向としては、ロシア軍と親ロシア派武装勢力は、アゾフスタリ製鉄所地域は度重なる戦闘とロシア軍のクラスター型ロケット焼夷弾の惨状が著しく、地域の安全化に苦慮している模様。アソフスタリ製鉄所へのクラスター型ロケット焼夷弾攻撃についてはロシア内でも批判があり、ウクライナ軍の降伏を待つべきだった、との意見もある模様。アゾフスタリ製鉄所の攻防戦では、ウクライナ軍アゾフ連隊の製鉄所地下要塞を根城にした神出鬼没のゲリラ戦により、相当数のロシア軍の死傷者があった模様。しかも、未だに製鉄所の地下要塞に残留部隊が潜んでおり、掃討戦が続いている。なお、既に投降したアゾフ連隊の兵士らは連行・収監され、占領下のドネツク州の拘置所で裁判を待っている模様。ドネツク州の親ロ派自治政府とロシア政府の占領局との間で官僚的な主導権争いがある模様。また、ロシアからの「ボランティア?」部隊及びチェチェン軍部隊がマリウポリからザポリージャ州に続く高速道路を警戒・監視している模様。

<③ ハルキウ正面>
スライド4
 ハルキウ正面におけるロシア軍の作戦目的は、「イジュームへと延びる後方連絡線を確保する」であり、このための作戦目標は、「ハルキウ正面で攻撃部隊だった勢力を北に転じ(撤退させ)、ハリコフの北部の防御陣地を構築・陣地線の維持」をすることである。ロシア第6軍と第41統合武器軍、ドネツクの親ロシア部隊の第1軍団及びルハンシクの親ロシア部隊の第2軍団の部隊が、ハルキウ正面でのウクライナ軍の更なる前進を防ぐためにこの地域で活動している模様。ロシア軍でなく、東部2州の親ロシア部隊を運用する理由は、同じウクライナ人同士で争わせることを作為している。親ロシア派情報では、ロシア軍がリプシとハルキウ州のルビジネ(ルハンシク州ではなく)でまだ戦闘中、と報告しており、これはロシア軍がハリコフ市の北部で一部をウクライナから再奪還したことを意味する。
 ちなみに、 ロシア軍は5月23日現在で、今だハルキウ市とその周辺を砲撃し続けている。

<④ 南部正面>
スライド5
 南部正面におけるロシア軍の作戦目的は、「ウクライナ南部で恒久的な支配を確立」であり、そのための作戦目標は「ウクライナの反撃から制圧下に置いたヘルソンを確保する」ことである。

 具体的には、ロシア軍がヘルソン州とムィコラ~イウ州の国境を強化している模様。また、ロシア軍は、クリミア北西部に2つのS-400対空ミサイル大隊を配備し、ウクライナの反撃の可能性に対する防空を強化している模様。これらから、ロシア軍は来るべきウクライナ軍のへルソン奪回に向けた備えを固めつつあると言える。 

 また、南部正面(へルソン州)の特質の一つは、ザポリージャ市の南80kmにあるザポリージャ原子力発電所があることだが、ロシア軍がこの発電所の東にあるヴァシリフカに部隊を集結させており、ザポリージャ原子力発電所の支配を未だ狙っており、ザポリージャ州におけるウクライナの反撃の脅威を低減させる企図がある模様。

戦況の実相は今様「西部戦線異状なし」: 一進一退の膠着戦の中で損耗が続く現実
 上記の戦況の記述は、地図と一致しない地名がゴジャゴジャ出てきて読み辛くてすみません。地名等の記述の細部は、分かり辛いので読み流してください。要するに、まだ一進一退の攻防が続いて、辛く長い闘いの日々が続いていることが分かってもらえば結構です。
 いやー、改めて再認識しました。東部正面のドンバス平原の戦いは、今だに激戦中ですね。ロシアが突破を試み、それをウクライナが阻止し、一部では突破され・・・、というような、一進一退の苦しく長い闘いの渦中のようです。
 既述の通り、ウクライナ戦線は名画「西部戦線異状なし」と同様の様相です。戦況は実は今だに一進一退の激戦がそこかしこで起きており、そこに地域住民や双方の兵士の死傷者が数百名出ているのが実態でありながら、双方の上層部や国際的な関心から俯瞰的に見ると、「異状なし、特筆すべき進展や失陥なし」で片づけられる長期膠着戦に陥っているわけです。

 ちなみに、古い映画ですが「西部戦線異状なし」って知っています?第1次世界大戦下の戦線の膠着の中、ある青年ドイツ兵士を主人公に、彼の眼を通じて、当時の一般市民の生活、出征、訓練、前線での砲爆撃、塹壕での生活、戦友の死、空虚感、自らの人間性の喪失、そして自らの戦死、の心の軌跡をたどる名画です。忘れられない名シーンに、思いがけず出くわした敵兵を何とか刺殺したのち、その敵兵にも家族が待っていることを知り、後悔しながら敵兵を介抱するが死んでしまうシーンがあります。またラストシーンでは、人間性を失いつつあった主人公が塹壕の近くでさえずるヒバリに久しぶりに優しい気持ちを起こし、久々にスケッチしようとして手を伸ばしたところで狙撃され死んでしまいます。そして、その日の戦闘報告には「西部戦線異状なし、特筆すべき報告事項なし。」と記載される、という何とも切ない余韻に包まれる名シーンがあります。

 映画の舞台は第1次世界大戦ですが、時を隔てて21世紀の現代戦下でも、この同じ地球の片隅で全く同じことが起きているなぁ、ということをつくづく痛感します。この戦争を、いち早く、終結させたいと思いつつ、我々にはどうしようもないのが現実。せめて、日々メディアの現地の戦況への関心が薄れる中、それでも長期膠着戦の下ではこうした悲劇がずっと起きていることを忘れないようにしたいと思います。

(了)

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2022/05/18

ドンバスの戦いにウクライナ辛勝:しかし道なお遠し、長期膠着戦は続く

アゾフ連隊の負傷兵
マリウポリのアゾフスタリ製鉄所で徹底応戦していたアゾフ連隊もついに「任務完了」へ

決戦ドンバス平原の戦いにウクライナ辛勝
 2022年5月18日現在、報道によれば、ウクライナ東部のドンバス平原の戦いにおいてハルキウ正面でウクライナ軍の反転攻勢が進捗し、多くの市町を解放、一部はロシア国境に達し、またロシア軍の渡河部隊をほぼ全滅にするほど撃破するなどが報道されています。英国防省の分析では、ロシア軍のドンバス平原での攻撃衝力は既に落ちており更なる攻撃はできない、との読み。
 総じて、ドンバス平原の戦い(少なくとも第1次ドンバス攻撃)ではウクライナが守り切った、と言って間違いないでしょう。

とはいえ道なお遠し①: ロシアの防勢転移
 一部の気の早いマスコミ報道ぶりを見ていると、一時他国へ避難していたウクライナ市民が帰還ラッシュしていたり、首都キーウに諸外国のVIPが訪問したり市街に復興の動きが見られたり、….そうした動向に、あたかもロシアの侵攻は失敗に終わり、撤退し、元の平和な状況に戻るかのような錯覚を覚えるかも知れませんが、それは大きな誤りです。
 例えば、マリウポリではロシア軍が、非人道兵器と名高いクラスター型傷痍ロケット弾(空中で子弾に分裂し何千度もの高熱を発して焼き尽くす)でアゾフスタリ製鉄所を覆いつくして燻し出し、地下要塞で徹底抗戦して善戦したウクライナのアゾフ連隊が、ついに「任務完了」という名の投降・収容という形でロシアの手に落ちつつあります。ロシアが既に制圧下に置いている地域ではロシアが支配を強めており、実は一進一退なのです。

 私見ながら、ドンバス平原の戦いに敗れても、ロシア軍は態勢を立て直して、侵攻計画を大修正して防勢に転移し、一部をもってウクライナの戦争継続に必須の後方支援基地やインフラへのミサイル攻撃などを継続しつつ、主力をもって既に制圧下に置いた東部及び南部の一部地域(※)の確保態勢に入るでしょう。(※東部2州のうち既に9割がた制圧下に置いたルハーンシク州、南半分を制圧下に置いたドネツィク州、及び南部ではほぼ全て制圧下に置いたヘルソン州、南半分を制圧下に置いたザポリージャ州) 具体的には、ロシアは、戦闘部隊をもって防御態勢を取らせるとともに、勝手に治安部隊と行政機関をもってこれらの既得地域をウクライナからの独立化、治安維持の名の下の住民のロシア化を図るでしょう。

道なお遠し②:長期膠着戦が続く
 これを挫くためウクライナ軍が地域の奪還作戦を実施するでしょうが、防勢転移したロシア軍は相当手強いのです。今度はロシア化住民を擁しているロシア側はウクライナ軍の反転攻勢を「親ロシア住民の自治地域を武力で蹂躙しようと攻撃してくる侵略者」として喧伝し、その大義名分をロシア国民の愛国心に訴えて徴兵・大動員するでしょう。しかも、ロシアが制圧下に置いた地域には、ウクライナのアゾフ連隊が最後の最後まで抵抗し続けたアゾフスタリ製鉄所の地下要塞のような難攻不落の地下施設がそこここにあり、それらを手中に収めるわけです。ウクライナがロシアに制圧された地域を奪還する際には、そうした地下施設がロシア軍の手強い抵抗の基盤となるでしょう。
 だから、この紛争は今後の戦闘の推移で現在の膠着線からの押した引いたはあるものの、総じて言えば膠着した状態で長期化するものと推察します。

 長期膠着状態は、ウクライナにとってもロシアにとっても、国力を擦り減らすだけの愚かにして悲しい状態です。しかし、ロシアが制圧下に置いた地域から完全撤退することはなく、ウクライナはジリジリと奪還地域を拡げる、そんな長期膠着戦の我慢比べが、いずれかが音を上げるまで、長く続くのです。冷静な読み半分、希望的観測半分で、先に音を上げるのはロシアの方でしょう。プーチンの恐怖の支配の下にあっても、国民達が戦争継続に経済と精神的側面で耐えかねてNo!と声を上げ、そして政権内でプーチン側近が宮廷内クーデター的にプーチン失脚へ(かなり希望的観測ですが)、・・・そこで真摯に休戦協議に入ってくれれば、紛争自体は終息するでしょう。それが数ケ月先なのか、十数ケ月先なのか、はたまた数年先なのか、・・・・。この間、不幸な悲劇はあちこちで起こり、まだまだ続くでしょう。悲しいことですが、これが国際紛争の現実です。

 それでも頑張れウクライナ!

(了)

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2022/05/13

一進一退の攻防続くウクライナ:長期消耗戦の我慢比べへ

一進一退の攻防続くウクライナ:長期消耗戦の我慢比べへ
 2022年5月13日現在、報道によれば、ウクライナ東部のドンバス平原の戦いにおいてはハルキウ正面でウクライナ軍の反転攻勢が見られる一方、南部のロシア制圧下のヘルソン市では住民投票で親ロシア体制を画策するなどあからさまなロシア化政策が取られている模様。他方、黒海正面の帰趨を占うズマイニ島の攻防戦も激しさをます状況。
 私見ながら、総じて戦況は「一進一退」と言え、ロシアもウクライナも長期消耗戦に耐える態勢に移行している、と推察します。長期消耗戦では、いかに継戦能力を維持するかが勝負であり、物心ともの「我慢比べ」になります。先に音を上げた方の負け、となります。

ウクライナ、ロシア両国にとっての物と心の両面での「我慢」
 ウクライナにとっては、「物心両面での我慢」のうち、物的側面では欧米や我が国等の幅広い国際的な後方支援を受けられるため比較的安心できますが、マリウポリの残留市民やアゾフスタリ製鉄所に籠城するアゾフ大隊のように、「何とか救出してやりたい」という心情的側面では、ゼレンスキー大統領から一市民に至るまで、交渉や妥協の余地を残さざるを得ない不安定要素が残ります。
 他方、ロシアにとっては、物的側面では明確な実質的支援国もなく、サプライチェーンも維持できず、継戦能力では不安を抱えることになります。反面、心情的側面については、当面はプーチン大統領の恐怖の支配のもと、冷徹な心情的一枚岩態勢が維持され、表面上はいかに苦しかろうが不安定要素を表には出さず、我慢し続けるでしょう。
マリウポリの子供たち
マリウポリに残留する子供たち(2022年5月13日付NHK記事「【マリウポリ】なぜ子どもの集合写真を ロシア軍包囲の街で」より)
アゾフ連隊の負傷兵
アゾフ連隊の負傷兵。ウクライナ南東部マリウポリのアゾフスターリ製鉄所にて。アゾフ連隊提供(2022年5月10日提供、撮影日不明)。(c)Dmytro 'Orest' Kozatskyi / various sources / AFPより)

両国とも不安定要素があるからこその我慢比べ
 私見ながら、ウクライナ目線で考察させていただきます。
 この我慢比べでウクライナが勝つには、心情的な強靭性を保持して、これから起きる幾つもの残酷な悲劇に断腸の思いで耐えていただくしかないと思います。要するに、マリウポリの健気な残留市民やアゾフスタリ製鉄所の英雄達を、言葉は悪いですが「見殺し」にするような事態が今後起きます。上はゼレンスキー大統領から一市民に至るまで、耐え難い悲しみや苦しみを味わうことになります。ロシアと違って、ウクライナの場合は大統領から一市民まで、心情的側面において一体です。「見殺し」を避けるための交渉において、ともすると衝動的に不利な条件すら呑むので「助けたい」という手段・方法を取ることも考えられます。しかし、…… 決して先に音を上げてはならないのです。勿論、ご家族等の意見には、全てを投げ打ってもいいから「助けたい」気持ちが勝るであろうことは理解しなければなりません。しかし、国家を指導するゼレンスキー政権としては、ご家族等の気持ちを理解しつつも、ロシアへの妥協は、決して・絶対に、すべきではないと存じます。
 ロシアは、長期消耗戦になればなるほど、不安定要素だった物的側面で苦境に追い込まれます。戦争継続のための武器弾薬の補給整備・燃料・医薬品・食料、等々の純粋な物理的な維持の問題のみならず、日々の戦費がロシア全体の経済に及ぼす総合的な負担は計り知れません。そして、その戦時体制を続けるロシア市民たちの心にも、そうした負担はのしかかるはず。結局、長期消耗戦を続けることでロシアにとって間接的だが致命的要素として、プーチン大統領から遊離している一般市民や戦場にいる兵士達の心情的側面に破綻をきたすでしょう。恐怖支配に抗ってでもNOを叫ぶ様になるでしょう。一般市民が声を上げる頃には、プーチン政権の部内でもプーチン失脚を企てるものも出て来るでしょう。

 それこそがウクライナの勝ち目です。
 長く苦しい戦い、悲しみも続きます。しかし、この耐え難きに耐え、やがて必ず訪れる勝利の日を待ちましょう。
 頑張れ、ウクライナ!

(了)

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2022/05/05

ドンバス戦、ウクライナ軍が陣地線を固守!ロシア手詰まり、現状打破策を懸念

Donbass.jpg
ドンバス平原の戦い:ウクライナ軍に撃破されたロシア戦車

ドンバスでウクライナが陣地線を固守!
 前回のブログで、ドンバス平原の戦いが決戦場と申しましたが、ロシアがあの手この手で広域多方向からウクライナの陣地戦の突破を試みますが、細部の戦闘については全く明らかにされていないものの報道されているところでは、現在までのところウクライナ軍がほぼ全正面で守り切っている模様です。大国ロシア軍の猛攻を一歩も退かずに守り切っているなんて、全く大したものです。不謹慎ながら、ぜひ戦後に、今回のドンバスでの戦闘経過と戦術戦法について我が陸上自衛隊の教訓収集チームに研究させてもらいたいですね。
 ドンバス平原の北正面のハルキウでは、首都キーウに次ぐウクライナ第2の都市でロシアとの国境からほど近い、という地政学的位置から、開戦間もなく攻略されるだろう、と思っていましたが、あにはからんや、ロシアの猛攻に耐え続けたあげく、どうやらロシア軍を後退させたようです。今回のロシア軍のハルキウ後退は、ドンバス平原の(ウクライナから見て)左翼の敵(ウクライナ)の固い守りを避けて一時的な戦術的後退であって、もうハルキウ攻略を諦めた、という訳ではないので、ご油断召さるな。

 また、ロシア側から漏れ伝わる情報からすると、どうやらロシアの後方支援・補給整備が追い付いていない状況のようです。Newsweek誌によれば、ロシアから要請されて南オセチアから援軍に来た南オセチア兵が、ドンバス正面に転用され、低充足にして整備不良の戦車等のロシア兵器を支給され、苦心惨憺の戦闘の渦中に身を置いたものの、300名ほどの南オセチア兵が半ばパニック状態で戦闘から離脱して敗走してきたようです。彼らは再度の戦闘加入を拒否し、戦線から後方に下がり、ロシア支援のためにウクライナと戦えと命じた南オセチアのアナトリー・ビビロフ大統領に対し、ロシアをクソミソに非難した模様です。曰く、武器は不足し、旧式で、整備不良であり、情報も与えられず、まともに指揮系統も整っておらず、「この戦争でロシアは負ける」とコメントしたそうです。南オセチア兵士によれば、乗れと言われて支給されたロシア戦車の戦車砲がそもそも破損して射撃ができず、戦える状況ではなかった模様。その大統領との会話をロシアの独立系メディアがすっぱ抜いたらしく、その内容をNewsweekが入手したものです。(参照:2022年5月4日付Newsweek記事「Russia 'Will Lose' Say Panicked Soldiers as They Refuse To Fight Ukraine 」)
 断片的な情報から、ドンバスのウクライナ陣地線の戦いぶりは、こんな感じではないかと推察しています。ロシア・南オセチア連合部隊が、猛烈な攻撃準備射撃ののち、ウクライナ陣地に猛烈な砲弾を降り注ぎつつ、その砲弾下を戦車で突進して突破を目指す。しかし、ウクライナ軍が作った縦深多重の対戦車障害でロシア戦車の出足が止められ、ここに陣地線からの阻止火力を広域多方向から集中して、ロシア戦車・装甲車を陣前の路上で撃破、まれに突破できた数両の戦車があったとしても、ウクライナの陣地内で寄ってたかって攻撃を受け、撃破されるか後退するか、の状況。・・・かくして、数度にわたるロシア軍の猛攻をウクライナ軍が必死で守る。・・・いやぁ、ウクライナ軍、素晴らしい善戦です。陣地防御の陣地線、というと堅固そうですが、実は薄皮一枚でしかない線で、頼みの綱は同じ陣地線を守る各兵士の相互支援で成り立っています。いかに陣地防御の戦いの毎日が辛く苦しいか、・・・ウクライナ兵士の必死の健闘にただただ尊敬の念。

背景:西側の経済制裁でロシアの継戦能力が限界かも
 米国の地道なロシア研究で定評のあるEurasia Daily Monitorによれば、西側の経済制裁はロシア経済、特にロシア兵器の補給・整備能力に致命的な損害を与えている模様です。特に、ロシアの戦争遂行の中心的な柱であるロシアの軍事産業複合体(MIC)の基盤を揺るがしている模様です。
 過去70日間のウクライナ戦争でのロシア軍のパフォーマンスが示すように、ロシアは高度な軍事近代化を誇る割に、その兵器の多くは実際には時代遅れの機器が使用され、本来の性能を発揮していないことが散見されます。
 その背景は、ロシアの誇る軍産複合体が西側の制裁により企業としての営業基盤も、サプライチェーンが切れており外国製の部品などの高度な技術に依存していたロシア製兵器の生産基盤も、主要な2つの基盤が成り立たないことに起因しています。取り分け、これまで部分的に諸外国に依存していた重要な材料と消耗品、宇宙関連技術、電子機器がすべて経済制裁の標的にされたため、今既にある兵器が故障しても整備できない状況です。特に、ロシアの戦争遂行上の戦闘マシン3本柱と言える①戦車等の重装甲装備、②海軍艦艇、③精密誘導兵器、のいずれも上記の事情により補給・整備が成り立たない模様です。(参照:2022年5月4日付Eurasia Daily Monitor (Volume 19)記事「The Economic Aspect of Russia’s War in Ukraine: Sanctions, Implications, Complications (Part Three)」)

 私見ながら、上記の状況が実情だとすると、恐らくロシアは既に相当の消耗をしており、もはや上記の3大戦闘マシンの①戦車・装甲車両等も②海軍艦艇も、戦闘損耗に対する補給・整備が出来ず、壊れてもそのまま使う、若しくは所謂「共喰い」と言って動かなくなった同型兵器から部品どりして補給・整備に当てるしかない、と思われます。③精密誘導兵器に至っては、ミサイルのように打ちっぱなしですから、消耗して行くのみ。既にこれまで、首都キーフをはじめとするウクライナ主要都市攻略戦やマリウポリのアゾフスタリ製鉄所(同地に潜むアゾフ大隊及び残留市民の殲滅のため)、更に最近では西側からウクライナへの武器・弾薬・燃料等の補給基地(主としてビーブ等のポーランド国境の都市)への狙い撃ち攻撃のため相当数の精密誘導ミサイルを使ってしまっているはずです。よくニュース映像で映る多連装ロケットは、精密誘導兵器ではなく数撃ちゃ当たる兵器で比較的安い1発当たり数万円程度ですが、精密誘導兵器はピンキリですが少なくとも1発数百万以上しますから、そろそろストックも底をつくこともあり、今後は多用せず大事な一戦での狙い撃ちにしか使用できないでしょう。

ウクライナ善戦、ロシアの手詰まり・・・ロシアの現状打破策(核兵器含む)を懸念
 他方ロシア軍は、このドンバス平原の戦いの全般状況を把握し、国境付近に更なる追加部隊を集結させつつある模様です。特に、先週、ドンバス平原の戦いの激戦地の一つ、イジューム攻略戦をプーチンの懐刀であるゲラシモフ参謀総長が視察に来ました。その場で、ドンバス平原攻略作戦の総司令官のドヴォルニコフ将軍から状況報告を受けた模様です。(ちなみに、このゲラシモフ参謀総長とドヴォルニコフ総司令官の前線視察の場を、ウクライナ軍が精密誘導弾による狙い撃ちをしたようですが、両将軍は難を逃れたようです。余談でした。)ドヴォルニコフ総司令官は、ドンバス平原の各正面の作戦が図らずも計画通りに進んでいないことを報告したはずです。そして、更なる増派などの進言をしたと推察します。

 さて、ここから先は全くの私見ですが、ゲラシモフ参謀総長はこの視察後に、ドンバス攻略戦が膠着しつつあることを確認し、現状打破のための奥の手として、正攻法で更なる戦力の増派と、もう一つ正攻法以外の手として、核兵器・化学兵器などの限定使用という手を打つ必要性についてプーチン大統領に進言したのではないか、と懸念しています。プーチン大統領がことあるごとに、核兵器の使用か?と西側をけん制するような発言を意図的にしますよね。プーチンは政治家だから観測気球も上げるし、そう発言するのは理解できます。他方、ゲラシモフ参謀総長は軍人ですから、勝つためには手段を選びません。ましてや、シリアでアサド大統領の政府軍が攻めあぐねたアレッポ攻略の際、化学兵器の使用も含む完膚なき殲滅戦を指揮したドヴォルニコフ将軍が今回の総指揮官につきましたから。例えば、手を焼くマリウポリのアゾフスタリ製鉄所の地下要塞、化学兵器を限定使用すれば、地上から空気を取っているわけですから、今回の人道回廊設置を通じて抜け道などを確認したロシア軍が、その出入口や空気取り入れ口で化学剤を使用すれば、一網打尽で要塞内のアゾフ大隊の残存勢力を殲滅できます。しかし、世界中から非難されるでしょう。また、核兵器使用については、ウクライナ軍に対して戦術核を使うというのではなく、核実験の形で戦術核ミサイルを北極圏とかロシア内のシベリアで「実験」するとか、は十分考えられると思います。この戦術核の使用は、純軍事的な効果ではなく政治的インパクトとして、たちまちNATO各国、欧米はじめ西側諸国で「大炎上」するでしょう。ロシアへの非難もあるでしょうが、それ以上に、西側諸国のウクライナへの支援、ロシアへの経済制裁という路線が、ロシアから自国への核攻撃の脅威のある危険な政策ではないか?と各国のホームフロントでの大炎上になるわけです。当然、足並みは狂うでしょう。

 考えてみれば、我々西側諸国は、「こうした大量破壊兵器の使用というオプションは、なかんづく核兵器の使用など、いくら何でもプーチン大統領は取らないだろう。」という合理的判断をプーチンに期待した上で成り立っています。さて、プーチンの合理的判断を期待するんですか?という話です。そんなところまで、プーチンは手詰まりになってきています。それが故の懸念です。

 頑張れ!ウクライナ

(了)

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2022/04/30

ドンバスの戦いが勝敗を決す!膠着戦に持ち込みロシアに勝て!

ドンバスの戦いが勝敗を決す!膠着戦に持ち込みロシアに勝て!
 2022年4月29日現在、ロシア軍は侵攻作戦を仕切り直し、指揮系統や編成を立て直して戦闘力を結集して、ドンバス地域と呼ばれる東部2州からクリミアまでの完全掌握のための攻勢を開始した模様。・・・ところが、ロシアが得意とするはずの平原・開豁(かいかつ)地での徹底的な攻撃準備射撃の後のロシア戦車の蹂躙が始まる・・・思いきや、ウクライナの塹壕陣地線を容易に突破できず、ロシア制圧地域は予想された程広がっていません。ロシアは、未だに兵站・後方補給線の確保がおぼつかず、指揮・通信の維持確保も解決しておらず、指揮官が命じても兵士の士気・モラルにも問題を抱え、等々、我々が警戒している程には精強・強靭な戦闘ができていないようです。ウーム、どうやら西側の軍事関係者はロシア軍を過大評価し、ウクライナ軍を過小評価していたようです。2014年のクリミア侵攻当時のロシア軍の最先端ハイブリッド作戦を世界に知らしめた姿、全くしてやられたウクライナ軍の無力な姿が脳裏にあるために、その後のそれぞれの国軍の、無努力による没落と臥薪嘗胆的努力による国軍のみならず市民レベルの不屈・精強・強靭化を見誤っていました。
 そうであるならば、西側連合は大同団結して全面的にウクライナをバックアップし、ウクライナがドンバスの戦いを守りきり、戦線を膠着させることで、莫大な戦費と戦力の損耗をロシアに課し、ロシアを枯渇・弱体化させ、もって停戦させることを目指すべきだと思います。結果的に、米国のブリンケン国務長官とオースティン国防長官が提唱した「もはや2度と戦争を起こさせないようロシアを弱体化する」ことができます。核心的には、ロシアのプーチン大統領を失脚させることが早道だと思いますが。
ドンバス平原
ドンバス平原(2022年4月28日付BBC「War in Ukraine」を加工)

ドンバスの戦いの重要性
 ロシアは、明らかに侵攻当初の「侵攻目的・目標」を下方修正した模様です。当初は、ウクライナをロシアの影響下の衛星国に戻そうと企図し、電撃侵攻で主要都市を落とし、もってゼレンスキー政権を駆逐し、親ロ政権を打ち立てて、その目的・目標を達成できると考えていたと思います。ロシアにしてみれば、ウクライナの国民達は、突然の戦乱に右往左往するだけで、ロシア様に抗戦意志を示すことなどないだろうと、タカをくくっていたことでしょう。しかし、開戦してみたら、電撃侵攻などできず、各正面でウクライナ軍に猛烈な抵抗に遭い、更にウクライナの市民たちも強烈に抵抗し、戦線は膠着。そこで、戦線を整理して、ロシア軍の態勢の立て直し。この際に、状況を総合的に整理し、当初の侵攻目的とそのための達成目標を大幅に縮小し、「東部2州及びクリミアの線の確保」に下方修正しています。 
 その新たな侵攻目的「東部2州及びクリミアの線の確保」からすれば、ロシア軍の達成すべき目標は「ドンバス平原でウクライナの陣地線を突破し、ドンバス平原を確保すること」と推察します。ここでいうドンバス平原とは、東部2州のうちのまだロシアに制圧されていない地域、ハルキウ~イジューム~ドネツク~サボリージャの以西・以北の地域です。この地域は、開豁(かいかつ)しただだっ広い平原です。まさにロシア軍がその真価を発揮できる、慣れ親しんだ平原の戦車・装甲車の突進・蹂躙ができる地域です。しかも、ロシアの制圧地域からロシア本土からの兵站・後方補給を受けられるので、どう考えてもロシア軍に有利、ウクライナ軍にとっては不利。ウクライナ軍の主力部隊も、まさにこのドンバス平原に結集し、塹壕を掘って縦深の地域に陣地線を構成し、ロシアの突進を受け止めては潰す防御を敷いています。ロシアにとっては、この平原を突破してウクライナ主力部隊を撃破すれば、必然的に侵攻目的「東部2州及びクリミアの線の確保」が達成できます。ウクライナにとっては、ここを失えば、東部2州~クリミアの以東以南は2度と返ってこないロシアの占領地になってしまいます。従って、このドンバス平原の戦いの帰趨が、今回のロシア侵攻の決戦場と言っても差し支えないと思います。

ドンバスの戦いの展望
 4月初旬に戦線を立て直し始めたロシア軍のドンバス平原への総攻撃は4月中旬からヌルっと開始されました。この辺が今回のロシア軍の作戦の、軍事的合理性や戦術妥当性上からは理解のできない、おかしなところです。4月中旬から下旬に渡り、ハルキウ~イジューム~ドネツク~サボリージャの両軍の接触戦(前線)において、ロシア軍の突破攻撃が処々で見られました。ロシア軍が一部で突破をしては、ウクライナ軍に回り込まれて後退するなど、ウクライナ軍は概ね押されながらも線を維持しています。あれ?膠着してるじゃん!

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ドンバス平原のウクライナ軍の塹壕陣地。こうした陣地線と対戦車障害が数線に渡って構成されている。(2022年4月19日付inews.com.uk「Why is Russia targeting eastern Ukraine? Putin’s goals explained as ‘second phase’ of war begins in Donbas」より)

 これまでのところ、平原とはいいながら、4月下旬の大地の凍結からのぬかるみ状態が幸いして、ロシア軍は平原に展開して大戦車軍団の展開ができず、結局は道路に数珠つなぎになった縦隊の攻撃になっています。陣地線に横に展開したウクライナ軍は、ロシア軍の縦隊攻撃の先頭集団に集中砲火。一部でロシア戦車に突破されても、その突破されたフタを閉めて突破部隊の退路を断ってこれを殲滅。最強を誇ったロシア戦車軍団とガップリの四つ相撲を実施中です。実はウクライナ軍は、クリミア侵攻及び東部2州の親ロ派武装勢力との抗争で、当時からこのドンバス平原での陣地戦を想定した陣地構築をしていました。第1次・第2次世界大戦の頃と変わらず、地面に穴を掘って塹壕を作るという原始的で最も強靭な防御陣地です。(我が陸上自衛隊も今だに訓練で掘っていますよ。)ロシアが態勢を立て直して東部戦線に戦力を集中しているように、ウクライナ軍も主力部隊をここに配置しています。しかしながら、キーウ攻略の頃のロシア軍と違い、今回の攻勢では指揮・命令系統が大分是正され、突進部隊と後続部隊の連携が以前よりはできており(それでもウクライナの通信妨害により混乱している模様です)、一進一退の攻防となっています。
 展望としては、ここは我慢比べですね。ドンバス平原の戦いのどこかの正面で、例えばイジューム正面で深く突破されたりしたら、ロシア軍はその開いた突破口を開けたまま維持し(突破口の形成)、逐次にその開けた穴を拡大し(突破口の拡大)、更にその正面から後続部隊が続々と攻撃衝力を増して、縦深に突進部隊が展開し、もって戦果を拡張します。そうすると、陣地線で頑強に抵抗していたウクライナ軍は突進部隊に包囲され、陣地線は瓦解します。そうされないよう、ウクライナ軍はどこかで突破されたらすぐさまフタを閉め、後続部隊を阻止し、突破部隊を分断孤立させて殲滅します。こうして陣地線を維持しているわけです。まさに、今がその正念場。長い苦しい戦いをしています。
 ロシア軍の攻撃も、ウクライナ軍の防御も、その継戦能力を維持するために必要なのは兵站・後方補給の維持です。ゆえに、ウクライナのゼレンスキー大統領は西側各国に武器の供与をはじめとする兵站・後方補給支援を求めているわけです。特に、戦車、火砲、対戦車火器、対空火器。しかし西側の最新兵器をもらってもすぐに使いこなせないので、手っ取り早いのは旧ソ連製の兵器ですね。この辺は旧ワルシャワ条約機構軍仲間だった東欧諸国からの供与がありがたいところです。西側はここで大同団結してウクライナを支えましょう。
 他方のロシアは、有り難いことに莫大な戦費が日々かさみ、既に相当の人的・物的戦闘力を消耗しています。なのにバックアップしてくれる国がありません。中国なんかが全面バックアップしたら、また面倒な話になりますが、有り難いことにありませんね。
 ゆえに、西側の大同団結のウクライナへのバックアップを続け、ドンバス平原の戦いを膠着し続けてもらいましょう。この間、マリウポリに残されたウクライナ軍と市民を始め、様々な悲劇は続きます。苦しい、長い、暗い毎日でしょう。しかし、この我慢比べで長期持ちこたえれば、ロシアの方が先に音を上げるでしょう。枯渇していく経済力に耐えきれず、必ずロシアの方から停戦を呼び掛けてきます。だから、苦しい戦いを続けてもらうしかない。

 頑張れ!ウクライナ

(了)

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