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2020/02/04

イランはウクライナ機撃墜の真相を黙殺

日本ではコロナウイルスが報道を席巻し、イランのウクライナ機撃墜の件は後追いの報道がありませんが、大変なことになっています。(2020年2月3日VOA記事「Iran to Stop Coordinating With Ukraine After Air Traffic Recordings Leaked」参照。下の写真も同記事より。)
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最近リークされた録音テープがあり、そこには生々しいやり取りが収録されていた模様。このテープはウクライナのテレビ局が入手して放送され、ウクライナでは大反響となっています。
そのテープには、ウクライナ機にミサイルらしき閃光が直撃・炎上し墜落する状況を、近傍を飛んでいた他の航空機のパイロットが目撃し、イランの管制塔に報告する、そのやり取りが録音されていたのです。
ということは、実は、イラン軍発射のミサイルによる撃墜であったことについて、イラン当局は報告を受けていたはずと推察されます。イラン政府は事件当初に「不幸な航空機事故だった」と説明し、その後、西側からの「イラン軍ミサイルによる撃墜の可能性大」との報道に対して全面的に否定。しかし、その後次々と状況証拠を突きつける西側報道には応えず、「イラン独自に確認したところ、、後になって判明した」として、ミサイルにて撃墜したことを認め謝罪した、という経緯がありました。

今回の録音テープのリークにより、ウクライナ国民や政府は当然激怒。反響は撃墜された航空機に自国民が搭乗していた関係国は勿論のこと、イラン国内でも反響を呼んでいます。

これに対し、イラン政府はこうしたリークがウクライナとの真相解明のための情報共有・協力を困難にする、との理由によりウクライナとの捜査協力を停止した模様です。

私見ながら、これがイランのいけないところ。イランは中東にあってアラブとは一線を画し、米国や西側に一歩も退かない「ぶれない独自路線」をとる誇り高い国である、と私は敬意を持っています。しかし、「ぶれない独自路線」が時として、とんでもなく独善的にして陰謀に満ちた「闇の側面」を見せます。今回の件もそれに当たります。国家としての大失態を隠蔽しようとし、関係国に対して信じられない独善的な態度をとる。そして、為政者であるイスラム法学者ハメネイ師は神の名において自国の正義を語る。これはいけません。正義を語るなら、真実に対して誠実に対応しなければ偽善になります。(※これは核開発でも同じことが言えます。明らかに平和利用の原子力発電としてではなく、核兵器開発をしているから西側にそこを咎められる訳です。)
少なくともウクライナや自国民が犠牲者となった関係国に対しては、イランは真摯に誠実に対応すべきです。

(了)

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2020/01/17

イランの闇(核と工作)を理解して付き合う

○ イランは日本のエネルギー依存度90%を占める湾岸地域のチョークポイントを抑える国。日本としては上手く付き合わねばなりません。ただし、付き合う上で理解しておく必要があるイランの闇の部分についてお話しします。丁度、米国との間ではなり緊張している今、改めてアチコチでその端緒が見えています。
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FILE - In this photo released by the Atomic Energy Organization of Iran, technicians work at the Arak heavy water reactor's secondary circuit as officials and media visit the site, near Arak., Dec. 23, 2019.
(2020年1月15日付VOA記事「Israel Warns Iran is Closer to Nuclear Bomb」より)

① イラン: 核開発の闇
   米国が2018年5月にイラン核合意から離脱した原因の一つがこれ。イランは、米国を始め英仏独などとの核合意を表明上守っていたが、それは「核弾頭に使える核燃料の高濃縮はもうしない」という部分であって、濃縮技術や施設は事実上維持増進できたし弾道ミサイルの開発は続けた。更に、後述する周辺国のシーア派を使った工作による地域的脅威の渦となっている。米国が核合意から離脱するや、高濃度濃縮を再開し、最新の情報では年内には核弾頭化できる模様(※1)。すぐに核開発が再開できたということは、米国が懸念したようにアンダーでは核開発を続けていたことの証左と言える。

   イランが核開発に力を入れる理由は、周辺国との宗教(宗派)的及び民族的な孤立感から専ら自国の防衛を目的とした身の安全の確証が欲しいものと推察するが、その手段において甚だ脅威となっている。核開発の場合は、決定的報復手段の確保が自国に仇なす国々への抑止力となることを企図しているものと推察する。しかし、自国はそのつもりでも、周辺国にとっては危険極まりない存在となる。

   イランにとっては自己防衛が目的であっても、それに耐えられない脅威感を感じる国がある。「イランの核保有を絶対に許さない、核保有に至る前に開発拠点を叩き潰す!」と豪語し、本当に実行する国が存在する。それがイスラエル。イスラエルは、これまでもイランのみならず周辺国に対し、その国の核開発拠点への先制攻撃で現実に潰してきた。つい最近も、イスラエルのネタニエフ大統領は「イランは年内にも核保有に至る確証あり。核保有の前に叩き潰す。」と声明を発している(※1)。これが起きれば、新たな中東全体を巻き込む危機の始まりとなる。
(※1: 2020年1月15日付VOA記事「Israel Warns Iran is Closer to Nuclear Bomb」)

②  イラン: 周辺国への工作の闇
   米国をかばうつもりはないが、つい先日の2020年1月年頭の米軍によるイラン革命防衛隊スレイマニ司令官の無人機による攻撃・殺害の原因は、イランがシーア派過激派組織を使ってイラク、シリア、イエメン、レバノンにて各種工作を行い地域の脅威となっていることである。事実、これらの国々では長い間内戦となった。イエメンでは現在でも激しい内戦が続く。スレイマニ司令官は、その海外における特殊工作専任部隊コッズ部隊の司令官として辣腕を振るい、それらの国の市民の弾圧や米軍や米国人へのテロ行為をしていた。昨年末(2019年12月27日)にも米軍施設への攻撃により米軍人と米国人数名が死亡した事案も同司令官の命令によるもの。これが今回トランプ米大統領に作戦へのgoをかけさせた直接要因となったのだ。

   コッズ部隊の工作について、最近の報道でその一端がうかがえるものがあった。このスレイマニ司令官の死去に伴い、新たにコッズ部隊の司令官にイスマイル・カーニ氏が着任したのだが、この報が同氏の写真付きでアフガニスタンにも伝わった際にザワメキが起きた。アフガン政府が言うには、この男は数年前に在アフガンのイラン大使館の副大使の肩書を詐称してアフガン国内のバーミヤン州をあちこち視察した模様。カーニ氏は実はコッズ部隊の副司令官だったらしい。イラク・シリア・イエメン等の主要作戦はスレイマニ司令官が、アフガン等のその他地域はカーニ副司令官が担当していたという。副大使と詐称してのアフガン視察では、バーミヤン州などのアフガン内でシーア派住民の多い地域をつぶさに見て回り、どうやらこの地域でシーア派民兵要員の募集やアフガン内での工作準備をしていたと見られる。これに不信感を持ってアフガン政府が調査しているとの報道(※2)があった。
(※2: 2020年1月9日付VOA記事「Afghan Officials: Iran’s New Quds Chief Likely Faked Identity in 2018」)

   イランが周辺国に対してこうした工作をするのも、核開発の項で述べたように、専ら自国の防衛が目的であり、周辺国へのシーア派民兵等による工作については、自国周辺に自国防衛のためのバッファゾーンを築きたいものと推察される。

◯ イランとの付き合い方
   日本は、湾岸地域にエネルギーの依存度が高いため、付き合わないようにするということは不可能。こうした闇の要因を抱える国であるということを十分に認識して付き合わねばならない。

   米国には、この現体制を突き崩し、イランを親米民主主義国にすべきだと主張するバカがいる。しかし、この宗教的絶対王制だからこそイランは瓦解せずにまとまっていることを理解すべきである。およそアラブの春で圧政を敷いていた指導者が倒された国は、現在混迷の中にいるのが実情。耳障りの良い「アラブの春」とか「民主化」の現在の姿は、タガが外れた「パンドラの箱」だったというのが現実である。

   イランは、イラン革命により王制を破棄して現在のイスラム共和制になり、イスラム教シーア派の教義に基づく政権運営体制になっている。選挙による民主主義的な政治体制になっているものの、現実はシーア派のイスラム法学者、最高指導者ハメネイ師をトップに頂き、最終的にハメネイ師の決定が全てを制する態勢。いわば宗教的独裁体制。市民の「自由」などは当然制約される。そこに宗教・宗派的な理屈はあるのだろうが、時として国際情勢の現実論は通用しない。ロウハニ大統領はまさにその狭間で奮闘している。時としてイラン政府は自国の市民に対しても弾圧するが、国民が選んだ体制である。国内に内戦もなく、国家としてまとまっていることは間違いない。

   今のイランの姿を前提に、うまく付き合うしかない。海自艦艇及び哨戒機の中東派遣も、日本関連船舶の安全を確保することを目的として、米国の要求に応じながらもイランの理解を得て派遣している。今回の派遣への国内的な不協和音もあるかもしれないが、まさに現実的な策であったと評価する。

   (了)

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2020/01/13

イランの反政府デモで調子に乗るべからず

 ウクライナ旅客機を誤って撃墜したことを発表したイラン政府に対し、当初全面否定していたことも災いして、イランの市民が猛反発し反政府デモが各地で起きている。昨年11月の石油価格急騰の際の反政府デモと同様、明確に反イラン革命防衛隊、反現政権、反ハメネイ師のスローガンさえ出ている模様。トランプ米大統領はこれを好機と捉え、デモ参加者を支持しラブコールするとともに、イラン政府にはデモへの弾圧を牽制した。
 (※ 2020年1月12日付VOA記事「New Protests Erupt in Iran Аfter Military Admits Shooting Down Plane」より。下の写真も本記事より。)
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Image Description A picture taken in Tehran on Jan. 12, 2020, shows local newspapers carrying headlines such as: 'National Mourning', 'Apologize, Resign', 'Unforgivable', 'Great Disaster'... concerning the downed Ukrainian jetliner last week.

 私見ながら、以下3点を危惧しています。
① 反政府デモが起きること自体は健全であり民主主義的には吉報だが、国際情勢の現実主義から見ればタイミング的にイラン崩壊の危険信号。
② トランプ米大統領のデモ支持やイラン政府の弾圧牽制の発言は蛇足。
③ 米国は調子に乗って、交渉が可能な穏健派ロウハニ大統領を倒すべからず。現実を知らない宗派的ナショナリズムで凝り固まった強硬派が政権についたらイラン情勢は益々混迷する。更にイラン国内の内戦化を招く。

 特に、③について心配ですね。
 米国政府がこの機に乗じて、反政府デモ側を殊更に支援し始め、CIAなどの工作なども使って政権打倒や国家の転覆を企図するなんてことにならないように国際社会に注視してもらいたいところです。既に、トランプ米大統領だけならまだしも、ポンペイオ国務長官やブライアン・フック米国政府イラン政策特別代表がtwitterで調子に乗ったトランプと同様のコメントを載せているのが忌々しい。一国の政府がそういう頭の悪いコメントを発するべきではない。それが米国の現政権のレベルの低さ品性のなさを露呈していると気づいていないらしい。
(※ トランプ大統領のtwitter:https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1216356280933273600?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1216356280933273600&ref_url=https%3A%2F%2Fwww.voanews.com%2Fmiddle-east%2Fvoa-news-iran%2Fnew-protests-erupt-iran-after-military-admits-shooting-down-plane
   ポンペイオ国務長官のtwitter: https://twitter.com/SecPompeo/status/1216064377444618240?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1216064377444618240&ref_url=https%3A%2F%2Fwww.voanews.com%2Fmiddle-east%2Fvoa-news-iran%2Ftrump-tweets-support-farsi-iranian-protesters
   ブライアン・フックのtwitter: https://twitter.com/statedept/status/1202384022095245312 )

 米国内に、この機に乗じて現政権を打倒し、米国企業が参入し易い親米民主政権の樹立を夢見るバカがいるが、イラクやアフガンを見るべし。絶対に米国が望むような親米民主主義国家なんて実現しないのが分からないらしい。特に、反米を国是として教育されてきたイランだよ。シーア派過激組織は瓦解せず、残党が跋扈することになるのが落ち。更なる中東の混迷を招くだけ。特に、石油街道のチョークポイントを握るイランが政情不安になったら国際経済に百害あって一利なし。

(了)

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2020/01/09

トランプそう来たか!オリーブの枝で緊迫回避

いやービックリ。そう来たか。トランプ米大統領は、2020年1月8日夕にイランによるイラク駐留米軍基地に対する報復攻撃を受けて演説し、新たな制裁について言及すれどイランへの軍事手段による報復は選ばず、むしろイランに対して共生の道の可能性を提示するなど、戦争回避かつ緊張緩和の姿勢を見せました。
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WHITE HOUSE - “Iran appears to be standing down,” U.S. President Donald Trump said in an address to the nation the morning after more than a dozen ballistic missiles targeted two Iraqi air bases housing U.S. troops.
(2020年1月9日付VOA記事「Trump: Iran 'Appears to Be Standing Down'」より)

トランプさんらしくない見事な大人の態度と懐の深さ、見事な米大統領ぶりにビックリして腰が抜けました。
やはり決め手は、イランの報復攻撃で米国民の人的被害が出なかったことでしたね。
イラン側も熟慮した上での限定的な報復攻撃だったようです。攻撃の兆候を早期に警戒監視態勢が捉え、着弾前に退避したから被害がなかったのだ、という説明でした。本当のところは不明です。一部の情報では、イランはイラク政府に弾道ミサイル攻撃を予め情報提供した、とか。いわゆる「常にback door は開けておく」という両政府の高官(deep throat)間の情報提供があったのかも知れません。

いやー、everybody happyなまま推移してもらいたいところですね。イラン国民には当初報復攻撃で80名もの米軍人が死亡した旨の報道があったようですが、ネット等を通じて米大統領の演説なども伝わりますから、どうなってんだ?というぶり返しがないよう、イラン政府はうまく国内のガバナンスを維持してもらいたいところです。

(了)


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2020/01/08

米・イラン 際限なき報復ではなく制限報復か

ついにイランがイラク駐留米軍に対して1月7日に直接の報復攻撃をしました。やりましたね。
一部で、これが双方の全面的な戦争=下手したら第3次世界大戦の始まりか?と懸念する向きがあるようですが……。
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An image grab from video obtained from the state-run Iran Press news agency allegedly shows rockets launched by Iran against US military bases in in Iraq on Jan. 8, 2020.
(2020年1月8日VOA記事「In Photos: Iran Launches Missiles at US Forces Based in Iraq」より)

ただし、1月8日午後1時の段階で報じられているところでは、米側に死傷者なし。

米国が=トランプが、どう受け止めるかが結果を大きく分けますが、決め手は米国民の人的損害です。

恐らく、イランはスレイマニ司令官殺害への報復にあたり、弾道ミサイルにて精密に米軍基地ながら人的被害が出ないように攻撃したものと思われます。イラン政府は、マッチポンプながら自国民を「アメリカに死を!」と国民の報復心を焚きつけていたので、国家としての対面上、何らかの直接攻撃をするだろうと思われましたが、幸いなことに頭に血の上った思考ではなく、コントロールされた限定的な方法を取ったようです。いやー良かった。

対する米国も、人的損害はないので、同様の報復攻撃はすると思いますが、人的被害が出ないようにコントロールされたものになるでしょう。
しかし、トランプだからなぁ……心配は残りますし、イランのロウハニ大統領は計算できる男ながら最高指導者ハメネイ師が頭が硬いからなぁ……やはり心配は残ります。いくらなんでも大丈夫とは思いますが。

要するに、双方の際限なき報復戦の始まりではなく、制限された制御下の報復になろうと思います。良かった良かった。でも大丈夫かな?トランプ…。


(了)


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