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2019/12/26

習発言「香港よ、マカオは一国二制度の成功モデル」

 2019年12月20日、中国の習主席はマカオ特別行政区の20周年記念式典にて「マカオは一国二制度の成功モデル。制度導入が不十分な香港の模範となる。」と賞賛した(※)。この発言に香港は反発。更に総統選挙を控える台湾の反発を招き、総統選挙にも親中派に向い風、反中独立派に追い風となろう。
(※ 2019年12月24日付VOA記事「Analysts: Xi's Praise of Loyal Macau Won’t Appeal to Hong Kong, Taiwan」)

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Chinese President Xi Jinping, front left, and his wife Peng Liyuan, front right, wave after arriving at Macao Airport, Dec. 18, 2019.((※ 2019年12月24日付VOA記事「Analysts: Xi's Praise of Loyal Macau Won’t Appeal to Hong Kong, Taiwan」より)

<状況>
  習首席はマカオ特別行政区の20周年式典に出席、「“The people in Macau have whole-heartedly embraced the ‘one country, two systems.’ Let’s recognize that the ‘one country, two systems’ is the best system for Hong Kong [sic] to maintain its long-term prosperity and stability,” マカオ市民は一国二制度について心温かく迎い入れてくれた。香港にとっても、一国二制度は長期的に安定し繁栄しうる最高のシステムであることを認めよう。」と述べた。

<私見ながら>
◯ マカオは一国二制度の優等生か?
  確かに、マカオは習主席の目から見ればそうかも知れません。香港と同様、以前は他国の植民地とされ、後に中国に返還されたものの、香港とはだいぶ違う形で発展を遂げました。マカオはポルトガル領時代から東洋のラスベガスと称されるようなカジノの街として発展し、ポルトガル領時代から親中派の実業家何賢(別名スタンリー・ホー)がマカオのカジノ王・影の総督だったこともあり、返還前から中国との関係は比較的親密で、返還後も何賢の息子が初代行政長官となり、中国政府とは密接に協力しつつ一国二制度を実践してきました。裕福になった中国から非常に沢山の富裕層がカジノ客として訪れて金を落とし、中国資本が相当入り、半ば中国直轄領的な国営のカジノ街になっています。(もちろんカジノですから、米国などの外国資本も相当入っています。)香港と同様「特別行政区」ながら、中国本国に飲み込まれた形です。名目GDPは非常に高く(香港より)、カジノで潤う人々とそうでない人々の貧富の差は著しい状況。中国福建省などからの新移民も多く、香港のような市民の自己主張やデモはない代わりに、市民の顔が見えない街。文字通り中国に飲み込まれつつあります。
  香港の人々から見れば、これが一国二制度?だとしたら、香港にとってちっとも魅力的ではない一国二制度であり、別にマカオになりたいとか成功例とは思っていないのです。何より「制度」そのものについて、返還前の自由や民主的な統治体制を引き続き認めることだったはずなのです。
  習主席の発言は香港人には全くアピールしないでしょう。

◯ 台湾総統選挙にも影響あり
  今回の習主席発言は、現職の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統にとって何よりの追い風でしょうね。この発言により、台湾国民は一段と中国への警戒感を強めることになるでしょう。投票日は正月明け、もう目の前に総統選挙が迫っており、この最後の追い込みの時期にこの発言ですから、現職の蔡英文総統(反中国派)には何よりのクリスマスプレゼントだったでしょう。対抗馬の国民党の韓国瑜(ハン・グオユー)(親中派)氏には最悪の向い風。習主席にしてみれば、マカオを引き合いに出して香港の方向性を善導したつもりが、期せずして敵に塩を送った形ではないでしょうか。

(了)

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2019/12/17

首が繋がった香港長官は’切りしろ’


2019年12月16日、香港の林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官は、年次報告のため中国の李克強首相と会談。香港情勢を報告し指導を受けたが、李首相は林長官と香港政庁の施政に引き続き支持を表明、「一国二制度」についても変化はなしと強調した模様。一部で更迭が囁かれていた林長官は首が繋がった形となった。

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In this photo provided by Hong Kong Government Information ServicesChinese President Xi Jinping, right, speaks with Hong Kong Chief Executive Carrie Lam, during their meeting, in Beijing, China, Dec. 16, 2019.
BEIJING

私見ながら、これは首が繋がったのではなく執行猶予、やがて来る情勢緊迫の際の大弾圧・鎮圧の際に全ての責任を背負わされる「切りしろ」と推察します。いずれ香港情勢が民主化デモにより更に緊迫化した際に、国家の危急に際した緊急措置として中国政府が香港政庁をオーバーライドし、治安回復の大義名分の下で人民解放軍による徹底的な暴徒鎮圧、戒厳令が敷かれ、香港市民は踏み絵にかけられ、民主派は一掃されるでしょう。まさにそのキッカケに、首を切らずに残した林長官の歴史的役割があるのです。香港長官による中国政府への介入要請です。まさにそのために残したのです。歴史的にもこういう人って何名もいましたよ。1950年代のチェコやハンガリーで、民衆のデモをソ連軍の軍事介入で鎮圧するキッカケにしたのは、チェコやハンガリー政府によるソビエトへの介入要請でした。もっとも、ソ連は介入要請があったというものの、本当に介入要請があったのかは定かに非ず。そういう役割のために「切りしろ」として生かしておく人っているわけです。

報道は表面を伝えますが、背景や思惑を様々な角度から論評するところにジャーナリズムの真価があります。各紙の真価が問われます。そのツッコミや関心の高さが香港の民主派への最大のサポートになると思います。

(了)

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2019/12/02

香港デモよ落ち着け、中国の大弾圧に注意せよ

香港デモよ落ち着け、中国の大弾圧に注意せよ

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A protester wearing a mask depicting U.S. President Donald Trump gestures during a "March of Gratitude to the US" event near the U.S. Consulate in Hong Kong, China December 1, 2019. (2019年12月1日付VOA記事「China Retaliates After US Legislation Supports Hong Kong Pro-Democracy Movement」より)

  2019年11月24日(日)の香港の選挙の結果、あに図らんや民主派の完全勝利。大学に立て籠った学生には苦い思い出になったかもしれないが、選挙において大多数の香港市民は民主派を支持した、という形で中国政府にサイレントマジョリティの力を見せつける結果となりました。これが民主選挙の恐ろしさだよ、共産党一党独裁の中国よ。中国政府にとってみれば、さぞや憤懣やるかたないことでしょう。

  しかしながら、選挙結果の出た週末、11月29日金曜のデモあたりからデモの傾向はまたも一部で過激化。土日のデモではデモ参加者も増え、米国の「香港人権・民主主義法」へのトランプ大統領の署名へのラブコールから、さながら親米デモ。「Make HongKong great again!」とトランプ大統領のスローガンを使う始末。過激化した若者が火炎ビンを投げ、対する香港警察も、催涙弾をふんだんに使用。

  ちょっと待って香港、選挙でサイレントマジョリティの力を見せたまでは良かったが、デモの過激化や親米デモ化はまずい。落ち着こう。さもないと、中国政府の大弾圧エックスデーにgoサインをかけてしまう。

  私見ながら、一番注意すべきは中国政府が読みが大外れして焦っていること。焦るどころか狼狽しています。香港の選挙結果も大ハズレ、更に追い討ちをかけてトランプ米大統領が香港人権・民主主義法を是認したことで、中国政府は激怒の前にさぞや狼狽したことでしょう。折しも米中通商交渉も詰めの段階。中国政府の読みとしては、トランプ大統領は交渉妥結したいわけだから、よもや中国の意に反することはすまいと踏んでいたでしょう。中国政府は、米国の決定を知るや、すぐに在中国米国大使を呼びつけて詰問の上、「内政干渉」への対抗措置を取る旨厳しく伝達しています。対抗措置といっても、中々妙案もないらしく、12月2日現在では米海軍艦艇の中国への寄港を禁じたくらいでしょうか。大した対抗措置ではなく、冷静さを失っています。

  中国政府にとって主たる問題は、米国のこの法律による「内政干渉」よりも、5大要求を訴える香港デモがあろうことか星条旗を振って親米デモ化していることでしょうね。中国政府にとって、これはもはや許せない状況です。ガバナンスの問題です。今の香港の状況を黙認していると、もはや中国本土にも燎原の火が付いてしまう。もはや死活的国益が侵されつつある。勿論このニュースは本土に流れません。とはいうものの、ネット社会の10億もの中国人民にもはや隠し通せるのか、時間の問題でしょう。

  今回のデモで、一部過激化した学生?が警察隊に火炎ビンを投げたり、中国政府寄りとみられるレストランを焼き討ちするなどの行為があったようです。対する香港警察は相変わらずの催涙弾対応。一部では警察側も過激に警察力という名の暴力を振るっているでしょうが、中国政府から見ると生温い対応です。狼狽しているだけに、案外簡単なキッカケでgoをかけてしまうかも。既に大弾圧の準備は出来ている。このデモとほぼ同時期に中国政府は軍と警察隊に訓練をさせているのです。

  だからこそ言う。香港デモよ、落ち着こう。貴兄らの趣旨は警察との抗争や親米アピールじゃないはずだ。調子に乗りすぎると中国政府に間違ったシグナルを送ってしまうことになる。奴らに「もはや香港警察には任せられない」「デモ参加者ではなくテロリストだ」と言わせる様な事はすべきでない。林鄭月娥行政長官は貴兄らの要求に全く譲歩していないかもしれないが、どうせ彼女はそのうち中国政府からクビにされよう。要求が通らずとも、国際世論は追い風なのだからこそ、過激にならず冷静に、民主的手段で運動すべきだ。ここは我慢しよう。

(了)


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2019/11/21

香港、大学占拠は風前の灯だが戦略的退却だ!


  2019年11月21日の時点で、香港の民主化デモは、大学占拠の態勢が香港警察に包囲され、大学構内にいた学生ら反対派のほとんどが投降か逮捕され、残る徹底抗戦組は200名足らず、今や風前の灯火状態になりました。(※1)
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  私見ながら、これは決して民主化運動の哀れな末路ではなく、長い戦いの一区切り、一局面であり、戦略的退却ですよ。大学占拠により、一時的に「徹底抗戦だ!」と、高揚感も上がったかもしれないものの、状況を見て諦めたわけですよ。このまま籠城していても勝ち目はないな、と。しかも、香港警察なので未成年者は逮捕せずに身柄を確認したらリリースしてくれていたし。逮捕されてもまだ、香港警察だからましですよ。籠城戦を止めて、ここはひとまず退こう、と。元々組織的な防御をしていたわけじゃないんだから、それぞれの考えで三々五々に抜けていった。それはここで終わりにするのではなく、「次のために」。だから、戦略的退却なんですよ。恥でも何でもない。これはこれでいいんです。にも関わらず、日本のマスコミの報道では、この大学占拠の攻防戦の状況を報じる際に、あたかも民主化運動の惨敗のような表現をするのが我慢なりません。本質が分かってない。
  私は、三々五々に撤退してくれて本当に良かったと思っています。もし、彼らが徹底抗戦策をとって、ほとんどの者が大学に立てこもり、警察と正面衝突をしていたらどうなるか?TVに出ていたように、事前に準備した火炎瓶やボウガンを使って警察官を殺傷していたら、・・・・。当然警察は数にものを言わせて徹底的につぶしにかかるでしょう。死人も出たでしょう。そして、大学占拠側が首尾よく防御戦闘ができてしまったら、警察が退却してしまったら、・・・もっとずっと厄介な結末が待っていました。中国政府が香港警察に見切りをつけて、介入。人民解放軍の圧倒的な制圧、鎮圧。そして次に来るのは香港全土に治安回復と称して戒厳令を敷く。…そんなことになったらますます大変。

  香港の民主化運動は、特に、(逮捕者を中国本土へ送還することを認める香港政庁の決定に対する反対運動を端緒とした)2019年6月以降のデモ戦術は、誠にもって神出鬼没にして柔軟機敏。彼らは数年前の雨傘革命の挫折を教訓にデモ戦術を改善しました。雨傘革命の失敗はバリケードを築き拠点を占拠して長期戦をしようとしたこと。そこで彼らは、リーダーや固定的な組織を持たずに、そこかと思えばまたあちらというゲリラ的デモを敢行。AIを駆使して個人を特定して取り締まろうとする中国政府や香港政庁をケムに巻いて、散々脅されてもあちこちでデモを敢行して勇敢に戦ってきました。香港警察はまさに翻弄されていました。

  彼らのすばしこいデモ戦術の勝因は、神出鬼没・柔軟機敏な流動的な戦いです。言ってみれば、イラクで地上最強の米軍を苦しめたイラクの反米武装グループの「非対称戦」です。正規軍と「通常戦」をせず、ヒットアンドアウェイで戦う弱者の戦法。勿論デモですから様相は全く違いますよ。しかし正規軍が組織的戦力を発揮して戦う戦い方に対して、相手と真面目に戦わずに、神出鬼没に政治的主張をPRしては衆参離合するというデモ戦術だった訳なので、「非対称戦」であることには間違いない。2019年の香港デモも香港警察と通常戦闘を避けて神出鬼没に戦ってきました。にも関わらず、その彼らが結局は大学占拠という固定的かつ組織的な通常戦闘をしようとした。通常戦闘なら正規の準軍隊である警察は組織的にその力を発揮します。世界の軍隊が学ぶ「戦術」ではこうした組織的な通常戦闘の戦理を「優勝劣敗」といいます。組織的戦闘力の優勢なものが勝ち、劣るものは敗れる。但し、それは「組織的な通常戦闘をしたら」の話。だから、組織的に戦おうとせず、デモで政治的主張をPRしたらさっさと解散していいんですよ。戦闘力で戦うのではなくて、世界の報道に載せてもらって、TVやYoutubeで世界の皆さんに見てもらって、国際的な支持や賛同や声援・応援を得られればその方がいいんですよ。こんなところで腹を切る必要はないんですから。

  確かに、大学占拠は風前の灯ですが、香港民主化デモそのものには追い風も吹き始めました。
在香港英国領事館に勤務していた香港人の方が、中国の秘密警察に拉致・監禁・拷問を受けて、民主化デモに英国がバックにいることや民主化運動に加担している中国本土の者について詰問された、というニュースが出てきました。2019年10月下旬、英国外務省は在英中国大使に対して抗議しています。(※2)
また、2019年11月19日、米国上院議会で香港の人権を及び民主化運動を支持する「香港の人権及び民主化の法案」が可決しました。(※3)

  香港の皆さん、こうした追い風も吹いていますよ。今回の一時的な退却をトラウマにすることなく、早く立ち直ってください。大学占拠のような固定的組織的な戦術はもうやめて、また神出鬼没型で流動的にデモを続けてもらいたいものです。

※1: VOA記事「Hong Kong Protesters Increasingly Desperate as Campus Standoff Continues」(November 19, 2019 08:23 AM)より
※2: VOA記事「Ex-British Consulate Staff Says Chinese Police Tortured Him」(November 20, 2019 03:38 PM)より
※3: VOA記事「Senate Passes Bill to Support Human Rights in Hong Kong」(November 19, 2019 08:12 PM)より

(了)

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2019/11/19

香港デモへの包囲・掃討戦始まる

香港デモへの包囲・掃討戦始まる

やはり始まりました。香港の民主化デモが占拠している大学の一つ、香港中心部にある香港工科大学にて、遂に警察による包囲・掃討作戦が開始されました。

VOA記事「Student Protesters Trapped at Besieged Hong Kong Campus」(November 18, 2019 09:00 AM)及び「Polytechnic University President Urges Hong Kong Protesters to Leave」(Updated November 18, 2019 04:00 PM)は、刻々と戦況を報じています。

11月18日の未明、既に香港工科大学の包囲環を形成した香港警察は、猫の子一匹逃げ出せないようにしておいて投降を呼びかけました。一部の学生は投降に応じ、また一部は包囲を破って逃走を試みて警察に捕らえられました。じ後、じわじわと包囲環を圧縮。一部の強硬派の学生は火炎瓶や割ったレンガ等を警察に投げて抵抗。更に過激に、大学構内のインフラの破壊などで対抗。しかし、徐々に警察の包囲環が縮まり、抵抗して逮捕された学生らが後ろ手をプラスチック紐で縛られて報道陣の前を連行されていく。もはや、この戦いに未来は見えません。

私見ながら、もはや大学占拠側に勝ち目はありません。香港警察は、デモが占拠している数個の大学のうち、一番広報効果の高い香港工科大学を狙って、報道下の包囲・掃討戦を香港の市民に見せています。香港市民のほとんどが、この光景を固唾を飲んで見入り、そして失望感を感じることでしょう。香港政庁と警察は、中国政府や人民解放軍に制圧される前に、一部の自治魂、一部の香港魂を持って、何とか香港人の手で事態を収拾しようと試みているものと思います。だったら、その方がいい。デモはまた違った手段・方法でやれるから、ここは一旦平和裡に引いた方がいい。相手が香港警察のうちに。

(了)

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