トランプ政権の「コロナは武漢研究所からの流出」説は中国のワナかも?
トランプ米大統領は、コロナウイルスが中国の武漢のウイルス研究所から流出したことがコロナ禍の起源だ、重要な証拠を見た、と主張。ポンペイオ国務長官も同様の発言の後、最近ではトーンダウン。私見ながら、これは中国がトランプの権威を失墜させ大統領選落選させるために仕掛けた巧妙なワナでなないか?というお話。

中国武漢研究所のコロナ研究第一人者シー・ジェンリー(石正麗)女史(インドのwion紙 2020年5月6日付 「China's 'bat woman' Shi Zhengli goes missing」より)
内外の関連情報を一通り読んだうえで、概略を要約すると次のような状況です。
<トランプ米大統領の「コロナ武漢研究所流出説」>
2020年5月6日(水)、米国のトランプ大統領は、「これは(現在のコロナ禍は)真珠湾攻撃よりも、世界貿易センターへのテロ攻撃(9.11)よりずっと悪い。これまでこんな攻撃はなかった。発生源で止めねばならなかったのに、中国はそうしなかった。」と語り、「証拠を見たのか?」との記者の問いに対して「見た」と答えた。また、ポンペイオ国務長官は当初「武漢研究所から流出したことを示す重大な証拠がある」旨、かなり強気の発言をした。その後、どういうわけか「確実ではない」とトーンダウンした。
これに対し、中国政府は「それなら証拠を示せ」と猛烈に反発。
<武漢研究所流出説の根拠>
米国側の武漢研究所流出説の根拠は、WHO顧問のジェイミー・メツル(Jamie Metzl)氏の「新型コロナウイルスの発祥は、武漢の海鮮市場ではなく、武漢研究所(※)の可能性あり」という見解が論理的な根拠のようだ。(参照:米National Review 誌 2020年5月1日付「WHO Adviser Says It’s ‘Likely’ Coronavirus Leaked from Lab, Slams Trump Admin」ほか。)
同氏は、科学者らしく、具体的なfactを並べて、そこからのある程度精度の高い論理的帰結として、武漢研究所からの流出の可能性が高い、との結論づけている。(※武漢には武漢研究所の名の2つの研究所があり、武漢ウイルス学研究所と武漢疾病予防研究所のうち、ここでは前者を指す。)
・ 2019年12月の武漢の肺炎の多発に際し、詳細な調査もないまま武漢の海鮮市場が発祥地とされた。2020年1月1日に閉鎖され、消毒された。
・ しかし、数々の証拠から、実は新型コロナが武漢海鮮市場が発祥地ではないと言える。新型コロナはウイルスの検体からコウモリ由来であると分かっているが、この時期に市場でコウモリは売られていなかった。初期の感染者の1/3は海鮮市場とは何ら関係性がなかった。
・ 海鮮市場からそう離れていない場所に武漢研究所が所在。この研究所で、SARSウイルスの研究が行われ、SARSウイルスの起源と言われるキクガシラコウモリのいる遠隔地の洞窟にてコウモリを採取、コウモリの持つコロナウイルスを生きた子豚に注入するなど各種の実験を実施。学術的論文も多数ある。
・ 2018年1月、米国大使館の要員が同研究所を視察したところ、ヒトへの受容体と結びつくかなり危険な種のコロナウイルスを扱っており、研究として必要があるものの、ウイルスを管理する研究所としての管理体制が杜撰であり、要員の数も技術も不足しており、安全性を深く懸念する旨、米本国に公電を送っていた。
・ 上記に関連して、中国のウイルスを扱う研究所の安全性は一般的に低いことが指摘されており、北京の研究所にて研究中のSARSウイルスの流出し数名が感染し1名死者が出た事例がある。
・ 武漢研究所では、研究中にコウモリの血液を浴びたり、洞窟にてコウモリに放尿され、感染の可能性から研究者が隔離された事例があった。
・ 武漢海鮮市場の閉鎖と前後して、中国南華大学の研究者が、武漢研究所が感染源である旨の論文を発表。じ後、撤回された。
・ 一連のコロナ対応で、中国政府は次のような数々の組織的隠蔽をしている。
* 2019年12月下旬、武漢の謎の肺炎(新型コロナウイルス)が問題化し始めた時期に、インターネット上のニュースや書き込みに対する検閲を始め、謎の肺炎の感染拡大関連の記述を消去。
* 2020年1月1日、調査せずに武漢海鮮市場を閉鎖、消毒。
* 同1月、遺伝子関連企業に、ウイルス検体をすべて破壊するよう命令。
* 同1月、研究機関に対し謎の肺炎関連の情報の扱いを禁止、所持している検体を提出するか破壊するよう命令。
* 同1月、武漢の地方政府が感染発生を承知して以降、WHOに対する報告を4日間遅延。更に、WHO調査チームの武漢入りを3週間差し止めるとともに、アクセスを制限。また、調査チームの調査以前に海鮮市場は既に消毒されてしまったため、感染源であったかどうか調査不能となる。
* 同1月、上海の研究機関がウイルスの遺伝子データを海外と共有したところ、同研究機関を閉鎖。
* 同1月、国家衛生健康委員会は、ヒトヒト感染の可能性について論じ、感染拡大のリスクが高いと考えてコロナ対応について文書にまとめたところ、内部用、非公表として封印。
* 同文書の封印翌日、中国疾病管理予防センター長は国営テレビで「ヒトヒト感染のリスク低」と発表。WHOにもその趣旨で報告。
* 2月、新型コロナの発生源に関する発表は許可制となる。また、許可なく政府の好ましくない報告をする医師が罰せられていることを国営メディアが報じ、医療従事者の感染疑いやヒトヒト感染が起きている可能性について、医療関係者間で事実上の緘口令が引かれた形となる。
* 3月12日、中国外務省スポークスマンは米軍が意図的に新型コロナを武漢に持ち込んだと主張。
* 3月の時点で、 12月や1月に症例や感染拡大の危機を報告していた医師や記者らの音信が途絶える。
* 3月、米国メディアのNYタイムズ、ウォールストリートジャーナル、ワシントンポストの米国人の追放を発表。
* 4月、武漢研究所は2019年1月の米国大使館の要員の訪問について記したプレスリリースを削除。
* 4月24日、米国紙NYタイムズが以下を報道。新型コロナ関連のEUの報告書に「中国政府は感染の世界的拡大についての中国への非難をそらすため、儀情報を世界に流している」旨の記述を、中国政府がEU高官に圧力をかけて削除させた。
これらの状況証拠的な内容に触れ、米国は米国の情報機関をはじめファイブアイズと言われる同盟国の情報機関の密接な連携により、武漢研究所が研究のため保管していたヒトヒト感染を容易に起こす新種のコロナウイルスを流出し、それを隠蔽するために様々な手を打った、ということの裏取りをしているものと見られる。
<米国が強気に出た後にトーンダウンした決定的証拠の推測>
さて、ここからはあくまで「私見ながら」の推測です。
上記の状況証拠では、決定打がない。あれだけ米国が強気に発言をした「何か」決定的な切り札があったはず。
それは、「コウモリ女(Bat Woman)」と研究者たちから称号を受けていた武漢研究所のコウモリ由来コロナウイルスやSARS研究の世界的権威であるシー・ジェンリー(石正麗)女史の存在である。特に、このシー女史は現在行方不明だが、一時期フランスへの亡命話があった。
決定的なのは、このシー女史が、SARSの研究で感染源と言われるキクガシラコウモリを採取し、研究所内で飼育し、ウイルスを抽出し、ヒトに感染させるインターフェイスとなる他の動物(哺乳類)にウイルス注入をする等の数々の動物実験をし、コウモリから他の動物を媒介してヒトへの感染に至るプロセスを研究していた張本人であり、謎の肺炎が武漢で問題化した時期に、自ら武漢研究所からの流出を疑って研究所の調査をしていることである。シー女史自らが米国の研究者仲間に調査したことを話している。
しかし、シー女史は武漢研究所からの流出ではないことを明言し、行方をくらましたのだ。ここでフランス亡命説が出た。更に、シー女史が研究所の機密文書を持ち出して米国へ亡命?との噂が飛んだ。中国内のネットで炎上、裏切り者・国賊とまで貶される誹謗中傷が出る。
ところが、事実関係のみ言うと、インドのメディアから、行方をくらましていたシー女史からのメールが中国国内のチャット内容として報道される。「(噂されているようなことについて)No matter how difficult things are, it shall never happen, ・・・We’ve done nothing wrong. With a strong belief in science, we will see the day when the clouds disperse and the sun shines.・・・(安否について)Everything is alright for my family and me, dear friends. 噂されているようなこと(亡命など)はいかなることがあっても起きない。・・・我々は何も間違ったことはしていない。科学に対する強い信念を胸に、我々はいずれ雲が晴れ太陽を見られるであろう。親愛なる友よ、安否については、家族と私は大丈夫である。」これは、5月2日付の中国政府系機関紙に掲載されたという意味深な報道。
(インドのwion紙 2020年5月6日付 「China's 'bat woman' Shi Zhengli goes missing」より)
私見ながら、米国の強気発言は、このシー女史の亡命について、在中国米国大使館或いは中国内の米国CIAエージェントの子飼いの情報屋に、ある程度精度の高い情報が米国側に届き、(例えば、本人と連絡が取れ、米国への亡命を本人が希望している、とか)まことしやかな裏取りもでき、この情報が米国トランプ大統領の元に届いたら、大統領は思わずニヤけただろう。そしてあの強気発言。そのあとに、「スミマセン、ガセネタでした」と分かる。そんなバカな話はなかろうと思われるだろうが、もしそんな話があるとすれば、この話を仕組んだのは中国政府に違いない。シー女史のチャット内容、意味深だと思わないだろうか。「私の家族と私は大丈夫」と言っているが、まず罪なき家族を中国政府に抑えられているのだろう。このチャット内容が中国の政府系の機関紙に載ったということは、シー女史は中国政府に軟禁されている。そして家族や親しい友人も抑えられている。自分の一人なら動きは軽いが、家族を重視する中国において、親兄弟親類縁者や親しい友人を含め、ガッチリと抑えられて、ここで自分一人で亡命などしようものなら中国に残る一族郎党はひどい目に会わされる。恐らく本人を含め軟禁されているに違いない。もはや国家に対する裏切りなどできようがないのだろう。軟禁されて、国家に対する忠誠を誓わされている。当面の間、外界から遮断され、音信不通にされていた。チャットすら軟禁下で命じられて書いただろうし、本人が書いていないかもしれない。中国の諜報機関は、この本人を抑えておいて、シー女史の「機密文書をもって米国への亡命」の話を米国側に持ちかける。他方、ネット上では中国の子飼いのネット聴衆を使って、シー女史の亡命かも?の話とそれに対するネット炎上を演出する。他方で諜報機関は慎重に亡命話を進める。所々、本人からの申し出であることを保障する本人情報や認証情報を本人から出させ、米側の情報機関を信用させるに足る確たる証拠も掴ませたであろう。今、youtubeに出ているが、トランプ大統領の以前側近だったバーノン元補佐官もまんまと引っかかって、中国武漢研究所のコロナ発祥説とシー女史の米国への亡命話をアップしてる。バーノン氏もまんまと騙されている。恐らく、この情報にて米国大統領府こぞって、中国に一杯食わされたのではないか?トランプ大統領にとって、中国武漢研究所がコロナウイルスの起源であったという世界的特ダネの決定打となるシー女史という生きる証拠は、もはや中国に取られてしまった。残るは状況証拠しかない。もう一つの確たる証拠となりえる研究所の調査だって、海鮮市場と同様、既に中国政府にキレイに消毒されているのではないか。証拠はもはや残っていない。
「コロナは中国の研究所から流出した!」と既に世界に吹聴してしまったトランプ大統領。そんな勝ち目のない喧嘩を仕掛けてしまったトランプ。中国は大統領選挙でトランプの負ける姿を想像して腹を抱えて笑っているのではなかろうか。
(了)


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中国武漢研究所のコロナ研究第一人者シー・ジェンリー(石正麗)女史(インドのwion紙 2020年5月6日付 「China's 'bat woman' Shi Zhengli goes missing」より)
内外の関連情報を一通り読んだうえで、概略を要約すると次のような状況です。
<トランプ米大統領の「コロナ武漢研究所流出説」>
2020年5月6日(水)、米国のトランプ大統領は、「これは(現在のコロナ禍は)真珠湾攻撃よりも、世界貿易センターへのテロ攻撃(9.11)よりずっと悪い。これまでこんな攻撃はなかった。発生源で止めねばならなかったのに、中国はそうしなかった。」と語り、「証拠を見たのか?」との記者の問いに対して「見た」と答えた。また、ポンペイオ国務長官は当初「武漢研究所から流出したことを示す重大な証拠がある」旨、かなり強気の発言をした。その後、どういうわけか「確実ではない」とトーンダウンした。
これに対し、中国政府は「それなら証拠を示せ」と猛烈に反発。
<武漢研究所流出説の根拠>
米国側の武漢研究所流出説の根拠は、WHO顧問のジェイミー・メツル(Jamie Metzl)氏の「新型コロナウイルスの発祥は、武漢の海鮮市場ではなく、武漢研究所(※)の可能性あり」という見解が論理的な根拠のようだ。(参照:米National Review 誌 2020年5月1日付「WHO Adviser Says It’s ‘Likely’ Coronavirus Leaked from Lab, Slams Trump Admin」ほか。)
同氏は、科学者らしく、具体的なfactを並べて、そこからのある程度精度の高い論理的帰結として、武漢研究所からの流出の可能性が高い、との結論づけている。(※武漢には武漢研究所の名の2つの研究所があり、武漢ウイルス学研究所と武漢疾病予防研究所のうち、ここでは前者を指す。)
・ 2019年12月の武漢の肺炎の多発に際し、詳細な調査もないまま武漢の海鮮市場が発祥地とされた。2020年1月1日に閉鎖され、消毒された。
・ しかし、数々の証拠から、実は新型コロナが武漢海鮮市場が発祥地ではないと言える。新型コロナはウイルスの検体からコウモリ由来であると分かっているが、この時期に市場でコウモリは売られていなかった。初期の感染者の1/3は海鮮市場とは何ら関係性がなかった。
・ 海鮮市場からそう離れていない場所に武漢研究所が所在。この研究所で、SARSウイルスの研究が行われ、SARSウイルスの起源と言われるキクガシラコウモリのいる遠隔地の洞窟にてコウモリを採取、コウモリの持つコロナウイルスを生きた子豚に注入するなど各種の実験を実施。学術的論文も多数ある。
・ 2018年1月、米国大使館の要員が同研究所を視察したところ、ヒトへの受容体と結びつくかなり危険な種のコロナウイルスを扱っており、研究として必要があるものの、ウイルスを管理する研究所としての管理体制が杜撰であり、要員の数も技術も不足しており、安全性を深く懸念する旨、米本国に公電を送っていた。
・ 上記に関連して、中国のウイルスを扱う研究所の安全性は一般的に低いことが指摘されており、北京の研究所にて研究中のSARSウイルスの流出し数名が感染し1名死者が出た事例がある。
・ 武漢研究所では、研究中にコウモリの血液を浴びたり、洞窟にてコウモリに放尿され、感染の可能性から研究者が隔離された事例があった。
・ 武漢海鮮市場の閉鎖と前後して、中国南華大学の研究者が、武漢研究所が感染源である旨の論文を発表。じ後、撤回された。
・ 一連のコロナ対応で、中国政府は次のような数々の組織的隠蔽をしている。
* 2019年12月下旬、武漢の謎の肺炎(新型コロナウイルス)が問題化し始めた時期に、インターネット上のニュースや書き込みに対する検閲を始め、謎の肺炎の感染拡大関連の記述を消去。
* 2020年1月1日、調査せずに武漢海鮮市場を閉鎖、消毒。
* 同1月、遺伝子関連企業に、ウイルス検体をすべて破壊するよう命令。
* 同1月、研究機関に対し謎の肺炎関連の情報の扱いを禁止、所持している検体を提出するか破壊するよう命令。
* 同1月、武漢の地方政府が感染発生を承知して以降、WHOに対する報告を4日間遅延。更に、WHO調査チームの武漢入りを3週間差し止めるとともに、アクセスを制限。また、調査チームの調査以前に海鮮市場は既に消毒されてしまったため、感染源であったかどうか調査不能となる。
* 同1月、上海の研究機関がウイルスの遺伝子データを海外と共有したところ、同研究機関を閉鎖。
* 同1月、国家衛生健康委員会は、ヒトヒト感染の可能性について論じ、感染拡大のリスクが高いと考えてコロナ対応について文書にまとめたところ、内部用、非公表として封印。
* 同文書の封印翌日、中国疾病管理予防センター長は国営テレビで「ヒトヒト感染のリスク低」と発表。WHOにもその趣旨で報告。
* 2月、新型コロナの発生源に関する発表は許可制となる。また、許可なく政府の好ましくない報告をする医師が罰せられていることを国営メディアが報じ、医療従事者の感染疑いやヒトヒト感染が起きている可能性について、医療関係者間で事実上の緘口令が引かれた形となる。
* 3月12日、中国外務省スポークスマンは米軍が意図的に新型コロナを武漢に持ち込んだと主張。
* 3月の時点で、 12月や1月に症例や感染拡大の危機を報告していた医師や記者らの音信が途絶える。
* 3月、米国メディアのNYタイムズ、ウォールストリートジャーナル、ワシントンポストの米国人の追放を発表。
* 4月、武漢研究所は2019年1月の米国大使館の要員の訪問について記したプレスリリースを削除。
* 4月24日、米国紙NYタイムズが以下を報道。新型コロナ関連のEUの報告書に「中国政府は感染の世界的拡大についての中国への非難をそらすため、儀情報を世界に流している」旨の記述を、中国政府がEU高官に圧力をかけて削除させた。
これらの状況証拠的な内容に触れ、米国は米国の情報機関をはじめファイブアイズと言われる同盟国の情報機関の密接な連携により、武漢研究所が研究のため保管していたヒトヒト感染を容易に起こす新種のコロナウイルスを流出し、それを隠蔽するために様々な手を打った、ということの裏取りをしているものと見られる。
<米国が強気に出た後にトーンダウンした決定的証拠の推測>
さて、ここからはあくまで「私見ながら」の推測です。
上記の状況証拠では、決定打がない。あれだけ米国が強気に発言をした「何か」決定的な切り札があったはず。
それは、「コウモリ女(Bat Woman)」と研究者たちから称号を受けていた武漢研究所のコウモリ由来コロナウイルスやSARS研究の世界的権威であるシー・ジェンリー(石正麗)女史の存在である。特に、このシー女史は現在行方不明だが、一時期フランスへの亡命話があった。
決定的なのは、このシー女史が、SARSの研究で感染源と言われるキクガシラコウモリを採取し、研究所内で飼育し、ウイルスを抽出し、ヒトに感染させるインターフェイスとなる他の動物(哺乳類)にウイルス注入をする等の数々の動物実験をし、コウモリから他の動物を媒介してヒトへの感染に至るプロセスを研究していた張本人であり、謎の肺炎が武漢で問題化した時期に、自ら武漢研究所からの流出を疑って研究所の調査をしていることである。シー女史自らが米国の研究者仲間に調査したことを話している。
しかし、シー女史は武漢研究所からの流出ではないことを明言し、行方をくらましたのだ。ここでフランス亡命説が出た。更に、シー女史が研究所の機密文書を持ち出して米国へ亡命?との噂が飛んだ。中国内のネットで炎上、裏切り者・国賊とまで貶される誹謗中傷が出る。
ところが、事実関係のみ言うと、インドのメディアから、行方をくらましていたシー女史からのメールが中国国内のチャット内容として報道される。「(噂されているようなことについて)No matter how difficult things are, it shall never happen, ・・・We’ve done nothing wrong. With a strong belief in science, we will see the day when the clouds disperse and the sun shines.・・・(安否について)Everything is alright for my family and me, dear friends. 噂されているようなこと(亡命など)はいかなることがあっても起きない。・・・我々は何も間違ったことはしていない。科学に対する強い信念を胸に、我々はいずれ雲が晴れ太陽を見られるであろう。親愛なる友よ、安否については、家族と私は大丈夫である。」これは、5月2日付の中国政府系機関紙に掲載されたという意味深な報道。
(インドのwion紙 2020年5月6日付 「China's 'bat woman' Shi Zhengli goes missing」より)
私見ながら、米国の強気発言は、このシー女史の亡命について、在中国米国大使館或いは中国内の米国CIAエージェントの子飼いの情報屋に、ある程度精度の高い情報が米国側に届き、(例えば、本人と連絡が取れ、米国への亡命を本人が希望している、とか)まことしやかな裏取りもでき、この情報が米国トランプ大統領の元に届いたら、大統領は思わずニヤけただろう。そしてあの強気発言。そのあとに、「スミマセン、ガセネタでした」と分かる。そんなバカな話はなかろうと思われるだろうが、もしそんな話があるとすれば、この話を仕組んだのは中国政府に違いない。シー女史のチャット内容、意味深だと思わないだろうか。「私の家族と私は大丈夫」と言っているが、まず罪なき家族を中国政府に抑えられているのだろう。このチャット内容が中国の政府系の機関紙に載ったということは、シー女史は中国政府に軟禁されている。そして家族や親しい友人も抑えられている。自分の一人なら動きは軽いが、家族を重視する中国において、親兄弟親類縁者や親しい友人を含め、ガッチリと抑えられて、ここで自分一人で亡命などしようものなら中国に残る一族郎党はひどい目に会わされる。恐らく本人を含め軟禁されているに違いない。もはや国家に対する裏切りなどできようがないのだろう。軟禁されて、国家に対する忠誠を誓わされている。当面の間、外界から遮断され、音信不通にされていた。チャットすら軟禁下で命じられて書いただろうし、本人が書いていないかもしれない。中国の諜報機関は、この本人を抑えておいて、シー女史の「機密文書をもって米国への亡命」の話を米国側に持ちかける。他方、ネット上では中国の子飼いのネット聴衆を使って、シー女史の亡命かも?の話とそれに対するネット炎上を演出する。他方で諜報機関は慎重に亡命話を進める。所々、本人からの申し出であることを保障する本人情報や認証情報を本人から出させ、米側の情報機関を信用させるに足る確たる証拠も掴ませたであろう。今、youtubeに出ているが、トランプ大統領の以前側近だったバーノン元補佐官もまんまと引っかかって、中国武漢研究所のコロナ発祥説とシー女史の米国への亡命話をアップしてる。バーノン氏もまんまと騙されている。恐らく、この情報にて米国大統領府こぞって、中国に一杯食わされたのではないか?トランプ大統領にとって、中国武漢研究所がコロナウイルスの起源であったという世界的特ダネの決定打となるシー女史という生きる証拠は、もはや中国に取られてしまった。残るは状況証拠しかない。もう一つの確たる証拠となりえる研究所の調査だって、海鮮市場と同様、既に中国政府にキレイに消毒されているのではないか。証拠はもはや残っていない。
「コロナは中国の研究所から流出した!」と既に世界に吹聴してしまったトランプ大統領。そんな勝ち目のない喧嘩を仕掛けてしまったトランプ。中国は大統領選挙でトランプの負ける姿を想像して腹を抱えて笑っているのではなかろうか。
(了)


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