fc2ブログ
2021/11/15

台湾問題で米欧はじめ各国が台湾支援へ動く理由

Czech.jpg
2021年10月27日、チェコ外務報道官ミロス・ヴィストリシル氏が台湾外務大臣ウー氏にチェコ国会の銀の記念メダルを授与(Czech Senate speaker Milos Vystrcil gives Taiwan Foreign Minister Joseph Wu the Silver Commemorative Medal of the Senate of the Parliament of the Czech Republic, in Prague, Czech Republic, Oct. 27, 2021.(2021年11月11日付VOA記事「New Czech Government Expected to Take Tougher Line on China, Russia」より)

 2021年11月14日付VOA記事「Why Western Countries Back Taiwan Despite Their Pro-China Policies」に、 中国と台湾の緊張を巡り、EUはじめ各国が台湾支援へ動いており、その背景についてカバーしていました。記事の内容を紹介しつつ、私見を述べたいと思います。

各国が台湾支援に回る動き
 台湾を正規に外交承認している国は、世界で15カ国しかないにも関わらず、外交承認していない国々でも台湾の支持に回る国々が増えてきました。
 7月以降のこの4カ月で、米国、EU議会をはじめヨーロッパ東部の2カ国、アジア諸国等が、台湾支援に回る動きを見せています。
 ・米国: トランプ前政権からバイデン現政権も台湾への経済連携、戦闘機輸出をはじめ軍事顧問団派遣など軍事面での支援も加速。
 ・EU議会: 本年10月に台湾との経済・外交面での関係強化を決定。更に、報告書において、中国が台湾に対し軍事的圧力をかけつつあることについて懸念を表明。
 ・リトアニア: 本年7月にリトアニア国内に台湾の駐在員事務所を設立することを承認。
 ・チェコ: 本年8月にチェコの上院議長が代表団89名(チェコの各界リーダー)を連れて台湾を訪問。
 ・インドやベトナム等: ここ数年、中国が領土・領海の主権を巡る拡大主義に反対意思を表明。

背景
 VOAの分析では、中国への反発と台湾支援に回る主な要因は、中国の国内の香港や少数民族及び周辺国への強圧的な政策に対する嫌悪感である、と見ています。
 この嫌悪感を表明するにあたり、米国はともかくとして、EUはじめアジアを含む中小国は、やはり中国の逆鱗に触れることを避けるため、一国としてではなく有志国間で一致協力して中国に意思表示することで、外交的影響力を発揮するとともに、中国から外交・経済的な報復を受けた際の緩衝と相互補完による影響の最小限化を図っている模様です。

私見ながら
 興味深いのは、中国の強圧的政策に反対する一方、その手法は「みんなで渡れば怖くない」と「被害を受けた場合は相互扶助しようね」という弱者の論理なところです。
 また、更に興味深いのは、これらの国々の共通した思いは、懸案の台湾問題を例に取ると、中国の台湾侵攻のような最悪事態を避けるのが最大の目的であって、中国の主張する「一つの中国」政策については「支持」を継続し、「台湾の独立」も「中国による台湾の武力統一」も「支持しない」というのが基本姿勢であることです。

 いずれにせよ、米国のみならずこうした世界の各国の意志表明として中国の強圧的(特に実力行使を伴うもの)な政策に対して「NO!」と叫ぶことは意義あることだと思います。日本もその旗手たるべし。中国という国は、相手が「NO」と拒否することで相手に反発されたことを学習します。相手が反発して来なければ自分が正しいと認識します。中国に反発することは勇気のいることであり、中国からも反発して逆襲してきますが、中国自身も「NO」と拒まれたことを自覚しますから、少なからず効果があります。あちこちの各国の「NO」をチームアップすることで、国際的世論化する動きに持ち込みたいですね。是非、岸田新首相や林外務大臣には、国際的世論化運動の旗手になっていただきたい。
 まぁ、やらねぇだろうな。

(了)

にほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へ
にほんブログ村

国際政治・外交ランキング
スポンサーサイト



2021/11/07

中国が核戦力を急増:核で米に対抗?バカじゃないの?

Chinese Balistic Missile
軍事パレードで中国の弾道ミサイルの行進に旗を振る中国国民 (Onlookers wave Chinese flags as military vehicles carrying DF-41 ballistic missiles roll during a parade in Beijing, China, Oct. 1, 2019. China has been expanding its nuclear force much faster than U.S. officials had predicted.) (2021年11月3日付VOA記事「China Nuclear Arsenal Growing Faster Than Previously Thought, Pentagon Says」より)

 2021年11月3日に米国防省が公表した中国の核戦力に係る報告書によれば、中国は核戦力を以前考えられていたよりも速く増強しており、米国が憂慮する域に達しました。(参照:2021年11月3日付VOA記事「China Nuclear Arsenal Growing Faster Than Previously Thought, Pentagon Says」)

中国の核戦力の増強ぶり
 報道されている所によれば、中国は2027年までに最大700発の核弾頭を有し、2030年までに少なくとも1,000発の核弾頭を保有することを目標とする、とのこと。2・3年前までは、装備の近代化・最新化に取り組む一方、核弾頭の数的には増強は見られず、一定数のまま推移していました。それがこの1年で急増に転じ、米国が昨年の見積りを遥かに超えた増強となっています。
 質・量ともに圧倒的な核戦力を有する米国(核弾頭数で約3800個が常時operationalな状態)からすれば、核弾頭数が百〜数百のオーダーなら局地的、戦域レベルの脅威だったのに、千のオーダーに入ればグローバルな戦略レベルの脅威です。核の運搬手段も、中国は以前から大陸間弾道弾、戦略爆撃機、潜水艦発射弾道弾という、いわゆるトライアッド(Triad)と言われる核戦力の3つの運搬手段を揃えています。先日の極超音速飛翔体の実験成功の話題と相まって、名実ともに、米国にとってロシアに次ぐ戦略的脅威となったわけです。

私見ながら
 常識的感覚として、中国の核戦力増強を憂慮します。世界の核抑止は一応均衡して安定いるのに、中国の軍備拡大、特に核抑止力の増強は、その均衡を意味もなく脅かし、核戦力積み上げ競争を惹起するだけとなり、深く憂慮します。
 はっきり言って、何がしたいのか理解できない。米露で安定していて、マイナーな局地的核抑止力として中国の核戦力はあり得た話なのに、敢えてグローバルな核戦力増強に打って出た、その企図を諮りかねます。均衡しているがゆえに戦略的に安定しているのに、何でまた核戦力を増強しているのか?バカじゃないの?と思います。

余談ながら笑って済ませられない話
 2021年7月15日付yahooニュース記事「中国軍事評論家、日本を『核の先制不使用』の例外にせよと主張──いったん削除された動画が再浮上」‪によれば、冗談じゃ済まない話がありました。「‬日本が台湾問題に首を突っ込むなら日本を核攻撃すべし」というタカ派の動画(実際に日本を核攻撃する衝撃画像がある模様)がアップされ、地方当局が一回削除し、のちに当局判断で再アップされました。丁度、麻生さんが「台湾有事あらば日本にとっても有事であり、自衛隊の対応もありうる」という発言があった後というタイミングで、意図的に再アップした模様です。これは、核保有していない国に対する先制核攻撃を意味し、国際常識としてあり得ない話。それを意図的に出す神経が普通ではない国ですね。
 およそ核武装をする国は、核使用は自国にとって生きるか死ぬかの最後の手段で保有するわけですから、軽々な判断やいわんや外交や恫喝の手段に物を言わすなどあってはならない話です。
 せめて核のボタンを握る国家中枢の人間はまともな考えでいていただきたい。

(了)

にほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へ
にほんブログ村

国際政治・外交ランキング
2021/10/10

習主席が台湾統一実現を叫ぶ⁉︎:ご心配なく、掛け金積み上げ競争です


Xi Jinping has said that reunification with Taiwan must be fulfilled
2021年10月9日、辛亥革命110年記念大会にて演説する習国家主席(2021年10月9日付BBC記事「China-Taiwan tensions: Xi Jinping says 'reunification' must be fulfilled」より)

辛亥革命110年記念大会で習主席が台湾統一の意欲と自信を強調
 2021年10月9日、中国の習近平国家主席は、辛亥革命100年記念大会にて演説。辛亥革命を指導した孫文の功績を讃え、その遺志を受け継いでいるのが「中国共産党」と位置づけ、台湾統一を「歴史的な任務」として「必ず実現する」と意欲と自信を強調。この際、台湾政府の独立志向を厳しく批判するとともに、欧米の台湾支援の動きを「台湾問題は中国の内政であり、外部からのいかなる干渉も許さない」との姿勢を示しました。

とは言え、台湾有事は双方望まず、これは掛け金積み上げゲームです
 ここ最近、台湾海峡に中国軍機が防空識別圏を破って侵入する事案がケタ外れに急増し、他方で米軍を主軸とした米英豪日等のの周辺海域での台湾有事を想定した海上機動演習が増え、にわかに緊迫を増す状況に益々緊張感が走りました。
ただ、私見ながら、こういう動きがあるからと言って「すわ、台湾有事か?」などという話ではなく、中国と米欧日豪民主主義陣営(台湾含む)の冷戦的枠組みにおける抑止力競争=パワーゲームにおいて、例えばポーカーの掛け金のように、双方が「掛け金積み上げ」とでも言うべき抑止力を積み上げている状況です。この際、両者は決して自分のカードを見せて勝負に出ようとは思っていません。お互い、持ち札を見せないまま、無事にこの場のゲームが「流れてしまう」のを待っています。

願わくば、掛け金積み上げへの狂奔で中国が失速しますように
 こうした掛け金の積み上げは一触即発の緊迫を呼びますので、それはそれで、お互いの疑心暗鬼が無用の軍事衝突に陥らないように、机の下でのホットライン的な意思疎通は維持すべきです。実際の衝突を避ける努力をした上での話ですが、全くの私見ですが、米欧豪日の戦略的な思考として、米欧日豪が情勢緊迫を知っての上でこの掛け金積み上げ競争をしている目的は、この掛け金積み上げ競争の果てに望ましい未来を描いているのではないか、と推察しています。
 およそ専制国家というものは、リーダーが決めることが「正しい」前提で、議会の承認のような民主的手続きなしに、リーダーの指し示す方向に国家の全力を傾注します。自国の体制維持に執着するあまり、こうした自国の死活的国益がかかる掛け金積み上げ競争にまじめに取り組み、自国の経済を顧みずに掛け金の積み上げに奔走し、気づいた時には自国経済や民心が瓦解していきます。要するに、米ソ冷戦末期に米レーガン政権が「戦略防衛構想:スターウォーズ計画」をぶち上げ、仕方なく当時のソビエト連邦はこれに応じて戦略核戦力の優位に奔走し、ついに国家運営自体が紛糾し、自壊しました。あれと同様の競争を西側民主主義陣営が吹っ掛けているのです。中国は、当時のソ連と同様に、この掛け金積み上げに乗ってきました。願わくば、この掛け金積み上げ競争の過程で、実際の軍事衝突無しに、中国が自国経済の失速を招き、自国民の民心が離反し、中国共産党一党支配による体制が瓦解しますように。

(了)

にほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へ
にほんブログ村

国際政治・外交ランキング
2021/07/30

中国:政府に挑んだ企業家に懲役18年の見せしめ判決

_119642377_gettyimages-1331038620.jpg
大午集団の創業者 孫大午氏 (2021年7月29日付BBC記事「Outspoken billionaire Sun Dawu jailed for 18 years in China」より)

 2021年7月29日、裁判中だった中国河北省の小さな村を国内最大の農業グループに育てた「大午集団」創業者の孫大午氏に、懲役18年の判決が下りました。貧乏な家に生まれ、クズ拾いから養鶏・養豚を始め、一代で巨大農業グループを立ち上げた孫氏。持ち前の反骨と正義感から、当局の賄賂要求を断り、当局に対しあけすけに正論を主張して抗い、これまで逮捕や裁判も数回ありましたが、昨年8月にグループ本社そのものへの一斉捜索・一斉逮捕があり、当局に従順には従わず抗った孫氏及びその家族やグループ幹部が20数名も逮捕・拘束され、2021年7月14日から公判が開始され、29日に孫氏に懲役18年、及び巨額(1億5000万ドル)の返済金、他の逮捕者に1年から12年の懲役刑が科されました。
(参照: 2021年7月29日付VOA記事「Chinese Farmer Who Praised Lawyers Sentenced to 18 Years」、同日付前掲BBC記事「Outspoken billionaire Sun Dawu jailed for 18 years in China」、2021年7月14日付日テレニュース「中国著名企業グループ創業者の初公判」、及び2020年11月25日付東京新聞記事「標的にされた異色の中国企業家 当局にこびない孫大午氏」)

孫氏に懲役18年という重い判決、アリババ創業者馬氏の行方不明
 いやー、どうなるのかな、と思っていたのですが、18年の懲役とは非常に厳しい判決でしたね。個人的に注目していたし、こういう豪傑ビジネスマンが中国にゴロゴロ出てくると、日本は敵わないなぁ、と思っていたんですが。日本にとってありがたいことに、中国政府自身がこういう国家の宝のような傑物を潰してしまうんですね。この人、前述のように、裸一貫から、農業企業を起こして成功させ、「大午集団」なる大企業に育て、なんと生まれ故郷の村全体をユートピアのような企業村にしました。村内に農業をはじめとした商業施設や観光施設を作り、更に9000名近い従業員を家族丸抱えで、村ごと学校から病院まで面倒を見る共同体のような村を作って、中国中の関心を引いていました。しかし、今回で完全に潰されてしまいましたね。

 孫氏と同様に政府や当局に抗って干されたアリババのジャック・マーこと馬雲氏もしばらく行方不明になっていましたから。馬氏の場合は、「時代錯誤な政府規制が中国のイノベーションを窒息死させる」と中国政府の施策を痛烈批判したことで、習近平国家主席の激怒を買い、拘束されていたと伝えられ、今年1月に数カ月ぶりにネットイベントに姿を現したようですが、もはや完全に牙を折られ恭順の姿勢を取らされているようですね。

大午集団・孫氏の当局への抵抗
 おそらく、馬氏と孫氏の違いは、政府や当局への反抗姿勢の徹底ぶりです。馬氏は、政府の政策への批判により、「こっぴどく叱られた」感じですが、孫氏の場合は地元の当局とのかなり長い抗争と逆転勝利などがあって、ネット等を通じて中国国民の中にも孫氏を応援する人たちも出てきたことに対し、政府が「これは芽のうちに徹底的に潰しておかないと偉いムーブメントになる」と危機感を持たせたことではないかと思います。

 前掲の4つの記事に孫氏の大午集団の地元当局との抗争歴が書かれていましたので、バラバラの記事内容を要約しますと、以下のような流れです。
 ・ 2003年、当局の指示で銀行が民間企業への融資を渋ったため、苦肉の策として自己企業の従業員や村民等から相当額の資本を集めたことが当局から「違法」として咎められ、懲役3年、執行猶予4年の判決を受けた。一説には、この一件の引金は孫氏が政府の農政について批判したことに対する報復、と言われている。
 ・ 同年、この「違法な資金調達」の懲役刑について、ネットで炎上し一般市民からの支援という追い風が起き、撤回となり名誉が回復される。
 ・ 2019年、中国に豚インフルが流行し、大午集団の農場も中国の農業も大打撃。この際、孫氏は「政府が豚インフル発生を隠蔽した」と公然と政府批判を展開。
 ・ 2020年2月、2003年の一件の裁判の際の大午集団側の著名な弁護士が謎の失踪。当局に反逆罪で逮捕・拘束された模様。
 ・ 2020年6月、大午集団と国有企業の間で係争があり、当局の一方的な措置で大午集団の建物の破壊の強制執行が行われた際に、大午集団従業員が抵抗したが、これが暴力行為とされ、8月11日に大量の武装警官が動員されての一斉捜索・一斉逮捕。孫氏を始め数十名が逮捕・拘束された。罪状は、社会秩序騒乱などの容疑。

スクリーンショット (37)
大午集団への一斉捜索・逮捕・拘束 (前掲日テレニュースより)

孫氏には一罰百戒どころか見せしめに企業ごと壊滅へ
 上の画像のように、この2020年8月の一斉捜索・逮捕・拘束の際、まるで暴力団かテロ集団の摘発か、というほどの鳴り物入りで、数十台の警察車両、数十名もの武装警官、警察犬などが動員されて村内に突入し、建物のドアを蹴破ってしらみつぶしにするような大捜査線になった模様です。

 だから、これはただの暴力事案に対する警察の逮捕なんて話ではなくて、政府の指示による政府・当局に歯向かうものに対する「見せしめ」としての逮捕劇でしょう。そして、鳴り物入りで暗黒裁判をし、法の名のもとに「見せしめ」のために創業者ごと企業グループごと(村ごと)潰したんですよ。中国政府は、こうした見せしめにより企業への統制を強め、「いいか、政府に抗うものは潰したるぞ!」とマインドコントロールをしているわけです。これで、政府の企業や一般市民に対するグリップは確たるものになるでしょうけど、他方で、もはや企業のクリエイティビティとか自由かつ柔軟な発想とか切磋琢磨とか、そういった企業の進展性や伸びしろまで潰してしまっていますよね。

 まぁ、そんな中国の方が日本にとっても好都合かもしれませんね。

(了)

にほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へ
にほんブログ村

国際政治・外交ランキング
2021/07/02

中国共産党100周年:奢れる中国、ただ春の夜の夢の如し 

President Xi and Mao
手を振る人民服の習近平国家主席 Chinese President Xi Jinping, center, waves above a large portrait of the late leader Mao Zedong during a ceremony to mark the 100th anniversary of the founding of the ruling Chinese Communist Party at Tiananmen Gate in Beijing, July 1, 2021. (2021年7月1日付VOA記事「The Chinese Communist Party at 100: Hopes and Disappointments」 より)

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。奢れる人も久からず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者も遂にはほろびぬ、偏ひとへに風の前の塵におなじ。 

この世の春を謳歌する習近平
 中国の中国共産党100周年記念式典の報道を見ていて、ふと平家物語の有名な冒頭部分を思い起こしました。

 「中国共産党がなければ新中国はない。歴史と人民が党を選択した」と高らかに語った習近平国家主席。アレ?他の高官がセビロとネクタイ姿の中、一人だけ習国家主席だけグレーの人民服。と思ったら、もう一人人民服姿がいました。大看板に描かれた毛沢東。習近平は毛沢東に並んだのだ、というイメージ戦略でしたか。

 各種報道がなされているので詳述しませんが、習国家主席は祝辞の中で語った内容及びこのイベントの趣旨そのものは、中国共産党礼賛、富国強兵、習近平への個人崇拝、台湾の統一、そして排他(反米)主義でした。

President Xi
中国首脳陣を率いる習国家主席(前夜祭?) Chinese President Xi Jinping is seen leading other top officials pledging their vows to the party on screen during a gala show ahead of the 100th anniversary of the founding of the Chinese Communist Party in Beijing on June 28, 2021. (2021年6月28日付VOA記事「At 100, China's Communist Party Looks to Cement Its Future」より)
スクリーンショット (23)
スクリーンショット (24)
スクリーンショット (26)
2021年7月1日付BBC記事「CCP 100: Xi warns China will not be 'oppressed' in anniversary speech」より

奢れる平家の春の夜の夢
 まさに、この世の春を謳歌する中国共産党、習近平体制の栄華極まれり、一大歴史イベントの展開でした。ヒトラー率いるナチスドイツの記念式典、東西冷戦華やかななりし頃のソ連のモスクワ赤の広場での壮大な軍事パレードを髣髴とさせました。デジャブ状態ですね。

 そんな中国は強気一辺倒とは裏腹に、内外ともに多事多難です。国内の香港及びウイグルへの締め付けは、国際的な中国への非難を呼び、香港やウイグルの市民の表面上の静かな受け止め方は、国家への忠誠や信頼ではなく、諦め的沈黙であってもはや民心は国家や共産党から離反しています。

 そう言えば、習国家主席は祝辞の中で「人民」という言葉をあちらこちらで多用していました。本当に民心を得ているのか、官憲の統制による恐怖でのみ表面上服従しているだけで本当は腹背しているのか、不安の裏返しなのかもしれません。
絶好調だった経済も失速し始め、経済を先導していた民間企業グループのトップが逮捕されたり(大午集団など)、およそクリエイティブな企業が伸びて行けそうな国家や社会の柔軟性や伸び代は期待できない状況です。
国際的な評価も、新型コロナへの対応や香港、ウイグルでの人権蹂躙ぶりを見てダダ下がりに。もはや、中国に夢や期待を持つ国はいません。

 中国はまだまだ経済も強く、軍事力の増強ぶりも著しいところですが、ピークは過ぎ、翳りが見えてきました。自ら祝辞の中で「今後は『小康国家』を目指す」と下方修正したことが印象的でした。「ややゆとりのある社会」を意味するんだそうですが、他の場面ではイケイケな強気な言葉が踊っていただけに、翳りを自覚しているのかも。

 ピークを過ぎたものの、100周年記念という大きな結節のお祭りですから、せいぜい自画自賛し、この世の春を謳歌してくださいよ。春の夜の夢のごとし。It won’t be long.

(了)

にほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へ
にほんブログ村

国際政治・外交ランキング