バイデン米大統領就任前に、北鮮は動かずイスラエルはイラン核施設を叩くかも
バイデン米大統領就任前に、北鮮は動かずイスラエルはイラン核施設を叩くかも
米大統領バイデン氏の大統領就任式前に、北朝鮮はこの時期を狙ってミサイル実験をしてきましたが今回はやる気配なし。他方、イランが核合意で放棄したはずの核濃縮を公表するなど核開発を政治カードとして公然と利用し始め、イスラエルはこれに公然と「許さない」と国家意思を示しました。恐らく、大統領就任前の過渡期を狙ってイランのナタンツ原子力施設などを空爆するのではないか、と懸念されています。

労働党大会で発言する金正恩(North Korean leader Kim Jong Un speaks at the Workers' Party congress in Pyongyang)(VOA記事2020年1月6日付記事「Facing Economic Woes, North Korea Admits Failure, Mulls Future」より)
北朝鮮は音無しの構え
北朝鮮は、折からの経済制裁による経済の底冷えに加え、金正恩の核開発への国家予算つぎ込み、コロナ対応(特に、中国からのウイルス流入を恐れて中国との貿易を止めたため)による経済への影響、更に昨年の水害による農作物の不作、等により、いよいよ経済的に危機的状況の模様です。北朝鮮は、トランプ・金正恩の歴史的な米朝首脳会談で経済制裁を解くことを狙っていました。しかし、「朝鮮半島の非核化」という中途半端かつ曖昧な合意のみで、そこから具体的に非核化が進まない手詰まり状態で終わっています。大統領選の帰趨が決まった後も、このところいつものような勇ましい発言も動きもありません。むしろ、新年明けて直ぐに、第8回労働党大会を実施中です。これは定例でなく臨時であり、異例のことです。しかも、冒頭に金正恩がこれまで5年間の計画経済政策(2016年の第7回労働党大会で自ら主導した政策)が「失敗した」と認めたというからビックリ。何かが起きていますね。
(参照: VOA記事2020年1月5日付「No Signs of N. Korean Tests Ahead of Biden Inauguration, US General Says」、同1月5日付「North Korea Opens Rare Ruling Party Congress」、同1月6日付「Facing Economic Woes, North Korea Admits Failure, Mulls Future」)
イスラエルはイランの核濃縮発表に激怒 (これはやる気です!)
一方、イランは北朝鮮同様に米国主導の経済制裁による経済低迷とコロナ対応のダブルパンチに加え、丁度1年前にイラン革命防衛隊の英雄スレイマニ司令官を米国に暗殺され、先々月にはイラン核開発の研究リーダーだったファクリザデ博士をイスラエルに暗殺され、報復を内外に誓っていました。そんなイランがつい最近、核合意で停止していた核濃縮を再開していることを公表しました。次期米大統領バイデン氏が核合意に米国を復帰させると見られることから、トランプ大統領がイランに課した経済制裁を解かせる交渉材料にしようという腹だと推察されます。
これに猛然と異を唱えたのがイスラエルです。2020年1月4日のネタニヤフ大統領の会見でイランをボロカスに糾弾しています。本ブログで、これまで度々指摘させていただいていますが、イスラエルという国は「自国の生存・安全のため」という専ら防衛的な思考から、自国の安全確保のためには他国の領域・領土・領空・領海を侵すことを屁とも思っておらず、手段を選ばず躊躇なく我に仇なす攻撃目標をピンポイントで潰しにかかる、という超攻撃的な国です。以前にもイラン、イラク、シリア、スーダンのイスラエルにとって脅威となる施設に対してsurgical air strike (外科手術的航空攻撃)で脅威の撲滅をしてきました。ファクリザデ博士の暗殺もその一環です。以前、11月30日付のブログ「イラン核開発科学者をイスラエルが暗殺か:バイデン就任前に対イラン外交を悪化狙う? 」及び12月21日付のブログ「イランが地下核施設を建設中: 何が何でも核兵器が欲しい模様」に書きましたように、近日中にも懸案のイランの核施設に対してsurgical air strike をやるのではないか、と懸念しています。トランプ大統領のうちに、既成事実としてイランの核施設を叩き潰して核開発を遅らせるとともに、イスラエルの先制攻撃は米国の核合意復帰や対イラン外交の大きな障害となってイランを苦悩させ続けるでしょう。イスラエルならやりかねない、...と見ています。(参照: VOA記事2020年1月4日付「Iran Says It Boosted Uranium Enrichment to 20% 」、同日付「Israel Warns Iran About Uranium Enrichment Announcement」)
(了)


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米大統領バイデン氏の大統領就任式前に、北朝鮮はこの時期を狙ってミサイル実験をしてきましたが今回はやる気配なし。他方、イランが核合意で放棄したはずの核濃縮を公表するなど核開発を政治カードとして公然と利用し始め、イスラエルはこれに公然と「許さない」と国家意思を示しました。恐らく、大統領就任前の過渡期を狙ってイランのナタンツ原子力施設などを空爆するのではないか、と懸念されています。

労働党大会で発言する金正恩(North Korean leader Kim Jong Un speaks at the Workers' Party congress in Pyongyang)(VOA記事2020年1月6日付記事「Facing Economic Woes, North Korea Admits Failure, Mulls Future」より)
北朝鮮は音無しの構え
北朝鮮は、折からの経済制裁による経済の底冷えに加え、金正恩の核開発への国家予算つぎ込み、コロナ対応(特に、中国からのウイルス流入を恐れて中国との貿易を止めたため)による経済への影響、更に昨年の水害による農作物の不作、等により、いよいよ経済的に危機的状況の模様です。北朝鮮は、トランプ・金正恩の歴史的な米朝首脳会談で経済制裁を解くことを狙っていました。しかし、「朝鮮半島の非核化」という中途半端かつ曖昧な合意のみで、そこから具体的に非核化が進まない手詰まり状態で終わっています。大統領選の帰趨が決まった後も、このところいつものような勇ましい発言も動きもありません。むしろ、新年明けて直ぐに、第8回労働党大会を実施中です。これは定例でなく臨時であり、異例のことです。しかも、冒頭に金正恩がこれまで5年間の計画経済政策(2016年の第7回労働党大会で自ら主導した政策)が「失敗した」と認めたというからビックリ。何かが起きていますね。
(参照: VOA記事2020年1月5日付「No Signs of N. Korean Tests Ahead of Biden Inauguration, US General Says」、同1月5日付「North Korea Opens Rare Ruling Party Congress」、同1月6日付「Facing Economic Woes, North Korea Admits Failure, Mulls Future」)
イスラエルはイランの核濃縮発表に激怒 (これはやる気です!)
一方、イランは北朝鮮同様に米国主導の経済制裁による経済低迷とコロナ対応のダブルパンチに加え、丁度1年前にイラン革命防衛隊の英雄スレイマニ司令官を米国に暗殺され、先々月にはイラン核開発の研究リーダーだったファクリザデ博士をイスラエルに暗殺され、報復を内外に誓っていました。そんなイランがつい最近、核合意で停止していた核濃縮を再開していることを公表しました。次期米大統領バイデン氏が核合意に米国を復帰させると見られることから、トランプ大統領がイランに課した経済制裁を解かせる交渉材料にしようという腹だと推察されます。
これに猛然と異を唱えたのがイスラエルです。2020年1月4日のネタニヤフ大統領の会見でイランをボロカスに糾弾しています。本ブログで、これまで度々指摘させていただいていますが、イスラエルという国は「自国の生存・安全のため」という専ら防衛的な思考から、自国の安全確保のためには他国の領域・領土・領空・領海を侵すことを屁とも思っておらず、手段を選ばず躊躇なく我に仇なす攻撃目標をピンポイントで潰しにかかる、という超攻撃的な国です。以前にもイラン、イラク、シリア、スーダンのイスラエルにとって脅威となる施設に対してsurgical air strike (外科手術的航空攻撃)で脅威の撲滅をしてきました。ファクリザデ博士の暗殺もその一環です。以前、11月30日付のブログ「イラン核開発科学者をイスラエルが暗殺か:バイデン就任前に対イラン外交を悪化狙う? 」及び12月21日付のブログ「イランが地下核施設を建設中: 何が何でも核兵器が欲しい模様」に書きましたように、近日中にも懸案のイランの核施設に対してsurgical air strike をやるのではないか、と懸念しています。トランプ大統領のうちに、既成事実としてイランの核施設を叩き潰して核開発を遅らせるとともに、イスラエルの先制攻撃は米国の核合意復帰や対イラン外交の大きな障害となってイランを苦悩させ続けるでしょう。イスラエルならやりかねない、...と見ています。(参照: VOA記事2020年1月4日付「Iran Says It Boosted Uranium Enrichment to 20% 」、同日付「Israel Warns Iran About Uranium Enrichment Announcement」)
(了)


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