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2021/07/14

アフガンの行方:米軍撤退、タリバン全土制圧、ロシア/中国/トルコの思惑

スクリーンショット (36)
米国建国記念日を前にした7月2日の会見にてバイデン大統領は明々白々にアフガン撤退についての記者の質問を嫌がった。
(2021年7月3日付BBC記事「Bagram: Last US and Nato forces leave key Afghanistan base」より)
 
「米軍が遂にアフガンから完全撤退…」 
 あれ?このニュース、いつか見た光景のような気がします。
 そう、1975年4月下旬、南ベトナム政府を見限ってサイゴンから米軍が全軍撤退したベトナム戦争の末期のデジャブを見ているようです。撤退直後の南ベトナムの首都サイゴン陥落のように、アフガンのカブール陥落も時間の問題かもしれません。

米軍のアフガン撤退完了は目前に
 2021年7月8日、米国のバイデン大統領は、アフガニスタンにおける米軍の活動について同年‪8月31日に終了する予定、と発表。これに先立つ7月2日には、在アフガン最大の軍事基地で空港機能を持ったバグラム基地から撤退。この日の会見では、米国建国記念日を目前にした会見ということもあり、バイデン大統領は明々白々にアフガン撤退についての記者の質問を嫌がりました。(参照:冒頭写真ののBBC記事)米軍以外の外国軍もほとんどが米軍以前に撤退。今後、650名の米軍が米国大使館などの警備のために残留するのみとなりました。これにて20年近く続いた米国主導の多国籍軍によるアフガンでの作戦行動は全て終了し、名実ともに、外国軍がアフガンから撤退します。‬

 一方、勢力を盛り返しつつあるタリバンは、米軍の逐次撤退に伴い地方から中央に向け、各地でアフガン政府軍を潰走させ、失地を回復して捲土重来を果たしつつあります。‬(2021年7月5日付BBC記事「Afghanistan: Soldiers flee to Tajikistan after Taliban clashes」
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6月のタリバン民兵との戦闘で敗れタジキスタンに逃げ込んだアフガン政府軍兵士(More than 1,000 Afghan soldiers have fled to neighbouring Tajikistan after clashing with Taliban militants, officials have said.)(前掲BBC記事より)

アフガンの行方
‪ 現地をよく知る英‬国防軍参謀長のサー・ニック・カーター陸軍大将はBBCの報道番組「Today」で、アフガンの今後について、公算大なシナリオ2つと望ましいシナリオ1つを説明しました。 公算大な①「アフガン政府が踏みとどまり全州都を維持」、及び②「‪タリバンが国の一部を支配、国が分裂」。加えて、望ましいシナリオ③「(政府とタリバンが)‬具体的な政治的譲歩と協議が実現する展開」です。
 私見ながら、これは英国防軍参謀長という立場からの、いささか政治的なコメントでしょうね。現地をよく知る方ですので、腹の中ではもっと深刻に受け止めているはずです。最も公算大なのは、「‪タリバンによる全土制圧・統一」でしょう。政府軍も踏ん張ったとしても、優勢なタリバン支配地域と劣勢なアフガン政府支配地域に二つに分裂し、事実上アフガンという国家は崩壊し、国際社会にアフガン国家・政府を代表する正当な主体は存在しなくなるでしょう。それも時間の問題で、結局はタリバンは全土制圧するでしょうね。いわんや、③の「(政府とタリバンが)‬具体的な政治的譲歩と協議が実現する展開」はありえないでしょう。タリバンはアフガン政府を米国の傀儡と見ているので、政治的妥協なんかしませんよ。現政府要人は殺し尽くすでしょう。英国防軍参謀長の①のシナリオが成り立つのは、撤退後も米軍が政府軍の作戦を航空攻撃によって全面的にバックアップする場合のみです。しかし、それはもはやバイデン米大統領にその気がないのです。事実、バイデン大統領は会見の際に、「これまでと違う結果達成の合理的な期待がないまま、新世代のアメリカ人をまたアフガニスタンの戦争に送り込むつもりはない」と発言しています。(参照:2021年7月3日付BBC記事「Bagram: Last US and Nato forces leave key Afghanistan base」)
 
 アフガン政府は、引き続き米軍のバックアップがあることをタリバンはじめ内外に示したいため、今月2日、アフガンのガニ大統領と駐留米軍司令官ミラー大将が会談し、「米国の継続的な支援と協力」を協議したと発表していますが、これは焦りの証左でしょう。恐らく、アフガン政府にしてみれば、在アフガン米国大使館(及び同盟国大使館)の警備のための650名の米軍を人質に、相応の(マイナーな)非軍事支援を得るくらいでしょう。米軍にとっては、それにより外郭の警備と安全の保障を得る程度でしょうね。やがて来るタリバンと政府軍の戦いが、首都カブールに及ぶ際は、米国は大使館を引き揚げるでしょうね。じ後は中立的立場を貫き、アフガン政府軍への軍事的支援はしないでしょう。だって、腐敗した政府と戦う団結力がなく戦っては潰走する政府軍を米軍は既に見限っているのです。
 
米軍が去って虎視眈々のタリバン、ロシア、中国、そしてトルコ
 タリバンはもはや全土統一しか頭にないでしょう。これまで最強の米軍がいたので山岳地帯に逃げ、地方からジワジワと勢力伸長しては米軍に叩かれてきました。トランプ前大統領がアフガン撤退のためにタリバンとネゴり、2021年5月には完全撤退することを条件に、米軍撤退までの間は米軍に手を出さないことに同意したのです。米国はこの協議にアフガン政府を交渉のテーブルにすらつけませんでした。見限ってますから。タリバンの現在の焦眉の急の戦略目標は米軍が去ったバグラム基地。ここには米軍の残置した武器弾薬や物資があり、基地自体は今後の重要な戦力基盤です。当然、現在はアフガン政府軍が我が物としています。これが攻略された時がアフガン政府軍の事実上の壊滅の時期でしょう。

 ロシアの思惑は少し複雑。過去タリバンと泥沼の紛争が長く続いた挙句にアフガン撤退をした経験から、タリバンとは手を結べません。アフガン近隣国トルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタンなどと連携して、対タリバン防波堤を講じ、アフガン政府とも連携の模様。でも、ロシアもアフガン政府と政府軍の実力の低さを知っており、痛い目に遭っているので深入りは避けるでしょう。

 中国の思惑について、2021年7月9日付産経新聞記事「中国、アフガン関与狙う」によれば、中国内の新疆ウイグルの安定のため、アフガンをイスラムテロの温床化させないよう、米軍撤退後のアフガン安定化に関与する姿勢を見せ、アフガン政府とも連携しつつ、パキスタンを通じてタリバン支援もしている模様。しかし、私見ながらタリバンとは手を組めまいと見ています。タリバンは根っからのイスラム原理主義ですから、中国と手を結ぶ要素は共通の敵がいるときだけでしょう。米軍が去った今、共通の敵は不在です。中国が対アフガン関与政策を進めるなら、めでたいことだと思います。やがて必ずや思惑通りに運ばずに破綻するでしょう。むしろ、新疆ウイグル自治区で虐げられたウイグル人とタリバンが連携して、対中国の戦力基盤に育てたいですね。

 トルコもアフガン関与を狙っている模様です。2021年7月9日付読売新聞記事「トルコ、アフガン積極関与」によれば、トルコ軍はNATO加盟国として現在も500名ほどアフガン駐留をしており、これをカブール空港警備のために残す模様です。これにより、バグラム基地を撤退した後のカブール空港の戦略的重要性を認識する米国に恩を売り、ロシア製の防空システムS400を米国に内緒で買って米国の激怒を買っている問題の解消を図っている、とのこと。トルコに関しては、タリバンもイスラム教徒なので敵視していないという他のアフガン駐留国とは違う要素があります。それでも、カブール空港警備となると、空港を掌握したいタリバンと利害衝突し、やがて攻撃対象とされるかもしれません。

私見ながら
 思うに、アフガニスタンという国は特別に御し難い民族性を持つ国でして、古くはイスラム帝国、モンゴル帝国、チムール帝国、オスマン帝国、近代でも大英帝国、現代に入ってソ連、そして今回の米国と、いかなる最強軍事大国と雖も、草の根レベルで抵抗されコントロールできず、最後はホッポリ投げられてきた国なのです。ベトナム戦争に勝った北ベトナムを想起させる不屈の反発心を持つアフガンの民族性は、世界最強かもしれません。ですから、中国には是非深入りしてもらいたいですね。

(了)

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2021/04/25

米軍 アフガン撤退へ: 国際テロ復活が懸念されるがやむなし!

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(2021年4月22日付VOA記事「US General Warns Afghan Forces Facing Possible Failure」より)

米軍 アフガン撤退へ: 国際テロ復活が懸念されるがやむなし!
 日本のマスコミはあまり関心のないネタですが、筆者も現役時代に少なからず関わった9.11に始まるイラク・アフガン戦争の遅い幕引きの話題です。
 2021年4月14日バイデン米大統領は9月11日までにアフガ二スタンから現在2500~3500名の勢力の米軍を完全撤退する旨を発表。これに対し、タリバンはトランプ前大統領が約束した「5月1日までの撤退」を果たせないなら攻撃すると警告を発しています。現地の状況をよく知る米軍の主要指揮官や、CIAなどの情報機関は異口同音に、アフガンからの米軍及び多国籍軍の撤退について懸念を示し、米軍撤退後すぐにタリバンがアフガン政府軍を駆逐し、タリバンによる暴力的な人権蹂躙が再開することや、弱体化したアルカイダやISがアフガンを避難所にして再活性化して再び国際テロが息を吹き返し、やがて米国はじめ西側諸国にテロ脅威を与える重大なリスクになる、と予測しています。(参照:2021年4月22日付VOA記事「US General Warns Afghan Forces Facing Possible Failure」及び同年4月14日付VOA記事「Afghanistan Withdrawal Could Pose ‘Significant Risk’ to US, Intelligence Officials Say」)
 私見ながら、これらの懸念はほとんどが的中するでしょう。しかし、それでも、米国をはじめとする多国籍軍のアフガ二スタンからの撤退はやむを得ないと考えます。9.11後のアフガン戦争開始以降はや20年近くも経過、米国にとって最長の軍事介入となりました。これまでもこうした撤退論が持ち上がる度に、軍や国防省や情報機関、及び安全保障の専門家や有力議員は撤退に反対し、条件を付け、結局ズルズルと引き伸ばされてはや足掛け20年になります。それでも結果的にアフガンの状況は全く好転せずに今に至っています。撤退はもはや止むを得ないと思います。

アフガンの現状と米軍や情報機関、専門家たちの懸念
 アフガンの現状は、まだ実力も国民の支持も不足なのに背伸びするアフガン政府、都市部以外はほぼ支配下におさめる反政府勢力タリバン、そして駐留米軍が主要なアクターであり、2020年2月にトランプ政権下で米国とタリバンが和平協定し、タリバンはアルカイダと手を切る代わり米軍はじめ外国軍は撤退することを決めました。この性急な交渉にアフガン政府は席を立っています。微妙な三角関係の中、いよいよトランプの決めた5月1日という撤退の締め切りを前に、バイデン政権が9月11日まで引き延ばした形になっています。(正確には、バイデン大統領は「引き延ばした」のではなく、トランプ前大統領の撤退計画がムリムリだったため、現実的な計画として9月11日までとした、というのが本当のところです。)タリバンは激怒し、トランプが約束した5月1日の撤退を迫り、以後は攻撃する所存。アフガン政府は「大丈夫だ。米軍が撤退しても、今までそうだったようにアフガン政府軍がアフガンを守っている」とガニ大統領は豪語しています。
 こうした現状を踏まえて、米軍や米情報機関、安全保障の専門家は懸念しているわけです。
まず間違いなく、①5月1日以降も残っている米軍はじめ外国軍に対してタリバンのテロ攻撃があるでしょう。次いで、②米軍の後ろ盾と軍事支援を失った政府軍に対して、タリバンの国盗り作戦が開始されるでしょう。タリバンは支配下に置いた地域で、親米派はじめ外国勢力に迎合した者たちを見せしめ的に拷問したりリンチにしたりしますから、支配下に陥った地域のあちこちで暴力的な人権蹂躙が起きます。③そして、タリバンを頼ってISやらアルカイダやら、世界各地で落ち武者となった国際テロ組織の残党が逃げて来る避難所化し、訓練場となり、息を吹き返した国際テロ組織が、再び世界各地で西側諸国への国際テロを起こす可能性が出てきます。(既に、現在のアフガンには数百名のアルカイダ、千名を越えるISの残党がいると米情報機関は見ています。)

それでもなお撤退が得策だという理由
 まず第一に、そうした懸念が思いとどまらせてはや20年も続いたわけですから、もう潮時でしょう。バイデン大統領が「今年の9月11日まで」と拘ったのは、節目として「20年を越えるわけにはいかない」という思いでしょう。既にアフガニスタン紛争で、米軍を含む3,500人以上の多国籍軍人が犠牲になりました。米軍だけでも死者は2200名以上、負傷者は2万名を越えます。費やした費用は1兆ドルを越えます。この政治的にも経済的にも派遣国の国益がありそうに思えない不毛の地に、米国のみならず英国その他のNATO軍の軍人を引き続き派遣継続する意義があるのだろうか、という本質的な命題の問題です。もはや、従来の意味での軍事行動の「勝利」は望めず、平和をもたらし民主的な国家を樹立するという理想など夢の夢。ただ、今より悪くしないためだけのために?米国はじめNATO軍の若者を危険に晒し続けるのか?っていう話でしょう。20年と言ったら、もはや初期の戦闘を経験している兵隊さんと、現在のアフガン政府軍の治安維持を「教育訓練支援」という名で実質的に治安維持任務を実施している米兵とでは世代も違い、置かれた状況も違います。明るい展望が見えるならともかく、見えないわけですから。終わりにしましょう。


(了)

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