カザフとウクライナ: まるでジャイアンなロシア

カザフスタンの反政府デモをテロとみなして徹底鎮圧
2022年1月初旬、カザフスタンで燃料値上げ等に抗議する反政府デモに対し、政府は彼らをテロとみなして徹底鎮圧の姿勢で臨み、ロシア主導の集団安全保障条約機構(CSTO)に加勢を要請し、直ちにロシア軍が来援、治安維持に当たる状況となりました。政府側の苛烈な鎮圧により、デモ側の人的被害は9日の発表で死亡164名、逮捕・拘束者6千名に上る模様です。
ロシアのプーチン大統領は、旧ソ連圏の親ロシア国家・政権に対して、盟主ロシアの圧倒的軍事力を後ろ盾とし、親ロシア政権の体制を強力にバックアップする姿勢を示しました。
ロシアのウクライナ侵攻阻止をめぐるロシアと米国はじめ西側諸国の外交の行き詰まり
ロシアの侵攻開始が懸念されるウクライナ情勢をめぐり、米国のバイデン政権は、1月10日にスイスのジュネーブにて米ロ間の高官協議、続いて12日に北大西洋条約機構(NATO)ロシア理事会、13日に欧州安保協力機構(OSCE)の会議を持って、ウクライナ情勢の緊張緩和やロシア側の安全保障の保証要求などについて協議を予定しております。
しかし、一連の会議の前から、ロシアも米欧も異口同音に「緊張緩和」や「懸念の払拭」に至る会議の成果に期待していない旨のコメントを発しています。それは、ロシア側が無理を承知の要求(※)を米欧にかまし、その要求の達成を追求してガンとして妥協・交渉の余地を見せないことに起因しています。(※ロシア側の「安全保障上の保証」3条件: ①今後NATOはロシア近隣の東ヨーロッパ諸国へと加盟国拡大をしないこと、②NATO軍はロシア近隣のバルト諸国等における活動〈NATO部隊の配置や訓練の実施、NATO製のミサイル配備などを含む〉を中止し同地から撤退すること、③(最重要)NATOはウクライナを決して加盟国としないこと。)
結局、ロシアは外交交渉をアリバイのように続けるものの、外交交渉で解決する気はないようです。
「旧ソ連圏を絶対手放さないぞ」と時代の空気を読まずに主張するロシア
本来、ロシアも中国も北朝鮮も、曲がりなりにも近代国家としての常識的な「国際協調」や「民主」や「自由」の尊重などを体裁だけでも整えるものです。「体裁だけでも常識的・良識的であろうとする」ことが国際社会の社会規範であり、時代の空気だったはずなのに、なにか最近のロシア・中国を見ていると、そうした時代の空気はかなぐり捨てて、自己中心で悪ぶることなく自己の立場の正当性を主張し自己のエゴを臆面もなく貫き通す、人気漫画「ドラえもん」のジャイアン化してきているなぁ、とつくづく思うところがあります。今ロシアがやっていることは、1950~60年代の米ソ冷戦構造下のソ連の衛星国に対する態度ですよね。ハンガリーやチェコでのソ連に対する離反の動きが出た際に、ワルシャワ条約機構の枠組みを盾に、ソ連軍が治安維持の名目で完全にその動きを圧殺。今回のカザフスタンやウクライナに対するロシアの態度は、旧ソ連圏の親ロシア国家・政権は力づくで守り抜き、ロシアの望まない民主化推進やいわんやNATO加盟などは絶対許さない、という「自己中心で悪ぶることなく自己の立場の正当性を主張し自己のエゴを臆面もなく貫き通す」、まさにジャイアン状態です。これでは、冷戦期のソ連の態度と同じです。
第2次世界大戦前夜の英国チェンバレン首相の宥和政策の轍を踏むべからず
惜しむらくは、これを諫めるべき米国バイデン政権の態度が紳士的・良識的すぎること。ジャイアンに対し、「できすぎ君」の態度で臨んでいることです。ジャイアンに対しては、相手の良識や国際協調の精神などに期待することなく、危機に臨んでは「ジャイアン」返しで臨むこと。第2次大戦勃発前の英国のチェンバレン首相のドイツに対する宥和政策の轍を踏んではいけない。すなわち、西側も軍事力で事を構える態度で、「レッドラインを越えるんじゃないぞ!越えたら我々も腕づくでねじ伏せるぞ!」という意を決した態度で対応することです。
私がこの件に拘るのは、ロシアを見て自分の意を強くする日本の困った隣人、中国と北朝鮮がこれに続くからです。奴らが「自己中心で悪ぶることなく自己の立場の正当性を主張し自己のエゴを臆面もなく貫き通す」ジャイアンとして、日本及び周辺諸国に必ずや災厄を巻き起こすことになるからです。火事は対岸のうちに消しましょう。
(了)


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