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2020/08/05

追悼李登輝元総統:日本人の心を持った台湾の主権と民主化の巨星墜つ

 前回、韓国の救国の英雄白善燁将軍の話を書かせていただきました。今度は台湾の主権を守り民主化を達成した英雄李登輝元総統が2020年7月30日に97歳にてご逝去されました。
345px-總統李登輝先生玉照_(國民大會實錄)
(wikipediaより)

 惜しい方を失くしました。李登輝元総統なくして現在の台湾の繁栄いや存在はなかったでしょう。特に、中国からの再三再四に渡る軍事・外交的恫喝に一歩も退かず、されど決定的衝突を避けて、台湾の(「独立」と言えないまでも)「主権」を守りきったこと。民主化が極めて難しい中国4000年の歴史の中で、台湾人自らの手により、しかも血の粛清もなく民主的手段をもって民主化を成し遂げたこと。この二つの偉業は李登輝元総統なくして成し得なかったと言えます。しかも、李さんご本人は大陸から台湾に渡ってきた中国人ではなく、生粋の台湾人です。終戦後に中国大陸から共産党軍に敗れて台湾に逃げ込んできた国民党の中国人達が台湾を統治し、20%に満たない中国人が80%以上を占める台湾人を搾取する圧政を敷き、この間に2.28事件という大虐殺まで起きています。戦後、農業技術者として誠実真摯に歩んできた李さんが49才を過ぎて、蒋介石の後を継いだ息子の蒋経国に抜擢され、憎むべき国民党に入党し、その中で政府部内の要職や台北市長等を経て、副総統にまで上り詰め、蒋経国総統の死によって総統に就任。そして台湾では無理とまで言われた総統の民主選挙による選出を自ら達成します。普通の国の歴史なら、ここで血で血を洗う内戦や権力闘争がありそうなのに、李さんは全くの民主的かつ平和的な手段のみで、国民党独裁制の中で中国人たちを一人ひとり切り崩し、最後に民主選挙で国民党の独裁体制そのものを解体してしまいました。基本は「不屈の信念を腹に据えた誠実真摯な現実主義」という感じでしょうか。特に、与えられた職務に一生懸命、誠実に任務を果たし、その職務の中で常に国民のためになる何かを創意工夫し、献身的に努力する姿勢が、支配層の中国人をもってしても敬意を持たざるを得ないものだったと言います。

 他方、李さんは親日家としても有名でした。日本統治下の台湾に生まれ、日本の教育を受け、自ら「日本精神」や「武士道」を説き、ご自身がよく「私は22歳まで日本人だったのです。」とご発言されるほどの親日家でした。京都大学農学部に学ばれ、学徒出陣にて出征され、終戦時は陸軍少尉として終戦を名古屋で迎えており、戦死した実兄が靖国神社にお祀りされていることを名誉に思われ、靖国神社に参拝されたほどでした。また、日本語に関しては、「若い時代に日本統治下の教育を受けたから」という環境要因もあるでしょうが、「今でも難しいことを考える時の頭の中の言語は日本語です。」と言われるくらい。むしろ台湾語なまりが強いせいか、中国本土の標準語の北京語は一番の不得意だったと言います。
Lee_Teng-hui_younger.jpg
中学時代の李登輝さん(Wikipediaより)

 そんな李さんが、口癖のように仰っていた我々日本人に対する言葉は、「最後に、もう一度繰り返して申し上げておきたい。日本人よ自信を持て、日本人よ「武士道」を忘れるな、と。」でした。(李登輝著「『武士道』解題―ノーブレス・オブリージュとは」小学館、2003年)
 また、こうも仰っています。
・・・まことに残念なことには、1945(昭和20)年8月15日以降の日本においては、そのような「大和魂」や「武士道」といった、日本・日本人特有の指導理念や道徳規範が、根底から否定され、足蹴(あしげ)にされ続けてきたのです。・・・
・・・いま日本を震撼させつつある学校の荒廃や少年非行、凶悪犯罪の横行、官僚の腐敗、指導者層の責任回避と転嫁、失業率の増大、少子化など、これからの国家の存亡にもかかわりかねないさまざまなネガティブな現象も、「過去を否定する」日本人の自虐的価値観と決して無縁ではない、と私は憂慮しています。・・・
(前掲「『武士道』解題―ノーブレス・オブリージュとは」)

 いやー、ご指摘が痛いほど滲みますね。
 白善燁将軍、そして李登輝元台湾総統、お二人とも我々現代の日本人が見失ってしまった日本人本来のアイデンティティーをお持ちの方でした。心からご冥福をお祈りいたしますとともに、ご指摘のように「武士道」精神、道徳心を我々一人ひとりが日々自らに問わなければいけない、という思いを強くいたしました。
〈合掌〉

補追: 腹に据えかねることがあります。李登輝さんのご逝去に関連した記者の質問に対し、菅官房長官は「政府として誰も台湾での葬儀に行かない」旨の発言をいつものように淡々としました。中国政府を刺激しないように、という外務官僚の台本通りに回答したのでしょうが、お前は官僚か?バカ野郎もいいところです。中国の「南京大虐殺」や韓国の「従軍慰安婦」、更に「尖閣列島」などの問題で、ともすると中国や韓国に責められっぱなしの日本を、李登輝さんは明快に、かつ、キッパリと否定され、援護射撃をしてくれました。常に日本のことを親身に憂い、直言をして来てくれた大恩ある李登輝さんに、葬儀の参加により政府として誠意を見せるくらいの胆がないのか?せめて苦渋に満ちた顔で言えよ。聞くところによると、オリンピックが延期になった森元首相が行くと仰っているようです。森さんじゃなぁ・・・。習近平の鼻をあかして、歴代総理が数名並んで行くくらいの政治家としての胆力を見せてもらいたいものです。せめてもの救いは、安倍総理が李登輝さんのご逝去についてコメントを求められた際、涙ぐんでいたことです。
李登輝さんが繰り返し述べられた日本人への言葉を今一度記します。
「最後に、もう一度繰り返して申し上げておきたい。日本人よ自信を持て、日本人よ「武士道」を忘れるな、と。」

(了)


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2020/07/27

英雄逝去: 韓国を救った師団長の突撃

 ちょっくら多忙で2週間ほどブログを書く時間がありませんでした、スミマセン。

 2020年7月10日(金)、朝鮮戦争における韓国の救国の英雄、白善燁(ペク・サンヤプ)大将が99歳のご長寿にて静かにご逝去されました。日本ではほとんどニュースになっていませんが、本当に韓国にとって救国の英雄でした。文在寅韓国大統領は、自らの偏狭な考えから白将軍を「親日の売国奴」と見なして生前から冷遇し、ご逝去に際して葬儀や埋葬も冷遇。悲しい話です。実は防大生の頃、ご本人にお会いしたことがあります。豪傑タイプではなく、冷静冷徹な判断力と燃えるような愛国心や義憤を併せ持ち、眼光鋭く、それでいて物腰の柔らかい好々爺でした。我々日本人も是非覚えておくべき真の英雄のお話しを読んでやってください。
MajGen Paik Sun Yup
白善燁准将(第1師団長当時)

<朝鮮戦争以前>
 白善燁大将は、1920年、日本統治下の平壌近郊で生まれ、満州国軍官学校(日本でいう予科士官学校)を首席で卒業。本来なら日本の陸軍士官学校に留学するところ、戦時中で留学がなくなり、満州国軍将校として対ゲリラ戦に従事。ご本人の意識としては、朝鮮民族の誇りを胸に、大日本帝国陸軍の将校教育を受けて育ち、大東亜共栄の夢を抱き、満州国軍所属の帝国軍人として当時の任務に邁進した。そして、終戦を満州国軍中尉として平壌にて迎える。

 戦後、新生統一朝鮮国家の創生に燃えようと、知己のある民族派指導者の事務所に勤務。そこでは若き日の金日成とも接触している。ところが、朝鮮国家の建国どころか米ソの南北分断統治下となる。朝鮮半島の北半分はソ連の占領下で、金日成がみるみる力をつけ、日本帝国主義の先棒を担いだ!との理由で自分のよく知る軍人仲間が粛清される状況を見て、自分にもいつか起こる危険を肌で感じ、故郷を離れてソウルに渡る。南側にて、韓国軍の前身である南朝鮮国防警備隊に入隊する。

 朝鮮半島は、第2次世界大戦の終了の1945年から1949年の間に、北はソ連、南は米国が主導する分断国家として歩き始めた。創成期の韓国軍は旧帝国陸軍将校が基幹要員であり、入隊時の中尉からあれよあれよの間に連隊の創設を任され連隊長(中佐)に。1950年6月の朝鮮戦争勃発までの間、旧軍エリートだった白中佐はメキメキと頭角を現し、北朝鮮が突然の奇襲攻撃を開始した6月25日の時点では、事実上の国境となった北緯38度線の東西90キロを担任する第1師団長(大佐)を拝命していた。その日、白師団長は軍の高級課程に入校中で師団を離れていた。

<激戦朝鮮戦争>
 南朝鮮=韓国にとっては全くの奇襲を受けた形となり、北朝鮮の突然の奇襲的総攻撃で事実上の南北の国境だった北緯38度線を突破され、一挙に侵攻を甘受してしまう。なんと、4日で首都ソウルが陥落。攻めてくる北朝鮮の追撃を恐れて、まだまだ川の南岸に逃げようと住民が橋に殺到しているのに、韓国軍はソウルを流れる漢江に架かる橋を住民ごと過早に爆破し、逃げられなかったソウル市民は北朝鮮軍に手を上げざるを得なくなり、後年「漢江の悲劇」と名がついた。

 そのくらい、韓国軍は北朝鮮軍に押されに押された。当時、終戦後に駐留していた米軍が南朝鮮から撤退していた。中共軍とは戦い慣れた旧帝国陸軍育ちの将校がメインだった韓国軍は、旧日本軍の装備に加え米軍供与の装備で米軍の訓練を受けており、恐らく北朝鮮軍を舐めてかかっていたのだろう。北朝鮮軍は中共軍の装備や教育訓練を受けていない。T-34などの主力戦車を始めとしたソ連軍の装備で、ソ連軍の顧問団の下で教育訓練を受けていた。圧倒的な火力と装甲打撃力、そして前進する際に市民を先頭に立たせる非人道的進撃。押されに押された韓国軍は、いや韓国政府は、もはや朝鮮半島南端の釜山周辺に押し込められた。もはや風前の灯火。

<師団長、突撃す>
 そんな血みどろの戦場で、自らはマラリヤに罹ってフラフラになりながらも、敗走する韓国軍の将兵達を叱咤激励する白師団長(准将)の姿があった。

 場所は多富洞(タブドン)、釜山の北方約100キロの地方都市大邱(テグ)の更に北約10キロの山間の隘路。釜山に追い込まれた南朝鮮(韓国)の市民の生命・財産を守る最後の防波堤となる場所。韓国軍はここまで押されに押されてきたが、ここを突破されると一挙に釜山まで侵攻されてしまう。白師団長はこの多富洞防衛の意義・重要性が痛いほど分かっていた。しかし、現実問題として目の前にいる将兵達を見ると、師団とは名ばかりでもはや部隊編成もグダグダ状態。敗走に次ぐ敗走の将兵達は、我先に敵の弾の飛んで来ない後方に下がろうと浮き足立ち、地に足がついておらず、目も座っていない。南朝鮮の市民の生命・財産、政府の命運がどうなるかなんて知らない、どうでもいい、もはや自分の命が助かることしか頭にない。白師団長は、このままでは一挙に抜かれてしまい、南朝鮮=大韓民国という国が無くなってしまう危機感を肌で感じていた。一刻も早く立て直さねば、と焦っていた。

 一方、米国が奇襲侵攻を受けた韓国軍に送ったスミス支隊(連隊戦闘団規模の勢力)という救援部隊が押し込まれた韓国軍とともにこの戦場に来ていた。米国は韓国軍の値踏みをしていたとも言える。米国は韓国を救うために米軍を本格的に投入し、若きアメリカ青年達の命をかけて守るに値する米国の死活的国益の架かる国なのか、その指標は「自分の国は自分で守る」という国家や、国民、軍の気概であった。その試金石としてスミス支隊という旅団にも満たない勢力を援軍を派遣したのだろう。スミス支隊は、劣勢の韓国軍と肩を並べて北朝鮮軍と戦いながら、同時に実際の韓国軍の戦いっぷりを見ながら韓国軍将兵の国を守る気概を査定していたと言える。白師団長には、それも主要な考慮事項だったに違いない。このままでは頼みの米国からも見離される、と。

 白師団長は情熱溢れる猛烈な愛国心を持つ一方、冷静緻密な分析力と冷徹果断な状況判断力を併せ持つ優秀な指揮官だった。当面の危機の焦点である目前の山、つい先日まで我が陣地だったが今や敵の最前線。この敵に対し、逆襲により再び奪取することを決心。ここで必要なのは、相対戦闘力で劣る物理的な劣勢への対策。韓国軍の貧弱な火力戦闘では敵に近づくことすら難しい。そこでスミス支隊の野戦砲・迫撃砲等の火力支援戦闘能力に目をつけた。米軍に敵の頭上に突撃支援射撃をしてもらい、敵の頭を下げさせ、この間に1師団が敵のすぐ近傍まで走り、最後は匍匐前進で敵陣地目前までにじり寄る。そして、米軍の突撃支援射撃の最終弾弾着とともに突撃開始。敵は米軍の猛烈な野戦砲の砲撃を受けて、頭を上げられない。最終弾がいつかも知らない北朝鮮。他方、韓国軍は予め米軍と最終弾弾着の時間を調整している。北朝鮮軍が米軍の突撃支援射撃で身を硬くしているスキに、時刻規制をした各級指揮官の時計をゴーサインに「突撃にー、、、(最終弾弾着時間)進め‼」で全員が立ち上がって敵陣地に突撃する。あとは至近距離の銃撃戦と銃剣格闘の肉弾戦。まさに、国を守る気概の権化のような場面である。

 白師団長は目前の敵のいる山への突撃を至短時間に偵察、計画の後、スミス支隊に行って火力支援の調整を済ませた。そして最後に残った最も厄介な仕事は、敗走し浮き足立った将兵達の目に今一度祖国防衛の炎の点火をし、突撃する気にさせる仕事だった。

 この時、白師団長が浮き足立った将兵達を座らせて落ち着かせつつ、一旦火の消えた闘魂に火入れをした有名な訓示内容(抜粋)は以下のようなものだった。これを聞いた将兵達はもう一度銃を手に取り、敵のいる山を睨み、故郷や愛しき家族の安寧を祈って決死の突撃を敢行した。突撃は成功、朝鮮戦争序盤戦で初の勝利であり、共に戦ったスミス支隊の、否、米軍の信頼を勝ち得た。これを契機に韓国軍将兵の国を守る気概は復活し、じ後の長く辛いシーソーゲームに耐えて国を守り切った。そのキッカケとなったのが、以下の白師団長の魂の叫びである。

 「諸君、連日連夜の激闘、誠にご苦労様、感謝の言葉もない。よく今まで頑張ってくれた。だがここで我々が負ければ、我々は祖国を失うことになる。我々がこの多富洞を失えば大邱が敵の手に落ち、大邱を失えば釜山の陥落はもう目に見えている。そうなればもう我が民族の行く所はない。今、祖国の存亡がこの多富洞の戦闘の成否に掛かっているのだ。我々にはもう退がる所はないのだ。死んでもここを守らなければならないのだ。見よ、我々を助けに地球の裏側からやってきた米軍が、我々を信じ、あんな谷底で戦っているではないか。信頼してくれている友軍を裏切ることが大韓の男にできようか。いまから師団長の俺が先頭に立って突撃し陣地を奪回する。諸君は俺に続け。もし俺が退がるようなことがあれば、誰でもいいから俺を撃て。間もなく米軍の突撃支援射撃が始まる。支援射撃の最終弾とともに突撃する。よし、前進開始、俺に続け!」 (1950年8月21日、多富洞488高地を前にして)

 この訓示のあと、師団長が先頭を切って前進開始。将兵はこれに続いた。師団長自ら先頭を切って突撃をするなんて前代未聞である。だが、白師団長の冷静な分析と韓国軍将兵のハートに火をつけた熱い訓示と陣頭指揮の突撃により、前述のように突撃は成功。韓国軍はこれを契機に戦況を逆転した。まさに救国の英雄。この時の白師団長の突撃無くして、現在の韓国はない。この世に存在しなかったかも知れない。

<私見ながら>
 前述したように、あの時多富洞に白将軍がいなかったら、あの訓示がなかったなら、或いは、白師団長自ら先頭を切って突っ込む突撃がなかったなら、・・・・今の韓国の繁栄はなかったでしょう。敗走した将兵もろとも、釜山で北朝鮮に殲滅され、韓国という国家は亡くなっていたでしょう。

 そんな救国の英雄に対し、文大統領は自らの偏狭な主義主張から、「親日」のレッテルを張って冷遇し、葬儀についても徹底して冷遇しました。唯一、韓国軍だけは政府の制止を振り切って陸軍墓地にて軍隊葬を敢行し、救国の英雄に報いました。まだ韓国軍には心ある軍人たちがいるのが嬉しい限りであり、救いですね。

 防衛大学校の学生時代に、白善燁将軍にお会いしたことがあります。しかも光栄にも、韓国にて朝鮮戦争の戦史研究のため主要な戦場を白将軍ご自身にご説明頂く機会を得ました。この多富洞の突撃についても、現地にて白将軍自らご堪能な日本語でご説明いただきました。多富洞の突撃について、ある防大生が旧日本陸軍をやや蔑んだ表現をし、白将軍の指揮統率や現代の韓国軍に賛辞を述べた際のこと、白将軍はその言葉をさえぎってこう仰いました。「いやいや、貴方のお国(日本のこと)の帝国陸軍から教えていただいたことを忠実に守っただけですよ。旧帝国陸軍の教育訓練は素晴らしかった。現在の韓国軍は、米軍のドクトリンや装備を取り入れているがそれは形の話。不屈の精神や拳(こぶし)の風格は米軍なんかじゃない、旧帝国陸軍のマインドです。私の頭の中には、満州国軍官学校での教育訓練や中国国境での戦闘で先陣を切っていった貴方のお国の先輩方の立派な戦いぶりが今でも理想形としてある。常に与えられた任務の完遂を目指して、常に自分のことは後回しにして部下将兵の世話をし、叱咤激励し、目の前の目標を立てては自ら先頭に立って部隊を引っ張り、その目標を達成させる。常に笑顔で、父や兄のような存在だった。軍人として、ずっと追い続けても追いつけない憧れの姿だった先輩方が大勢いた。しかも皆、若くして祖国を離れた辺境の戦場に倒れていった無名の英雄でしたよ。私は今も忘れられない。」・・・私こそ、この言葉が忘れられません。その後の自衛隊幹部としての人生で、白将軍のこの言葉は常に私の心の中にありました。

 白将軍、心から哀悼の誠を捧げさせていただきます。
 (合掌)


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2020/06/26

ボルトン回顧録の功罪: 興味深いが守秘義務違反‼

 トランプ米大統領の元補佐官ジョン・ボルトン氏の回顧録が大きな反響を呼んでいます。特に、大統領補佐官として仕えたトランプ大統領を「統合失調症患者のような考え」と批判してこき下ろすなど、大統領選挙の時期も時期だけに、非常に興味深い内容のようです。しかし、そもそも守秘義務違反でダメでしょ‼というお話。
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(2019年9月11日付yahoo news記事「トランプ大統領、強硬派のボルトン大統領補佐官を解任。アメリカの対イラン、対北朝鮮政策は軟化か」より)

 ボルトン氏はネオコンの超タカ派。これまでも、北朝鮮やイランを先制攻撃すべきだ!と主張することしばし。それでいて、父ブッシュ政権で国務次官補、息子ブッシュ政権で国務次官、後に国連大使など、重責を有するポストを歴任。そして2018年3月トランプ米大統領に請われて、マクマスター氏の後任として国家安全保障問題担当大統領補佐官についていました。しかし、外交・安全保障政策において大統領と方向性が合わず、解任とも辞任とも言われる辞め方をしています。

 肝心の回顧録「The Room Where It Happened」は、2020年6月23日出版され、大好評。ナルホド非常に興味深く、面白い内容のようです。まだ実物を読んでいませんが、この回顧録を検索すると様々な角度から内容が伝えられています。

 特に、トランプ米大統領の外交・安全保障分野での様々な裏話が満載。トランプ大統領の政策の最優先の考慮事項は自身の大統領選での再選であり、考えているのは大統領選のための国民(特に自身の支持者)へのPRのパフォーマンスばかり。およそ外交や安全保障の素養も基礎知識も哲学もなく、驚くほど幼稚な質問を外交の場で(本人は大まじめ)何度もかました模様。ボルトン氏はトランプを評して「統合失調症患者のような考え」と批判しています。

 また、もう一つ目を引く内容として、米朝首脳会談を何とかマッチメイクしようと、韓国の文在寅大統領が我田引水的な策略を巡らした話には韓国も騒然としているようです。何と文政権は、米朝首脳会談を成り立たせるために、自身の高官を使ってトランプ米大統領にも金正恩にも相互に自分の出した条件に相手が同意しているかのようにウソをついて仲を取り持った模様。目下、文政権はボルトンの回顧録に猛然と抗議をしているようです。

 ナルホド、この回顧録は読んだらとても面白いのだろうと思います。さぞ、この回顧録は売れるでしょうね。
 しかしながら、これは反則ですよ。およそ外交・安全保障に携わった者が、自身が関わった外交・安全保障の課題について(しかもそのほとんどが今も直面している課題ばかり)、かくもペラペラと暴露することが許されるのか?信義に悖る問題ですね。
 外交や安全保障における自らの政権内の喧々諤々の議論や、相手国との交渉における生々しいやりとりなどというものは、秘密中の秘密です。薄らぼんやりと、外に漏れ伝えられ、外野の記者や専門家が様々な憶測でいろいろと論じる、これは何を語ろうが問題ありません。しかし、仮にも米国大統領補佐官という立場にあった者が、自らが大統領を補佐する職務の中で携わった外交・安全保障上の裏話を回顧録に書いて公表するなんてありえないことですよ。なぜなら、その裏話の内容って、まだon-goingな外交・安全保障の課題でしょ?いま今の外交・安全保障の生ものの問題でまさに死活的国益がかかっている、人の命も関わっている重要課題ですよ。ペラペラ喋ってんじしゃねぇよ、バカ野郎‼という話です。
 およそ外交・安保に携わった者は、脂っこい部分については公にすべきじゃありません。10年20年経ってから、当時仕えた大統領が亡くなるなど、もはや歴史になってから語るのなら分かります。間違いなく守秘義務違反、国家・国益に対する背信行為です。
 この野郎は、二度と外交・安全保障の表舞台で仕事をさせたらいけませんね。トランプのことを評して「統合失調症患者のような考え」と言った言葉、吐いたツバは、そのまま本人の顔面にかかります。人のこと言えるのか?バカ野郎はお前だよ!

(了)

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2020/02/15

北朝鮮:新型コロナ拡大の危険性

<北朝鮮は新型コロナを水際阻止に自信?>
猛威を振るう新型コロナに対し、目下鎖国中の北朝鮮は、自信を持ってシャットアウトしていると豪語しています。発症例はゼロであり、空路も陸路も国外からの旅客を拒否し、既に北朝鮮に入国した人員に対しても30日間の缶詰め期間を実施。確かに、表面上水際で阻止しているように見えます。

<既に感染拡大かも>
しかし、韓国メディアは、北朝鮮では実際には新型コロナウイルスの感染例が出ていると報じています。医療技術レベルや感染症対策が不十分であるにも関わらず、「自己完結で防護できる」として外部の援助を拒否する北朝鮮。実際に既に新型コロナの感染患者が出ているとすれば、満足な医療は平壌のみ、感染の検査キットもないため、感染の拡大が懸念されています。
WHOや米国も、北朝鮮でのパンデミックの危険性を懸念して、感染症対策の技術的援助の受け入れを呼びかけています。(VOA2020年2月14日付記事「US ‘Deeply Concerned’ North Koreans Vulnerable to Coronavirus」及び「WHO: North Korea Able to Test for Coronavirus, But No Cases Reported」参照。下の写真も同記事より。)
20200215144040b9b.jpeg

労働に勤しむ北朝鮮労働者はマスク生産中
FILE - Workers produce masks for protection against the new coronavirus, at the Songyo Knitwear Factory in Pyongyang, Feb. 6, 2020.

<私見ながら>
◯ 私見ながら、北朝鮮は感染症対策の技術援助は受け入れないでしょう。自国の表面上の自己完結性を誇示し、余計なことはするなと拒否するでしょう。特に、米国からの支援では尚更拒否(非核化をめぐる米朝交渉の行き詰まりから)するでしょう。もし、実は感染患者が既にいたとしても、感染検査ができないので、怪しき者は秘密裡に隔離し、死亡例があっても闇に葬り、公表はしないでしょう。1918年1月頃の平昌五輪の際の新型インフルエンザの流行の際も、北朝鮮の医療体制の未整備、ワクチンや医薬品・器材の貧弱さから何十万名もの罹患者を出しながらも公表はしていない実例があります。

◯ パンデミックが起きると、ウイルスは生き延びるために進化し、更に感染力を増し感染源を多様化したり、薬やワクチンへの耐性を上げたり、更に手強い未知の新型ウイルス化するので、早期に抑え込んで撲滅するに越したことはありません。抑え込んでおいてそのウイルスを調査研究して「予防ができ治せる既知のウイルス」にしていくことが何より。北朝鮮が温床にならないように、少なくともWHOとの連携・協力は進めてもらいたいですね。

(了)

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2020/02/13

フィリピンが米軍駐留拒否を発表

フィリピンが米軍駐留拒否を発表

フィリピンのドゥテルテ大統領が、2月10日(月)に在比米軍基地協定の撤回を公式に発表、米国にも伝達しました。同大統領が政権についてから何回もこうした動きはあったため、またかよという感はありますが今回は「公式」であり「米国より中国やロシアとの連携を望む」と同大統領の発言があり、エスパー米国防長官が批判的なコメントをするなど内外に波紋を呼んでいます。よく指摘されることですが、フィリピンという太平洋及び南シナ海上の戦略的重要性のある位置に在比米軍が撤退すると、必ずや中国の進出が不可避になります。ドゥテルテ大統領ことですから、カマをかけているのかも知れませんが、アジア太平洋地域の戦略環境が変わってしまうかもしれない大問題です。
(VOA2020年2月11日付記事「Philippines Breaks Major Security Agreement with US」及び「US Defense Secretary: Dissolving Philippines Military Pact a Move in 'Wrong Direction'」参照。下の写真も同記事から)
20200213230934079.jpeg

Philippine President Rodrigo Duterte delivers a speech during the 11th Biennial National Convention and 22nd founding anniversary of the Chinese Filipino Business Club, Inc. in Manila, Philippines, Feb. 10, 2020.


<状況>
①2020年2月10日(月)、ドゥテルテ比大統領は在比華僑ビジネスクラブでのスピーチにて、在比米軍の地位協定である在比米軍駐留協定を撤回すると発言。これを裏付けるようにフィリピンの外相がツイッターにて正式に在比米国大使館に同趣旨の書簡を送付したことを明らかにした。

②同日、ブリュッセルにてNATOの会議にだ参加中のエスパー米国防長官は、「書簡が来たばかりなのでよく消化しないといけない。」と前置きしつつ、「間違った方向へ進んでいる」と不満を明らかにした。

<私見ながら>
◯ ドゥテルテとトランプは似ている
思うに、この二人は思考・行動パターンが似ていると思います。自国ファーストの考え方、過去の外交実績や経緯や外交習慣には捉われない非常識にも見える外交姿勢、時にブラフを使って大風呂敷を広げ高くふっかけ、時に相手国をボロカスに酷評し、舌の根も乾かないうちに賞賛したり、…。
今回の協定撤回も、国際情勢・戦略論的にはあり得ない非常識な話です。まだ発効中の協定を破棄するわけですから。またブラフか?とも思いますが、腹が読めないですね。

◯ 他方、今回の協定撤回発言の前に、トランプ米大統領と本件について内々で交渉が持たれたものの、結局折り合いつかず。ドゥテルテ大統領はそれについてトランプは信用ならないという発言をしています。しかし、米朝交渉よりは複雑ではないので、フィリピンを失うことの意義をトランプ大統領が理解していれば、交渉再開〜一転継続へ、ということも考えられます。

◯米軍がフィリピンから撤退すると中国を利するだけ
ドゥテルテ大統領の先のスピーチが為された場所が在比華僑の経済界の集いです。ドゥテルテ大統領は華僑を通じて中国に色目を使い、中国からも利を得ようという深謀遠慮でしょうね。しかし、それは危険。中国はウェルカムでしょうけど、米軍に代わって中国が南シナ海を挟んでフィリピンに軍港を貸与されたりしたら、戦略地図がガラッと変わります。南シナ海は中国の内海になってしまい、東沙・西沙・南沙各諸島は中国の事実上の軍事基地に変わっていくでしょう。フィリピンは短期的に中国から色々と支援を得れるでしょうが、中長期的には必ず後悔することになります。日本にとっても、多くのエネルギー含む戦略的重要性を持つ物資の海上輸送は中国に握られることを意味します。
何とか避けたいものです。
(了)


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