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2021/05/11

中国報道官が北斎画像で福島の処理水問題を強烈に批判


この野郎またやりやがったな。まずは下の画像を見てください。
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「Lijian Zhao(趙立堅中国外務省副報道局長)ツイッター2021年4月26日付」(https://twitter.com/zlj517)より

中国報道官が北斎画像で福島の処理水問題を強烈に批判
 2021年4月26日付中国政府のツイッターにて中国外務省の趙立堅副報道局長がツイッターに画像を添えて投稿。ご覧の葛飾北斎の名画、富岳三十六景の「神奈川沖の浪裏」を加工して、富士山を原発サイロに、波に漂う船に乗る人を防護服を着た作業員と思しき者が放射能標識のついた容器から処理水を海洋投棄している姿に描き変えた画像に偽造したものを投稿しました。ここにツイートのコメントとして、「An illustrator in #China re-created a famous Japanese painting The Great Wave off #Kanagawa. If Katsushika Hokusai, the original author is still alive today, he would also be very concerned about #JapanNuclearWater. (日本の葛飾北斎の名画「神奈川沖の浪裏」を中国のイラストレーターが加工したものです。原画の作者北斎さんが存命であったなら日本の原発処理水の問題には大いに関心を持ったことだろう。)」と添え書きしました。非常にたちの悪い名画を使った強烈な誹謗中傷です。これまでもこの趙副報道官は、どこかの国の外交政策や国内問題を、記者会見の場や公式ツイートにて、過激な言葉を使って誹謗中傷したり、ねつ造投稿画像を使って揶揄したり、意図的に問題を煽るスタイルで中国外交の一翼を担ってきました。一個人のアカウントではなく「China Government Official」という政府の公式アカウントを使って中国外交のコメントの流し方の一翼を担っているところが特徴的です。
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趙立堅 中国外務省副報道局長 (本人ツイッター(https://twitter.com/zlj517)より)

中国の対日外交の絶好の攻撃目標:福島原発処理水の海洋放出問題
 これに先立つ2020年4月13日、日本政府は福島第1原発で日々貯まっていく処理水の貯水の限界に鑑みて、海洋放出の方針を決めました。直後に麻生太郎副総理が同日の記者会見にて、WHOの定める基準を前提に余計なことを言いました。「飲んでも何ということはないそうだ」。 これを受け、前述の趙副報道局長が直ぐに噛みつきました。「飲めるというなら飲んでみろ」。 これに対し麻生副大臣は(4月16日の会見にて)、これまたよせばいいのに言い返しました。「飲めるんじゃないですか?」。
 ことほどかように、中国にとって対日外交において、この福島原発問題は、なかんずく処理水の海洋放出問題は中国にとって絶好の攻撃目標です。今や対日外交において歩調を合わせている韓国と相まって、徹底的に処理水問題について、やれ「無責任」だの「国際海洋法裁判所への提訴」だのと攻撃の手を緩めません。この問題は、確かに海洋放出する以上は近隣国として意見を言うのは尤もだとは思いますが、攻めている問題の本質についての科学的な根拠をもって攻めてこず、ただただ一緒くたに「放射性廃棄物」をそのまま海に流すようなイメージを言葉の端々に感じる責め方なのが許せないところです。悪意しか感じません。 日本政府は、一応、科学的根拠に基づいて「処理水」やその処分方法の検討について様々な検討をした結果、海洋放出という方法にした、その影響についても科学的な根拠をもって説明しています。 もちろん異論はあるでしょう。それが対抗する科学的根拠をもって攻め立てて来るなら、日本政府として真摯に受け止めねばならないと思います。 しかし、中国や韓国の処理水への「No!」の声は、科学的根拠に基づく反論というよりは「反日キャンペーン」の色合いしか感じられない程、ただの「生理的反発」の発露になっています。

特に、この絵の投稿は言語道断
 蒸し返すようですが、趙報道官のこの絵のツイッター投稿は許せませんね。
 こいつは、昨年11月に、現在中国と何かと関係悪化が懸念されている豪州について、アフガニスタンにおける豪軍兵の戦争犯罪の問題について、今回と同様の心無いねつ造画像をツイッタ―投稿し誹謗中傷しています。これもひどい話ですよ。下の画像をご覧ください。
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「Lijian Zhao(趙立堅中国外務省副報道局長)ツイッター2020年11月30日付」(https://twitter.com/zlj517)より

 細部は、私のブログの2020年12月9日付「『豪軍兵がアフガンの幼児にナイフを』中国報道官の異常なツイート画像の件」で取り上げたので、興味があったらご覧ください。
 上の画像ですが、・・・大きな豪州国旗の上で豪軍兵が、子羊を抱えるアフガニスタンの幼児の頭に豪州国旗を被せて、クビにナイフを突きつけています。「Don’t be afraid, we are coming to bring you peace! 怖がらなくていいよ、我々は君たちに平和をもたらすためにやって来たのだから。」というコメントが添えられた、写真のように見えるフェイク画像です。絵面があまりにエグイので、ここではモザイクがかけられた画像を貼りました。(趙報道官のツイッターでは現物が出ています。)趙報道官はこれにコメントをつけ、「Shocked by murder of Afghan civilians & prisoners by Australian soldiers. We strongly condemn such acts, and call for holding them accountable, (豪軍兵によるアフガニスタンの市民や捕虜の殺害があったとの報に、強い衝撃を受けた。我々はこのような行動を強く非難し、その責任を問う。」とツイートしました。
 このネタ元の豪軍の戦争犯罪というのは、アフガン戦争に派遣された豪軍兵が、派遣間もない新兵に現地での生き残りのための通過儀礼的経験として「拘束したタリバン兵と思しき現地民を射殺させる」という犯罪行為を一部部隊が実施していた、という悲しい事案です。豪軍内の部内調査で明らかになり、豪軍は綱紀粛正のため公明正大に公表したものです。起きた事案は悲しい事実ですが、豪軍の「辛い事実」を隠さず公表し、罰すべきものを罰する姿勢は見上げたものだと思います。他方、趙報道官は、当時悪化しつつあった豪中関係を反映させて、このツイートで揚げ足を取って誹謗中傷したわけです。豪州首相は当然激怒しました。
 つくづく、中国という国は普通の国ではないなと痛感します。こうしたツイート主が市井の著名人だったら謝罪がなくてもいいと思います。しかし、このツイートは一市民のきままな発言ではなく、政府報道官の公的なコメントと理解されるべきものです。国家がこうした挑発的なツイートをイケイケの報道官に出させる・・・普通の国じゃないですね。
 今回の「神奈川沖の浪裏」のねつ造画像も、同じ考えで中国外交の一翼を担っています。こんな挑発的な、しかもフェイク画像を使ってよその国を貶めるようなことします?日本政府はもっと激怒すべきです。

(了)

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2021/03/17

実はミャンマーの軍事政権も市民も反中の模様

実はミャンマーの軍事政権も市民も反中の模様
 今、注目を集めているミャンマー。報道されているイメージでは、軍事政権は親中派で中国にバックアップされていると見られています。しかし、軍事政権も、軍事政権に真っ向から対立している一般市民も、実のところ、中国に対してその影響力のミャンマーへの浸透を嫌い、軍も距離を置こうと試み、一般市民はミャンマー国内を縦断する中国資本の天然ガスのパイプラインに対してテロ攻撃を公言してはばからない状況のようです。
(参照: 2021年3月12日付VOA記事「Leaked Documents Suggest Fraying of China-Myanmar Ties」)

ミャンマーのクーデターに対する国際社会と中国の反応
 今回の軍部クーデターによる軍事政権の復活に対して、一般市民の反発が根強く、老若男女を問わず路上でデモを実施して軍事政権への「NO」を国際社会へアピールしているのは周知の通り。国際社会のほとんどが、軍事政権の民主派議員に対する不当な逮捕・拘束や非暴力の一般市民のデモに対する暴力的な鎮圧に対して厳しい批判を浴びせている。

 他方、ミャンマーの歴代の政権とも関係が深く、国連安保理事会の常任理事国でもある中国は、今回のミャンマーの軍事クーデターもデモへの暴力的鎮圧も、ミャンマー国内の内政問題であるため「内政不干渉」の原則を貫くべき、という主張をしている。

 このことからして、マスメディアの一般的な見方は、中国はミャンマー軍事政権の庇護者であり、ミャンマー軍部は中国と密接な関係、というものだった。(クーデター前に、最高司令官が中国にクーデターのGOサインをとりつける密約をした、との報道まであったほど。)

軍事政権は中国からのパイプライン警備の要請を断った模様
 しかし、事実は小説より奇なり。どうやらずっと複雑なようです。
 前掲のVOA記事によれば、VOAが入手した文書により、次のような事実が明るみになった。2月23日に中国政府がミャンマーの軍事政権に対して、軍事政権への反対派の暴挙の可能性があることから、ミャンマーの港湾から国内を縦断して中国の昆明に結ぶパイプラインの警備強化を要請し、更に、中国に関するマスメディアの好意的な報道を促進するよう要請した。しかし、ミャンマー軍事政権はこれに応えず、外国人ロビイストを使って、中国と距離を取る政策を画策している。

市民はパイプラインへのテロ攻撃を公言
 軍事政権に反発している一般市民も、対中国においては軍事政権と足並みを揃えて反中の姿勢を見せている。

 論より証拠として、市民のツイートを2例見ていただきたい。
Myanmar twitter

 このツイートで面白いのは、中国が「今ミャンマーで起きていることはミャンマーの国内問題である」という内政不干渉の論理を使っていることを逆手にとっていることだ。
「Hello China, if you are still concerning what's currently happening in Myanmar is internal affair, to blow up the natural gas pipeline that passes through Myanmar is also an internal affair for us as well. Let's see what can u say huh. 」(=中国よ、貴国が引き続き「今ミャンマーで起きていることは国内問題なのだ」と心配し続けているのならば、ミャンマーを縦断する天然ガスパイプラインが吹き飛ぶことも、これも我々にとって国内問題なのだ。さぁ、何か言い返せるかい?)

 また、もう一方のツイートでは更に踏みこみます。
「Dear UN, We need R2P reather(ratherの誤り?) than statements.
Dear China  We can no longer supply natural gas that's why we agreed to blow up the pipe line. This is our internal affairs please don't mind us.」 (= 国連よ、我々は言葉だけの声明などではなく、自国の国民を保護しない国で市民が弾圧に合っているならば、むしろ国際社会が「市民を保護する責任」を果たすことを必要としているのだ。中国よ、我々はもはや貴国に天然ガスを供給しない。なぜならパイプラインを吹き飛ばすことに合意したのだ。これはあくまで我々の国内問題なので気にするな。)

「国際社会がミャンマーの市民を守るべし、これは内政不干渉に優先する」という国際理念
 2つ目のツイートでは、「R2P」という言葉を使っているところが渋いですね。
 R2Pとは、「Responsibilities to protection=国民・市民を保護すべき責任」という意味で、本来、国家は自国の国民を保護する責任を有しますが、その国が自国の国民を保護しない場合は、国際社会が代わってその国の国民の保護をするのだ、という国連安保理でも認められている国際的な基本理念です。そして、この理念は、国際社会がその国の市民を守る責任については、「内政不干渉の原則に優先する」という決定打まで認められているのです。  

 但し、結局は「理念」なので、国際社会、例えば国連安保理がこの基本理念を根拠に行動に起こせるか、というと安保理事国に中国がいますから、拒否されますけどね。
しかし、国際的な理念としては十分正当な主張です。


 ミャンマーの状況に対し、我々日本人はマスメディアを通じてみているしかない状況なのが歯がゆいところですね。
 他方、軍にも市民にも反中感情を持たれているというのは、ミャンマー国内で幅を利かせている中国人の平素の行いが余程悪いのか、それとも歴史的に相当痛い目に会っていて中国にはいい感情を持てないのか、・・・。
 引き続き、ミャンマー情勢から目が離せません。

(了)

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2020/12/09

「豪軍兵がアフガンの幼児にナイフを」中国報道官の異常なツイート画像の件

中国報道官が豪軍の戦争犯罪をフェイク画像で揶揄するツイートを投稿
 中国の報道官たる者が、何でこういう大人気ないことをするのでしょうね。
 2020年11月30日、中国外務省の趙立堅副報道局長がツイッターに画像を添えて投稿。この画像が酷い。下の画像を見てください。大きな豪州の国旗の上で豪軍兵が、子羊を抱えるアフガニスタンの幼児の頭に豪州国旗を被せて、クビにナイフを突きつけています。写真ではなく合成?画像のようです。「Don’t be afraid, we are coming to bring you peace! 怖がらなくていいよ、我々は君たちに平和をもたらすためにやって来たのだから。」というコメントが添えられた、写真のように見えるフェイク画像でした。あまりにエグイ絵面なので、ネットで出回っている画像ではモザイクをかけています。趙立堅(Zhao Lijian)のツイッターでは現物が出ています。この画像は中国国内のウェイボーだかwechatだかからの転載のようですが、報趙道官自身のツイートで「Shocked by murder of Afghan civilians & prisoners by Australian soldiers. We strongly condemn such acts, and call for holding them accountable, 豪軍兵によるアフガニスタンの市民や捕虜の殺害があったとの報に、強い衝撃を受けた。我々はこのような行動を強く非難し、その責任を問う。」とコメントしました。
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豪州首相の激怒
 これが豪州の激怒を買い、ツイートから2時間足らずでモリソン豪州首相自身が同日の会見にて、「truly repugnant, deeply offensive, utterly outrageous …本当に不快で、非常に攻撃的で、まったく言語道断」という強い遺憾の意を示し、中国政府に対しツイートの削除と謝罪を求めました。一国の首相が、ここまで言葉を選びながらも、相当の怒りを堪えた表現で強い遺憾とツイート削除と謝罪要求をしたとしたら、普通はことの重大さと外交上の配慮から、相応の対応をするのが「普通」の神経を持った国の態度というものです。
(※ちなみに、豪州はアフガン派遣時の豪軍兵による戦争犯罪について数年かけて調査し、11月にモリソン首相や軍司令官が謝罪の記者会見を実施しました。当ブログの11月23日付「豪軍がアフガンで戦争犯罪、との悲報: 自衛隊への警鐘」をご参照ください。)

中国政府は豪州に謝罪どころか挑発で返礼
 豪州首相のツイート削除と謝罪要求の訴えに対する中国政府の対応は、拒否的なものでした。中国外務省の華春瑩(か・しゅんえい)報道官(よく中国関連のニュースに報道官として登場し、強気の発言をするオバちゃん)は、「The accusations made are simply to serve two purposes. One is to deflect public attention from the horrible atrocities by certain Australian soldiers. The other is to blame China for the worsening of bilateral ties. この(豪州首相の)主張には2つの目的がある。一つ目は豪軍兵士らによってなされた恐ろしい殺戮から世の関心をそらすこと。そしてもう一つは、中国を非難することで二国間の関係を悪化させることだ。」とケンモホロロのコメントを付して、ツイート削除も謝罪も拒否しています。

私見ながら
 つくづく、中国は普通の国ではないなと痛感します。今回のツイートが著名な一市民とかだったら謝罪がなくてもいいと思いますが、ツイートの本人は政府の報道官です。個人のツイート?というよりは政府の報道官のツイートなので、「談話」と言わないまでも、半ば公的なコメントと理解されるべきものです。こんな挑発的な、しかもフェイク画像を使ってよその国を貶めるようなことします?酷いことをしているのはむしろ中国軍兵でしょう。彼らがチベットで、新疆ウイグルで、少数民族に対してやっている民族浄化のような仕打ちや、香港で民主派の市民に対して弾圧を加えているのは一体何なんでしょうか。それを棚に上げて、報道官がこんなことをツイートで上げて、それを貶められた当該国が非難したら、その上司の報道局長が擁護するだけでなくさらに挑発する。つくづく普通の神経の国じゃないですね。
 この豪州に対する中国の態度は、元々は今回のコロナ騒動の際に、トランプの中国がウイルスの原因説を説いて国際的な調査の必要性を求めた際に、豪州のモリソン首相がこれに同調して独立調査団の必要性をコメントしたりしたことから始まりました。じ後、中国がそれまで一番の貿易相手で会った豪州からの肉やらワインやらに法外な関税をかけ、爾来両国関係は冷え切っています。
しかし、世界の普通の神経を持つ国々は、豪州の立場をよく理解しています。米国、フランス、英国など、豪州寄りのコメント寄せ、中国の対応を非難していますので。

(了)

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2020/11/23

豪軍がアフガンで戦争犯罪、との悲報: 自衛隊への警鐘

豪軍の戦争犯罪の悲報
 悲しいニュースながら、自衛隊への警鐘ともなる教訓に富むものです。
 2020年11月19日、豪軍(オーストラリア国防軍)は、アフガン戦争の際に米国主導の有志国連合で現地に部隊を派遣し現在まで駐留していますが、2009年から2013年の間に、明らかに戦闘中の不可避の交戦結果ではない事由での、所謂「戦争犯罪」にあたる捕虜や民間人の不法な射殺が39名も起きていたことを公表しました。
 2020年11月19日、豪軍のアンガス・キャンベル国防軍司令官は苦渋に満ちた表情で、豪軍の戦争犯罪疑惑について4年を費やして調査した報告書の内容を発表しました。この戦争犯罪は、豪軍の最精鋭の特殊部隊SAS(特殊空挺部隊)のベテラン古参軍曹が新米兵士に「最初の射殺」を経験させるという、一部の不心得な隊員たちによる恥ずべき兵隊文化であった、と釈明しました。ちなみに、豪軍は今回問題となったこのSASの特定部隊を廃止にしています。自分の所属部隊や出身部隊を軍人人生のバックボーンとする軍人として、不祥事の結果で部隊廃止に至るなどということは最も厳しい処分と言えましょう。
(参照: 2020年11月19日付VOA記事「Australian War Crimes Report Shows Young Soldiers Were Encouraged to Shoot Afghanistan Prisoners to Get First Kill」、及び同日付BBC記事「Australian 'war crimes': Elite troops killed Afghan civilians, report finds」)
ADF Chief
苦悩の表情で記者会見に臨むキャンベル豪州国防軍司令官(Chief of the Australian Defense Force Gen. Angus Campbell delivers the findings from the Inspector-General of the Australian Defense Force Afghanistan Inquiry, in Canberra, Nov. 19, 2020.)(2020年11月19日付VOA記事「Australian War Crimes Report Shows Young Soldiers Were Encouraged to Shoot Afghanistan Prisoners to Get First Kill」より)

私見ながら: 自衛隊への警鐘
 自衛隊も、国際平和協力活動として国連PKOや海賊対処行動など、紛争地と言わないまでもギリギリ紙一重の状況下で勤務しています。自衛隊の国際平和協力活動そのものは、派遣される際の非常に厳しい日本国内の法的制約から、活動する場所や活動内容において、非戦闘地域や非戦闘任務であることが条件ですので、平和的手段のみの大人しい活動です。しかし、偶発的な攻撃行為を受け得る可能性は現地の人々が被る可能性と同じ程度あるわけで、そうしたことも起きうるわけです。例えば、日本隊の現地での活動は、イラクでも南スーダンでもそうでしたが、日本隊の施設小隊が現地の道路、橋、浄水場などの整備をしているとして、その周囲に警備小隊が警戒配置につきます。施設小隊は作業に専念し、この間、警備小隊はずっと周囲を警戒するわけです。他国軍の場合、銃を持ったまま威嚇的な警戒をしますが、自衛隊の場合は指示されない限り丸腰で、しかも通行する現地住民に笑顔で手を振ったりしながら警戒します。顔に笑みをたたえつつも、サングラスの下の目は警戒心を怠らずに。この警備小隊は、普通科隊員によって構成され、この中にはレンジャー、空挺、特殊作戦群などの隊員もおり、彼らは現地で射撃訓練等も実施し、最悪の事態では、作業をしている施設小隊を安全に避難させるため、警備小隊が援護・誘導します。数年前に話題となった平和安保法にて、「駆けつけ警護」とか「宿営地の共同防護」が取りざたされましたが、こうした任務も彼らが実施します。現在は南スーダン派遣も終了し、当面こうした場はありませんが、この警備を担当する部隊の特殊作戦群やレンジャーのベテラン陸曹が、隊員たちの精神的な支柱です。警備小隊の誰もが、経験あるベテランの陸曹を心から信頼し、尊敬し、団結・規律・士気の中心となっています。そして、この精神風土・構造は、今回の豪軍の不法行為・戦争犯罪の下地と同じです。

 今回の豪軍の戦争犯罪は、豪軍の精鋭部隊にて起きました。精鋭部隊は豪軍が現地で担う任務の中でも、一番危険を伴う任務を任されます。自覚もしているし、自負もある。経験あるベテラン軍曹ほど、その自覚や自負ゆえに、「若い経験のない兵士が早く一人前になるように、厳しい状況に置かれても生きて帰れるように」との善意から発して、最初の一人を射撃で倒す「射殺体験」をさせるという不法かつ非人道的な戦争犯罪に手を染めました。若手兵士らは、良心の呵責に悩みながらも、信頼するベテラン軍曹の「善意」を断り切れず、結局は戦争犯罪に手を染めてしまったものです。

 自衛隊では、ベテラン陸曹と雖も、本人もまだ人を撃った経験がないはずなので、状況が全く違うので起き得ない話です。しかし、敢えて今回の豪軍の戦争犯罪の事例を「警鐘」と受け止めるべきだと思います。豪軍の精鋭部隊のベテラン軍曹の感覚や若手を育てたい気持ちは、陸上自衛隊のベテラン陸曹のそれと風土が一緒なので、あり得る話です。「警鐘」というのは、その際の判断基準として、今回起きたような不法行為は「不法」であり「戦争犯罪なのだ」という真っ当な神経を持つべきだということです。「戦地・紛争地」に近い派遣地域には、一種「戦時」感覚の通常とは違う緊張した雰囲気と、であるが故の「非日常」さから、「日本とは違う」という勘違いが起きやすいのです。そうした中で、緊張と非日常の中にあっても「正常」な感覚を見失わないことが肝心です。今回の豪軍の事件では、テロ攻撃をしてきた者やそれと思しき拘束した者たちに対して、若手の経験を積ませる通過儀礼のように実施され、射殺後に、あたかも戦闘中の交戦結果であったかのように死体の近くに銃や無線機を置くなどの偽装をしたそうです。多くの若手兵士は、この行為自体がトラウマとなり、事件後数年経ってからの調査の際に、良心の呵責に耐えかねて自白しています。その神経は正しい。オーストラリアのような民主国家は、もしや不法行為・戦争犯罪があったのではないか、という疑惑で調査をし、その調査において事実が誤魔化されずに明るみになります。

 日本もそうです。国際平和協力活動に参加する陸上自衛隊の隊員たちには、今回の豪軍での戦争犯罪事例を反面教師として、警鐘として受け止め、正常な神経、正常な判断基準を維持していただきたいものです。

(了)

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2020/09/10

中印国境の緊迫:一触即発、紛争再燃、拡大の危険性

中印国境の緊迫:一触即発、紛争再燃、拡大の危険性

voa20200907 China-India
2019年10月12日のインドのモディ首相と中国の習主席の会談(India's Prime Minister Narendra Modi (3rd R) and China's President Xi Jinping (3rd L) lead talks in Mamallapuram, on the outskirts of Chennai, India, Oct. 12, 2019.) (
2020年9月7日付VOA記事「Experts Warn China-India Standoff Risks Unintentional War」より)

<状況>
  2020年8月末、5月上旬の兵士間の殴り合いを契機に6月に対立が再燃したものの、一旦距離を取って収まって対峙していた中国・インド国境のヒマラヤ山脈西部の山岳地域の係争地で、再度双方が相手方の越境・動員を非難し合う緊迫した状況に戻った模様。
  双方とも政府指導者レベルは実質的な紛争再燃を望んでいないものの、専門家の指摘では、双方の国民のボルテージの高さを反映して偶発から一触即発の衝突事態になり、更に、近傍地域でインドと係争地を抱えるパキスタンの思惑も絡んだ紛争の拡大化が危ぶまれ、中印国境の緊迫への懸念が高まっています。
(参照:2020年9月7日付VOA記事「Experts Warn China-India Standoff Risks Unintentional War」、同日付Newsweek記事「China, India Accuse Each Other of Firing Shots at Border Ahead of Russia Meeting」及び「China, India Aim for Peace But Keep Edging Toward Conflict at Border」)

<私見ながら>
○ 中印の緊迫が危険な理由:「双方のナショナリズム」と「米国、パキスタンの要因」
  双方の政治指導者は軍事衝突を全く望まないと思いますが、怖いのは双方の国民世論のタカ派的な煽りによって、緊迫の国境地帯の中国とインドの兵士達が気を高ぶらせていることでしょう。5月上旬に起きた双方の兵士の「殴り合い」的な小衝突は、武器使用こそなかったものの、双方数十名の死者が出たほどです。双方のマスコミがナショナリズムを煽るため、国民世論としてイケイケムードが立ち込め、現場兵士も勿論のこと、現場を預かる小隊・中隊等の小部隊指揮官たちも異様な興奮の中にあって、双方の主張する国境がダブっている国境地帯で対峙をしているため、ちょっとした兵士の行動が「挑発行為」や「越境行為」に映るわけです。当然、作用に対して反作用が起き、今回双方が相手側の越境や発砲を非難する状況になっています。まだ銃撃戦に至っていないので緊迫のまま事態が推移していますが、一触即発であることに違いありません。
  ここにワイルドカードとして作用する大きな要因が2つあります。米国のインドへの肩入れ、及び中印の緊張の高まりに乗じたもう一つのインドの国境紛争の係争正面であるパキスタンの動向です。この2つの要因を単純な図式にすると、中国・パキスタン組vsインド・米国組、という対立軸になります。しかも、4ケ国とも核保有国。中国と米国は一応は核兵器の使用に関しては、合理的な政治的判断のコントロールが効いているので、紛争拡大したとしても核兵器の使用が取りざたされることはないと存じます。しかし、インドとパキスタンについては、相互に不倶戴天の敵、双方が「相手が核武装するならうちも自衛のために核開発せざるを得ない」との切迫感で核開発・保有に至っているので、いざという時にはエスカレーションの至る先に核兵器を控えさせているのが両国なのです。隣国同士でありながら、双方の国民の生命財産の潰し合いになることを辞さず、核の投げ合いに至る可能性があります。(同様の危険性があるのが、イランvsサウジなどの湾岸諸国です。)

○ タイミングの悪いことに米大統領選挙が迫る時期
  トランプ米国大統領の考えそうなこととして、選挙戦における現役大統領の大統領候補者としても強み・伝家の宝刀を使うかもしれないことが懸念されます。戦争に至るかもしれないという国家の危機に際して、大統領の強力なリーダーシップ発揮の場になり得ます。戦争になるかも?という非常時の大統領には国民の絶大なる支持が後押ししますから、トランプ大統領がこの誘惑にかられないとも限りません。中印の危機を米国が作為して火をつけておいて、自ら仲介役として火を鎮める、というマッチポンプです。緊迫する中印国境の状況下に、「米国が平和的な仲介に立つ」と建前を前面に出しつつ、インドに対する中国に劣る部分の直接的・間接的な絶大なる軍事力の支援やバックアップを提供し、インドに対する有事の全面支援を約束するなどの密約をした場合、インドが意を強くして冒険に出たり、国民世論的なイケイケムードが醸成されかねません。トランプ大統領は、自ら危機を煽り焚き付けておいて、自らが正直な仲介者(honest broker)を演じて危機を治める。世界の指導者を自作自演できるわけです。マスコミ論調は、選挙戦の対抗候補との論戦などはそっちのけで、中印国境紛争問題ばかりが世の注目を浴びることとなりましょう。絶好の選挙運動ですね。

  しばらくは中印国境に注目が必要です。

(了)

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