FC2ブログ
2020/02/09

シリアとトルコが全面戦争一歩手前

  日本のマスコミはコロナウイルスのニュースばかり喧伝していますが、中東に新たな火種が灯っています。内戦下のシリアに駐留するトルコが、ズルズルと泥沼に足を取られ、シリアとトルコの両政府軍間の正面衝突に瀕しています。
(VOA記事2020年2月7日付「Syrian Forces Advance on Rebels Despite Warnings from Turkey」(下の写真も同記事から)及び同2月6日付「Turkey Expects Russia to Immediately Stop Syrian Regime Attacks in Idlib」参照)
f09a34927092bee709cbe236c24baec8.jpg
In this photo released by the Syrian official news agency SANA, shows government forces entering the village of Tel-Toukan, in Idlib province, northwest Syria, Feb. 5, 2020.

◯ 状況
① 中東にアラブの春(春どころか春の嵐でしたが)が訪れた後、アサド政権下で独裁ながら平穏だった国内はISの嵐吹き荒れ、シリアは内戦状態になった。内戦はIS等の掃討が焦点となり、ロシア軍の支援を受けたアサド政権軍、米軍の支援を受けたクルド人武装組織、イランの支援を受けたシーア派武装組織が入り乱れ、共通の敵はIS等ながら相互に協力をせずにIS等はほぼ弱体化。IS等複数の反体制派武装組織は今やイドリブ県に追いやられた状態。そのイドリブ掃討が問題の焦点になっている。

② シリアにおける対IS戦で大活躍したクルド人武装勢力は、大きな犠牲が報われない結果となった。トランプ米大統領は大統領選(1916年の方)の公約通り、盟友だったクルド人武装勢力を見捨て、シリアからはほぼ撤退。クルド人武装勢力は後ろ盾をなくし今やクルド建国は諦めて流浪の民状態。イランが支援するシーア派勢力はイラクほどメジャーな存在ではなく、今やロシアの支援を受けたアサド政権の政府軍が主要な勢力。ここに立ちはだかったのがトルコ。トルコがシリア駐留を続けているのは、シリアへの領土的野望という侵略的意図ではない。トルコにとっての脅威は、アサド政府軍に追いやられる反アサド勢力や流浪の民と化したクルド人やシリア人の難民がトルコに流入してくること。既にシリアからトルコに360万人もの難民が流入し、トルコ国内で大きな社会問題となっている。その意図は防衛的であるが、やっていることは結構エグい。トルコはイドリブに逃げ込んだ反政府勢力の一部を支援してアサド政府軍と戦わせている。加えて、イドリブ県内にも停戦監視という大義名分の下で十数箇所に駐留し、陰に日向にその反政府勢力を支援し、半ば公然と援軍として戦っている。

③ かくして、トルコ軍とアサド政府軍は一触即発状態。既に1月下旬から2月初旬に小衝突は度々起きており、両軍は報復の繰り返しを双方辞めず一歩も引かない構え。トルコのエルドアン大統領は、「シリア政府軍に対し今月末までにトルコが停戦監視中のイドリブ攻撃を止めて撤退せよ!」とシリアに対して最後通告の構え。元々、エルドアン大統領はシリアにアサド大統領の打倒を標榜しているため、シリアのアサド大統領にとってトルコのエルドアンは不倶戴天の敵、2月中の撤退などあり得ず、一歩も引かない構え。
  トルコとシリアの軍事衝突はもはや避けられないかもしれない。

<私見ながら>
◯ トルコは戦争回避のため努力中
  トルコはその一方で、今年1月中に高官をロシアに派遣してトルコの高官と停戦を模索しています。また、シリアへの影響力の大きいロシアに直訴。トルコが支援する反政府武装組織の武装解除等を条件にロシアのシリア支援を辞めさせる合意を得たらしいです。ロシアにとっても、トルコとシリアの直接の本格戦争や決裂を望まない、ということのようです。しかし、現実には、ロシアは相変わらずシリアをバックアップし、シリア政府軍は優秀なロシア装備と潤沢な後方支援を得てパワーアップして攻撃をやめていません。

◯ またも曲者プーチンの深謀遠慮か
  合意したにも拘らず、ロシアはカエルの面に小便のこの態度。この辺がロシアのプーチン大統領の煮ても焼いても食えないところですね。恐らくはトルコを適度に弱らせ、御しやすいようにコントロールしているつもりではないか、と推察します。ある程度の軍事衝突をさせておいて、そこで「まぁまぁ」と間に割って入ってピースメーカーを演じ、トルコもシリアもロシアの影響力下に置きたい、という深謀遠慮ではないか、と読んでいますが、いかがでしょうか。

◯ 米国トランプとロシアのプーチンが線引きしたのかも
  深謀遠慮はいいけど、中東の戦略的な絵柄が益々複雑化しつつあり、新たな不安定要因として気が抜けませんね。イランの北や西の陸正面の中東はロシアが益々影響力を強めています。一方、米国トランプはこの地域からは明らかに手を引き始めています。他方、ペルシャ湾・ホルムズ海峡正面には死活的国益ありと見てイランへの締め付けを強めています。ロシアも米国も共通の敵はイランとして陸と海で自己の影響地域を分けているのかも。そんな邪推?を禁じ得ません。
(了)


にほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へ
にほんブログ村

国際政治・外交ランキング
スポンサーサイト



2020/01/29

トランプ中東和平案は選挙PRでしかない



間も無く発表されるトランプ米大統領の中東和平案が酷すぎる。本日、日本時間2020年1月29日には発表されるが、米国内外の報道でリリースされているところでは、あまりに一方的、イスラエル寄りの和平案であって、あれではパレスチナ側は受け入れ不可能としか言えないシロモノ。真の中東和平を企図したものではなく、米国内向けに、特に秋の大統領選挙に向けて、自らの支持基盤キリスト教福音派へのPRでしかない。

その内容とは伝えられるところ以下のようなもの。
・首都エルサレムはイスラエルのもの。
・本来パレスチナの土地である西岸地区にイスラエルが勝手に入植した地域もイスラエルのもの。
・パレスチナは建国して良いが軍は持てない。その代わり、これを飲めば米国始め西側諸国が財政援助しパレスチナの所得は倍増することを保証する。
これではまるでジャイアンがのび太に突き付ける要求ではなかろうか。既にパレスチナのアッバース首相は交渉の拒否を表明している。

一部の報道では、「永らく進展のない中東和平案として現実的」と評価する向きがあるが、それはあまりにイスラエル寄りの議論ではなかろうか。

(了)

にほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へ
にほんブログ村

国際政治・外交ランキング
2019/10/28

クルド撤退地域をロシア軍が巡察: ロシアの深謀遠慮

クルド撤退地域をロシア軍が巡察: ロシアの深謀遠慮

   トルコがシリア侵攻・クルド討伐の停戦に合意し、クルド人勢力はトルコ-シリア国境から30km以南に撤退することになり、今の所大事なくクルドも撤退しトルコも停戦を守っているようです。その物理的兵力分離に一役買っているのがロシア軍でした。ロシアがシリアのアサド政権を擁護していることは公然の事実ですが、ロシアがトルコと握っていて、人間の盾となって兵力分離役をしているとはビックリ。和平創出という点ではロスケながら立派ですね。しかし、プーチンの内心には米国の間隙を縫って影響力を浸透させる深謀遠慮が見え隠れします。
   2019年10月24日付VOA記事「Russia Begins Ground Patrols in Northeastern Syria」が事実関係を報じています。
AP_19297615408112.jpg
Russian forces patrol in the city of Amuda, north Syria, Oct. 24, 2019. (2019年10月24日付VOA記事「Russia Begins Ground Patrols in Northeastern Syria」より)

まず事実関係から
<状況>
① 10月24日(木)から、トルコ-シリア国境以南のクルド人勢力の去った地域をロシア軍がパトロールを開始。以前、クルド人勢力がISから開放したクルド人口の多い街や村をロシア軍のパトロール車両が巡察し、クルド勢力の撤退を確認。

② トルコのエルドアン大統領とロシアのプーチン大統領との間で、トルコ側の停戦・撤退とトルコ-シリア国境以南の緩衝地帯でクルド人武装勢力が緩衝地帯以南に撤退したかをロシアとトルコが共同でパトロールすることが合意された。ロシアは憲兵276名、装甲車33両の部隊を派遣し、緩衝地帯の巡察任務を実施中。しかし、クルド側の反発もあり、トルコはパトロールに参加せず、ロシア軍パトロール車両には地元官憲(クルド人)が随行。

③ ロシアのプーチン大統領の思惑について、ワシントン研究所の中東専門家アンナ・ボルシェブィツカヤ女史は次のように分析。「プーチンは、自らの任期中にシリアのクルド問題を解決し、シリアのアサド政権の基盤の盤石化を企図している模様。この際、アサド政権に、内戦で弱体化したシリア国軍という弱みを、クルド勢力と協調関係を取ることで補完し、もって政権安定化に資すのではないか。」

<私見ながら>
◯ トルコにとってロシアの介在はむしろ最適解!
   前項③は、なるほどトルコのシリア侵攻-クルド人武装勢力の問題の最適解かもしれませんね。
   トルコにとって、国境地帯でのクルド勢力にいることが許しがたい脅威であったので、国際法のタブーを犯してでもシリアに越境してクルド勢力の討伐を実施したわけです。しかし、いずれ停戦せざるを得ない訳で、その際はクルドの緩衝地帯以南の撤退の確証が欲しかったでしょう。その意味で、ロシアが間に入ってくれることはもっけの幸い、これぞトルコにとって最適解。トルコにとって、ロシアは歴史的な目の上のタンコブでもありますが、クルド勢力や周辺国のいずれの国にも睨みの効くロシアというファクターは、まさに仲介としてうってつけな訳です。ロシアが介在することで、トルコの言うことを聞かないクルド勢力もロシアには従うでしょう。実効性のある兵力分離部隊の介在により、エルドアン大統領は国民に過早撤退と批判される心配もなくなります。

◯ プーチンの深謀遠慮、恐るべし。敵ながら天晴れ!
   ロシアにとっても最適解ですよ。シリアのアサド政権の強烈なバックアップをしているロシアの国是として、アサド政権を容認しない米軍がこの地域に駐留していたこと自体が厄介な存在でした。その米国が去り、トルコのシリア侵攻の仲介を良き口実にロシアがシリアに駐留できる、しかもpeace-makerとして大義名分を高らかに掲げて。
   つい先日まで米国の盟友としてISと勇敢に戦ってきたクルド勢力を、米国を見限らせ味方にできるチャンスでもあります。更に、内戦で弱体化しているシリア政府軍をトルコやクルドと戦わせずに、むしろこの機会に協調関係を醸成させられるチャンスでもあります。シリアに侵攻してきたトルコをシリア政府軍と敵対させずに早期に撤退させ、またシリア政府軍にとって対IS闘争で培った米軍仕込みの戦闘能力と比較的最新装備を有する精強なクルド勢力との武力衝突も避けられます。それどころか、ロシアが中に立つことでシリア軍はクルド勢力と協調関係を半ば安心して組むことができます。内戦で力が落ちたシリア政府にとっても有り難い話です。
   また、憤懣やるかたないクルド勢力にとっても、ロシアの介在を容認する代わりに半ばロシアと協調して後見役となってもらい、シリア政府軍と円満にシリア国内に一定の自治を許される安住の地を得られるでしょう。クルドはロシアに感謝し、米国を恨みロシアの友人になることでしょう。
   プーチン大統領は、この状況を読んでいたのではないかと思います。トルコの侵攻以前に大方のあらすじを描いていたのでしょう。それ通りにトルコのエルドアン大統領は狂言回しを演じてくれました。先週、プーチンはエルドアンと会談し、その場でこの仲介案を持ち出し合意を得て、数日後には兵力分離部隊を展開させる離れわざ!立ち回りが鮮やか過ぎますよ。アンタ読んでて事前に部隊に準備させていたでしょ?

   プーチン大統領、一本取られた。あなた凄いよ。敵ながら天晴れ‼

(了)


にほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へ
にほんブログ村

国際政治・外交ランキング
2019/10/24

トルコ停戦、米軍シリア撤退、クルド戦線異状なし

 10月17日にトルコが米国と交渉の上で5日間の停戦を決めて以来、細々とは事象は起きているものの、概ねトルコ-クルドの状況に異状は無い模様です。勿論、米軍のシリア領内クルド人地区からの撤退に際し、クルド人から腐ったイモを投げつけられたり、トルコ-クルド間で小さな衝突が起きたり、いろいろ起きてはいます。しかし、トルコ-クルド双方に大きな停戦合意違反があったり大きな軍事衝突に至るような事象は起きていません。 2019年10月21日付VOA記事「US Military Crosses Into Iraq From Syria 」及び同年同月21日付VOA記事「US Keeping Troops Near Syrian Oil Fields」の報道から、その状況を整理し、私見を述べさせていただきます。

<状況>
① 10月21日(月)、シリア領内クルド人地区に駐留していた米軍部隊の100両を超える車両縦隊が、シリアからイラクへと撤退。米軍部隊は米国へ帰国するわけではなくイラクに留まり、イラクのみならずシリアでのISのテロや復活抑止に従事する模様。

② トルコは、これまでの停戦期間に概ね停戦合意通りに矛を収めており、対するクルド人勢力側も概ね停戦合意を守って緩衝地帯以南に離脱している。

③ トランプ米大統領は、トルコの停戦合意違反が起こらないよう、違反した場合には直ちに経済制裁を課す旨発言。トルコのエルドアン大統領は、クルド側が停戦期間内に緩衝地帯以南に撤退しなければ再び戦闘を開始すると豪語。(ちなみに、VOA記事には言及がないものの、日本のマスコミ報道では、クルド民主防衛部隊側は撤退の意思を表明している。)

④ この間、小規模の停戦合意違反や軍事衝突は双方で発生した模様。また、クルド人による撤退する米軍部隊への抗議の意を込めた立ち塞がりや物を投げるなどの行為が散見された。しかし、いずれも大事に至らず。

⑤ 米国は、シリア領内クルド人地区の米軍約700名を撤退させた一方、シリア領内の油田地帯をクルド民主防衛部隊の要員とともに防護している旨、明らかにした。ここを防護しても、石油そのものはクルドでも米国でもなく、シリア政府の所有となる。

<私見ながら>
○ 見通しは「不透明」「混乱」?、私見ながら楽観視しています
日本のマスコミ報道には、停戦の行方に「不透明」、「早くも相互に隔たり」、「情勢は混乱へ」等の見方が多いようです。ジャーナリストっていうのは、不安をあおると言ったら言い過ぎかもしれませんが、不透明性・不確実性・不安定性をものの見方の尺度にしているようです。例えば、10月19日付の日経新聞「シリア停戦合意、米・トルコで解釈に隔たり」では、見出しの通りトルコと米国の不協和音を報じています。勿論事実に基づく報道なので、見方によってそう捉えてもおかしくはないと思いますが。しかしながら、私は、私見ながら楽観視しています。

○ 退くのも方便、クルドは死なず。必ずやまた立ち上がりますよ。
勿論、クルド人にとって今回の米軍撤退やトルコのシリア侵攻やクルド人勢力討伐は、憤懣やるかたなく悔しいと思います。共にIS打倒のために戦った米軍に裏切られたかのように傍から離れられ、国境を挟んで同じクルド人同志で半ば自由に行き来できるこの世の春を謳歌していたのにトルコに追い立てられ、それはそれは我慢の限界を超える悔しさの中で毎日を過ごしていると思います。しかし、だからと言ってトルコと徹底抗戦するしかないのか?というと、その道には地獄しか待っていない。トルコ軍とクルド民主防衛部隊の正規戦に勝ち目は全くない。だったら、停戦の間に追い立てられない緩衝地帯以南に移動して、シリア内で生活基盤を再設定する方がまし。可哀想だが、これが現実的な生き残りの道ではないでしょうか。シリアでの生活も、シリアのアサド政権は決して温かくはないでしょう。また弾圧されることも十分考えられます。
   でもですね、可哀想だが本当の話、クルド人はこれまでずっとその悔しさに耐えてこの地に生きてきた民族なのです。これまでの現実の歴史がそれを証明しています。(ヤジディの民も同様)よって、今回の悔しさも噛みしめながら耐える道を選ぶものと思います。それは、クルドが実は芯が強い戦う民族だから。シリアのダマスカスに銅像があるアラブやイスラムの英雄サラディーンはクルド人。十字軍の遠征からイスラムを、アラブを、そしてエルサレムを守り切った英雄です。私のブログの前々回の写真見ました?これがクルドの戦士の顔。

afp_sdf.jpg
Members of the Kurdish-led Syrian Democratic Forces (SDF) are pictured during preparations to join the front against Turkish forces, near the northern Syrian town of Hasakeh, Oct. 10, 2019.(2019年10月14日付VOA記事「Kurds Strike Deal with Syrian Army to Counter Turkey」より)

   見てくださいよ、この顔。彼らの顔は打ちひしがれた流浪の民のそれではなく、戦い続ける少数民族の侍たちの顔ですよ。偉いなと思うのは、荒んでない。アジアで言えばグルカ兵の顔ですね。見ていてください、彼らは、当面はシリアのアサド政権に従って、ロスケ(ロシア)にも取り入って、必ずや、シリア領内に辛うじて自治を勝ち取りますよ。クルドの老若男女に生計を立てる基盤を確保し、力をつけるでしょう。彼らがシリア内で力をつけることが、あちこちの国にいるクルドのコミニティの精神的支柱となるでしょう。世が世なら、共に戦いたいくらいですよ。それも面白いかもしれませんね。
   これまでも歴史的にこれに類したことが何度もあったのです。オスマントルコの崩壊で、西欧に人為的国境を作られ、羊や山羊とともに山岳地帯を放牧して歩く民だった戦闘民族クルドの民は、分断されて各国に住むようになり、各国の事情でクルドの言葉や文化を否定されたりする抑圧を受けながら生活してきました。戦闘民族クルドのことなのでその都度、抵抗しては弾圧されて。一方、したたかな一面もあるクルドは、ソ連に取り入って第二次大戦直後にイラン領内に国を持ったこともありました。しかし、庇護していたソ連軍が去った後にイランに攻め込まれて結局は幻に終わったことも。あれ?今回に似てませんか?彼らは不屈の魂で、多民族の圧政や弾圧に耐えながらも、ずっと頑強に抵抗し、時に徹底的なゲリラ戦やテロでその国を苦しめてきました。そんな素朴にして我慢強く、それでいてしたたかで不屈の頑強さを持つ戦闘民族、それがクルド。
   ・・・そんな読みをしているのは、私の感情移入でしょうか。しかし、クルドよ、ここは我慢のしどころ、退いた方がいい。力をつけて、また立ち上がろう!、という私の勝手な思いかもしれませんが。

○ クルド戦線異状なし、その心は「いろいろ小事はあっても、大事に至らず。それを軍事では『異状なし』と呼ぶ。」
   「西部戦線異状なし」というヘミングウェイの傑作がありますね。「異状なし」で片づけられる報告に、その裏ではいろんなドラマや悲劇があるわけです。それでも、国際情勢、国際紛争、安全保障や危機管理の現実論から言えば「異状なし」程度のことなのです。
   国際情勢、安全保障、危機管理を学ぶ若い皆様には、国際情勢の実相にウェットに感情移入する情熱と、それでいて客観的な現実論から俯瞰する視点の両方を持っていただきたい。そんなことを学ぶ上で、今回のクルド戦線は良い題材です。

(了)



にほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へ
にほんブログ村

国際政治・外交ランキング
2019/10/18

トルコが停戦に合意! エルドアンの深謀遠慮


 トルコのエルドアン大統領がトルコが遂に停戦合意しましたね。
 2019年10月17日付VOA記事「Turkey Agrees to Halt in Offensive on Kurdish Fighters in Northern Syria」が以下のように報じています。

AP_19290521484092.jpg
エルドアン大統領-ペンス米副大統領会談(2019年10月17日付VOA記事「Turkey Agrees to Halt in Offensive on Kurdish Fighters in Northern Syria」より)

<状況>
 ① トルコのエルドアン大統領は、ペンス米副大統領との延長した会談の後、120時間の一時停戦に合意した。この時限停戦は、クルド人武装勢力にトルコとの国境30キロ幅の緩衝地帯以南に下がる時間的猶予を与えるもの。

 ② ペンス米副大統領によれば、米国とトルコは、領地に関することと両国のIS勢力との対テロ作戦における協調関係の維持についての和平交渉を持つことに合意。これを受け、トランプ米大統領はこの停戦合意によりトルコに対する経済制裁は必要がなくなった旨、述べた。

③ トランプ米大統領はツイッターにて米国の外交努力を自画自賛
  「This deal could NEVER have been made 3 days ago. There needed to be some “tough” love in order to get it done. Great for everybody. Proud of all! 」(= この取引は、3日前にはあり得なかった。成果を得るにはタフな愛が必要だったのだ。交渉に関わった各位の努力を誇りに思う。)
  他にも、「大統領というものは、民主党・共和党両議員達から批判にあうものだが、トランプ大統領(自分で自分を評して)は敢えて米軍の撤退を宣言したのだ。」などなど。

④ トランプ米大統領は、撤退後のトルコのクルド人勢力への攻撃を懸念して、エルドアン大統領に「バカな真似はやめるべきだ。」と書簡を送付した。トルコからの情報ではエルドアン大統領はトランプ大統領からの書簡をゴミ箱に捨てたという。

<私見ながら>
◯ 結局エルドアン大統領も自制へ
  いやー、めでたしめでたし、です。
  トランプの自画自賛は笑い話のようですが、珍しくpeace-makerとして機能したので、まぁ評価できますね。
米国の課した経済制裁が致命的であったかはわかりませんが、国際的な批判にさらされたトルコとしては、ここらが潮時だったかもしれません。自ら主張するところはPRもできたことだし、実質的にトルコの獅子身中の虫だったクルド人勢力と、その家族のクルド人と、ISの囚人達と、そしてシリアからの何百万人もの難民達を、概ねシリア側に追い出すことができ、一定の成果を得て作戦終了というところでしょうか。

◯ エルドアン大統領の深謀遠慮?
  深読みすると、エルドアン大統領の読みの通りにことが進んだのかもしれませんね。
エルドアン大統領は、トランプ米大統領が早いところシリアから米軍を撤収したいことを知り、米軍が撤収するのを待ち、撤収後電撃的にシリア侵攻作戦を開始。クルド勢力の討伐と追い出し、ISの残党の追い出し、シリア難民の追い出し、という国家としての懸案が100%でないにしても大方達成したわけです。国内世論からは、支持されることすらあれ、早すぎるとは非難されないでしょう。シリア侵攻-クルド討伐作戦は、開始した瞬間から国際的批判を浴びることは分かっていたはずです。国民世論を後押しに侵攻-討伐し、国際的批判に対しては一歩も怯むことなく、トルコの国内的論理を大統領が代弁する。そりゃあ、国民世論はヤンヤの喝采でしょうよ。ギリギリ潮時まで突っ張って、米国の仲介の顔を立てて停戦に応じる。しかも条件は、憎きクルド人勢力を国境の、更に緩衝地帯以南に、追い出すこと。
  エルドアン、抜け目のない奴ですね。

(了)


にほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へ
にほんブログ村

国際政治・外交ランキング