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2019/05/29

トランプ国賓訪日で対中牽制

トランプ国賓訪日で対中牽制

 トランプ訪日の記事は日本の各社とも詳細に報道がありました。ほぼ同様な内容ながら、VOAの記事から米国側の見方をご紹介します。
 VOA5月28日付記事「US, Japan Leaders Emphasize Enhanced Military Cooperation」の概要は以下の通りです。
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U.S. President Donald Trump, with Japan's Prime Minister Shinzo Abe, is seen as he leaves the Japanese destroyer JS Kaga, after a tour in Yokosuka, south of Tokyo, Japan, May 28, 2019.
 

<ポイント>
① トランプ米大統領の国賓としての4日間の訪日のクライマックスとして、安倍首相は、米国から導入するF-35を搭載予定で事実上の空母となる護衛艦かがの艦上でトランプ大統領を迎えた。そこでトランプ大統領は、中国の台頭に直面する中での日米間の軍事協力強化を強調した。日米両首脳とも、「中国」と言明していないが中国を念頭に置いているのは明白。

② 日本は、戦後米国に安全保障を依存してきており、元来対日強硬派と見られていたトランプ大統領の対日政策の硬化を懸念していた。しかし、着任以来、トランプ大統領の対日強硬路線は鳴りを潜めており、当面の懸案である日米間の貿易をめぐる交渉も、日本の今夏の選挙戦の後に先延ばしを示唆し、安倍首相への気遣いを見せた。在日米軍の駐留経費問題についても今や理解を示し、艦上スピーチの中で日本のホストネーションサポートに満足の意を示した。

③ 本訪日では、北朝鮮やイランなどの問題も両首脳間で意見交換がなされたものの、具体的な施策の合意等の外交的成果はなく、日米間の貿易をめぐる交渉の進展もなし。

<寸評>
◯ 今回のトランプさんの訪日は、トランプさんにとって数少ない気心の知れた海外のカウンターパート安倍さんに、国賓としてホストしてもらい、タフでヤボな外交交渉なしに、居心地よく過ごした外遊だったのでしょう。唯一の実質的意義は、中国に日米の一心同体ぶりを見せつけ、「東シナ海や南シナ海における中国の覇権に対抗し、日米は一体となって航行の自由を確保するつもりだぞ」、と意思表示したことでしょうか。令和天皇の祝賀を中心とした日程の中で、唯一世界の耳目を引いたのは、海自護衛艦「かが」艦上での日米海軍将兵への両首脳共同のスピーチです。これを見た中国や北朝鮮の首脳陣は、あきれながらも、日米同盟の強い絆、特に米最新鋭戦闘機を搭載する空母を持つことになる日米海(空)軍のinter-operability (相互運用性)の本格度にビビったのではないでしょうか。

◯ と言うのも、日本国内であまり報道されず注目も集めなかった話ですが、今年の5月に実施した南シナ海での多国籍演習に日米仏豪比などの海軍が参加し、中国メディアをはじめ南シナ海周辺各国の関心を大いに集めたようです。(ちなみに、海自は「インド太平洋方面派遣訓練」という人畜無害なネーミングでごまかしましたが、米海軍はExercise Freedom of Navigation とストレートに表現していました。) 中国のメディアながら自主性を保つ香港の英字新聞South China Morning Postの5月15日付記事「US naval chief says 'freedom of navigation' exercises in South China Sea get more attention than they deserve」に割と中立的な、中国政府から見れば「非国民」な報道がなされています。要するに演習が予期せぬ関心を寄せられている、といった内容です。興味のある方は是非ご覧ください。ビデオクリップが非常に分かり易く、南シナ海問題を説明しています。(https://www.scmp.com/news/china/diplomacy/article/3010316/us-naval-chief-says-freedom-navigation-exercises-south-china)

  また、VOAの5月22日付記事「US aside, China fears mostly Japan’s influence in disputed sea」にも米国の視点で書かれています。曰く、南シナ海でのこの「航行の自由」演習で日米が密接にタイアップしている姿、日本が南シナ海周辺国に支援を供し、南シナ海に対中的な影響力を持ちつつあることに対し、中国が恐怖感を抱きつつある、とのこと。

  中国では米国との関税をめぐる戦いの最中ですから、中国にとっては我が庭先と思っている南シナ海でこの地に領地のないはずの日米豪仏などが「航行の自由」演習と称して我が物顔で砲艦外交をし、いたずらに緊張を高めていると映った模様です。そんなくらいですから、今回のトランプ大統領の訪日、特に「かが」艦上での日米共同スピーチは脅威に映ったことでしょうね。そして、中国同様にこのシーンを脅威感を持ってみたのはロシア。「あー、やっぱり安倍はトランプとべったりじゃないか」というプーチンのため息が聞こえてきそうですね。また、韓国の文大統領も恨めしそうこのシーンを見ていたでしょうね。
  いやー、たまにはいいじゃないですか。いつも日本はやられっぱなしですから、たまにはこういうのも痛快ですね。日本としてもトランプさんをうまく使わせてもらいましょうや。

(了)


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2019/05/22

サウジ、イラン、トルコの関係を読み解くカギとは

 イランとサウジ間に緊張が続き、対イランの急先鋒の米国がペルシャ湾で臨戦態勢をとっており、「遂に戦争か?」と懸念される今日この頃。三国の歴史的経緯は中途半端ながら知っているつもりでいましたが、何で仲が悪いのかなど、そもそも本質的には分かっていませんでした。ところが、そのモヤモヤを解決する実によく分かる説明記事を見つけました。茂木 誠氏の日経ビジネス2018年11月1日付記事 「トルコvsサウジvsイランの三国志: サウジ建国の歴史と、英米介入が招いた対立 」)(https://business.nikkei.com/atcl/report/16/102900251/103000001/)です。
 ちなみに私のモヤモヤは、
*サウジとイランの対立の淵源は?スンニー派とシーア派の違いが対立?
*サウジと周辺アラブ国との関係が微妙なのはなぜ?
*サウジは米国と関係緊密なのに、ウサマ・ビン・ラデンはじめイスラム原理主義者にサウジ出身者が多いのは?
等です。
ダウンロード
サウジのムハンマド皇太子とトランプ大統領(2018年3月) 
(ウォールストリートジャーナル 2018 年 3 月 21 日 15:28 JST より) 


 記事の趣旨を踏まえつつ、私なりのアレンジとしてサウジの視点でまとめてみます。
<ポイント>
① 200数十年前、中東イスラム世界はオスマン帝国(トルコ)とペルシャ帝国(イラン)に席巻され、イスラム教を生んだアラブは被支配に置かれる
② ペルシャのイスラム教シーア派では正統カリフを継ぐのはペルシャ王朝の血統と信じ、シーア派こそ正統。アラブやトルコの大勢を占めるスンニー派から見れば片腹痛く、教義に忠実かどうかが正統性と認識。アラブに言わせりゃトルコも正統ではないのにカリフを名乗る。しかし、悔しいが力でかなわなかった。
③ スンニーの一派の法学者ワッハーブは異民族に支配されるアラブを嘆き、その原因はコーラン教義の軽視にあり、とアラビア半島の地方の豪族サウド家に説き、聖戦開始を決起させる。残虐かつ排他的に改宗か死を迫って領地を拡大、アラブを席巻。現在のサウジの基礎を作る。
④ ワッハーブ派の教義は現代で言えばイスラム原理主義者に近く、現在のサウジもワッハーブ派のコーランに忠実な教義で国を統治。他方、安全保障・外交に関しては現実路線であり、国家の生き残り策として湾岸危機・湾岸戦争以来米軍に基地を供与するなど米国と緊密。しかしそれが故に反発する若者も多く、過激派の温床の素地に。
⑤ オスマントルコはこのサウド家主導の排他的過激なワッハーブ派の聖戦に脅威を感じ、数次にわたり討伐。一方、英国も石油利権の確保のため、強いサウジを牽制し地中海からペルシャ湾岸の油田地帯に安全なルートを維持すべく、諸部族の国家建国を支援しサウジの周囲を小国で取り囲むとともにヨルダン・イラクを建国した。サウジからすれば、クウェート、カタール、バーレーン、イエメンなどの周囲の小国は英国の傀儡であり、かつ、ペルシャ湾を隔てたイランの影響を受けたシーア派も混在する地域であり、教義を軽視する俗化したヤツらに見える。折りあらば鉄槌を下す対象。かつ、油田はこのペルシャ湾地域にある。実はワッハーブ派100%と公称するサウジには、サウジ領内のペルシャ湾岸地域に隠れシーア派がおり、サウジにとっての財源である油田もこの地域にあるが故に、イランは絶対的な仇敵なのだ。
⑥ 以上のような経緯により、サウジにとって宗派的及び覇権の二つの意味での仇敵イランとトルコ、そして英国の油田権益をめぐる傀儡のサウジ周辺小国に囲まれ四面楚歌。生き残りを図るサウジ、ここに手を差し伸べたのがフランクリン・ルーズベルト時代の米国だった。ユダヤ系のロックフェラーの石油資本をバックにつけ、米国と親密に。米国にとっても、王政時代のイランに石油利権を多く有していたが、イラン革命で全て革命政府に没収された。この怨みは忘れ得ぬ。もって米国とサウジは敵の敵であり盟友。

<寸評>
◯ いやー、モヤモヤ解消しました。そうだったのか、と思わず膝を打ちました。
上記のような経緯が故に、サウジにとってイランは宗派的及び中東や石油をめぐる覇権の故に、不倶戴天の仇敵。対イランでは米国と一蓮托生で徹底的に戦うわけですね。加えて、サウジがイスラエルに対して穏健路線を取っていた所以は、これも米国との緊密にあったわけですね。
  他方、トルコは過去何度もワッハーブ派サウド家を潰しに討伐軍を送ってきた敵。聖戦で戦った敵ですから絶対に友人になれないのでしょう。トルコも「サウジ許すまじ」と思ってますから、カショーギ氏暗殺事件の時の執拗な情報戦とマスコミを味方につけた暴露戦法を敢行したわけですね。
  更に、なぜサウジがイスラム原理主義者の温床になったか、その所以はサウジのワッハーブ派という国家的宗派の教義に存し、なおかつ国家が生き残りのため米国と緊密化し現実的政策を取るというワッハーブの教義とは矛盾することに直面した純粋なワッハーブ主義者達が国内に多く存することにあったのですね。

  勿論、記事を書いた茂木氏の見立てすぎないのかも知れませんが、この複雑な中東情勢理解する上で非常に分かり易いご説明でした。お時間あらば、ぜひご一読を。

(了)


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2019/05/15

ヤジディ難民に安住の地はないか

ヤジディ難民に安住の地はないか

  5月9日付のブログで触れたシリアの少数部族ヤジディの民について、続報です。ヤジディの民のうちの一部に、シリアからレバノンに避難し、難民として同地に滞在している500名ほどがいます。彼らは、今やレバノン政府からシリアに強制送還を迫られ、再び流浪の民となる恐れがある中、不安な日々を過ごしているお話しです。VOA 2019年5月13日(月)付記事「Uncertain Future Awaited, Displaced Syrian Yazidis in Lebanon」より、概略は以下の通りです。
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FILE - Refugees from Syria are seen outside their tents, in the town of Saadnayel, east Lebanon, April 23, 2019. Minority Yazidi refugees now face a possible forced return by Lebanese authorities to Syria. (VOA 2019年5月13日(月)付記事「Uncertain Future Awaited, Displaced Syrian Yazidis in Lebanon」より)


<ポイント>
① 現在、レバノンに500名程のヤジディ難民が滞在。難民認定の手続きは長期間かかり、特にヤジディ難民は何の支援も受けられず、レバノン政府の保護はないどころか、手続きの済んでいない難民はパトロールで捕らえられるとシリアへ送還される状況。
② レバノンにも事情あり。元々600万程度の人口の国に、シリアから160万人もの難民を受け入れ、元々以前からパレスチナ難民を50万人抱えているため、財政的に逼迫。もはやシリアからの難民は送還せざるを得ない模様。
③ ドイツに本拠地のあるヤジディの人権保護組織によれば、ヤジディ難民のシリア帰還は迫害を受けやすく、
国際的な保護の下で以前住んでいたアフリンへ帰還することが必要であり、さもなくば他国へ移住するしかない、とのこと。
④ しかし、そのアフリンでさえ今や安住の地ではなさそうな気配。元々、クルド族の地であったアフリンに2万5千人のヤジディの民が住み、アラウィ派やキリスト教徒のような宗教的少数派も混在していた。しかし今や、トルコ軍がアフリンの街中に壁を設置し、シリア領地との境界としている状況。

<寸評>
◯ ヤジディの民の受難はまだ続くようですね。シリア国内でまずクルド系であることで虐げられ、更にヤジディ派は同じイスラム教でも少数派で、ゾロアスター教との融合のある独自の信仰なため、一般的なイスラム教徒からも「異端・邪宗」などと迫害されています。ISはヤジディを悪魔崇拝の邪教と位置づけ、特に残虐に扱ったことで有名です。彼ら自身も他教徒・他宗派とは結婚せず、信仰を守ってきました。前回のブログで話題にしたのは、内戦状態がひと段落し、元いた土地に帰還したヤジディの民が、ISに性奴隷にされていた女性や生まれた子供達を受け入れたものの、ヤジディの民の割り切れない思いが共同体の中で分裂を招いている話でした。我々も聞いていてやるせないばかりです。
  アジアでも、ミャンマーの少数派ロヒンギャ族が同様な状況です。何とか安住の地を与えてあげられないものでしょうか。国際的な支援が待たれます。
◯ シリアは、内戦以前から米国にはテロ支援国として嫌われていましたが、実は割と現実的かつ柔軟ないい国でした。ヤジディやアラウィなどのイスラム少数宗派も、シリアでは少数派のキリスト教徒も、特に酷い迫害もなく、混在して平和に暮らしていました。申し遅れましたが、若いころ、PKOでシリアにいました。現在のバッシャール・アル・アサド大統領の父親、先代のハーフィズ・アル・アサド大統領の時代でしたが、独裁者ながら政策は宗教色がほとんどなく現実路線。ゴラン高原でイスラエルと対峙しつつも、そこは棚上げして、湾岸戦争でもイラク側につかず中立でした。勿論、国内の反対勢力には残虐な弾圧をする怖さはあり、ハマという街に反政府派が巣くった際には街ごと空爆して殲滅したらしいですよ。当時、街行く車はアサド親子の写真を自動車の窓に貼って、私は政権を支持しているんですアピールを魔よけのようにしている一方、国民は結構自由にのびのびやっていましたし、ダマスカスのような大都市も田舎町も街には活気があり、老いも若きも笑顔がありました。先ほどの少数宗派の話で言えば、日本隊の関連の仕事をしてくれる現地スタッフのシリア人は原始キリストの超少数派でしたし、仲良くなった市場の土産屋のオヤジは聞いたことのないイスラム少数派でしたがイキイキとしていました。まぁ、筆者の印象であって、半年程度現地にいただけで本当のところは見えてなかったかもしれません。垣根の向こう側を通りがかりに見た程度だったのかもしれませんが。
  ISが入り込んでから、こうして内戦になってしまい、各部族間のエゴや主教的差異が手抜かりなしに衝突するようになってしまいました。もうあの頃の平和で活気のあるシリアは見ることができないのかもしれません。元はと言えば、シリアはイラク戦争の頃、イラクへ入り込む反米テロリストたちの侵入経路であり、逃走経路であり、逃げ込むシェルターでした。それがISが育ち、やがて母屋を脅かす存在になろうとは……。何とかISは弱体化しましたが、今後はロシアにバックアップされたアサド政権が国家の再統一をするのでしょう。しかし、一回開けてしまったパンドラの箱、完全に収まるまで、混乱はしばらく続き、弱き者たちが一番の犠牲者になるのでしょう。
  誠に残念な現実です。

(了)

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2019/05/10

懲りない北朝鮮また発射、韓国は北を食糧支援

懲りない北朝鮮また発射、韓国は北を食糧支援

懲りない両国のニュースを2本ご提供。
- 5/9(木)、北朝鮮がまた飛翔体2発発射
- 5/7(火)、文韓国大統領がトランプ米大統領との電話会談で、北朝鮮に対する韓国の食糧支援計画の了承を得る
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ネット版日経新聞 2019年5月9日19:30付「北朝鮮、再び「飛翔体」発射 挑発継続、米の翻意狙いか」 ( https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44583170Z00C19A5EA1000/)より

◯ 2019年5月10日付読売新聞によれば、5月9日1600頃に北朝鮮が2発の飛翔体を発射、高さ50km上がった後に距離420kmと270kmほど飛んで日本海上に落下した模様。北朝鮮は、発射について「領海圏内で行われたものであり、誰も中傷できない」と声明。

◯ 2019年5月7日付VOA記事「With Missile Test, North Korea sends message to Seoul」によれば、5月7日(火)、文韓国大統領はトランプ米大統領と電話会談し、北朝鮮の飛翔体発射実験について協議するとともに、韓国が計画中の北朝鮮への食糧支援について了承を求め、トランプ大統領は理解を示した。

<寸評>
◯ 北朝鮮また発射の件、開いた口が塞がりませんね。本当に懲りずに挑発してきますね。先の挑発に周囲の反応が鈍いので焦っているのでしょう。常識的には、そろそろ米国も忍耐の限界を示しそうですね。5月4日の飛翔体発射について、米国は忍耐と寛容を示しましたが、その配慮を逆なでする今回の発射。この舐めた対応に対し、米国トランプ大統領はどこまで忍耐と寛容を示せるでしょうか?
   肩すかしするようで申し訳ないですが、私見では、中国との貿易をめぐる交渉では高い関税をかける措置を辞さない恫喝的外交攻勢をかけるトランプ大統領ですが、こと北朝鮮問題には我慢してくれると思います。この辺が、これまでの常識的な政権と一線を画すところだと思います。中国との交渉はビジネスですから、トランプさんお得意のイケイケ不動産屋的な、瀬戸際外交的な難題を吹っかけて譲歩を引き出す商法で勝負しているのではないでしょうか。他方、実は不案内な安全保障については、首脳会談を重視しつつもポンペイオ国務長官やボルトン大統領補佐官らスタッフの助言を尊重しているのではではないかと思います。前者には米国全体の経済がかかっています。だからトランプ大統領自身が主導。他方、後者は経済はあまり関係がないため、大統領の関心は米国の喫緊の安全保障上の脅威であるかないかだけ。日本や韓国のような地域の安全保障がかかっても、喫緊の課題ではない。よって、やや気長に忍耐と寛容を示しているにではないか、と思います。

◯ 韓国の北朝鮮支援の件、これまた懲りない政権ですね。文大統領にとって最優先だったのは韓国の北朝鮮への食糧支援計画についてトランプ大統領の了解を得ることだったのでしょう。文大統領は、善意で見れば人道的に飢える朝鮮民族同胞を見るに見兼ねて食糧支援を、悪意で見れば食糧支援を隠れ蓑に北朝鮮の欲する物資を密輸するなんてことのないように願いたいところです。
   それにしても、ここまで北朝鮮に面目を潰され、政権にとっては支持率を下げるマイナス効果を与えられるなど、かくも舐められているのに、文大統領はそれでもなお北朝鮮を支援したくて仕方がないようです。同じ朝鮮民族として、共に悲願の統一に向けて邁進したいのでしょう。日本人には分かりようのない、朝鮮民族ならではの人情の世界なのかも知れません。それが韓国の一定の%を占める国民の熱烈な支持を受けるところです。しかし、5月10日付産経新聞によれば、大統領着任1年経って支持率が半減しているそうです。特に、米朝交渉の行き詰まりや、南北合意を反故にするミサイル発射が続き、マスコミに叩かれ、国民の不満も高まっているとのこと。それでも北朝鮮の食糧事情や飢餓の状況に耐えられず、トランプ大統領に了承を得て食糧支援をするというのですから。呆れるのを越えて尊敬に値します。一体、超善人なのか?他民族には愚かに見えても実は深謀遠慮の民族主義者なのか?ウーム、やはり度が過ぎたお人好しにしか見えませんが。

(了)


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2019/05/09

中東の過激派情勢

中東の過激派情勢

北朝鮮をめぐる話ばかり最近書いていてすみません。今回は、この領域の話も大事ですよ、というお話を一席。

VOAの「VOA Extremism Watch」というサービスをご存知ですか?世界のテロリストやイスラム原理主義者などの過激派をめぐる情報をまとめてお知らせしてくれるVOAのサービスがあります。VOAのホームページの一番下の欄のメールのマークをクリックするとVOA Extremism Watch とToday@VOA(その日のVOAのダイジェスト的なもの)の購読(subscribe)を登録をすると、無料で自分のメールアドレスにメールで配信されます。私は開拓してませんが、ツイッターとかインスタとかのサービスもあるようです。是非皆さまもどうぞ。
さて、5月7日付のVOAの過激派情勢の配信から、その概要をご紹介します。なにぶん平和な日本の良識ある一般市民の皆さんにとっては、ニュースバリューはあまりないかも知れませんね。でもね、へぇーそんなことが起きてるのか!というニュースが並んでいます。

◯ 2017年にサウジのモハメド皇太子が実権を掌握して以来、サウジでは人権抑圧が増大している模様。4月下旬には、テロ関連の罪状により1日で47名もの主としてシーア派の市民を死刑に処した。世界中の人権組織がこれを糾弾。
(2019年4/30付「Growing Concerns Over Saudi Arabia’s Rights Abuses」より)

◯ パキスタン軍は、5月初頭にパキスタンのパシュトゥーン族人権組織がアフガン及びインドの情報機関から資金援助を受けていると告発。しかし、その人権組織の代表によれば、
パキスタン軍は「テロとの戦い」が軍にとって儲け口になっており、人権運動について地域に混乱をばら撒いている、とVOAに反論。
(2019年5/6付「Pashteen: PTM Hurt Pakistan Military's Terror-Sponsoring Industry」より)

○ シリアの人権監視組織によれば、シリア北西部のイドリブ及びハマの隣接地域に対し、ロシアが100回を超える空爆を実施するなど、シリア政府軍とロシアが共同して主としてヌスラ戦線(※)に対する制圧作戦が増大している。(※筆者注: アルカイーダ関連組織)
(2019年5/3付「Military Escalation Continues in Northwest Syria」より)

○ ケネス・マッケンジー米中央軍司令官は、アフガニスタンに平和と安定が根付き、再びテロの温床になるなどということがなくなるまで、アフガンにおける多国籍軍に米軍のプレゼンスに何ら変化はない、と言明。また、米国とタリバンとの和平交渉についても楽観していると語った。
(2019年5/1付「Commander: No Decision on US Troops in Afghanistan」より)

○ イスラム国によって生まれた土地を蹂躙され、男性は虐殺され女性は性奴隷にされる悲劇を生んだヤジディ教徒。元の土地に返り、女性たちを元のヤジディの社会に受け入れることに決めたものの、ヤジディの宗教的及び共同体の規範から異教徒に凌辱された女性や生まれた子供たちを迎え入れることの混乱や論争をヤジディ教徒の共同体に巻き起こしている。
(2019年4/29付「Yazidis Divided Over Children Born of IS Rape」より)

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ヤジディ教徒の女性たち (2019年5/7付「VOA Extremist Watch」より)

<寸評>
○ サウジの人権抑圧という話は、やはりモハメド皇太子がキーパーソンでしたか。サウジ軍に知り合いがいますが、アラブ人には珍しく控えめ(大言壮語なく)で沈思黙考有言実行的な立派な男でした。他の中東国軍人からも、サウジは一目置かれる正統な経験イスラム教徒の国家という印象でした。ヨルダン軍の友人によれば、穏健な国に見えるが結構自国民に厳しい国だ、と言っていたのを思い出します。皇太子が実権を握ってから、皇太子なりの思い切った改革をしているのでしょうが、自国ではアラブの春のようなことが起こさせないように、反国家・反社会的勢力にはひどい目に会わせるのでしょうね。トランプ政権でなければ、米国政府も人権抑圧政策に対して厳しい注文を付けるのが普通ですが、ビジネスの相手として大統領と皇太子は仲がいいようなので、現米国政府は何も言いません。

○ パキスタンのパシュトゥーン族の人権団体の話は、さもありなん、と納得。テロとの戦いがパキスタン軍にとってドル箱事業なのかも知れません。パキスタン軍は抜け目のない軍ですが、100%信用できるか、というと難しいところがあって、米軍もウサマ・ビン・ラーデンの捜索・暗殺作戦の時に全くパキスタン軍を信用していませんでしたね。

○ シリア政府軍とロシアの共同戦線の話も、さもありなん、ですね。ロシアがシリアで活発に作戦をしているってのは、トランプ政権が昨年末に米軍のシリアからの撤退を言明し、400名ほどのプレゼンスを残す方向のようですが、いずれにせよ米軍が事実上同地を明け渡す形になったことに起因します。返す返すも、マチス国防長官が政権におればそんなことはさせなかった・・と残念なことです。まさにそれがトランプ大統領の目の上のたん瘤だったため、事実上の解任となったわけですが。トランプ=プーチン間で握っているのかも知れません。今後、ロシアのバックアップの下で、シリアはアサド政権がまた力で再統一するのでしょうね。

○ アフガンの話も、もとはと言えばトランプ大統領の昨年末のアフガンからの撤退言明から動揺が起きました。こちらの方は、米中央軍が一歩も退かない説明を国防省にしたのでしょう。大統領のご指導はいただくものの、再びこの地がISのような米国や同盟国にテロリストを輩出する巣窟にさせない、という軍の意志を示したのではないかと思います。アフガンはこの地の覇権を狙う大国はありません。ロシアも中国も、アフガンは手に余るのです。ここを押さえても手放してもお金にならないので、トランプ大統領は自分の指示とは違うことになったもののこだわってないのではないかと思います。

○ そして、ヤジディ教徒の件。重い問題ですね。もともと、イスラム教の一派ながら一般のシリアのイスラム教徒からも異端とか邪宗とか偏見を受け、歴史的に抑圧されてきた人々。イスラム国に蹂躙された際に、老いも若きも残虐に殺害され、女性は性奴隷にされ、生まれた子供たちもいる・・・。紛争の挙句、イスラム国から解放され、同地にヤジディの人々が返ってきましたが、悲劇の第二幕が起きているようです。人道的説明や理屈や理性で解決できない、ヤジディの民ならではの宗教的及び共同体の社会規範によって、割り切れない問題が表出。直面している問題が重いですね。

いかがでしょうか、中東過激派情勢。「へぇー」だったでしょ。

(了)

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2019/05/06

北朝鮮発射実験の続報: やはり弾道ミサイルだった?

  北朝鮮のミサイル「飛翔体」発射実験についての5月5日〜6日までのVOA続報をまとめました。
  北朝鮮側の官製報道や米国や韓国政府の反応が出ています。
  結論から言うと、やはり北朝鮮は短距離弾道ミサイルを発射実験したようですね。しかし米国トランプ大統領は今後の交渉の余地を残し、今回のことを重要視しないようです。
スクリーンショット (4)
スクリーンショット (5)
上下とも VOA 5月6日付記事「US downplayed North Korea missile launches」(https://www.voanews.com/a/us-downplays-north-korean-missile-launches/4904531.html)のビデオクリップより
(筆者注: ちなみにこの上の写真が問題の短距離弾道ミサイルです。下の写真が多連装ロケット発射機です。この新型短距離弾道ミサイルはロシアのイスカンダルミサイルのコピーのようですが、「弾道ミサイル」であることは間違いないようです。他方、下の多連装ロケットはソ連時代から共産国が好きな兵器で、精密誘導ではなくババババーンと数撃ちゃ当たる方式で地域全体を制圧するタイプのものです。日本も以前は多連装を持っていましたが今はありません。これは純・戦術的なものです。)

<ポイント要約>
  新しい情報として、
 - 北朝鮮政府は、今回は多連装ロケット発射機と戦術誘導兵器の発射実験であり、純「戦術的」なものだったのだとPR
 - 韓国政府は、無用の挑発であり南北合意違反だと公式に抗議
 - 米国政府は、発射実験の件を重要視せず、今後の交渉の余地を残した
 - 発射実験された「戦術誘導兵器」とは、やはり短距離弾道ミサイルだった模様

<VOA 5月5日付記事「North Korea confirms tests of “multiple rocket launchers” 」>
① 米国の報道各社は、北朝鮮の発射実験は「多連装ロケット発射機及び戦術誘導兵器」によるものであったことを土曜(5/4)に確認。
② 北朝鮮中央報道局は、今回の発射実験は金委員長自身の命令により北朝鮮沖の水域に向けて実施された旨を報じた。
③ 北朝鮮中央報道局は報道映像をリリースし、金委員長の発射実験の現場指導等の状況や今回の発射実験は純「戦術的」な目的のものであることをPR。
④ 韓国政府は、今回の発射実験は不必要な挑発であり、南北合意に反する旨の抗議のコメントを発出。
⑤ 北朝鮮政府のコメントには、明確な脅しはなく、米国にも韓国にも何ら言及がなかった。
⑥ 韓国政府が当初「ミサイル」と発表したものを後に「飛翔体」と修正した件について、ミドルブリー国際問題研究所の専門家ジェフリー・ルイス氏は「飛翔体などではなく短距離弾道ミサイル」と否定。同氏によれば、このミサイルは本年2月の北朝鮮の軍事パレードにも参加した短距離弾道ミサイルであり、ロシアの「イスカンダル」ミサイルによく似ている、とのこと。

<VOA 5月6日付記事「US downplayed North Korea missile launches」>
① 米国ポンペイオ国務長官は、北朝鮮の今回の飛翔体発射実験に対し、米国政府は重要視せず、引き続き朝鮮半島の非核化合意に向けた交渉の機会はある、と言明。
② 加えて同氏は、今回の飛翔体発射実験は全て短距離であり、いかなる国の上空も横断せず北朝鮮の水域に弾着していない、との見解を表明
③ トランプ大統領も、金委員長は北朝鮮の今後大きく経済成長する可能性を十分に認識しており、米朝会談時の約束を反古にしたり交渉を打ち切りにするつもりはなかろう、とツイッターにて表明。

<寸評>
◯ 新しい情報もありましたが、概ね前回の寸評内容の域を出ていないなと思いました。ちなみに前回の寸評は以下の通り。
* 韓国政府の「飛翔体」との表現訂正は、「弾道ミサイル」が焦点になると米朝交渉が断交するなどの問題が大きくなることを懸念したものと推測。韓国政府の国是たる対北宥和政策の一環ではないか
* 北朝鮮の金正恩委員長は、これまでの米朝首脳会談が首尾よく行かず、不満を表明したい一方、交渉の余地を残したいので、北朝鮮なりに十分抑制した挑発を発射実験で行なったつもり
* 他方、トランプ大統領は、北朝鮮問題に関しては忍耐と寛容を見せ、今後の交渉に余地を残す
* しかしながら、金委員長は十分抑制された挑発をしている認識かもしれないが、トランプ大統領との間で認識のギャップがある可能性を忘れるべきでない。事務方でしっかりと両者の認識ギャップを埋めるようunder the table での準備交渉に期待

◯ 動きがあったなと思ったのは、北朝鮮の純戦術的な発射だったんだよPR、韓国の北朝鮮への抗議、米国の重要視せず交渉に余地残す公式言明、そして、やはり弾道ミサイルじゃねぇかよ、という件です。
  北朝鮮は、「抑制された挑発」で計算づくのmeasured escalationのつもりだったので「純戦術的だったんだよPR」で裏打ちしたかったのでしょう。「弾道ミサイル」がクローズアップされるとモラトリアム違反を責められるので、焦りもあったのでしょう。もしかしたら、「挑発」色を薄めて、そもそも挑発ですらなく、本当の本当に戦術的だったんですよという必死のアピールなのかも。
  韓国政府の北朝鮮への抗議は、韓国内で文政権の対北宥和政策の行き詰まりが突き上げられ始めたので、政府としても公式に抗議せざるを得なくなったのでしょう。しかし、専ら国内向けの政治的PRの域を出ていませんね。決して外交的な本質的な抗議ではないですね。恐らく、この抗議一回ポッキリで、これ以上の抗議攻勢はとらないと思います。また、「弾道ミサイル」を「更なる分析が必要なので『飛翔体』と訂正」した件は、いつまで経ってもその分析結果は出ないでしょうね。もともとは、北朝鮮の発射実験が行われたことを察知した際に、短距離弾道ミサイルらしきものに加えて多連装ロケットらしきものも撃っていたことを知っていたのでしょう。韓国政府としては当初「弾道ミサイル」と発表したものの、それが国連安保理決議の制裁対象に当たるか当たらないかの議論になるであろうことを懸念したのではないでしょうか。従って、多連装ロケットも撃っているので、分析が必要とか飛翔体とか表現の訂正をしたのでしょうね。その訂正も含め韓国内メディアに突き上げられて、今回の抗議をしたのでしょう。
  米国政府の反応は、予期の通りでしたね。とりあえず今回までは重要な問題ではない(downplayという表現でした)と許容し、今後の交渉に余地を残しました。いやぁ、トランプ大統領、大人になりましたよね。
  最後に、専門家の見立てでは「やはり弾道ミサイルだったじゃないかよ」という件。ほら見たことか!って話ですね。
  今回は、トランプ大統領が許容してくれましたが、前回の寸評の通り、認識のギャップがあり得るので、「二度目、三度目はないぞ」ということを金委員長によく自覚してもらいたいですね。
  今後の米朝交渉に、特にunder the table での事務方の頑張りに期待します。
(了)

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2019/05/04

北朝鮮が短距離ミサイル発射、またも挑発

 GW中に束の間の休日ボケを醒す北朝鮮のミサイル発射がありました。2019年5月4日、北朝鮮は数発の短距離ミサイルの実験を実施した模様です。日本のマスコミも伝えていますが、VOAの第一報(VOA 2019年5月4日付記事「Seoul: North Korea test Short-range projectiles」)からその概要を纏めてみました。(因みに、日本のバイアスなしに米国の一般的な見方を知るツールとして、私はVOAを高く評価しています。VOA: Voice of Americaは米国政府の公共マスコミなので一発当てたろかという民間マスコミの独自性もない代わりに、割と見識高く中庸的だと思います。)

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People watch a TV showing file footage of North Korea's missile launch during a news program at the Seoul Railway Station in Seoul, South Korea, May 4, 2019. North Korea on Saturday fired several unidentified short-range projectiles into the sea. (VOA 2019年5月4日付記事「Seoul: North Korea test Short-range projectiles」より)

<ポイント>
① 2019年5月4日(土)韓国統合参謀本部は、同日(※)北朝鮮の短距離飛翔体発射実験が行われたことを発表。核開発をめぐる交渉が始まって以来の北朝鮮の挑発とも見える。(※筆者注: 現地時間=日本時間0906〜0927)

② 韓国統参本部は、当初「ミサイル」と表現したものを後になって「飛翔体」と訂正するとともに、この発射実験は 北朝鮮の核開発に対する制裁(※)の対象ではなく違反ではない旨を強調。(※筆者注: 国連安保理の制裁対象)

③ 日本の防衛省は、飛翔体は日本の領土・領海や 経済水域200海里も侵した形跡なし、と発表。因みに北朝鮮は本件について沈黙のまま。

④ 金正恩委員長は、2017年11月以来自発的な核ミサイル実験の一時停止をしてきたと見られていた。ある専門家の見方は以下の通り。「金委員長は、あくまで大陸間弾道弾(ICBM)について自主規制してきただけだ、と認識しているのに対して、米側はもっと幅広い範囲の自主規制であると理解してきた。今回の発射実験はそキワのグレーな部分であり、懸案事項をより広く考えることを示すのに十分なシグナルとなる。しかし、もし米国がこれを自主規制の範囲に入らないと許容するならば、看過できない問題である。」
  本件に対し米国大統領府は、状況を把握しており必要があらば更に警戒監視を続ける、とのみコメント。

⑤ 北朝鮮は、今回以前にも戦術誘導ミサイル実験を実施するなど、米韓を牽制しながら抑制的な段階的緊張拡大をしてきている。金委員長は、本年末までトランプ大統領に柔軟化する猶予を与える、と言明。他方、トランプ大統領は、北朝鮮が核開発を完全に放棄しない限り制裁解除はしない、としている。

<寸評>
○ まず、韓国統参本部が、初め「ミサイル」としたのに、後になって「飛翔体」と表現を訂正したことですが、この辺は韓国政府の国是たる対北宥和政策の一環ではないかと思います。公式には「ミサイルではなく多連装ロケットの可能性も」ということで、「分析が必要」との説明で「飛翔体」と表現を丸めました。その分析結果は後で出てこないでしょう。敢えて表現を変えた理由は、ミサイルより飛翔体の方が確かに柔らかい表現であり、ミサイルだと大騒ぎする事で、米韓交渉の新たな障壁に事態を引き上げたくなかったのでしょう。要するに、韓国現政権の国是たる宥和政策ですね。

○ 次いで、韓国はともかく、肝心の北朝鮮と米国の認識について私見を少々。
  北朝鮮は、というより金正恩委員長は、これまで2回の米朝首脳会談が首尾よく行かず、北朝鮮なりの妥協案で経済制裁解除を得られると期待していたのに・・・物別れに。その不満はトランプ大統領には向けず側近のポンペイオ国務長官やボルトン大統領補佐官を個人攻撃して排除を求めています。これは、交渉自体は今後も継続したい、という金委員長の意思の表れでしょう。今回の発射実験も先月の戦術誘導ミサイル実験も、新たな動きを示さない米国へのシグナルのつもりなのでしょうね。恐いのは、このエスカレーションは米国がダメ出しをするレッドゾーンには入っていない=OKラインの行動だ、と金委員長が思い込んでいることです。認識のギャップというのは時に誤解を生じ、相手にとっては瀬戸際を越えてることがあるのです。しかも相手はトランプ大統領ですよ。今は非常に忍耐と寛容を示しているトランプ大統領ですが、彼にとっての真の判断基準は、安全保障としてのrationality(合理性)ではなく、不動産屋的イケイケビジネスマンの発想のdeal (取引)ではないかと思いますが、いかがでしょうか。この辺が国際情勢や安全保障の恐いところです。
  他方、トランプ大統領ですが、いやぁ北朝鮮問題に関しては忍耐と寛容を見せていますよね。今回もそうですし、 側近を外せと金委員長に言われた時もそうですが、彼らしくないくらい大人の対応で、いつものツイッターでの罵詈雑言も鳴りを潜めています。先ほど怖いと言ったのは、今は忍耐と寛容の範囲内ですが、ここで認識のギャップから今後の金委員長の不用意な挑発が、本当に決裂と具体的行動を呼ぶこともあるからです。怒ってしまったらトランプ大統領は手がつけられませんから。
  水面下では米朝間で交渉しているのではないかと存じますが、水面下ではお互いの退けないラインを明確にして、認識のギャップのないように事務方で固めてもらいたいものです。

(了)

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