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2019/08/29

G7の棚からボタ餅、イラン問題に光明か?


 今回の仏ビアリッツでのG7は、始まる前から成果が期待されないサミットでしたが、あにはからんや、イラン問題ではトランプ米大統領とイランのロウハニ大統領との会談の可能性も出てくるなど、棚からボタ餅が落ちてきたサミットとなりました。まだ予断を許さないところはありますが、これまで全く進展がなかったイラン問題に一筋の光明が射した感がありますね。
AP_19238561915615_0.jpg
FILE - U.S. President Donald Trump, left, and French President Emmanuel Macron shake hands after their joint press conference at the G-7 summit, in Biarritz, France, Aug. 26, 2019. (2019年8月28日付VOA記事「Trump Talks Up Credit Line for Iran, But No Sign of Imminent Policy Change」より)


<状況>
① 仏のビアリッツで8/24(土)〜26(月)の3日間の日程で開催されたG7サミットは、首脳宣言に代えてマクロン仏大統領が成果文書を発表して無事閉幕。開幕前から危ぶまれた成果も、それなりに今後の進展が期待できる方向性を見せた。

② イラン問題に関してG7各国首脳は、イランは核兵器を保有すべきでないこと、中東地域の安定を支援すべきであること、という2点で同意できた。

③ 2019年8月28日付VOA記事「US, Iran Deny They Want to Heighten Tensions」によれば、マクロン仏大統領は26日に、米国とイランの緊張緩和のため、トランプ米大統領とロウハニイラン大統領との会談に向けた慎重なステップを踏んでおり、会談が実現すれば仏は他の核合意締結国と共に役割を果たす、と述べ、仲介役としての成果を明らかにした。

<私見ながら>
◯ マクロンの外交手腕に拍手
  マクロンは大したものですね。立派!始まる前から「前回のサミットと同様に今回もダメだろう、G7サミットの成果は形にならない、トランプはサミットに行きたくないと側近に言った‥」などとマスコミに酷評されながら、立派にサミットの成果を上げました。貿易問題をはじめ、イラン、ウクライナ、リビア、香港の諸問題に対し、各国首脳の総意としてのそれなりの言及をしています。イラン問題でも、G7のホストであるマクロン仏大統領のイニシアチブで、サプライズでイランのザリーフ外相を招いたことも力量ですね。

◯ 真っ暗闇だったイラン問題に一筋の光明
  私はてっきり、 もはや米国は対イランでは緊張緩和のための外交努力をする気はなく(ポーズはともかく)、マクロン仏大統領の努力は可哀想だが無駄になると思っていました。マクロンさんはイラン問題の仲介役を積極的に演じようとするでしょうが、トランプ米大統領がイラン問題では妥協の余地なく、対イラン包囲網を訴えるだろうと予想していました。そしてその対イラン包囲網の具体策として、有志連合への参加推奨をサミットの議題にあげるであろう、と読んでいました。いい意味で裏切られて良かったです。
  真っ暗闇に見えたイラン問題の外交努力に、今回のサミットを契機に一筋の光明が指したようです。

◯ しかし米国-イラン首脳会談実現には課題が山積
  前掲のVOA記事に曰く、トランプ米大統領は「(首脳会談ができれば)非常に良いチャンス」としつつも、首脳会談の条件として、イランは軍事的な手段をもっての国外における緊張を高めないことを上げています。また、会談でのnew dealとして、イランの核開発及び弾道弾発射実験を禁じ、有効期限も2015年の核合意がうたった10年というスパンより長くする模様です。
他方、ロウハニイラン大統領は、会談を持ちたいのであれば、その第一歩として「不法で不正で不公正な」全ての対イラン経済制裁を取り下げろ、と述べている模様。
  これでは、もう会談実現は無理そうな気配ですね。しかし、それでも取り付く島が全くないよりはマシです。トランプという男は、北朝鮮との会談でも見せたように、たまにビックリする程の「君子豹変す」そのものの柔軟性を見せますからね。アラブの商人のように、初めはアホかと言うくらい吹っかけてきて、その実、堅実な線で握手するかもしれません。
  まぁ、トランプの常套句の”We’ll see.”「まぁ、お手並み拝見と行こうか」ですね。

(了)


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2019/08/23

疲弊するイラン、豪が有志連合参加、G7で日本は態度表明か?

疲弊するイラン、豪が有志連合参加、G7で日本は態度表明か?

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FILE - Iranian and U.S. banknotes are on display at a currency exchange shop in downtown Tehran, Iran.
(2019年8月21日付のVOA記事(「Iran Moves to Cut Four Zeroes From Its Struggling Currency」より)

<ホルムズ海峡をめぐる情勢のフォロー>
① 2019年8月21日付のVOA記事(「Iran Moves to Cut Four Zeroes From Its Struggling Currency」)によれば、イランの経済はかなり疲弊してきている模様。米国によるイラン核合意からの離脱及び経済制裁により、国家の稼ぎ頭であった原油輸出が困難になり、イランンでは貨幣価値が急落し、2015年当時で1ドル=32,000リアル(イランの通貨)で交換されていたものが、2019年8月21日現在で1ドル=116,500リアルにまで価値が下がった。ロウハニ首相は貨幣価値の是正のため、3桁のゼロを切り捨てる法案を国会に送り審議する模様。4月のIMFの見積もりでは、米国の経済制裁が効果を発揮しつつあり、イラン経済は6%まで縮小し、インフレ率40%に達する模様。

② 2019年08月21日付時事ドットコムニュース「豪、有志連合に参加表明=英に次ぎ、拡大に弾みか」によれば、豪州のモリソン首相は21日、米国主導の有志連合への参加を表明。英国、バハレーンも既に参加を表明したことから、更なる参加国がこれに続く可能性も。尚、参加規模は、哨戒機1機を本年末1ケ月間、フリゲート艦1隻を2020年1月から6ケ月間派遣する模様。モリソン首相は、間もなくフランスで始まるG7サミットにて各国にも説明する意向。

<私見ながら>
○ イランの経済疲弊は限界が近いかも 
  今回の報道で改めて再認識しました。イランはかなり経済が疲弊してきているようですね。だとすれば、ホルムズ海峡の緊張が高まる可能性大ですね。
  イランの打開策は、穏当には①国際的な協議により米国も納得する形での何らかの合意に至る外交、②欧州各国の核合意復帰という助け舟に乗る(但し米国の経済制裁は残る)、③ホルムズ海峡の緊張を高めペルシャ湾諸国やペルシャ湾にエネルギー依存する諸国の悲鳴をテコに米国の経済制裁緩和を図る、というところでしょうか。①も②も今や望み薄。手っ取り早いのが③です。今既にその一途をたどっているのかもしれません。益々厳しくなるイラン経済、そのうちそのイライラは一部の過激な指揮官等の勇み足で、米国海軍艦艇に攻撃をするなど、戦端を切ってしまうかもしれません。

○ 豪州の有志連合参加
  豪州はついに米国に右に倣えしましたね。前豪首相は米国と一線を画していましたが、モリソン現首相はトランプに同調しますね。しかし、派遣規模や期間をみると非常にシャビーですね。哨戒機1か月のみ1機というのは何の役にも立たなそうですね。1機では、1ミッション数時間、海域上空を飛んで降りたら、整備が必要なので、1日おきでもきついので、1週間に2~3フライトが関の山でしょう。ちなみに海賊対処行動に派遣されている海自哨戒機は2機で回しています。フリゲート艦1隻というのも、有志連合に出す、ということは米国の割り振りで与えられたゾーンのパトロールが任務になるでしょうね。6ケ月間派遣と言っていますが、これも豪州からペルシャ湾地域への往復行程を含んでいるものと考えられ、正味5ケ月足らずの現地任務となるでしょう。実質的な貢献度より、国家としての参加表明というshow the flagなんでしょうね。

○ G7でホルムズ海峡対応は影のアジェンダとなるのでは?さて日本は何らかの態度表明か?
  フランスのマクロン大統領にしてみれば、前回のカナダでのG7で共同声明にNoといったトランプ米大統領を抱え、また、イタリアもドイツも首相がもはややめる前の状態で、・・・更に英国のジョンソン新首相はEU離脱する気満々だし、・・・ホストとして頭の痛いことでしょう。正規のアジェンダなら国際経済のためのG7の協力を語るはずなんですが、トランプとジョンソンお二人のワイルドカードがいるから波乱含み。むしろ影のアジェンダはホルムズ海峡問題=イラン問題でしょう。しかも、豪州は有志連合参加について各国に説明すると言っています。
私見ながら、安倍さんは今回ホルムズ海峡問題の隠し玉を持っていくのでは?と思っています。根拠はないですが、ここ最近の音なしの構えが怪しい。8月17日に、森外務審議官がイランに行って外務次官や外相と会っています。ひょっとすると秘密外交をしていて、安倍さんがイランと米国の仲介となる?なんてことも出て来るかも。いやいや、ホルムズ海峡の商船保護のため、米主導の有志連合に参加とか言い出したりして…。私としては独自商船保護派遣をしてほしいですがね。いやーこれは何か出てくるかもしれませんよ。
 (了)


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2019/08/18

米国はやはりイラン包囲網を企図か?

米国はやはりイラン包囲網を企図か?

ホルムズ海峡をめぐる情勢は日々動いています。
① 2019年8月17日のVOA記事(「Iranian Tanker to Leave Gibraltar Soon Despite US Pressure」)によれば、英国は米国からの拿捕継続の圧力に拘わらず、拿捕したイラン国籍タンカーを開放する決定をし、一両日中にも出発する模様。

② また、同日付VOA記事(「Yemen Rebel Drone Attack Targets Remote Saudi Oil Field」)によれば、サウジの奥地、UAE国境に近いシャイバー油田に対しイエメンの反政府組織フーシ派のドローンが遠路を突いて攻撃。

③ こんな折も折、8月16日付VOA記事(「UN Experts: Iran Must Free Women Held Over Veil Protests」)によれば、米国はイランが女性にベール着用を強要していることを問題視(ベール着用に反対を表明した女性が罪を問われた件で開放を要求)するキャンペーンを始めている模様です。
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In this Tuesday, July 2, 2019 photo, youngsters spend an afternoon while siting on steps outside a shopping mall in northern Tehran, Iran. A few daring women in Iran's capital have been taking off their mandatory headscarves, or hijabs, in public,… In this July 2, 2019 photo, young women sit outside a shopping mall in northern Tehran.

<私見ながら>
  結論から言うと、英国は有志連合に参加したものの、せめてイランとの2国間の関係は決裂させないように、英領ジブラルタルで拿捕していたイラン国籍タンカーを開放したと思われます。英国籍タンカーがイランに拿捕されたままであることも懸念材料でしたから、アンダーで交渉していて、英国籍タンカーも間もなく解放されるのではないかと思います。他方、サウジの油田は今回のみならず、イエメンの反政府組織フーシ派に、度々ドローン攻撃されています。お陰でサウジは、稼ぎ頭の原油輸出が抑制されて我慢の限度を超えていることでしょう。サウジは以前からフーシ派のバックでイランが操っていると主張しています。フーシ派もシーア派ですから、さもありなん。当然、サウジは米国に応分の徹底した報復を要望しているでしょう。そんな昨今、米国はイランの女性差別問題を取り上げている・・・・、私見ながら、これはどう考えても、大きなお世話であって、対イランの国際世論を得るための布石なのだと思います。それを言うなら、サウジの方が宗教的な制約は徹底しているのであって、イランはむしろ柔軟な方なのです。ベール着用反対を公にPRした行為は、イラン国家として罰すべしとの文化として社会的規範があるので、よその国がとやかく言うべき話ではないと思います。おっと、脱線しました。米国は、経済制裁とホルムズ海峡やバブエルマンデブ海峡での海上作戦を中核としつつ、国際世論でも異質な国を正すべしとの雰囲気を醸成し、「対イラン」の包囲網を形成しようとしているのではないか、と推察します。
  であるとしたら、益々もって日本は有志連合に参加すべきではないと、意を強くしました。
(了)


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2019/08/12

ホルムズ商船護衛は独自路線で行きましょう!

英は有志連合参加へ、日本は独自派遣追求を!

  2019年8月5日、英国は独自路線から米国主導の有志連合傘下へ舵を切りました。7日にはエスパー米国防長官が来日し、安倍首相や岩谷防衛相と会談、有志連合への参加を迫っています。さて、日本はどうすべきでしょうか?英国同様、米国主導の有志連合に加わりますか?それとも、独自の商船護衛に活路を求めますか?或いは、当面は決心せずに状況を見極めますか?

  結論から言うと、あるべき姿は「独自の商船護衛の部隊派遣、合わせて米国主導の有志連合との情報共有により(参加せずとも)連携を図る。もって、イランとの決裂を避けつつ、米国のイニシアチブのメンツを立て、海域の日本関連商船の安全確保及び地域の緊張緩和に努める。」です。有志連合へ情報提供の形で協力をしたとして、それでも日本は独自路線を取ることでhonest brokerとしての立ち位置を確保し、米国とイランを決裂させずに緊張緩和に舵をとらせる方策もあると思います。
以下、まず状況の整理をし、次いで私見を述べたいと思います。
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日本関連船舶を護衛中の海自艦艇(海上自衛隊オフィシャルサイトより)

<状況の整理>
① 2019年7月31日、米国は関係諸国に対し3回目の有志連合説明会を実施したが、その時点で米国主導の有志連合にいずれの国も参加せず。(参加表明が報じられた韓国の動向は不明。)

② 各国とも米国主導の有志連合への参加に踏み切れずない模様。英仏独は米国枠組みには参加表明せず慎重姿勢を維持、英印は独自の自国籍商船護衛のため海軍艦艇を派遣。

③ ところが、その英国が方向転換、2019年8月5日に米国主導の有志連合への参加を表明。独自路線や欧州海軍部隊による商船護衛も模索したが、米国の協力なしには当該海域での不法な脅威から商船の安全確保することは困難との判断。他方で、英国は引き続きイランの核合意維持を追求し緊張緩和に努める旨、表明した。

④ 8月7日(水)、エスパー米国防長官が来日し、まず安倍首相、次いで岩谷防衛相と会談。安倍首相には直接の言及はしなかったものの、岩谷防衛相には米主導有志連合への日本の参加を要請。加えて、韓国との安全保障に係る情報共有体制(GSOMIA)について、緊張する日韓関係に関連して韓国側が破棄する意向を示している件で、存続への努力を要請した模様。岩谷防衛相は記者からコメントを求められ、日本の立場を理解してくれたものと受け止める旨、回答。

⑤ エスパー米国防長官の来日後、日本政府の検討状況も俄かに動きが見られた。8月8日(木)〜9日(金)、各種報道あり。有志連合参加?、独自派遣?海自艦艇派遣?等というものから、現在実施中の海自の海賊対処部隊によるバブエルマンデブ海峡海域の警戒監視による貢献案など様々。

⑥ 関連情報として、8月8日(木)、ロシアのボリャンスキー国連次席大使は、米国に対抗して独自の中東安全保障スキームを提唱。イラン含むペルシャ湾岸諸国やロシア、中国、米国等の安全保障機構を目指すというもの。グテーレス国連事務総長ほかに働きかける。

<私見ながら>
◯ ニュースに振り回されず、本質に立ち返るべし
今直面している事態は、日本の経済を支える一つの柱である重要な海上交通ルート=ホルムズ海峡で、商船の安全航行が脅かされていること。脅威の有力な一部がイラン革命防衛隊による臨検・拿捕、他に正体不明の攻撃者。この海域における日本関連船舶の安全航行の確保が問題の焦点です。何とかしなければならないのです。実効性のある商船護衛と警戒監視の措置が命題です。
  この命題の対応にあたっての課題は、①米国主導の有志連合の参加の要否、②イランとの対峙を避けた関係の維持、の二つです。①は一つのオプションに過ぎない一方、非常に効果があることは明白であり、日本にとって米国との同盟関係や外交姿勢における協調は非常に重要なため、無碍に参加要請を拒否しづらい、という特性があります。他方、②は日本にとってのエネルギー安保上の必須の考慮事項であり、また、世界にとってもイランを戦争に追い込むことは絶対に避けるべきことです。総じると、本質=命題である「日本関連船舶を守る」ことを如何に具体化するか、その際に2つの課題をどうクリアするか、を考えることが肝要です。

○ 行動はとらない、というオプション
  いずれの形でも自衛隊を派遣するような行動をせず、「まず外交交渉を尽くす」というオプションがあります。理論的には「あり」です。しかし、「まず」が他の手段方策を一切取らず、外交に専念することを意味するのなら馬鹿野郎ですね。ハッキリ言って無力。大体、外交でどうにもならないからこうなったのであって、日本外交に如何なる秘策があるのでしょうか。外交交渉を継続することは大事ですが、「まず」ではなく「合わせて」が適切だと思います。安全航行のための商船護衛対策・行動を取りつつ、「合わせて」外交努力をするというのが実効性ある方策です。肝心なのは、それが商船護衛に実効性があるのか?ということだと思います。
  NO/「行動はとらない」というオプションはないと思っています。ただ、情勢を見極める/慎重に検討する、という大義名分のもと、今決心をせず先延ばしにするという手はあります。ただし、「検討中」という理由で何もなさず時を費やし、国際社会にも日本の商船にも結局は何の役にも立たないことも、NO というオプションと変わりがありません。逃げずに問題の解決の検討をすることが肝心でしょう。

○ 米国主導の有志連合参加というオプション。
  米国は米国主導の有志連合による警戒監視・商船護衛を提唱しています。これに加わるのも一つのオプションではあります。米国の圧倒的な情報力と軍事力の下、情報収集・警戒監視・直接エスコートを多国籍の連合部隊で展開する有志連合に参加すれば、緊急事態への対応については強力な助っ人が期待できますし、日本関連船舶にとっても物理的に安全確保する有力なオプションでしょう。英国が独自路線を追求したものの、結局は米国の有志連合に参加したのも、ここに集約しています。この海域は今、極度の軍事的緊張下にあります。砂漠の大地の間に横たわるペルシャ湾筋の深い入り江は、一見のどかなベタ凪の海ですが、艦艇や航空機等の目に見える作戦(overt operation)と電波探知・電子情報はじめ情報戦や特殊部隊等の見えない作戦(covert operation)が、イランと米国の間で既に展開中なのです。ここに、片やイランと相互に拿捕した船の問題を抱えてイランと係争中の英国が独自路線で自国商戦を護衛できるか?米国は英国に、独自路線なら米軍の情報を提供しない、と協力を拒んだのではないかと推察します。他方で、かねてからトランプ米大統領とツーカーのジョンソン英新首相に政権が移行した折も折、ジョンソン首相が米国との協調路線に舵を切ったのでしょう。ですから、日本も独自路線を追求する場合のネックは、米国が独自路線なら米軍の情報は提供しないし、イランによる商船拿捕に瀕するような緊急時にも協力はできない、と米国に柔らかく恫喝されることは覚悟しなければなりません。
  では、なぜ有志連合への参加国は一向に集まらないのでしょうか?各国が米国枠組みに参加することを避けているのは、間違いなく有力な産油国であり、かつ、有力な原油輸入元ペルシャ湾のチョークポイントを握るイランとの関係維持を慮っているのです。しかも今回の危機は、そもそも米国が作り出した危機だということは周知の事実。さすがに米国が「この指とまれ!」と天高らかに指を差し出しても、どの国も止まれません。
  想像してみてください。日本が有志連合に参加すると発表したら、それはもはやイランとの最後通牒になってしまいます。これまで米国の指に止まらなかった諸国も、日英の参加により、「バスに乗り遅れるな」状態になり、追加参加してくるかもしれません。イランから見れば、有志連合自体が対イラン包囲網のように映り、ただでさえ緊張している海域は、もはや「イラン」対「米国主導の有志連合」という一触即発の軍事的緊張下に陥ることは必定です。イランにとって、自国の目の前の海に全て敵となってしまった外国海軍の船影ばかりが見えたら、・・・・。そんな時には、イランは海峡封鎖を宣言し、もって対イラン戦争の始まりになるやもしれません。

○ 独自路線というオプション
  「有志連合には参加せず、日本独自に日本関連船舶を護衛する」とは、具体的にどういうイメージか?望ましくは、上空から海自哨戒機が海域全体を警戒監視する中、海自艦艇に随伴護衛された日本関連船舶が海域を通過する、というのが基本パターンです。しかし、日本関連船舶の航行は東から西へ(ペルシャ湾奥へ)のもあれば西から東へ(ペルシャ湾からインド洋・太平洋に出る)ものも、随時ひっきりなしに航行しています。海自の艦艇も哨戒機も数に限りがあり、入港・給油等のインターバルも必須です。これに対し、ソマリア・アデン湾海賊対処の際の初期の対応を例にとると、商船護衛のスケジュールを予め公表し、これにエントリー(参加申し込み)してもらい、登録船舶には安全な起点と終点を示し、そこで集合・解散とする、というやり方をしました。よって、スケジュールに合わない船舶は、スケジュールを待つか、待たずに独自に前進するか、になります。この際、参加船舶は日本関連船舶としつつも、いずこの船舶であれエントリーしたければ護衛可能な範囲で門戸を開放していました。当時、護衛艦2隻で前後を挟み、間に商戦を2列に10隻の計20隻くらいを並べ、東向き護衛が終了したら補給艦から洋上で補給を受け、次の西向き護衛へ。その護衛間に補給艦は安定した近隣国の港で補給をし、護衛の数往復の後、インターバルのためジブチに入港、補給・休養の後、また次の護衛任務へ。かなりハードな任務を終え、4ケ月交代?くらいで次の対処部隊と交代で派遣されていました。この間、ジブチを基地に持つ海自哨戒機は、護衛任務を中心に、海域全体を見渡しながら往復飛行をし、この海域の既に掌握済みの各国商船の確認や、事前の航行情報にない不審船舶を発見すればその情報を、航行中の商船や各国海軍が傍受している国際周波数で通報することにより、情報共有をはかりました。この情報を基に、近隣をパトロール中の海軍艦艇が相互に助け合いで対応したりしていました。
  海賊対処は、相手が「海賊」であったため、この各国間の共通の敵として協力体制がありましたが、今回は「イラン革命防衛隊」がからんでいるだけに、国家の主権を背に「止まれ!」と言ってくるわけですから、対応が難しいわけです。
  他方で、独自路線のいいところは、日本丸出しのあからさまな個別の行動ができることです。全船にあの分かり易い国旗を旗めかせて「日本でーす」と日本の軍艦旗を掲げた海自艦艇が護衛するのです。決め手は、予めイランに「何月何日、日本国海上自衛隊がA点からB点まで日本関連船舶を護衛しまーす。イラン沖の国際航路をイランにも掌握してもらいながら、合法適切安全に通過します。何か不都合やお問い合わせがあったら、海自が対応しますから。それでは、よろしくお願いしまーす。」と仁義を切る。いかがですか。在イラン大使館に海自の連絡将校(Liaison officer)を置き、イランとも密接に連絡を取る。日本とイランの良好な国際関係をバックにしてこうしたイランとの協調路線を取れば、日本関連船舶の安全航行は確たるものとなるはずです。イランもこうしたイランを一人前の国家として対等に遇し、敬意を払う国を求めていると思います。
 こうして、緊張下のホルムズ海峡でも、調和された安全航行という例を積み重ねれば、海域の緊張緩和の一助になろうと思いますし、イランにとって、日本は信頼できる正直な仲介者(honest broker)としての地位役割を確保できるのではないでしょうか。こうなって初めて、日本としての地位役割を踏まえた実効性のある外交努力ができるのではないでしょうか。
 ここで問題は、米国との関係です。米国にしてみれば、米国の提唱した有志連合への参加要請を袖にして、勝手にイランのご機嫌を伺って、自国だけ漁夫の利を得るつもりか?といぶかられても不思議はありません。有志連合に入らない代わりに、米国にとってもう一つの正面であるバブエルマンデブ海峡において、同地近傍で作戦中の海自哨戒機による警戒監視情報を提供する、という手はあります。海賊対処部隊の作戦地域を、バブエルマンデブ海峡海域まで拡大することで、実施している内容は海賊対処と同様に海域の警戒監視情報の提供ですから、必要性も可能性も成り立つと思います。米国には、バブエルマンデブ海峡正面で情報提供という形で有志連合には協力する、という手です。これでは有志連合参加ではないので、米国の満足は得られないかもしれません。しかし、もともと両立は無理なので、米国の満足は得られなくても「ウム、これでいいのだ」とバカボンのパパのような達観をしましょうよ。ここは大義のない米国の対イラン包囲網には入らず、独自路線で行きましょう。

(了)


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2019/08/01

ホルムズ商船護衛の行方は?政府は腹を決めよ!

  8月1日(木)現在の状況: 米国は3回にわたり米国主導の有志連合を各国に提案するも諸国の反応は鈍感。これに対し、韓国はいち早く参加表明の意向。他方、英国は米国の提案とは直接関係しない自国枠組みの自国籍商船の護衛を開始。
  さて日本は? 8月1日現在の状況について整理しました。
  (8/1付NHK newsweb 「ホルムズ海峡「有志連合」 米軍 会合で参加呼びかけ」及びVOA2019年7月31日「Germany Refuses to Join US Naval Mission in Strait of Hormuz」、及び8月1日付「Iran Responds to US Sanctions on Foreign Minister」を参照。)
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日本に参加を呼びかけるポンペイオ米国務長官(テレビ東京 7月26日 より)

<ポイント>
① 2019年7月31日、米国はバハレーンにて第3回目の関係諸国に対する有志連合の説明会を実施。しかし、今の所、米国主導の有志連合に参加を表明しているのは韓国のみの模様。ポンペイオ米国務長官も「有志連合の形成には時間がかかる」旨、保険をかけ始めた様子。

② 韓国以外の各国の対応は、一様に米国主導の有志連合への参加に踏み切れない状況。インドや英国は米国枠組みに入らずに自国籍商船の護衛のため自国海軍艦艇を派遣、仏独も米国枠組みには参加表明せず慎重姿勢を維持し、未だ外交努力の余地ありとの方向性。 (独は米国の直接の参加呼びかけに対し、7月31日にヘイコ・マース独外相が「米国主導の枠組みでの海上作戦にはドイツは参加しない。」と議会にて明確に不参加を表明。)

<私見ながら>
◯ 原油の87%を中東に依存している日本にとって死活的国益ですよ!
  皆さん、ご自覚を。これって危機的状況ですよ。大昔の石油危機の頃に中東からの石油へのエネルギー依存度(一次エネルギー供給)が75%だったことを教訓に、70年代よりは改善し現在では約40%になりました。しかし、東日本大震災前に原子力をベース電源とする体制に慣れたため、福島第一原発の事故で根底から崩れてしまい、今や再び石油の重要度が増しています。今でも87%を中東からの石油に依存しているのです。エネルギー源は多角的に保持しているものの、原子力に依存できなくなった今となっては、結局は石油が主力なのです。石油供給源も多角的に確保してはいますが、結局は長期安定的?な供給源はペルシャ湾でした。石油ショックの教訓から、備蓄も確保しているので今日明日の緊迫感が体感していませんが、危機的状況はもうすぐそこですよ。イランが、米国のホルムズ海峡での軍事行動等に業を煮やして、ある日ホルムズ海峡封鎖を宣言!そうなったら一夜にして第2の石油危機、エネルギー危機になります。勿論米国は軍事作戦を開始、戦争になるかもしれません。米国主導の怖さの一端でもあります。

◯ 米国主導の有志連合は各国同様避けるべし
  各国が米国枠組みに参加することを避けているのは、間違いなく有力な産油国であり、かつ、有力な原油輸入元ペルシャ湾のチョークポイントを握るイランとの関係維持を慮っているのです。しかも今回の危機は、そもそも米国が作り出した危機だということは周知の事実。さすがに米国が「この指とまれ!」と天高らかに指を差し出しても、どの国も止まれませんよ。おっと、韓国が参加するって話でしたね。
  まぁ、韓国は北朝鮮問題や日本との経済摩擦を米国に何とかとりなしてもらいたいので、米国に尻尾を振りたいのでしょうから、それはご自由に。

◯ 英国は自国の商船護衛を開始!日本も後に続け!
  なぜかあまり日本のマスコミは報道しませんが、インドも英国も自国の商船護衛を始めていますよ。米国は「ペルシャ湾の商船護衛って誰が守るんだ?」と問いかけてきます。=「おい、何でペルシャ湾にエネルギー依存していない米国が孤軍奮闘してるんだ?お前ら参加しろよ!参加しねえなら資金援助しろよ!」です。いい加減ほっかむり出来ません。だからといって米国枠組みに参加するのはイランを慮って無理。いい加減、黙ってないで、英国のように国家として毅然たる態度で自国の死活的国益を守りましょう。法的整理は当然必要です。政治家と官僚は脳漿を絞って枠組みを作り、可及的速やかに対応すべきです。海賊対処の時を思い出していただきたい。何の根拠もないところから、当初は海上警備行動、じ後新法を作ってシームレスに対応して、自国籍商船を守ったじゃありませんか?
  日本が取るべき方策は、英国提唱の欧州海軍部隊による商船護衛作戦への参加です。当面は、各国独自の枠組みで自国商船を護衛し、英国提唱の欧州海軍部隊が機能し始めたら、英国版のcoalitionで商船航行全体を護衛する。イランは手を出さない。米国は、米国提唱の有志連合に日本含め同盟国が参加しないことには不満でしょうね。しかし、懸案となっている「ホルムズ海峡周辺海域の商戦の航行の安全確保」という同じ目的は達成できます。この作戦には米国の協力も必要なので、米国の作戦と協調関係を持ち、警戒監視情報の情報共有を図ることは可能なはずです。
  イランは、米軍枠組みであろうが欧州海軍であろうが、イランの鼻先のホルムズ海峡に他国海軍が作戦展開すること自体「認めない」と言っています。しかし、余程の理屈が立たない限り拿捕はできないでしょう。先日のイラン革命防衛隊による英国タンカーの拿捕は、ジブラルタル海峡でイランタンカーが英国に拿捕された報復ですからね。それに加えて、米国枠組みと英国提唱の欧州海軍では立て付けが違います。イランにとって、米国は仇敵。過去の経緯もありますが、それはさて置いても、イランなりに遵守してきた核合意から米国は一方的に離脱。今回の緊迫の火種を作りました。他方、英独仏は核合意の枠組みを何とか維持・復帰させようと、これまでも米国離脱及び経済制裁のイランへの影響を抑えようと努力してきたし、イランもそれに頼り、甘えてきました。イランも核合意の核濃縮の上限越えをするような、悔し紛れの火遊び的な瀬戸際政策を取ったりしますが、英独仏のこれまでの努力は分かっています。英国提唱の欧州海軍による護衛には、イランは手を出さないと思います。
  英国に続きましょう。英国は日本と同様に米国とは特別な関係にありますが、今回は米国に「右に倣え」していません。イランに対しても、「核合意に戻れ」と言うべきことを言っています。ジブラルタルでのイラン国籍タンカーの拿捕も、それが密輸だからです。そして、自国籍商船は断固として自ら守る姿勢を見せました。米国枠組みによらない欧州海軍案を提唱しています。大したもんじゃないですか。日本が英国に同調すれば、英国も百万力。欧州海軍構想も独仏の参加を含めガゼン現実味を帯びるでしょう。

(了)


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