サウジ油田炎上、イランは遂に一線を越えたか
恐れていたことが起きました。イランは越えてはいけない一線を越えてしまったかもしれません。
2019年9月14日(土)、イエメンの反政府組織フーシ派によ攻撃がサウジのアブカイクにあるアラムコ社の油田に壊滅的な損害を与え、サウジの石油生産能力が半減する状態にまでダメージが深刻化しました。トランプ米大統領は、このミサイルとドローン攻撃の真犯人はイランであるという確信があると明言し、イランへの開戦かと危ぶまれる状況になっています。

(2019年9月16日 ANNニュースより)
<状況>
2019年9月18日付VOA記事「Trump: 'Many Options' to Respond to Iranian Attacks on Saudi Oil Fields」によれば、
① 9月18日のトランプ大統領の発言では、米国がこの攻撃はイランが為した戦争行為と位置づけ、48時間以内に相当の新たな経済制裁を課すとともに、「軍事行動に加え、米国には多くの選択肢がある。」と述べた。
② サウジは、攻撃はイランによるものとの「動かぬ証拠」を報道に供し、イランを非難している。イラン製のデルタ型ドローンの破片と巡航ミサイルを証拠物件として報道公開するとともに、それらは「北」すなわちイランから明白に飛来した、と主張。
③ イラン国営ニュースは、直ちに攻撃への関与を否定し、もしイランへの行動があった場合には直ちに対応行動を取る、と警告した。他方、イランが背後にいると言われているイエメンの反政府組織フーシ派の報道官は、イエメン国内でサウジ主導の軍事作戦を支援しているアラブ首長国連邦に対して、攻撃目標にする旨の恫喝を行った。
④ 米国とサウジは、今回のサウジの油田攻撃の起点はイエメンでもイラクでない、とイランの関与を主張。これに関連して、9月18日にイランのロウハニ大統領は、イエメンでの非人道的なサウジ主導の軍事作戦への「警告」と公言してはばからない。また、ロウハニ大統領は、フーシ派は学校や病院や市場等を攻撃目標にしたことはない、と擁護。
<私見ながら>
◯ イランは一線を越えた
8月のG7にて、米国とサウジの交渉の可能性が見えてきたにも拘わらず、イランは自ら「米国と直接交渉することはない」と現状打開の道を断ちました。それに加えて今回のサウジ油田攻撃により、「遂に一線を越えた」と私見ながら思えてなりません。サウジはサウジの国家収入の大黒柱である石油生産能力を半減させられ、もはや我慢の限界。ボルトン前国家安全保障補佐官がいたらもう外科手術的航空攻撃をしているでしょう。米国は、イラン国内からの発射であることの証拠をつかんでいる、と公表しています。イランは、イラン国家・政府の関与を否定していますが、何者かが自国から巡航ミサイルを発射して他国を攻撃していることを黙認しているという状態。認めようとしないでしょうが、そんなガバナンスのない国であるはずがありません。
◯ 開戦のシナリオ
誰もが望んでいないことですが、今後、何らかのトリガーで、米国は事前にサイバー攻撃をかけてイランの防空、警戒管制、指揮通信、電力インフラ等を無力化・無効化し、ミサイル攻撃やドローン攻撃(まずは飛び道具で)が始まるかもしれません。可能性が高いのは、サウジによるイランへの報復のミサイルかドローン攻撃で、まずイラン-サウジ間で戦争が始まり、米国が影に日向に支援し、イランが米海軍艦艇を攻撃する。これにより戦闘状態に移行する 、などのシナリオです。
これに対しイランは、目の見えない耳も聞こえない状態ながら、世界経済にインパクトの大きいホルムズ海峡の封鎖で対抗します。具体的にはヤケクソ的な機雷敷設。海峡のあちこちに、無差別的に機雷を撒くのでしょう。米国もペルシャ湾〜ホルムズ海峡〜オマーン湾での海上及び航空作戦で対抗。特に、イランの海軍も空軍基地も防空網も開戦間もなく壊滅。イラン国土の基地や軍事工場、核開発施設など、二度と立ち上がれない程の壊滅的打撃を与えて、一方的勝利宣言をする。この際、陸上部隊は投入せず、特殊戦部隊のみ潜入させ、情報収集、破壊工作、レーザーJDAMによる重要目標の航空攻撃の誘導など。米国の描くシナリオはそういった感じでしょう。
◯ 新たな泥沼の始まりかも
ところが、米国の思惑通りいかないのがイランの強かさ。通常戦力の戦いでは米国の圧倒的な軍事力には歯が立たないのは間違いないところですが、ここからがイランの底力。中東各地のシーア派武装組織が、あちらこちらで反米テロののろしを上げ、反米、反イスラエルの抗争をあちこちで起こすでしょう。中東は再び荒れすさぶでしょう。イラン国内でも反米国民感情に火がつき、勝利宣言をしても米国はイラン本土にはいかない方が良いでしょう。従順な日本人とは決定的な差があり、イラン人を御するのは厄介な仕事でしょうね。まかり間違って、イランに陸上部隊を大挙進駐させ、イラクやアフガンで目指したような、米国の悪い癖「民主的な政治体制を作り上げる」なんて絵空事を描いたら、手ひどいしっぺ返しを食らうでしょう。イラン人は決して米国に精神的な屈服はしないでしょう。徹底的に抵抗する。イラク、アフガンの二の舞です。新たな泥沼が始まってしまいます・・・。
○ イランは我が強すぎる、時を待つべし
対米国となると、徹底的に反発するイラン。もっと利口になるべきです。トランプ後のオバマのような穏健政権になるのを待って、今は耐えるべきを耐えるべき時。 しかし、「やむにやまれぬイラン魂」なのでしょう。
(了)


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2019年9月14日(土)、イエメンの反政府組織フーシ派によ攻撃がサウジのアブカイクにあるアラムコ社の油田に壊滅的な損害を与え、サウジの石油生産能力が半減する状態にまでダメージが深刻化しました。トランプ米大統領は、このミサイルとドローン攻撃の真犯人はイランであるという確信があると明言し、イランへの開戦かと危ぶまれる状況になっています。

(2019年9月16日 ANNニュースより)
<状況>
2019年9月18日付VOA記事「Trump: 'Many Options' to Respond to Iranian Attacks on Saudi Oil Fields」によれば、
① 9月18日のトランプ大統領の発言では、米国がこの攻撃はイランが為した戦争行為と位置づけ、48時間以内に相当の新たな経済制裁を課すとともに、「軍事行動に加え、米国には多くの選択肢がある。」と述べた。
② サウジは、攻撃はイランによるものとの「動かぬ証拠」を報道に供し、イランを非難している。イラン製のデルタ型ドローンの破片と巡航ミサイルを証拠物件として報道公開するとともに、それらは「北」すなわちイランから明白に飛来した、と主張。
③ イラン国営ニュースは、直ちに攻撃への関与を否定し、もしイランへの行動があった場合には直ちに対応行動を取る、と警告した。他方、イランが背後にいると言われているイエメンの反政府組織フーシ派の報道官は、イエメン国内でサウジ主導の軍事作戦を支援しているアラブ首長国連邦に対して、攻撃目標にする旨の恫喝を行った。
④ 米国とサウジは、今回のサウジの油田攻撃の起点はイエメンでもイラクでない、とイランの関与を主張。これに関連して、9月18日にイランのロウハニ大統領は、イエメンでの非人道的なサウジ主導の軍事作戦への「警告」と公言してはばからない。また、ロウハニ大統領は、フーシ派は学校や病院や市場等を攻撃目標にしたことはない、と擁護。
<私見ながら>
◯ イランは一線を越えた
8月のG7にて、米国とサウジの交渉の可能性が見えてきたにも拘わらず、イランは自ら「米国と直接交渉することはない」と現状打開の道を断ちました。それに加えて今回のサウジ油田攻撃により、「遂に一線を越えた」と私見ながら思えてなりません。サウジはサウジの国家収入の大黒柱である石油生産能力を半減させられ、もはや我慢の限界。ボルトン前国家安全保障補佐官がいたらもう外科手術的航空攻撃をしているでしょう。米国は、イラン国内からの発射であることの証拠をつかんでいる、と公表しています。イランは、イラン国家・政府の関与を否定していますが、何者かが自国から巡航ミサイルを発射して他国を攻撃していることを黙認しているという状態。認めようとしないでしょうが、そんなガバナンスのない国であるはずがありません。
◯ 開戦のシナリオ
誰もが望んでいないことですが、今後、何らかのトリガーで、米国は事前にサイバー攻撃をかけてイランの防空、警戒管制、指揮通信、電力インフラ等を無力化・無効化し、ミサイル攻撃やドローン攻撃(まずは飛び道具で)が始まるかもしれません。可能性が高いのは、サウジによるイランへの報復のミサイルかドローン攻撃で、まずイラン-サウジ間で戦争が始まり、米国が影に日向に支援し、イランが米海軍艦艇を攻撃する。これにより戦闘状態に移行する 、などのシナリオです。
これに対しイランは、目の見えない耳も聞こえない状態ながら、世界経済にインパクトの大きいホルムズ海峡の封鎖で対抗します。具体的にはヤケクソ的な機雷敷設。海峡のあちこちに、無差別的に機雷を撒くのでしょう。米国もペルシャ湾〜ホルムズ海峡〜オマーン湾での海上及び航空作戦で対抗。特に、イランの海軍も空軍基地も防空網も開戦間もなく壊滅。イラン国土の基地や軍事工場、核開発施設など、二度と立ち上がれない程の壊滅的打撃を与えて、一方的勝利宣言をする。この際、陸上部隊は投入せず、特殊戦部隊のみ潜入させ、情報収集、破壊工作、レーザーJDAMによる重要目標の航空攻撃の誘導など。米国の描くシナリオはそういった感じでしょう。
◯ 新たな泥沼の始まりかも
ところが、米国の思惑通りいかないのがイランの強かさ。通常戦力の戦いでは米国の圧倒的な軍事力には歯が立たないのは間違いないところですが、ここからがイランの底力。中東各地のシーア派武装組織が、あちらこちらで反米テロののろしを上げ、反米、反イスラエルの抗争をあちこちで起こすでしょう。中東は再び荒れすさぶでしょう。イラン国内でも反米国民感情に火がつき、勝利宣言をしても米国はイラン本土にはいかない方が良いでしょう。従順な日本人とは決定的な差があり、イラン人を御するのは厄介な仕事でしょうね。まかり間違って、イランに陸上部隊を大挙進駐させ、イラクやアフガンで目指したような、米国の悪い癖「民主的な政治体制を作り上げる」なんて絵空事を描いたら、手ひどいしっぺ返しを食らうでしょう。イラン人は決して米国に精神的な屈服はしないでしょう。徹底的に抵抗する。イラク、アフガンの二の舞です。新たな泥沼が始まってしまいます・・・。
○ イランは我が強すぎる、時を待つべし
対米国となると、徹底的に反発するイラン。もっと利口になるべきです。トランプ後のオバマのような穏健政権になるのを待って、今は耐えるべきを耐えるべき時。 しかし、「やむにやまれぬイラン魂」なのでしょう。
(了)


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