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2020/01/29

トランプ中東和平案は選挙PRでしかない



間も無く発表されるトランプ米大統領の中東和平案が酷すぎる。本日、日本時間2020年1月29日には発表されるが、米国内外の報道でリリースされているところでは、あまりに一方的、イスラエル寄りの和平案であって、あれではパレスチナ側は受け入れ不可能としか言えないシロモノ。真の中東和平を企図したものではなく、米国内向けに、特に秋の大統領選挙に向けて、自らの支持基盤キリスト教福音派へのPRでしかない。

その内容とは伝えられるところ以下のようなもの。
・首都エルサレムはイスラエルのもの。
・本来パレスチナの土地である西岸地区にイスラエルが勝手に入植した地域もイスラエルのもの。
・パレスチナは建国して良いが軍は持てない。その代わり、これを飲めば米国始め西側諸国が財政援助しパレスチナの所得は倍増することを保証する。
これではまるでジャイアンがのび太に突き付ける要求ではなかろうか。既にパレスチナのアッバース首相は交渉の拒否を表明している。

一部の報道では、「永らく進展のない中東和平案として現実的」と評価する向きがあるが、それはあまりにイスラエル寄りの議論ではなかろうか。

(了)

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2020/01/26

新型コロナ:あらゆる動物を食べる中国の市場が元凶

  猛威を振るう新型コロナウイルス。WHOは23日の発表で 時期尚早だとして「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態宣言」を見送りましたが、あれは何だったのでしょう。これは十分「緊急事態宣言」が必要な状況でしょう。中国政府は1月23日についにウイルス発祥の地武漢市を封鎖、更に感染の拡大が衰えを見せないことを踏まえ、これ以上の拡大防止のために他の都市も交通封鎖したり団体海外渡航の禁止に踏み切るなど、本日1月26日の段階で、日本ではできない程の強権発動をしています。中国のことですから、WHOに全ての情報を提供せず、情報操作していたことだ取ろうと思いますが、逆説的に自国の統制は徹底できるところが強み。日本には到底そこまで徹底できません。その辺は、中国政府の強権発動に期待しましょう。我が国も、武漢市在留の邦人の帰国便を準備しているとのこと。状況は刻々と推移しており、マスコミ報道も状況推移をフォローしているので、注目していくしかありません。
  SARSもそうでしたが、なぜ中国発の新型猛烈ウイルスが出るのか?その点について、VOA記事で丁度「それ、それ!」という記事(※)があり、経験を交えて私見を述べたいと思います。元凶は、あらゆる動物を食用で市場で生きたまま売り買いする中国やアフリカ等の市場の環境だと思います。食文化を否定するつもりはありませんが、今の状況であればエボラ出血熱やSARS、そして今回の新型コロナウイルスと同様、また次なる新種の猛烈ウイルスもここからまた出るでしょう。
  (※ 2020年1月26日付VOA記事「Live Animal Markets Worldwide Can Spawn Diseases, Experts Say」より。下の写真も。)
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A Chinese man looks over cages of dogs and rabbits at a live-animal market in Guangzhou, Southern China, Jan 6, 2004.

○ 多種の生きた動物を売り買いする市場は新種のウイルスの温床
   VOA記事の話の前に、経験談から。エボラ出血熱がアウトブレイクした2014年~15年、最終的には航空自衛隊輸送機による防護服の空輸のみでしたが、「状況によりあり得る」との観点で陸上部隊派遣の検討をしたことがありました。また、当時エボラ出血熱の感染者が出ている地域の隣接する地域に、既に派遣していた国連PKOの南スーダン任務(UNMISS)に日本隊がいましたので、感染防止の検討など、国連機関やエボラ対応で既に部隊派遣をしていた他国軍との情報交換をしました。私自身がアフリカや中東で見聞したことも踏まえ、私見ながら、多種の生きた動物を売り買いする市場は新種のウイルスの温床である、と考えています。

   アフリカのような場所には、食べられるものは何でも食べる食文化の影響で、犬やウサギ、ネズミや蛇やコウモリをはじめ普通は食べない動物も市場で売り買いしますが、そこでその多種の動物たちは小さなカゴに入れられて過密状態で同居し、エサを食べ、糞尿をし、屠殺され、解体されて肉として売られています。冷蔵庫もなく生で吊るされて。そして、その市場の地面には、その動物たちの糞尿や血や体液や肉片が地面に流れ、そこをハエやら蚊やらがたかり、人間もそこに生活しています。普通なら交わるはずのない動物たちが、濃厚接触状態で同居しているわけです。それぞれの動物が自己種の中で本来的に持っていた固有種のウイルスが、この濃厚接触状態の中で他の種の宿主を見つける。他の種の中に入り込んで生き延びたウイルスは、新しい種の体内の環境に生き延び増殖するため、新型ウイルスに変異して感染力を高めて他の個体へ感染し、ウイルスは繁栄を図ります。そして、種を越えて変異しつつ新たな宿主を見つけ、やがて人間に至ります。これが人間から人間にも感染するところまで変異し感染力を高めれば、これがアウトブレイク。一昔前なら、仮にそれが起きても、一地域の局地的な感染症で済みました。現代では、人間の交流が国際的。今回の状況では、中国の春節という民族大移動に近い状況。世界的なアウトブレイクに至っても不思議はありません。

   VOA記事では、その点を指摘しています。武漢の市場では、ヘビ、ハリネズミ、孔雀、ジャコウネコ、サソリ、ムカデなどが売られており、今回の新型コロナウイルスの温床であろう、と。専門家は、約800名が死亡した2002年のSARS(重度の急性呼吸器症候群)も武漢の市場と同様の中国内の市場で生まれたものであろうと指摘。いやいや、中国だけではなく、広く東南アジアや中東、アフリカでも見られることながら、先ほどの私の記述のような市場では、どこでも起きうる話であると指摘しています。ウィスコンシン大学グローバルヘルス研究所のトニー・ゴールドバーグ獣医によると、“And when you do that in these tight, crowded, stressful conditions, you create every opportunity for these viruses to jump host species.” 「(通常出会うはずのない種が)このような市場で混在し、過酷で過密でストレスのある状態に置かれていると、病気の動物の唾液や糞尿、その他分泌物がウイルスを媒介し、宿主の種を飛び越えるチャンスを作ってしまう。」というわけです。

   一部の報道では、英国の専門家チームの予測では、今後2週間ほどで武漢市の感染者は19万人を超えるとのこと。もはやアウトブレイクの兆し。
   日本上陸は既にしていると思いますし、春節で大挙して日本を訪れている中国人観光客の中にキャリアいることはもはや間違いないでしょう。あとは最小限に抑える・局限するしかないですね。そこは国の保健衛生の施策に従い、パニックを起こさずに整斉と対応し、かつ、自衛手段で自己防衛をして、何とか最小限かつ早期に抑え込んでもらいたいものです。

 (了)

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2020/01/22

三菱電機サイバー被害: オリパラ前に再点検を

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マスコミが喧伝中の三菱電機がサイバー攻撃を受けていた件。マスコミ論調はいろいろですが、三菱電機は早く報告すべきだった等、例によってメディアリンチをする相手を見つけて袋叩きに興じています。そんなことより、より大事なことは、今回の事件で「セキュリティに強いと自負していた企業が実は既に穴を開けられていたこと」が露呈したため、ここから学ぶべき教訓は「三菱電機が入られているくらいだから、同様に政府各機関や他の企業も既にサイバー攻撃の種が潜在している可能性が高い」ということではないでしょうか。

時節柄、オリパラの準備もいよいよ大詰めを迎えています。オリパラという国家の威信をかけた国際的イベントでは、ここ最近のオリンピックではもう毎回やられてますが、必ずと言って良いほどサイバー攻撃を受けています。個人の愉快犯の程度なら、今準備中のセキュリティで対応可能な態勢であろうと思いますが、国家が背後にいる組織的かつ高度のサイバー攻撃の場合、既に入り込まれているのではないでしょうか。今回の三菱電機と同様に、ロシア、中国、北朝鮮など国家が背後にいるサイバー組織が、既にマルウェアを仕込んでいるのでは?奴らは、仕込んだマルウェアを遠隔操作でき、今の時期は気づかれないように潜んでいて日本の各機関・企業側に気づかれていないだけで、オリパラ当日に大混乱を起こす可能性がある、ということです。例えば、開会式での開会宣言の途中で大停電、世界が固唾を飲んで注目する100m決勝の先頭ゴールでタイムが出ない・写真判定ができない、等々。日本の国家の威信を貶めたい国々っていますからね。

ですから、今回の三菱電機サイバー攻撃受け事件を機に、絶対大丈夫と自信を持っているセキュリティこそ、再点検すべきだと思います。米軍の最新兵器を含む我が国の防衛装備品や原子力管理などにもかなりのシェアを持ち、セキュリティに自信を持ち、ビジネスにもしていた三菱電機がやられていたのですから。

(了)

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2020/01/17

イランの闇(核と工作)を理解して付き合う

○ イランは日本のエネルギー依存度90%を占める湾岸地域のチョークポイントを抑える国。日本としては上手く付き合わねばなりません。ただし、付き合う上で理解しておく必要があるイランの闇の部分についてお話しします。丁度、米国との間ではなり緊張している今、改めてアチコチでその端緒が見えています。
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FILE - In this photo released by the Atomic Energy Organization of Iran, technicians work at the Arak heavy water reactor's secondary circuit as officials and media visit the site, near Arak., Dec. 23, 2019.
(2020年1月15日付VOA記事「Israel Warns Iran is Closer to Nuclear Bomb」より)

① イラン: 核開発の闇
   米国が2018年5月にイラン核合意から離脱した原因の一つがこれ。イランは、米国を始め英仏独などとの核合意を表明上守っていたが、それは「核弾頭に使える核燃料の高濃縮はもうしない」という部分であって、濃縮技術や施設は事実上維持増進できたし弾道ミサイルの開発は続けた。更に、後述する周辺国のシーア派を使った工作による地域的脅威の渦となっている。米国が核合意から離脱するや、高濃度濃縮を再開し、最新の情報では年内には核弾頭化できる模様(※1)。すぐに核開発が再開できたということは、米国が懸念したようにアンダーでは核開発を続けていたことの証左と言える。

   イランが核開発に力を入れる理由は、周辺国との宗教(宗派)的及び民族的な孤立感から専ら自国の防衛を目的とした身の安全の確証が欲しいものと推察するが、その手段において甚だ脅威となっている。核開発の場合は、決定的報復手段の確保が自国に仇なす国々への抑止力となることを企図しているものと推察する。しかし、自国はそのつもりでも、周辺国にとっては危険極まりない存在となる。

   イランにとっては自己防衛が目的であっても、それに耐えられない脅威感を感じる国がある。「イランの核保有を絶対に許さない、核保有に至る前に開発拠点を叩き潰す!」と豪語し、本当に実行する国が存在する。それがイスラエル。イスラエルは、これまでもイランのみならず周辺国に対し、その国の核開発拠点への先制攻撃で現実に潰してきた。つい最近も、イスラエルのネタニエフ大統領は「イランは年内にも核保有に至る確証あり。核保有の前に叩き潰す。」と声明を発している(※1)。これが起きれば、新たな中東全体を巻き込む危機の始まりとなる。
(※1: 2020年1月15日付VOA記事「Israel Warns Iran is Closer to Nuclear Bomb」)

②  イラン: 周辺国への工作の闇
   米国をかばうつもりはないが、つい先日の2020年1月年頭の米軍によるイラン革命防衛隊スレイマニ司令官の無人機による攻撃・殺害の原因は、イランがシーア派過激派組織を使ってイラク、シリア、イエメン、レバノンにて各種工作を行い地域の脅威となっていることである。事実、これらの国々では長い間内戦となった。イエメンでは現在でも激しい内戦が続く。スレイマニ司令官は、その海外における特殊工作専任部隊コッズ部隊の司令官として辣腕を振るい、それらの国の市民の弾圧や米軍や米国人へのテロ行為をしていた。昨年末(2019年12月27日)にも米軍施設への攻撃により米軍人と米国人数名が死亡した事案も同司令官の命令によるもの。これが今回トランプ米大統領に作戦へのgoをかけさせた直接要因となったのだ。

   コッズ部隊の工作について、最近の報道でその一端がうかがえるものがあった。このスレイマニ司令官の死去に伴い、新たにコッズ部隊の司令官にイスマイル・カーニ氏が着任したのだが、この報が同氏の写真付きでアフガニスタンにも伝わった際にザワメキが起きた。アフガン政府が言うには、この男は数年前に在アフガンのイラン大使館の副大使の肩書を詐称してアフガン国内のバーミヤン州をあちこち視察した模様。カーニ氏は実はコッズ部隊の副司令官だったらしい。イラク・シリア・イエメン等の主要作戦はスレイマニ司令官が、アフガン等のその他地域はカーニ副司令官が担当していたという。副大使と詐称してのアフガン視察では、バーミヤン州などのアフガン内でシーア派住民の多い地域をつぶさに見て回り、どうやらこの地域でシーア派民兵要員の募集やアフガン内での工作準備をしていたと見られる。これに不信感を持ってアフガン政府が調査しているとの報道(※2)があった。
(※2: 2020年1月9日付VOA記事「Afghan Officials: Iran’s New Quds Chief Likely Faked Identity in 2018」)

   イランが周辺国に対してこうした工作をするのも、核開発の項で述べたように、専ら自国の防衛が目的であり、周辺国へのシーア派民兵等による工作については、自国周辺に自国防衛のためのバッファゾーンを築きたいものと推察される。

◯ イランとの付き合い方
   日本は、湾岸地域にエネルギーの依存度が高いため、付き合わないようにするということは不可能。こうした闇の要因を抱える国であるということを十分に認識して付き合わねばならない。

   米国には、この現体制を突き崩し、イランを親米民主主義国にすべきだと主張するバカがいる。しかし、この宗教的絶対王制だからこそイランは瓦解せずにまとまっていることを理解すべきである。およそアラブの春で圧政を敷いていた指導者が倒された国は、現在混迷の中にいるのが実情。耳障りの良い「アラブの春」とか「民主化」の現在の姿は、タガが外れた「パンドラの箱」だったというのが現実である。

   イランは、イラン革命により王制を破棄して現在のイスラム共和制になり、イスラム教シーア派の教義に基づく政権運営体制になっている。選挙による民主主義的な政治体制になっているものの、現実はシーア派のイスラム法学者、最高指導者ハメネイ師をトップに頂き、最終的にハメネイ師の決定が全てを制する態勢。いわば宗教的独裁体制。市民の「自由」などは当然制約される。そこに宗教・宗派的な理屈はあるのだろうが、時として国際情勢の現実論は通用しない。ロウハニ大統領はまさにその狭間で奮闘している。時としてイラン政府は自国の市民に対しても弾圧するが、国民が選んだ体制である。国内に内戦もなく、国家としてまとまっていることは間違いない。

   今のイランの姿を前提に、うまく付き合うしかない。海自艦艇及び哨戒機の中東派遣も、日本関連船舶の安全を確保することを目的として、米国の要求に応じながらもイランの理解を得て派遣している。今回の派遣への国内的な不協和音もあるかもしれないが、まさに現実的な策であったと評価する。

   (了)

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2020/01/13

イランの反政府デモで調子に乗るべからず

 ウクライナ旅客機を誤って撃墜したことを発表したイラン政府に対し、当初全面否定していたことも災いして、イランの市民が猛反発し反政府デモが各地で起きている。昨年11月の石油価格急騰の際の反政府デモと同様、明確に反イラン革命防衛隊、反現政権、反ハメネイ師のスローガンさえ出ている模様。トランプ米大統領はこれを好機と捉え、デモ参加者を支持しラブコールするとともに、イラン政府にはデモへの弾圧を牽制した。
 (※ 2020年1月12日付VOA記事「New Protests Erupt in Iran Аfter Military Admits Shooting Down Plane」より。下の写真も本記事より。)
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Image Description A picture taken in Tehran on Jan. 12, 2020, shows local newspapers carrying headlines such as: 'National Mourning', 'Apologize, Resign', 'Unforgivable', 'Great Disaster'... concerning the downed Ukrainian jetliner last week.

 私見ながら、以下3点を危惧しています。
① 反政府デモが起きること自体は健全であり民主主義的には吉報だが、国際情勢の現実主義から見ればタイミング的にイラン崩壊の危険信号。
② トランプ米大統領のデモ支持やイラン政府の弾圧牽制の発言は蛇足。
③ 米国は調子に乗って、交渉が可能な穏健派ロウハニ大統領を倒すべからず。現実を知らない宗派的ナショナリズムで凝り固まった強硬派が政権についたらイラン情勢は益々混迷する。更にイラン国内の内戦化を招く。

 特に、③について心配ですね。
 米国政府がこの機に乗じて、反政府デモ側を殊更に支援し始め、CIAなどの工作なども使って政権打倒や国家の転覆を企図するなんてことにならないように国際社会に注視してもらいたいところです。既に、トランプ米大統領だけならまだしも、ポンペイオ国務長官やブライアン・フック米国政府イラン政策特別代表がtwitterで調子に乗ったトランプと同様のコメントを載せているのが忌々しい。一国の政府がそういう頭の悪いコメントを発するべきではない。それが米国の現政権のレベルの低さ品性のなさを露呈していると気づいていないらしい。
(※ トランプ大統領のtwitter:https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1216356280933273600?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1216356280933273600&ref_url=https%3A%2F%2Fwww.voanews.com%2Fmiddle-east%2Fvoa-news-iran%2Fnew-protests-erupt-iran-after-military-admits-shooting-down-plane
   ポンペイオ国務長官のtwitter: https://twitter.com/SecPompeo/status/1216064377444618240?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1216064377444618240&ref_url=https%3A%2F%2Fwww.voanews.com%2Fmiddle-east%2Fvoa-news-iran%2Ftrump-tweets-support-farsi-iranian-protesters
   ブライアン・フックのtwitter: https://twitter.com/statedept/status/1202384022095245312 )

 米国内に、この機に乗じて現政権を打倒し、米国企業が参入し易い親米民主政権の樹立を夢見るバカがいるが、イラクやアフガンを見るべし。絶対に米国が望むような親米民主主義国家なんて実現しないのが分からないらしい。特に、反米を国是として教育されてきたイランだよ。シーア派過激組織は瓦解せず、残党が跋扈することになるのが落ち。更なる中東の混迷を招くだけ。特に、石油街道のチョークポイントを握るイランが政情不安になったら国際経済に百害あって一利なし。

(了)

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2020/01/09

トランプそう来たか!オリーブの枝で緊迫回避

いやービックリ。そう来たか。トランプ米大統領は、2020年1月8日夕にイランによるイラク駐留米軍基地に対する報復攻撃を受けて演説し、新たな制裁について言及すれどイランへの軍事手段による報復は選ばず、むしろイランに対して共生の道の可能性を提示するなど、戦争回避かつ緊張緩和の姿勢を見せました。
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WHITE HOUSE - “Iran appears to be standing down,” U.S. President Donald Trump said in an address to the nation the morning after more than a dozen ballistic missiles targeted two Iraqi air bases housing U.S. troops.
(2020年1月9日付VOA記事「Trump: Iran 'Appears to Be Standing Down'」より)

トランプさんらしくない見事な大人の態度と懐の深さ、見事な米大統領ぶりにビックリして腰が抜けました。
やはり決め手は、イランの報復攻撃で米国民の人的被害が出なかったことでしたね。
イラン側も熟慮した上での限定的な報復攻撃だったようです。攻撃の兆候を早期に警戒監視態勢が捉え、着弾前に退避したから被害がなかったのだ、という説明でした。本当のところは不明です。一部の情報では、イランはイラク政府に弾道ミサイル攻撃を予め情報提供した、とか。いわゆる「常にback door は開けておく」という両政府の高官(deep throat)間の情報提供があったのかも知れません。

いやー、everybody happyなまま推移してもらいたいところですね。イラン国民には当初報復攻撃で80名もの米軍人が死亡した旨の報道があったようですが、ネット等を通じて米大統領の演説なども伝わりますから、どうなってんだ?というぶり返しがないよう、イラン政府はうまく国内のガバナンスを維持してもらいたいところです。

(了)


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2020/01/08

米・イラン 際限なき報復ではなく制限報復か

ついにイランがイラク駐留米軍に対して1月7日に直接の報復攻撃をしました。やりましたね。
一部で、これが双方の全面的な戦争=下手したら第3次世界大戦の始まりか?と懸念する向きがあるようですが……。
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An image grab from video obtained from the state-run Iran Press news agency allegedly shows rockets launched by Iran against US military bases in in Iraq on Jan. 8, 2020.
(2020年1月8日VOA記事「In Photos: Iran Launches Missiles at US Forces Based in Iraq」より)

ただし、1月8日午後1時の段階で報じられているところでは、米側に死傷者なし。

米国が=トランプが、どう受け止めるかが結果を大きく分けますが、決め手は米国民の人的損害です。

恐らく、イランはスレイマニ司令官殺害への報復にあたり、弾道ミサイルにて精密に米軍基地ながら人的被害が出ないように攻撃したものと思われます。イラン政府は、マッチポンプながら自国民を「アメリカに死を!」と国民の報復心を焚きつけていたので、国家としての対面上、何らかの直接攻撃をするだろうと思われましたが、幸いなことに頭に血の上った思考ではなく、コントロールされた限定的な方法を取ったようです。いやー良かった。

対する米国も、人的損害はないので、同様の報復攻撃はすると思いますが、人的被害が出ないようにコントロールされたものになるでしょう。
しかし、トランプだからなぁ……心配は残りますし、イランのロウハニ大統領は計算できる男ながら最高指導者ハメネイ師が頭が硬いからなぁ……やはり心配は残ります。いくらなんでも大丈夫とは思いますが。

要するに、双方の際限なき報復戦の始まりではなく、制限された制御下の報復になろうと思います。良かった良かった。でも大丈夫かな?トランプ…。


(了)


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2020/01/08

イラン司令官殺害 トランプの言い分

イラン司令官殺害 トランプの言い分
 
<要旨>
米国・イラン情勢は2020年年頭のトランプ米大統領の命令によるイラン司令官殺害事案で一挙に緊迫しています。ほとんどの報道が、今回のイラン司令官殺害事案をトランプ米大統領の「暴挙」と捉えており、これが情勢緊迫を引き起こしている、と指摘。確かに半分当たっており、情勢緊迫は事実。しかしながら、イランがシーア派過激派組織を使ってイラクやシリア等で暗躍し、市民の弾圧や米軍や米国人へのテロ行為をしていることも事実。「トランプ大統領にもそれなりの言い分があっての殺害であったのだ」という見方をご紹介します。(決してトランプを支持していませんし、むしろアンチですが、ことイランに関してはイランにも大いに非がある、という話です。)
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Iranian mourners gather during the final stage of funeral processions for slain top general Qassem Soleimani, in his hometown Kerman, Jan. 7, 2020. (2020年1月7日付VOA記事「Some Iranians Under Pressure for Diverging from Tehran's Messaging on Soleimani」より)

<イラン及びスレイマニ司令官がイラクやシリアでしていたこと>
イラク戦争後のサダム・フセインなきイラク政府は、半ば米国(米軍)の半占領下でアメリカ型民主主義を与えられた。イラクには元々シーア派が60~65%、スンニー派が30~35%、ほかキリスト教諸派1%以下。イランは国策としてイラクのシーア派をバックアップし、民主選挙によるシーア派勢力を広げることでイランへの影響力を強めた。いろいろ経緯はあったが、今や事実上シーア派政権であり、イランの影響力の色濃いイラク政府になっている。米国に様々な下支えをしてもらいながらも、国民意識は基本的に親イラン・反米。トランプが「早くイラク撤退をしたい」というと米国民に一定の支持がある所以である。
今回殺害されたスレイマニ司令官とは、イラン革命防衛隊の特殊工作部隊=コッズ部隊の司令官であり、その主たる任務はイラク国内でのシーア派を動員した反米デモ、米軍や米国人を狙ったテロ行為、更に反イラン・反シーア派に対する民兵を使った弾圧、等であった。昨年末(2019年12月27日)にも米軍施設への攻撃により米軍人と米国人数名が死亡した事案も同司令官の命令によるもの。これが今回トランプ米大統領に作戦へのgoをかけさせた直接要因となった。
イラクでは、イランの傀儡政権化した政府に対する一般国民の反感も強く、2019年10月の首都バグダッドでの反政府デモは、ほぼ反イランデモの様相であった。この際、スレイマニ司令官の指示の下、本来はシーア派の民兵であったPMF(人民動引隊)なる部隊は正規の治安部隊としてデモに対して実弾を浴びせて弾圧している。イラク国内で反シーア・反イランの流れが起きると、イランとしてはたまらない。スレイマニ司令官の指示で、この国民のやり場のない義憤を「反米」に向ける策をとる。その一環が昨年末の米軍基地への攻撃であった。ちなみに、スレイマニ司令官殺害の後のイラク国内での反米デモは、ほとんどがイランのコッズ部隊が工作し、手先となっているPMFなどのシーア派民兵がシーア派を動員して行なっている。日本でニュース画像も出た駐イラク米国大使館への反米デモも彼らが画策した。
このように、日本のマスコミが報じていない裏事情がイラク内にあり、米国民が標的され犠牲となった事案があり、今後も狙われる情報を得ている米軍が、それを画策し命令を出している張本人を標的にしたのが今回の司令官殺害である。
こうしたことはISやアルカイダとの戦いでも、米国はこれまでもずっとやってきた。日本人からすれば、極めて子供じみた話に見えるが、「やられたらやり返す」という話。
いつもと違う要因は、相手がイランであること。世界の石油の大動脈であるホルムズ海峡を握っている国イラン、国際的な枠組みを逸脱してでも核兵器の開発を続ける国イラン、中東各地のシーア派民兵を使ってアラブ各国やイスラエルにテロ工作を続ける国イラン。普通は国際情勢へのインパクトを考えて、今回のようなイランの司令官殺害は二の足を踏む。しかし、トランプはgoをかけた。決め手は米国民の命を奪う攻撃行為。

そういう話なのです。この話は、是非北朝鮮の金正恩も参考にしていただきたい。
 
(了)

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