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2020/06/26

ボルトン回顧録の功罪: 興味深いが守秘義務違反‼

 トランプ米大統領の元補佐官ジョン・ボルトン氏の回顧録が大きな反響を呼んでいます。特に、大統領補佐官として仕えたトランプ大統領を「統合失調症患者のような考え」と批判してこき下ろすなど、大統領選挙の時期も時期だけに、非常に興味深い内容のようです。しかし、そもそも守秘義務違反でダメでしょ‼というお話。
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(2019年9月11日付yahoo news記事「トランプ大統領、強硬派のボルトン大統領補佐官を解任。アメリカの対イラン、対北朝鮮政策は軟化か」より)

 ボルトン氏はネオコンの超タカ派。これまでも、北朝鮮やイランを先制攻撃すべきだ!と主張することしばし。それでいて、父ブッシュ政権で国務次官補、息子ブッシュ政権で国務次官、後に国連大使など、重責を有するポストを歴任。そして2018年3月トランプ米大統領に請われて、マクマスター氏の後任として国家安全保障問題担当大統領補佐官についていました。しかし、外交・安全保障政策において大統領と方向性が合わず、解任とも辞任とも言われる辞め方をしています。

 肝心の回顧録「The Room Where It Happened」は、2020年6月23日出版され、大好評。ナルホド非常に興味深く、面白い内容のようです。まだ実物を読んでいませんが、この回顧録を検索すると様々な角度から内容が伝えられています。

 特に、トランプ米大統領の外交・安全保障分野での様々な裏話が満載。トランプ大統領の政策の最優先の考慮事項は自身の大統領選での再選であり、考えているのは大統領選のための国民(特に自身の支持者)へのPRのパフォーマンスばかり。およそ外交や安全保障の素養も基礎知識も哲学もなく、驚くほど幼稚な質問を外交の場で(本人は大まじめ)何度もかました模様。ボルトン氏はトランプを評して「統合失調症患者のような考え」と批判しています。

 また、もう一つ目を引く内容として、米朝首脳会談を何とかマッチメイクしようと、韓国の文在寅大統領が我田引水的な策略を巡らした話には韓国も騒然としているようです。何と文政権は、米朝首脳会談を成り立たせるために、自身の高官を使ってトランプ米大統領にも金正恩にも相互に自分の出した条件に相手が同意しているかのようにウソをついて仲を取り持った模様。目下、文政権はボルトンの回顧録に猛然と抗議をしているようです。

 ナルホド、この回顧録は読んだらとても面白いのだろうと思います。さぞ、この回顧録は売れるでしょうね。
 しかしながら、これは反則ですよ。およそ外交・安全保障に携わった者が、自身が関わった外交・安全保障の課題について(しかもそのほとんどが今も直面している課題ばかり)、かくもペラペラと暴露することが許されるのか?信義に悖る問題ですね。
 外交や安全保障における自らの政権内の喧々諤々の議論や、相手国との交渉における生々しいやりとりなどというものは、秘密中の秘密です。薄らぼんやりと、外に漏れ伝えられ、外野の記者や専門家が様々な憶測でいろいろと論じる、これは何を語ろうが問題ありません。しかし、仮にも米国大統領補佐官という立場にあった者が、自らが大統領を補佐する職務の中で携わった外交・安全保障上の裏話を回顧録に書いて公表するなんてありえないことですよ。なぜなら、その裏話の内容って、まだon-goingな外交・安全保障の課題でしょ?いま今の外交・安全保障の生ものの問題でまさに死活的国益がかかっている、人の命も関わっている重要課題ですよ。ペラペラ喋ってんじしゃねぇよ、バカ野郎‼という話です。
 およそ外交・安保に携わった者は、脂っこい部分については公にすべきじゃありません。10年20年経ってから、当時仕えた大統領が亡くなるなど、もはや歴史になってから語るのなら分かります。間違いなく守秘義務違反、国家・国益に対する背信行為です。
 この野郎は、二度と外交・安全保障の表舞台で仕事をさせたらいけませんね。トランプのことを評して「統合失調症患者のような考え」と言った言葉、吐いたツバは、そのまま本人の顔面にかかります。人のこと言えるのか?バカ野郎はお前だよ!

(了)

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2020/06/14

追悼横田滋さん:拉致被害者家族に見る日本人のカガミ

 拉致被害者横田めぐみさんのお父様、横田滋さんがご逝去されました。めぐみさんの帰国を一日千秋の思いで待ちつつも遂に果たせず、ご高齢ゆえの衰えには抗えず、ご家族に見守られる中で息を引き取られたとのこと。心から哀悼の誠を捧げさせていただきます。
 拉致被害者の家族として、奥様とともに老骨に鞭打って不屈の闘志で永年に亘って拉致問題で戦ってこられ、それでいて苦しく辛い場面に何度合わされようとも、冷静さを失なったり言葉を荒げたりすることなく、常に穏やかな表情と言動でおられた姿は、我々日本人の心に深く刻まれることでしょう。日本人の鑑(カガミ)だと思います。
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在りし日の横田滋さん(2020年6月5日付朝日新聞デジタル「横田めぐみさんの父、滋さん死去 家族会の前代表87歳」より)

 2002年の日朝首脳会談、小泉首相の北朝鮮訪問と、これに続く一部の拉致被害者の帰国は誠に衝撃的でした。硬い表情で握手する小泉首相と金正日、そして小泉首相が接見前の控室にて盗聴されているのを承知で「拉致について金正日が謝罪しないなら席を立つ」 と言って、拉致についての謝罪をさせたのは歴史的な快挙でした。
 当時、丁度日米共同訓練中でしたが、米軍から「もしアメリカ人が拉致被害を受けていたなんて分かったら、アメリカでは問答無用で戦争になる。なぜ日本人は怒らないのだ?」と本気で迫られたのを覚えています。米国ならそうでしょうね。でも日本は、ハラワタが煮えくり返るくらい腹が立ったとしても、それが理由で北朝鮮に戦争をしかけるっていうオプションは、初めからありませんよ。日本人の思考としては、怒りをグッと呑み込んで、「粘り強い外交交渉で・・・」というのが常識的です。しかし、北朝鮮という常識の通用しない国が相手ですから、並大抵な交渉では一向に進みません。全ては北朝鮮の責任であって、日本が譲歩する要素は全くない。本当は「テメー、この馬鹿野郎!」と絶叫して掴みかかりたい。しかし、それで決裂して拉致被害者が日本に帰ってこれなくなったら、殺されてしまったら、・・・。激怒したい衝動を抑えて、耐え難きを耐えて、敢えてその衝動を呑み込んで、穏やかな表情で相対して、言葉を選んで穏やかな口調で、それでいて粘り強く、相手との交渉で打開の道を探る。それが日本人です。

 横田滋さんと奥様早紀江さんのお二人の歩んできた活動で、何度もそんな光景を目にしました。
 1977年にめぐみさんが拉致されて以来、日朝首脳会談で北朝鮮が拉致を認めるまで、25年間も横田さんをはじめ被害者家族の皆さんは「北朝鮮による拉致である」と訴えてきました。活動当初は、日本政府もマスコミも全く信じてくれなかった。やがて、拉致問題が政治的あるいはニュースとして取り上げられるようになってからも、長い間政治家やマスコミは一過性のネタとして拉致問題を利用する程度で、北朝鮮との関係を悪化させたくないのか、真剣に取り組んではくれなかった。そして、やっとのことで、2002年に日朝首脳会談を迎える。一部の拉致被害者が帰国するという夢のような結果まで実を結んだのも束の間、北朝鮮は一時帰国させたつもりが日本から帰らないことになったので、ここでまた決裂。他の拉致被害者についてはウヤムヤにされてしまう。横田さんにとっては、待ちに待っためぐみさんの帰国がすぐそこまで来ていたかのうような感じであったろうに、ここで引き裂かれてしまう。さぞ、お辛かったでしょう。あれから更に17年の月日が流れ、横田さんはこの間何回か、交渉の目玉として表舞台に出ました。めぐみさんは死んだのだ、と北朝鮮から伝えられ、めぐみさんの娘が平壌で会いたいと言っている、と北朝鮮から招かれたこともあった。本当はめぐみさんとよく似たその娘に、さぞ会ってみたかったろうに、横田さんは敢えて行かなかった。会いたい人情よりも、日本政府としての交渉全体のことを考えて。さぞお辛かったろうと思います。(別の機会にモンゴルで会えた。) こうした中、横田さんは常に穏やかな表情と穏やかな言動で、しかし粘り強く、拉致被害者全員の帰国を訴えていました。心の内はさぞ燃え滾るような怒りに打ち震えていたことでしょう。しかしグッと堪えて、穏やかな表情をされていたのだろうと思います。貴方は日本人の鑑〈カガミ〉だと、つくづく思います。

 横田さん、さぞ残念でしょう。もはや拉致被害者のご両親世代はほとんど残っておられない時代になりました。拉致被害者もご兄弟もそれなりのお年になっています。横田さんのご遺志は、我々日本人が継がないといけません。その思いを深くしました。

(了)

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2020/06/06

金融の視点: 国家安全法で安定した香港を望む!?

金融の視点: 国家安全法で安定した香港を望む!?
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香港にて天安門事件追悼をする香港市民(Participants holds candles during a vigil for the victims of the 1989 Tiananmen Square Massacre at Victoria Park in Causeway Bay, Hong Kong, June 4, 2020, despite applications for it being officially denied.)
(VOA記事 2020年6月4日付「Hong Kong Legislature Passes Controversial National Anthem Law」より)

<資本は香港の安定を望む!>
 「資本は香港市民の自由や権限より、香港の安定を望む。お金の動きの視点から見れば、香港市民のデモによる香港の混乱こそ問題であり、むしろ国家安全法の導入など中国政府の介入による安定した香港こそ望ましい。なぜなら、中国の銀行を信用できない中国の富が香港の外資系金融機関に集中している。香港が安定したfinancial & commercial centerとして機能することが国際的に重要である。その証左に、英金融大手のHSBCやスタンダードチャータード銀行が、中国政府の国家安全法の香港への導入を支持した。」

<銀行マンの視点にビックリ>
 いやー、参りました。知人の銀行マンの方から、この話を伺いました。私のような金融や経済の視点に疎い者に取っては、まさに目からウロコが落ちる話でした。

 実は、この話を伺うことになった発端は、私の素朴な愚問から始まりました。現在の香港の価値について、「10年20年も前ならいざ知らず、もはや中国の経済力がここまで伸長すると、中国本土に比して香港の稼ぎは数%程度という時代。それでも香港のfinancial & commercial centerとしての価値や地位というものは、変わらず強大なのか?」という質問に対するご回答でした。

 この銀行マンの方のご認識では、
「いやいや反対なのだ。中国が経済的に伸長するほど香港が栄える、という図式。世界中で稼いだ中国の富の行き先は、在香港の外資の金融機関に集まる。中国企業のオーナーや政府高官は、中国の金融機関を信用していないのだ。」

 見方を変えると、全く違った見え方がするものですね、ビックリです。私は、経歴上、国際情勢・安全保障・危機管理からの視点で物事を見てしまいがちです。国際情勢の動きを、国益や安全保障・軍事、地政学や歴史的経緯に基づく脅威への対応などの視点で捉え、それが地球を回す回転軸であるかのように捉えがちです。それはそれで、国際情勢を見る一つの視点・視座としては間違っていないとは思いますが、今回ご示唆をいただいた違った視点から見ると、同じ事象を全く違った色合いで見せてもらった思いがします。やはり、同じ事象を語るに際して、自分の関心正面の視点だけで捉えず、広域多方向からの視点で分析・考察し、最終的に自分なりの総合的結論を出すということが大事なのだと、再認識しました。

<HSBCは苦渋の選択?当然の選択?>
 そんな視点から見てみると、ナルホド、現実主義という点では私も共通なため、金融から見た香港の話、非常によく分かります。実際、HSBC(香港上海銀行)やスタンダードチャータード銀行の「中国政府の施策を支持」という選択のハラが十分理解出来ます。

 日経の記事では「英HSBC、香港国家安全法を「支持」 英中の板挟みも」(2020年6月4日4:53 (2020年6月4日5:50 更新))と受け止めています。本国の英国では、中国の国家安全法の香港導入を厳しく批判していますので、英系金融機関として「板挟み」に苦しむだろう、との見方です。
 
 前述の銀行マンの方がほくそ笑む顔が思い浮かびます。HSBCやスタンダードチャータード銀行は「当然の選択」をしたのでしょう。このことで本国から何らかのお咎めがあるのでしょうが、その時は満面に「苦渋の選択」であったことを装うでしょう。それでも中国政府支持を示したことで、香港での稼ぎは安泰と言えましょう。実によく分かります。

<それでも香港市民の反抗を応援します>
 これらを踏まえた上での総合的結論として、・・・それでも「中国政府の香港への強権発動の政策を許容すべきではない。」と考え、香港市民の反対運動を応援します。今の中国政府の覇権主義を許容していると、まず中国内の新疆ウイグル地区やチベット等の国内の少数民族問題にも目をつぶることになります。中国政府の本質は、第一次世界大戦と第二次世界大戦との間(大戦間期)のナチス党率いる日の出の勢いのドイツの覇権主義と同じに見えてなりません。大戦間期に、西欧諸国がナチスドイツの覇権主義に対し、その危険性に気づいていながらも、目の前の小春日和的な安定や経済的なメリットのために、ヒトラーとの宥和政策に逃げて事を荒立てないようにした結果、ついにポーランド侵攻という明白な侵略を許す結果となりました。これにはさすがに耐えかねて、第二次世界大戦へ突入となりました。

 「大げさだよ」とのご叱責をいただきそうですが、中国政府は台湾に対しても「一国二制度」と言っているのをご存知でしょうか?今回、中国政府は香港返還時の「一国二制度」という国際的な約束を事実上反故にして、香港の制度的な自治を事実上認めない施策を導入したのです。台湾は、事実上の自治国(独立国とは言わないまでも)ですが、中国政府は香港同様、「中国の一部」の「一国二制度」としているわけですから、香港の次に台湾に対して一方的な政策をかましてくることは十分考えられ、その際に国際的非難に対して、今回と同様に「内政干渉」と言うでしょう。外圧くらいならまだしも、台湾に対する海上封鎖や奇襲的侵攻という直接的物理的な圧力もあり得る話です。一昔前と違って、今や中国の軍事力は、海上封鎖も奇襲進行も可能な企図も能力も十分に持っているのですから。

 話を香港に戻すと、今回のような中国政府の香港への強権発動に対して、目の前の利益のために宥和政策を取って増長させてはならない。ならぬものはならぬ、あってはならないことは断じて許してはならない、と国際社会がスクラムを組んでキツイお灸を据えるべし、と思います。香港問題は、内政干渉ではなく国際的約束として、中国政府に一国二制度を守らせねばならないのです。一昔前のソビエト連邦に対する「封じ込め政策」と同様、中国政府が香港に対する強権発動を諦めさせるまで、延いては近隣アジア諸国に対する覇権主義を諦めるまで、国際的協調により封じ込めるしかないと思います。その意味において、米国トランプ大統領(この人はまた違った意味での問題児ですが・・・)の一歩も退かない対中強行姿勢は高く評価します。

(了)

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