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2020/12/30

武漢を報じた記者を投獄する中国の暗黒裁判

武漢の状況を外部に伝えた記者に懲役4年の実刑判決
 今年(2020年)の2月~5月の間に新型コロナが蔓延した武漢市内の状況や市民の声をソーシャルメディアに報じていたフリーの中国人記者 張展(Zhang Zhan:ヂァン・ヂァン)女史が、5月に武漢で行方不明になり、じ後上海で当局に身柄を拘束されていることが判明、11月に起訴され、昨日12月28日に「公共の秩序を乱した罪」にて懲役4年の実刑判決が下されました。
 彼女が伝えた内容は、恣意的に新型コロナウイルスの脅威を煽ったわけではなく、武漢で今何が起きているかを路上や病院の状況を撮影し、ソーシャルメディアに載せていただけでした。彼女は元々弁護士だったため、今回の当局の拘束や裁判に対する彼女なりの抗議の意思の表明からか、ハンガーストライキ(食事を拒否)と裁判でも黙秘を貫いたと言います。しかし、判決は厳しい実刑判決。相当落ち込んだ様子だったと伝えられています。(※)
(※参照: VOA記事2020年12月28日付「Four-year Jail Term for Citizen Journalist’s COVID Reporting in China」、BBC記事同年12月28日付「China jails citizen journalist for Wuhan reports」及びBBC記事同年同日付「China Covid-19: How state media and censorship took on coronavirus」)    
Zhang Zhan
張女史の実刑判決に対する抗議プラカードを持つ市民(A pro-democracy activist holds placards with the picture of Chinese citizen journalist Zhang Zhan outside the Chinese central government's liaison office, in Hong Kong, Dec. 28, 2020.)(前掲VOA記事より)


歴史を書き換え、国家に仇なす者の口を封じ一罰百戒の弾圧で潰す中国
 中国政府にとっては、中国は新型コロナの発祥の地ではないし、数次に及ぶ新型コロナウイルス感染拡大との戦いに勝利し、この感染拡大の波に翻弄される世界各国に比して中国政府は成功例なのだ、ということに歴史を書き換えています。その中国政府から見れば、国家に仇なす彼女のような「国家の社会秩序を乱す扇動者」達に対して徹底的な弾圧で口を封じています。
 彼女のような話は珍しい話ではなく、武漢が新型コロナウイルスで世界の注目を浴びていた頃に、彼女のように武漢の様子をネットに報じた記者や動画投稿者が中国当局に拘束された話は枚挙に暇がありません。彼女と同様、武漢である日突然消息を絶ち、行方不明となって周囲から安否を心配され、一定期間の後に当局に収監されていたことが分かった記者の一人 李沢華(Li Zehua:リー・ゼフア)の例では、「今警察に追われている」という意味深長な動画を投稿した後、行方不明になり、2ケ月後に「(当局に収監され)当局に協力している」という動画で現れた、と言います。この間に当局から如何なる仕打ちを受けたのでしょうか?彼女も「当局に協力」すれば実刑判決に至らなかった?のかもしれませんね。
 また、有名な例では、武漢の患者対応の最前線に立ち、異変にイチ早く気付いてSARSやMARSの際のような感染症対応の必要性をソーシャルメディアに投稿していた李文亮(Li Wenliang:リー・ウェンリャン)医学博士は、虚偽の内部告発で不安を煽り公共秩序を乱したといて、当局から取り調べを受け、その後自ら新型コロナに罹患して2月初旬に死亡しました。この際、ネット管制が厳しい中国内であっても、さすがに李博士の勇気ある投稿を公共の秩序を乱すとは見なかった中国の一般市民の方々から、当局の仕打ちに対する抗議を「理解できない」とマスクに書いたマスク姿で無言の顔写真の投稿が相当数アップされていました。また、「武漢日記」という現場リポートをソーシャルメディア上に載せていた方方(Fang Fang: ファン・ファン)女史も、国際的な評価も高い中、中国国内では愛国的ネチズンから「売国奴」との強烈なバッシングを受け、国外各国で「武漢日記」が書籍化された一方で国内では本にできない状況です。方方女史は愛国的ネチズンを中国政府が後押しして彼女を包囲している旨、発言しています。

中国で実はまた感染拡大しつつあるらしい件
 中国の場合は無症状だと陽性であっても罹患者の数字に入れないという身勝手な態勢を敷いています。中国の地方において、実は感染が再拡大しつつあることが西側でも報じられる中、中国の首都・北京市内では昨年同様の年末の賑わいを見せており、中国政府はコロナウイルスとの戦いに勝ったことの証左としています。しかし、そんな北京市内で、PCR検査陽性だった方が同居者含め陽性だったという話がそこここに出ていて、当局がいろいろ調査をしている、という内緒話がソーシャルメディアで流布し、西側にまで伝わっています。丁度、折からの欧州や南アフリカ発の新型コロナウイルスの変異種の感染拡大の話もあり、この辺りも、中国政府はウイルスを水際で止めるため、の変異種の感染の疑いが出た市民を非公表にて隔離するとともに、中国国内での市民の噂話の流布なども厳しい情報管制で止めにかかるでしょうね。

国家・政府に批判的な報道などにも寛容であることの大事さ
 全く中国政府の対応は酷い話です。普通の国、特に民主国家、経済大国・先進国であれば、市民の中に国家や政府に対して批判的な姿勢を取る市民だっているし、いても寛容に対応するし、いわんや国家や政府にとって耳の痛い批判や不都合な主張や記事を出されたりもするでしょうけど、そうした市民がいることも国家としての懐の深さで容認すべきものです。日本の毎日の新聞・テレビの報道ぶりなんか見ていると、本当に国家や政府に対して批判的ですよね。中国だったら記者やアナウサーやコメンテーターらは収監されていますよ。
 結局、中国は未だに共産党一党独裁体制の民主国家としての政治の未熟さと民度の低さを露呈しているようなものですね。臭いものにふたをしたり、口を封じたり、いわんや市民を投獄するなんて、こうしたことでしか国家の政治体制や公共秩序を維持できないということ自体、国家としての成熟度の低さを露呈しているわけです。これで、なまじ経済大国に成り上がったのでたちが悪いですね。

(了)

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2020/12/21

イランが地下核施設を建設中: 何が何でも核兵器が欲しい模様

イランが地下核施設を建設中
 またかよ。イランはつくづく懲りない国ですね。何が何でも核兵器保有を追求したいようです。
 2020年12月18日付VOA記事「Iran Builds at Underground Nuclear Facility Amid US Tensions」によれば、11月に撮られた衛星写真により、イランの首都テヘランの南西90キロにあるイスラム教シーア派の聖地コムの町外れ、フォルドにある「真空技術の研究機関」の施設の一部に、イラン政府は核開発を行うための地下施設を建設中の模様、とのこと。(下の写真で言えば、右下辺りにある山ひだに道路が走っていますが、その切れたあたりの地下です。攻撃を避けるために山間部に作っている模様です。)
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Maxar Technologies社が2020年11月4日に発表したイランのフォルドに地下核施設が建設中の模様(This Nov. 4, 2020, satellite photo by Maxar Technologies shows Iran's Fordo nuclear site. Iran has begun construction on a site at its underground nuclear facility at Fordo, satellite photos obtained Friday, Dec. 18, 2020, by the Associated Press show.)(2020年12月18日付VOA記事より)

危険で迷惑なイタチごっこ
 今年7月には、ナタンツにある既設の原子力発電所?が原因不明の爆発事故が発生しましたが、西側報道によれば、イランはナタンツで秘密裏に核兵器開発のためのウラン濃縮作業を実施中であったが、この原因不明の爆発事故でまたウラン濃縮が後退した模様。「原因不明の爆発事故」の原因は、イスラエルの特殊機関の工作員による爆破でしょうね。先月も、イランの核開発の父と言われる核開発研究プロジェクトのリーダーだったモーセン・ファクリザデ博士が何者かに暗殺されましたが、これもイスラエルの特殊機関の仕業と思われます。更に言えば、もう20年も前、2000年代初頭に、イランが核開発を秘密裏に開始し、このナタンツで核濃縮をしていた際にも、イスラエルと米国の共同作戦にて超巧妙なサイバー攻撃を実施し、イランに気付かれずに核濃縮プラントを自壊・壊滅に追い込んでいます。

 勿論、爆破やら暗殺やら、そんな謀略をすることが一番悪いことです。イスラエルがなぜそんな謀略をするのかというと、「イランの核兵器開発の追求」というイスラエルにとっての身の危険の「予防策」のつもりです。イランが核兵器を持つ理由は、イランなりの「強力な自衛手段の保持」なのですが、その敵対対象はイスラエルにほかなりません。動きを察知したら、イスラエルは必ず他国の領土内であろうがお構いなくやる国です。イスラエルも「やがて自らを脅かすことになりそうな動きがあれば、それを芽のうちに叩き潰す」という、これまた過剰な自衛意識から発する自己防衛手段でこうした謀略をします。要するに、極めて危険で迷惑な「どっちもどっち」のイタチごっこの状況を呈しています。

 ということは、ある程度工事が進んで、いよいよ地下核施設が始動する……という段階で、またイスラエルが爆破工作をするでしょうね。・・・・・・危険で迷惑なイランの核開発とそれを潰すイスラエルの謀略。もう、くだらないからやめりゃいいのに。

 (了)

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2020/12/09

「豪軍兵がアフガンの幼児にナイフを」中国報道官の異常なツイート画像の件

中国報道官が豪軍の戦争犯罪をフェイク画像で揶揄するツイートを投稿
 中国の報道官たる者が、何でこういう大人気ないことをするのでしょうね。
 2020年11月30日、中国外務省の趙立堅副報道局長がツイッターに画像を添えて投稿。この画像が酷い。下の画像を見てください。大きな豪州の国旗の上で豪軍兵が、子羊を抱えるアフガニスタンの幼児の頭に豪州国旗を被せて、クビにナイフを突きつけています。写真ではなく合成?画像のようです。「Don’t be afraid, we are coming to bring you peace! 怖がらなくていいよ、我々は君たちに平和をもたらすためにやって来たのだから。」というコメントが添えられた、写真のように見えるフェイク画像でした。あまりにエグイ絵面なので、ネットで出回っている画像ではモザイクをかけています。趙立堅(Zhao Lijian)のツイッターでは現物が出ています。この画像は中国国内のウェイボーだかwechatだかからの転載のようですが、報趙道官自身のツイートで「Shocked by murder of Afghan civilians & prisoners by Australian soldiers. We strongly condemn such acts, and call for holding them accountable, 豪軍兵によるアフガニスタンの市民や捕虜の殺害があったとの報に、強い衝撃を受けた。我々はこのような行動を強く非難し、その責任を問う。」とコメントしました。
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豪州首相の激怒
 これが豪州の激怒を買い、ツイートから2時間足らずでモリソン豪州首相自身が同日の会見にて、「truly repugnant, deeply offensive, utterly outrageous …本当に不快で、非常に攻撃的で、まったく言語道断」という強い遺憾の意を示し、中国政府に対しツイートの削除と謝罪を求めました。一国の首相が、ここまで言葉を選びながらも、相当の怒りを堪えた表現で強い遺憾とツイート削除と謝罪要求をしたとしたら、普通はことの重大さと外交上の配慮から、相応の対応をするのが「普通」の神経を持った国の態度というものです。
(※ちなみに、豪州はアフガン派遣時の豪軍兵による戦争犯罪について数年かけて調査し、11月にモリソン首相や軍司令官が謝罪の記者会見を実施しました。当ブログの11月23日付「豪軍がアフガンで戦争犯罪、との悲報: 自衛隊への警鐘」をご参照ください。)

中国政府は豪州に謝罪どころか挑発で返礼
 豪州首相のツイート削除と謝罪要求の訴えに対する中国政府の対応は、拒否的なものでした。中国外務省の華春瑩(か・しゅんえい)報道官(よく中国関連のニュースに報道官として登場し、強気の発言をするオバちゃん)は、「The accusations made are simply to serve two purposes. One is to deflect public attention from the horrible atrocities by certain Australian soldiers. The other is to blame China for the worsening of bilateral ties. この(豪州首相の)主張には2つの目的がある。一つ目は豪軍兵士らによってなされた恐ろしい殺戮から世の関心をそらすこと。そしてもう一つは、中国を非難することで二国間の関係を悪化させることだ。」とケンモホロロのコメントを付して、ツイート削除も謝罪も拒否しています。

私見ながら
 つくづく、中国は普通の国ではないなと痛感します。今回のツイートが著名な一市民とかだったら謝罪がなくてもいいと思いますが、ツイートの本人は政府の報道官です。個人のツイート?というよりは政府の報道官のツイートなので、「談話」と言わないまでも、半ば公的なコメントと理解されるべきものです。こんな挑発的な、しかもフェイク画像を使ってよその国を貶めるようなことします?酷いことをしているのはむしろ中国軍兵でしょう。彼らがチベットで、新疆ウイグルで、少数民族に対してやっている民族浄化のような仕打ちや、香港で民主派の市民に対して弾圧を加えているのは一体何なんでしょうか。それを棚に上げて、報道官がこんなことをツイートで上げて、それを貶められた当該国が非難したら、その上司の報道局長が擁護するだけでなくさらに挑発する。つくづく普通の神経の国じゃないですね。
 この豪州に対する中国の態度は、元々は今回のコロナ騒動の際に、トランプの中国がウイルスの原因説を説いて国際的な調査の必要性を求めた際に、豪州のモリソン首相がこれに同調して独立調査団の必要性をコメントしたりしたことから始まりました。じ後、中国がそれまで一番の貿易相手で会った豪州からの肉やらワインやらに法外な関税をかけ、爾来両国関係は冷え切っています。
しかし、世界の普通の神経を持つ国々は、豪州の立場をよく理解しています。米国、フランス、英国など、豪州寄りのコメント寄せ、中国の対応を非難していますので。

(了)

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