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2021/01/30

米議事堂の暴動と香港デモ:中国が米国をWスタンダードと批判したが・・・

米議事堂の暴動と香港デモ:中国が米国をWスタンダードと批判したが・・・
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(2021年1月7日付Global Times記事「A tale of two cities told by US double standards」より)

中国が米議事堂暴動事件を受け米国をWスタンダードと批判
 ちょっと古い話ですみませんが、2021年1月6日に起きた米国連邦議事堂での暴動事件について、中国の官制メディアGlobal Times(環球時報)が7日付の「A tale of two cities told by US double standards」という記事にて、ここぞとばかり米国を批判しました。端的な例では、トランプ政権のポンペイオ国務長官の言葉を比較して、中国の香港デモについて「We stand with the people of Hing Kong.=我々は香港デモの民衆と共にある。」と政府側を敵視しデモ側の肩を持つ一方、米国ワシントンDCの議事堂暴動では「Lawlessness and rioting is always unacceptable.=不法な暴動は受け入れられない」と言うのは都合のいいWスタンダード(二枚舌)ではないか、というわけです。(上の画像参照) "Model Democracy Withering, America Unable to Repair Its Image after Capitol Riot,"という言い得て妙な見出し文を使って、米国が中国に対して批判するときに大義名分として掲げる「民主主義」モデルは、実はもはや色あせているではないか、それが証拠に議事堂暴動が起きて以降、もはや米国はその落ち目のイメージを修復することはできないのだ!というのが中国の官制メディアGlobal Timesの主張です。
 まぁ、確かに今回の議事堂暴動には仰天しましたね。まさか米国であんなことが起きるなんて、議事堂の警備隊もさすがに意表を突かれたんでしょうね。直前にホワイトハウス前でトランプ大統領に煽られて、その気になったデモ隊は議事堂へ前進。警備の警官も議事堂の議員たちも、せいぜい国会議事堂周りでシュプレヒコールをするくらいだと思ったのでしょう。ところが、デモ隊は議事堂へ押し入ろうという勢いが強く、警備の警官と押し問答の挙句、デモは暴動化し、武装している者が階段を駆け上がり、窓ガラスを割ってまで議事堂内に突入を強行する状況に、・・・。議事堂内に突入した後も武装警官との押し問答となり、ついに会議場内まで入られ、大統領選挙の締めの作業を妨害するどころか、その議事を仕切っていた「裏切者」ペンス副大統領を「吊るせ!」と息巻く状況に。危うく副大統領は難を避けたものの、暴徒がそこまで暴れる事態となりました。結果、デモ側で4名の死亡、警官が1名重症(じ後死亡)という大惨事になりました。・・・この暴動については、中国から揶揄されても仕方がないですね。

吐いたツバは自分に降りかかる
 しかし、私見ながら、米国の揚げ足をとって同じ土俵で語るこの論法は、そのまま中国の足元をすくう論理でもあります。デモに対する政府側の対応の違いを比較すれば、どちらが民主的か弾圧的かって話ですね。両国とも暴徒と化した者の不法行動を「犯罪者」としてその場に拘束したり逮捕したりはしていますが、逮捕やその後の拘留や裁判や、社会生活において、正常な民主国家として法的に公正かつ正当な、人道的な扱いをしてますか?って話ですよ。
 米国の一応官制メディアであるVOAも黙っていません。(※VOAは米国政府の官制メディアではありますが、報道姿勢は政治から中立的であり、結構トランプ政権に対しても是々非々で批判しており、米国のプロパガンダ報道はしていません。)2021年1月27日付VOA記事「China's Propaganda Use of US Capitol Assault May Backfire, Analysts Warn」にて、私の視点とは違う方向から反論しました。
 あのような暴動事件があってもなお、「政権交代」を止められなかったことこそ、民主選挙結果というもの、複数政党制の政治というもの、それらの正当性を示すものであり、一党独裁の中国を脅かすものだ、というのが第一のポイントです。そもそもトランプ前大統領が勝った2016年の大統領選挙も、政権政党だった民主党候補のヒラリー女史が人気投票では勝っていたものの選挙ではトランプ陣営の逆転となったことも、今回の現役大統領のトランプが敗れたということも、中国共産党の一党独裁体制の中国にとってあまり国民に知らしめたくない民主主義国家の選挙の「民意」なのだ、という主張です。なるほど確かにね。
 第二に、米国の暴動では5名が死亡という痛ましいものでしたが、この暴動後に政権政党ではない野党側の発議で現役大統領が「今回のデモの暴徒化を扇動した」という件で上院での弾劾裁判に追い込んでいること。なるほど、これも中国政府には脅威でしょうね。
 また、今回の暴動の後に、暴動に共謀した可能性のある警察官達も追及を受けており、警察官の中の一部に過激主義の兆候があることにも焦点を当てていることも、中国では起き得ないことであり、こうしたことが米国の民主主義の「強さ」である、と主張しています。
 第三に、(ここは前述の私見と同じ論点ですが)中国やロシアでよく見られるような暴力的な大量逮捕がなかったこと、逮捕された人々にも正当かつ公正な裁判があり、弁護士の弁護を受けられること、を指摘しています。中国だと、弁護しようとした弁護士が資格をはく奪されたり、弁護を認められなかったり。何が起き、その後どうなったか、つぶさに見てみれば、いずれの国が民主的なのか、あるべき姿なのかは一目瞭然です。
 そして第四に、軍の政治からの中立性、即ち「忠誠を誓う対象が政府・政権や大統領個人ではなく憲法である」という点です。その証左として、大統領選挙後にトランプ大統領が選挙結果を拒否することを表明した際に、軍のトップである米統合参謀本部議長ミリー大将の発言を挙げています。
”We do not take an oath to an individual,” Milley said days after the November 3 vote at the opening of the National Museum of the United States Army. ”We take an oath to the Constitution … and each of us will protect and defend that document regardless of personal price.” (「我々軍は、個人に対して宣誓をしているのではない。我々は憲法に宣誓をしている。我々軍人は、個人の価値観に拘わらず、憲法を防護し守護する。」) ・・・やられましたね。渋いこと言いますね。中国では、軍すなわち人民解放軍は中国共産党に対して忠誠を誓っています。人民解放軍が中国共産党や政権指導者の意に反すなどと言うことはあり得ず、「政治への中立性」などと言うことはあり得ない。こうした民主主義国家の政治と軍のあり方、という点も中国にとって自国民にはあまり知らしめたくない米国の「民主主義」の骨太な正当性の証左でしょうね。
 
 Global Times(環球時報)は中国国内のみならず、各国語でもネットで提供しているので、中国のプロパガンダを広報しているわけですが、米国を礼賛するつもりは全くありませんが、この勝負はどう見ても米国側に旗が上がりますね。

(了)

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2021/01/20

金正恩から就任前のバイデン氏へ先制パンチ:その真意

就任前のバイデン氏に先制パンチをお見舞いした金正恩総書記
 2020年1月6日、異例の党大会にて亡き祖父及び父親に対する敬意を表して自ら永久欠番にしていたはずの「総書記」ポストに就任した北朝鮮の金正恩総書記は、「最大の主敵である米国を制圧、屈服させる」などと米国をやり玉に上げ、戦略核戦力の開発を継続する方針を明示しました。党大会の直後の14日夜には、これまた異例の季節外れの軍事パレードをナイターで敢行し、開発した(?:張りぼてとの噂も)戦略兵器をデモ行進させました。これは明らかに、間もなく就任式を迎えるバイデン次期米国大統領へのメッセージですね。
(参照:2020年1月15日付 VOA記事「North Korea Shows Off New Submarine-Launched Missile at Military Parade」、及び2020年1月11日付 BBC記事「'Your move, Mr President': North Korea sets the stage for Biden」)
NK Military parade Jan14,2021
1月14日夜の軍事パレード(Military equipment is seen during a military parade to commemorate the 8th Congress of the Workers' Party in Pyongyang, North Korea, Jan. 14, 2021 in this photo supplied by North Korea's Central News Agency (KCNA))(同上VOA記事より)

先制パンチで金正恩がバイデン氏に伝えたかったメッセージは?
 私見ながら、今回の演説で金正恩総書記は、トランプ大統領と3回も首脳会談をしたのに、結局頓挫してしまった米朝交渉を白紙に戻し、いやいや、白紙に戻すどころか、来るべきバイデン政権との米朝交渉では、「優位に立っているのは俺だぞ!」と先制パンチをかましたのだ、と見ています。トランプ大統領との米朝交渉の焦点は、米側が「非核化」、すなわち「北朝鮮は核開発を断念し、廃棄せよ」とトランプに迫られ、「我が国(北朝鮮)は一定の非核化に向けた措置をしているのだから、米国は経済制裁を解け!」という論点でのぶつかり合いで、結局頓挫していました。金正恩にしてみれば、その後も粛々と核開発を続行し、もはやトランプ大統領と交渉していた頃より戦略核の開発が進んでいる、という自負があるのです。従って、金正恩にしてみれば、既にかなり核開発が進んでいるため、今更米国が北朝鮮に核開発の放棄を迫っても遅いのだ、北朝鮮は既に米国本土を直接狙える大陸間弾道弾を保有し、仮に米国が先制核攻撃などを仕掛けようものなら居場所不明の移動式弾道ミサイルや潜水艦発射弾道弾などの報復第2撃能力を保有している、米国ですら侮れない戦略核戦力を持っているのだぞ!という意味で、米国に対し「優位に立っている」との姿勢を見せつけたわけです。さぁ、戦略核を保有する国同士で大人の交渉をしようぜ、という一歩も退かない姿勢を見せたかったのでしょう。
 ちなみに、金正恩は、今後保有する戦略核戦力のラインナップを列挙しています。
 longer-range missiles(更に長距離のミサイル)
 better missiles(更に高性能なミサイル)
 hypersonic missile(超音速ミサイル)
 military reconnaissance satellites(軍事偵察衛星)
 solid-fuel intercontinental ballistic missiles(固体燃料の大陸間弾道弾)
 new unmanned aerial vehicle(新型ドローン)
 new nuclear warheads(新型核弾頭)
 tactical nuclear weapons(戦術核兵器)、 ・・・・
 勿論、これらは開発中もしくは目指しているものであって、ないものねだりに過ぎません。しかしながら、確かに侮れない開発力を持っているのは間違いありません。

しかし、これらは精一杯の背伸び:猫(北朝鮮)が虎(米国)に精一杯の威嚇
 私見ながら、先制パンチはかましたものの、金正恩としてはこれは精一杯の背伸びでしょう。猫が虎に対して「フーッ」と威嚇姿勢を示しているだけで、虎に本気になられたら喧嘩にならないことは金正恩自身が一番理解しているところです。
 まず、北朝鮮の経済は今やガタガタです。長年の米国による経済封鎖で限界まで疲弊しており、更に昨年来のコロナウイルス対策のための中国との国境の封鎖でダブルパンチ。もはや経済はガタガタのヨロヨロ。今回、異例の党大会を開催したのも、冒頭の金正恩演説にてこれまで威勢よく推進してきたはずだった5ケ年計画経済政策が、実は壊滅的に進捗しておらず、「失敗であった」と異例の自己批判と謝罪をしています。そんな中での核開発や「先軍」主義の軍備拡大で、経済疲弊に拍車をかけました。なけなしの国力を戦略核兵器の開発につぎ込んでいるため、様々な経済政策は名ばかりで実なく、北朝鮮軍の末端の部隊には車両のガソリンもなく兵士の給料も差止め、況や庶民の暮らしをや、の状態。今回の軍事パレードも、コロナ罹患者はいないことになっているから海外メディアに出すような映像には3密会費や人々のマスク姿など写っていませんが、海外メディアの目に触れない現場では、党大会ですらソーシャルディスタンスとマスク姿だったようです。金ないのにあんな贅沢な軍事パレードを敢行してまで、バイデン次期大統領就任前に一発かましたかったわけです。
 金正恩の真意は、今後の米朝交渉で何とか米側の歩み寄りを引き出して、すなわち経済制裁の緩和という実質的な明るい道筋をつけたくてウズウズしているのでしょう。そのための方法論として、一発ハッタリをかましてきたのです。ハッタリと言っても、全くのウソ八百のハッタリではなく、瀬戸際政策としてギリギリの方のハッタリです。下手をしたら「死なばもろとも」という最後の手段を出してくるかもしれない危険なハッタリです。

 北朝鮮といい、イランといい(否、イスラエルと言った方が正確かも)、いやいや、その前に当面のコロナ対策といい、バイデンさんにとっては頭の痛い話ばかりですね。

(了)

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2021/01/07

バイデン米大統領就任前に、北鮮は動かずイスラエルはイラン核施設を叩くかも

バイデン米大統領就任前に、北鮮は動かずイスラエルはイラン核施設を叩くかも
 米大統領バイデン氏の大統領就任式前に、北朝鮮はこの時期を狙ってミサイル実験をしてきましたが今回はやる気配なし。他方、イランが核合意で放棄したはずの核濃縮を公表するなど核開発を政治カードとして公然と利用し始め、イスラエルはこれに公然と「許さない」と国家意思を示しました。恐らく、大統領就任前の過渡期を狙ってイランのナタンツ原子力施設などを空爆するのではないか、と懸念されています。
North Korean leader Kim Jong Un speaks at the Workers Party congress in Pyongyang
労働党大会で発言する金正恩(North Korean leader Kim Jong Un speaks at the Workers' Party congress in Pyongyang)(VOA記事2020年1月6日付記事「Facing Economic Woes, North Korea Admits Failure, Mulls Future」より)

北朝鮮は音無しの構え
 北朝鮮は、折からの経済制裁による経済の底冷えに加え、金正恩の核開発への国家予算つぎ込み、コロナ対応(特に、中国からのウイルス流入を恐れて中国との貿易を止めたため)による経済への影響、更に昨年の水害による農作物の不作、等により、いよいよ経済的に危機的状況の模様です。北朝鮮は、トランプ・金正恩の歴史的な米朝首脳会談で経済制裁を解くことを狙っていました。しかし、「朝鮮半島の非核化」という中途半端かつ曖昧な合意のみで、そこから具体的に非核化が進まない手詰まり状態で終わっています。大統領選の帰趨が決まった後も、このところいつものような勇ましい発言も動きもありません。むしろ、新年明けて直ぐに、第8回労働党大会を実施中です。これは定例でなく臨時であり、異例のことです。しかも、冒頭に金正恩がこれまで5年間の計画経済政策(2016年の第7回労働党大会で自ら主導した政策)が「失敗した」と認めたというからビックリ。何かが起きていますね。
(参照: VOA記事2020年1月5日付「No Signs of N. Korean Tests Ahead of Biden Inauguration, US General Says」、同1月5日付「North Korea Opens Rare Ruling Party Congress」、同1月6日付「Facing Economic Woes, North Korea Admits Failure, Mulls Future」)

イスラエルはイランの核濃縮発表に激怒 (これはやる気です!)
 一方、イランは北朝鮮同様に米国主導の経済制裁による経済低迷とコロナ対応のダブルパンチに加え、丁度1年前にイラン革命防衛隊の英雄スレイマニ司令官を米国に暗殺され、先々月にはイラン核開発の研究リーダーだったファクリザデ博士をイスラエルに暗殺され、報復を内外に誓っていました。そんなイランがつい最近、核合意で停止していた核濃縮を再開していることを公表しました。次期米大統領バイデン氏が核合意に米国を復帰させると見られることから、トランプ大統領がイランに課した経済制裁を解かせる交渉材料にしようという腹だと推察されます。

 これに猛然と異を唱えたのがイスラエルです。2020年1月4日のネタニヤフ大統領の会見でイランをボロカスに糾弾しています。本ブログで、これまで度々指摘させていただいていますが、イスラエルという国は「自国の生存・安全のため」という専ら防衛的な思考から、自国の安全確保のためには他国の領域・領土・領空・領海を侵すことを屁とも思っておらず、手段を選ばず躊躇なく我に仇なす攻撃目標をピンポイントで潰しにかかる、という超攻撃的な国です。以前にもイラン、イラク、シリア、スーダンのイスラエルにとって脅威となる施設に対してsurgical air strike (外科手術的航空攻撃)で脅威の撲滅をしてきました。ファクリザデ博士の暗殺もその一環です。以前、11月30日付のブログ「イラン核開発科学者をイスラエルが暗殺か:バイデン就任前に対イラン外交を悪化狙う? 」及び12月21日付のブログ「イランが地下核施設を建設中: 何が何でも核兵器が欲しい模様」に書きましたように、近日中にも懸案のイランの核施設に対してsurgical air strike をやるのではないか、と懸念しています。トランプ大統領のうちに、既成事実としてイランの核施設を叩き潰して核開発を遅らせるとともに、イスラエルの先制攻撃は米国の核合意復帰や対イラン外交の大きな障害となってイランを苦悩させ続けるでしょう。イスラエルならやりかねない、...と見ています。(参照: VOA記事2020年1月4日付「Iran Says It Boosted Uranium Enrichment to 20% 」、同日付「Israel Warns Iran About Uranium Enrichment Announcement」)

 (了)

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