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2021/04/25

米軍 アフガン撤退へ: 国際テロ復活が懸念されるがやむなし!

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(2021年4月22日付VOA記事「US General Warns Afghan Forces Facing Possible Failure」より)

米軍 アフガン撤退へ: 国際テロ復活が懸念されるがやむなし!
 日本のマスコミはあまり関心のないネタですが、筆者も現役時代に少なからず関わった9.11に始まるイラク・アフガン戦争の遅い幕引きの話題です。
 2021年4月14日バイデン米大統領は9月11日までにアフガ二スタンから現在2500~3500名の勢力の米軍を完全撤退する旨を発表。これに対し、タリバンはトランプ前大統領が約束した「5月1日までの撤退」を果たせないなら攻撃すると警告を発しています。現地の状況をよく知る米軍の主要指揮官や、CIAなどの情報機関は異口同音に、アフガンからの米軍及び多国籍軍の撤退について懸念を示し、米軍撤退後すぐにタリバンがアフガン政府軍を駆逐し、タリバンによる暴力的な人権蹂躙が再開することや、弱体化したアルカイダやISがアフガンを避難所にして再活性化して再び国際テロが息を吹き返し、やがて米国はじめ西側諸国にテロ脅威を与える重大なリスクになる、と予測しています。(参照:2021年4月22日付VOA記事「US General Warns Afghan Forces Facing Possible Failure」及び同年4月14日付VOA記事「Afghanistan Withdrawal Could Pose ‘Significant Risk’ to US, Intelligence Officials Say」)
 私見ながら、これらの懸念はほとんどが的中するでしょう。しかし、それでも、米国をはじめとする多国籍軍のアフガ二スタンからの撤退はやむを得ないと考えます。9.11後のアフガン戦争開始以降はや20年近くも経過、米国にとって最長の軍事介入となりました。これまでもこうした撤退論が持ち上がる度に、軍や国防省や情報機関、及び安全保障の専門家や有力議員は撤退に反対し、条件を付け、結局ズルズルと引き伸ばされてはや足掛け20年になります。それでも結果的にアフガンの状況は全く好転せずに今に至っています。撤退はもはや止むを得ないと思います。

アフガンの現状と米軍や情報機関、専門家たちの懸念
 アフガンの現状は、まだ実力も国民の支持も不足なのに背伸びするアフガン政府、都市部以外はほぼ支配下におさめる反政府勢力タリバン、そして駐留米軍が主要なアクターであり、2020年2月にトランプ政権下で米国とタリバンが和平協定し、タリバンはアルカイダと手を切る代わり米軍はじめ外国軍は撤退することを決めました。この性急な交渉にアフガン政府は席を立っています。微妙な三角関係の中、いよいよトランプの決めた5月1日という撤退の締め切りを前に、バイデン政権が9月11日まで引き延ばした形になっています。(正確には、バイデン大統領は「引き延ばした」のではなく、トランプ前大統領の撤退計画がムリムリだったため、現実的な計画として9月11日までとした、というのが本当のところです。)タリバンは激怒し、トランプが約束した5月1日の撤退を迫り、以後は攻撃する所存。アフガン政府は「大丈夫だ。米軍が撤退しても、今までそうだったようにアフガン政府軍がアフガンを守っている」とガニ大統領は豪語しています。
 こうした現状を踏まえて、米軍や米情報機関、安全保障の専門家は懸念しているわけです。
まず間違いなく、①5月1日以降も残っている米軍はじめ外国軍に対してタリバンのテロ攻撃があるでしょう。次いで、②米軍の後ろ盾と軍事支援を失った政府軍に対して、タリバンの国盗り作戦が開始されるでしょう。タリバンは支配下に置いた地域で、親米派はじめ外国勢力に迎合した者たちを見せしめ的に拷問したりリンチにしたりしますから、支配下に陥った地域のあちこちで暴力的な人権蹂躙が起きます。③そして、タリバンを頼ってISやらアルカイダやら、世界各地で落ち武者となった国際テロ組織の残党が逃げて来る避難所化し、訓練場となり、息を吹き返した国際テロ組織が、再び世界各地で西側諸国への国際テロを起こす可能性が出てきます。(既に、現在のアフガンには数百名のアルカイダ、千名を越えるISの残党がいると米情報機関は見ています。)

それでもなお撤退が得策だという理由
 まず第一に、そうした懸念が思いとどまらせてはや20年も続いたわけですから、もう潮時でしょう。バイデン大統領が「今年の9月11日まで」と拘ったのは、節目として「20年を越えるわけにはいかない」という思いでしょう。既にアフガニスタン紛争で、米軍を含む3,500人以上の多国籍軍人が犠牲になりました。米軍だけでも死者は2200名以上、負傷者は2万名を越えます。費やした費用は1兆ドルを越えます。この政治的にも経済的にも派遣国の国益がありそうに思えない不毛の地に、米国のみならず英国その他のNATO軍の軍人を引き続き派遣継続する意義があるのだろうか、という本質的な命題の問題です。もはや、従来の意味での軍事行動の「勝利」は望めず、平和をもたらし民主的な国家を樹立するという理想など夢の夢。ただ、今より悪くしないためだけのために?米国はじめNATO軍の若者を危険に晒し続けるのか?っていう話でしょう。20年と言ったら、もはや初期の戦闘を経験している兵隊さんと、現在のアフガン政府軍の治安維持を「教育訓練支援」という名で実質的に治安維持任務を実施している米兵とでは世代も違い、置かれた状況も違います。明るい展望が見えるならともかく、見えないわけですから。終わりにしましょう。


(了)

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2021/04/15

イスラエルがイラン核施設を破壊?で一触即発:カギ握るのは米国

イスラエルがイラン核施設を破壊、イランは報復開始?
 2020年4月11日、イラン中部にあるナタンツの核開発施設が原因不明の爆発事案が発生。電気系統がダウンし、これによりウラン濃縮に使う遠心分離機が壊滅的ダメージを受けた模様。イラン政府は、この「核テロ」はイスラエルの犯行だと主張し報復を表明するとともに、13日にはイラン外務次官が濃縮度60%のウラン製造をする旨、IAEAに通告。同日、イスラエル関連の船舶がアラブ首長国連邦のフジャイラ沖で攻撃を受け、イスラエル報道ではイランの犯行と糾弾。高い可能性でイランによる報復と見られている。 (参照: 2020年4月12日付VOA記事「Iran Blames Israel for Nuclear Facility Blackout」、同年同日付東京新聞〈Tokyoweb〉記事「イスラエル船に攻撃と報道 UAE沖、イランの報復か」)
President Hassan Rouhani addresses
President Hassan Rouhani addresses the nation in a televised speech in Tehran, Iran, Feb. 10, 2021. (Iranian Presidency Office via AP) (2020年4月14日付VOA記事「Iranian President Says Higher Enrichment Decision is Response to Nuclear Facility Attack」より)

激怒したイランの暴走で情勢は制御不能化か?
 米国バイデン政権の誕生で、イラン核合意に米国が復帰し、対イラン経済制裁が解除される方向性が期待されていた中、そんな甘い期待を待ったをかけたのがイスラエル。イラン核開発を断固阻止するため実力行使でこれを粉砕。情勢は一転して危険水域に舵が切られた模様です。イランもイスラエルに報復で応じ、更なる核開発推進へとアクセルを踏み始めた状況です。イランは態度を硬直化させ、国際社会の制止を聞かずに核開発に邁進する気配を示しています。イラン核合意交渉は再び暗礁に乗り上げ、イラン対イスラエルの緊張はさらに高まりつつある中、情勢は制御不能状態に至るのか懸念されています。
(参照: 2020年4月13日付VOA記事「Analysts: Iran Nuclear Site Sabotage May Weaken Tehran’s Position in Indirect Talks with US」)

カギを握るのは米国: 沈静化・軟着陸を模索
 私見ながら、このカギを握るのは米国でしょうね。米国としては、イランを暴走させずにコントローラブルな状態に置きたいので、何としてでも情勢を沈静化させ、イラン核開発の暴走ももイスラエルの暴挙も、況やイラン対イスラエルの直接の紛争も避けて、穏便に行きたいのです。従って、米国は、まずはイスラエルの首根っこを押さえて「もう勝手なことするなよ」とたしなめ、他方でイランに「経済制裁を解除してもらいたいなら、おまえもこれ以上暴れるなよ」と落ち着かせ、これ以上の緊張緊迫化をさせずに「核合意への復帰」と「対イラン経済制裁の解除」を軟着陸させる方向で収めに入ると見ています。米国は今、懸案だったアフガンからの完全撤退が焦眉の急の喫緊課題であり、9.11の20周年までに無事に撤退完了するためにも、対イランを軟着陸させたいのです。実際、4月12日にオースティン米国防長官がイスラエルを訪問し、ネタ二ヤフ大統領や国防相と会談しています。表面上はもっと以前から組まれていた来訪なので、あくまで米国とイスラエルの間の安全保障についての会談ですが、今回のイラン核施設への破壊工作について「もう勝手なことをするなよ」と念を押したことは間違いないでしょう。

今回なぜイスラエルが破壊工作をしたのか
 今回のイスラエルのイラン核施設への破壊工作はイスラエルの単独犯であって、米国には内緒で実施したと思われます。元々、2009年~⒑年に同じナタンツのイラン核施設に米国とイスラエルの共同作戦で,stuxnetというマルウェアを忍び込ませた巧妙なサイバー攻撃により、当時のイラン核開発の目玉だったウラン高濃縮プラントの遠心分離器の壊滅的破壊作戦を成功させた経緯がありました。しかし、今回はイスラエルの単独犯です。バイデン政権下の米国は知っていたら必ず止めたでしょうから。実は昨年8月にも、イスラエルは爆破(空爆か?)作戦をしています。これも単独犯。または、当時のトランプ政権は知っていて見ぬふりをしたかもしれません。イスラエルって国は、過剰な自国防衛理念があって、「イランが核兵器を持てば必ずイスラエルを標的とするため、絶対にそれを阻止する。実力行使もいとわない。」と公言してはばかりません。米国にしてみれば、「馬鹿野郎!人がせっかくイランを大人しくさせようと思って、核合意という枠にはめようとしてんだから妨害すんじゃねぇよ」という話です。イスラエルにはそんな合意なんて甘い話は信用ならないのです。トランプ政権からバイデン政権になって、バイデンは元々オバマ政権の副大統領でしたから、必ずや核合意に復帰すると読んで、イスラエルはその核合意復帰を阻むために、わざと今回の核テロを単独犯行したに違いありません。核合意交渉なんかできない情勢にかきまぜたわけです。ネタニヤフって奴はそういう奴なんですよ。

米国が対イラン強硬策に出ず、慎重な対応をする理由
 バイデン政権は、トランプ前政権が離脱したイラン核合意体制に復帰したい、というのが何よりの理由です。イスラエルにはそれが我慢ならないでしょうけど。バイデン政権の考え方として、イランとは仲よくできないまでも、「これだけは守れよ」という枠の中にはめて、それなりに緊張関係にあっても、それぞれ共存共栄したいのです。イスラエルが「そうはさせじ」と妨害するのを知っての上で、米国は今こそ慎重に事を進めたいのです。それというのも・・・
 米国が懸念する要素の一つに、イランの大統領選挙が間もなくあります。少なくともイランの現ロウハニ大統領は穏健派なので、まだ米国との交渉相手としてベストです。彼ならまだ話になるから。しかし、今回の事件で対イスラエル強硬派=対米強硬派が政権についた場合、もはやイランは米国との交渉のテーブルにつかず、暴走に至るでしょう。まだロウハニの方がまし。
 また、米国が懸念する要素の二つ目にして最大の懸案が、アフガン撤退問題です。今年9月11日で20年にもなりますが、ここまでに完全撤退し、アフガン戦争を終わりにしたいのです。一見、イランをめぐる情勢と関係がなさそうですが、実に影響大なのが「タリバン」なのです。タリバンは徹底的な攘夷派=外国嫌いなので、米軍に早く出て行ってもらいたいのに、イラン情勢の緊迫に伴って在アフガン米軍が撤退に向けた活動に専念できず、対イラン緊迫のための航空基地使用だとか活動で多忙になると、タリバンは激怒し、対米テロを再燃させことが必定です。米国としては整斉とアフガンを撤退したいのに、再びテロでアフガン国内が混乱の渦中になってしまい、ベトナム戦争時のサイゴン陥落前の米軍撤退のような形での「逃げるような撤退」は絶対に避けたいのです。

イランも珍しく米バイデン政権の考えを理解して暴走は慎しんでいる模様
 今回のイスラエルへ船舶への「報復」をよく確認してみると、小規模損害かつ人的損耗なしなのです。特に、イスラエル人を殺していません。イスラエルにとって経済的な損失はある程度ありましたが、限定的なのです。要するに、怒りのはけ口として、今回の報復はやるにはやったのですが、こうした直接の実力行使は慎むでしょう。なぜならば、イランにとっても米国主導の対イラン経済制裁の解除が国家的な外交目標です。米国の核合意復帰と経済制裁解除しか道がないのは、普通の神経の政治家には分かるのです。しかし、イランの怖いところは、イスラム原理主義で凝り固まった国家指導者ハメネイ師や、強硬派の政治指導者、及び政治的プロパガンダに乗せられて頭に血が上ったデモ市民には、現実主義や道理は通用しません。これがイランの恐いところ。アキレス腱ですね。だからこそ、イランの大統領選挙がイラン情勢を見る剣が峰になりそうです。

(了)

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2021/04/03

中国が一帯一路をテコに反米外交攻勢?:その強みと弱み

中国が一帯一路をテコに反米外交攻勢?:その強みと弱み
 2021年3月31日付読売新聞記事「中国『対米』で中東接近」によれば、3月30日、中国の王毅外相は中東6ケ国歴訪を終えて大きな成果をあげて帰途についた。サウジ、トルコ、イラン、UAE、オマーン、バーレーンを歴訪し中東実施し、一帯一路に基づく中国マネーによる恩恵をテコに中国との関係強化を推進するとともに、米国バイデン新政権の人権外交への反対について認識共有を得た。読売をはじめ多くのマスコミは、同じく米国と対立するイランとの「包括的戦略パートナーシップ協定」の締結という関係強化に注目した。

 私見ながら、既述の前半部分について、中国を含め歴訪された6ケ国はいずれの国も国内に人権問題についてスネに傷のある国々なので、「自国内の問題は自国が責任を持って対応する。内政問題に他国が口を出すべきではない」という論理が賛意を得たのは当然と言える。他方、後半のイランとの関係強化については中国とイランが反米同盟を結んだわけではなく、それ自体のインパクトは限定的。むしろ、インパクトは後述する港湾使用権を得たことだろう。
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(日本経済新聞2020年3月27日付記事「中国・イラン、反米で接近 米欧は一帯一路に対抗」より)

真の成果: 「ウイグル問題」と「軍港」
 私見ながら、今回の王毅外相の中東歴訪の成果で読売が見落としている真の成果は2つ。
 第一は、中国国内のウイグル人の駆け込み寺的存在だったトルコを中国側に引き寄せたこと。これにより、中国のアキレス腱である新疆ウイグル問題について、ウイグル人と血が濃く敵に回すと厄介なトルコを友好国とし、本件に関する発信源となることを抑え込む効果が得られる。

 第二は、中東ペルシャ湾とアデン湾〜紅海という国際的海上輸送路の大動脈に中国海軍の根城となる軍港が確保できたことである。今回歴訪したオマーン、UAE、イラン等から港湾使用権の協定を得ている。この意味は、単なる中国船籍の商用船の寄港地ではない。東西冷戦の頃のスタンスで言えば、ソ連が北ベトナムのカムラン湾をソ連太平洋艦隊の常駐の軍港としていたことを思い出していただきたい。今回の港湾使用権の獲得により、中国はこの世界で最も重要な2本の海上交通路に中国海軍の活動拠点が得られた戦略的意義が大きい。事実、既にアデン湾~紅海の海上ルート上にジブチに「軍港」を保有している。今回はペルシャ湾のアラビア半島側にもユーラシア大陸側にも活動拠点として利用できる港湾を得たのだ。
 とは言え、ペルシャ湾においては、当初は中国海軍艦船の一時的な寄港にとどめ、「常駐」や「軍港化」は避けるだろう。インパクトが強すぎるからだ。新たなペルシャ湾危機になってしまう。そのくらいインパクトのある外交成果と言える。

一帯一路と中東の海上輸送路の確保の実質的な強み・弱み
 今回の中東歴訪と一帯一路の掛け合わせについては、「強み」と見る目と、むしろ「弱み」と見る目の両方の見方がある。
 まず「強み」と見る方では、Yahoo Japanニュースの3月31日付「王毅中東歴訪の狙いは『エネルギー安全保障』と『ドル基軸崩し』」(遠藤誉)が面白い。同記事では、今回の中東歴訪の真の狙いは「エネルギー安全保障」と「石油人民元の構築」と見ている。やはり中東の石油が引き続き重要なのだ、という視点でイランやサウジとの関係強化によるエネルギー安定供給を高く評価。また、米ドルの牙城をデジタル人民元で崩すのだという見方をしている。後者について同様な見解として、2020年2月3日付nippon.com記事「デジタル人民元の恐るべき野望と未来」(田村秀夫)では、中国は2022年(北京冬季五輪の年)にデジタル人民元の完成を目指し、企業ではなく中国中央政府主導のデジタル通貨の流通で米ドル基軸を崩す目論見があるのだ、と見る。なるほど、この記事と前述の記事を合わせ読むとそんな気もしてくる。

 「弱み」と見る見方では、Newsweek日本版2021年03月25日付記事「退潮する中国の一帯一路が元の姿で復活することはない」(河東哲夫)は、中国の「一帯一路」について看板と実像の落差を辛辣に低評価している。もともと、一帯一路政策は日本のODAのような国外援助でも何でもなく、むしろ中国国内の素材・建設企業に対する需要拡大なのだと見る。一帯一路に引っ掛けた一帯一路の6つのルート沿いの発展途上国での事業拡大で国外需要で先ほどの素材・建設企業を潤した。一帯一路周辺国のみならず、関係なさそうなアフリカや南米にもばら撒き、2013年からの5年間で融資総額900億ドルに及ぶ。しかし、元々あまり採算や当該国のためになる事業を育てていないので、当該国はその事業で潤わず返済に苦しみ、選挙で政権交代が起きるとボロカスに責められ、その事業自体も中国との関係も覆される。加えて、中国の経済状況も激変した。中国の内需拡大政策がうまくいかず、結局は一帯一路で膨らんだ不良債権は悪化するばかり。鳴り物入りだったアジアインフラ投資銀行も、2019年末の融資残高は22億ドルと小さい。結果的に、「一帯一路」という政策はただの大風呂敷だった、と酷評している。

 私見ながら、前述のデジタル人民元の野望という話も一帯一路と同様に大風呂敷ではないか?構想自体は立派だが、「竜頭蛇尾」、「羊頭狗肉」ないし「大山鳴動、鼠一匹」ではなかろうか。
 
イランと中国の関係強化というジョーカーの使い道
 これまた私見ながら、多くの報道が注目したイランとの関係強化のインパクトについては限定的ではないかと見ている。
確かに、中国とイランが米国との対立という認識共有は連帯の原動力であったろう。中国は新疆ウイグルの人権問題で、イランは米国の核合意離脱や経済制裁で、共通の敵は米国であり、基本的な利害は一致しており、今回の王毅外相のイラン訪問で、25年もの長期の協力関係を結んだ。

 しかし、イランの思惑はそれほど単純ではない。片方の手で当面の友として中国との協力関係を約しつつも、もう片方に手で米国主導の経済制裁を解かせること=核合意への米国の復帰を模索していることは間違いない。バイデン新政権の誕生に伴い、米国の核合意の枠組みへの復帰と経済封鎖の緩和という期待感は隠せない。とは言え、まだ今のところ、イランも米国も相互に自分の主張を前面に出している状況ではあるが...。イランは「まず経済制裁の緩和が先だ!」と主張し、米国は「まず核開発の放棄が先だ!」と、相互に一歩も退かない。それでも、トランプ時代よりは好転の可能性もあるだけでもましな状態には違いない。従って、反米一辺倒で中国と反米同盟を組むわけには行かない。反米同盟で行くなら、イランの港湾に中国海軍を常駐させるなんて手を打つだろう。さすれば、もはやペルシャ湾は緊張最高潮になろう。世界の商船は新たなペルシャ湾危機に怯える状況となってしまう。しかし、そうはすまい。それはイランが国際協調を大事にしているとか、そんな話ではない。そうすることで得られることと失われるものの損得勘定として、割に合わないことが分かっているからだ。

 イランにとって、中国との関係強化というカードの使い道は、反米同盟という戦略的・軍事的なカードとしてではなく、「そういう手を切ることもできるんだぞ」という今後の対米交渉で米側の譲歩を引き出すための外交カードとしてではないだろうか。

(了)

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