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2021/06/26

イスラエルがイランの核開発施設を攻撃:イラン新政権への手荒い祝福

イスラエルがイランの核開発施設を攻撃:イラン新政権への手荒い祝福
 イランの国営メディアの報道によれば、2021年6月23日イランの首都テヘラン北西のカラジにある「原子力施設」にイスラエルによるものと見られる無人機を使った攻撃があり、イラン軍が阻止した、とのこと。「阻止した」とのことながら、ウラン濃縮に枢要な被害があった模様です。(2021年6月25日付 日本経済新聞)

 ホラ、始まった。前回のブログにも書きました様に、イスラエルという国は自国に弓引く動きがあれば、それが他国の領内であろうがお構いなく、隠密裏に先制攻撃をする国です。今回の攻撃は、その不徹底ぶりから推察するに、イランの新政権誕生への手荒い祝福メッセージでしょうね。「ライシ師よ、大統領選出おめでとう。これはささやかなプレゼントだ。お前に一言言っておく。核合意への復帰の値を釣り上げるために核開発なんて火遊びをするんじゃないぞ!次は本気の攻撃をするからな!」と。

World Can Expect from Ebrahim Raisi
ライシ師(2021年6月22日付VOA記事「Iran's New President: What the World Can Expect from Ebrahim Raisi」より)

ライシ師の背に負わされた内憂外患の重荷
 ライシ師の大統領就任まで、ロウハニ現政権がイラン核合意復帰の交渉中ですが、ライシ師が次期大統領に決まって、イラン交渉団も西側交渉団もドッチラケ状態です。なぜなら、ライシ師は永年司法行政に身を置いていましたが、1980年代後半の反政府運動に関わったとの罪状で逮捕された何千名もの市民に死刑にしたと言われる「イスラム法の支配」の権化として、アムネスティ・インターナショナルのような国際的な人権団体から糾弾され、米国政府からも制裁を受けています。最高指導者ハメネイ師は、そんな自分のクローンのようなライシ師をイチオシ。自分の衣鉢を継がせるつもりで大統領に仕立てられたライシ師の背には内外ともに重い荷が食い込んでいます。しかし、ライシ師は頭はハメネイ師並みに硬いながら、ハメネイ師と違って行政機関の長として法的枠組みと共和制政治の中でここまでのし上がってきた一応のバランス感覚があるでしょうから、若さと柔軟性に期待するしかありませんね。

 大統領選挙の投票率が50%を切ったのは初です。ハメネイ師がライシ師を大統領にするために、他の有力候補者を切りまくり、国民のドッチラケを呼んでしまいました。イスラム法が統治する共和制を敷くイランでは、政権が独裁的に政策を展開できる反面、国民の支持なくば立っていられなくなります。もはや斜陽の石油、経済制裁による経済疲弊により、国民生活の立て直しをいかに図るか。そして、立ちはだかる強硬なイスラエルへの対応。
 ライシ師は、大統領選出の喜び冷めやらぬ翌朝に、背負わされた重荷という現実に気づいたことでしょう。

(了)

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2021/06/20

イラン/イスラエルの強硬派政権誕生の暗雲

台風の目:イスラエル,パレスチナ,イラン
 イスラエルvsパレスチナの爆撃が再燃、折しもイスラエルでは超右翼のベネット新首相が登場し、益々対パレスチナ・イラン強硬路線が懸念されています。他方、イランでも大統領選挙があり、改革派・対外協調路線だったロウハニ前大統領から厳格な反米強硬派のイスラム法学者ライシ師の大統領就任が大方の予想となっています。イランにとって懸案であった西側との核合意への復帰交渉は、ライシ師の登場による対外強硬路線への転換により、再び暗雲が垂れ込めています。イランの最高指導者ハメネイ師の後継と目され、ヘメネイ師と同様、一歩も退かない頑迷固陋さをもってイスラム法による排他的な富国強兵の国家運営を標榜している方なので、西側との核合意交渉の難航、核開発を絶対に許さないイスラエルの超タカ派ベネット新首相との激突が懸念されます。
Israel attacked Gaza
ガザ地区へのイスラエルの報復攻撃第2撃(Smoke and flames are seen after an Israeli air strike in the northern Gaza Strip, June 17, 2021)(2021年6月17日付VOA記事「Israel Strikes Gaza After Hamas Fires Incendiary Balloons」より)

イスラエルvsパレスチナの再燃
 キッカケはイスラエルの右翼の愛国主義デモの強行により、対パレスチナ挑発となったことです。イスラエル建国戦争の頃、ユダヤ民族にとって長年の夢であった聖地エルサレムの東部(東エルサレム)を占領した日が6月15日で、この日を祝うナショナリズム的なパレードを一部の右翼がエルサレムの旧市街(ユダヤ教の聖地嘆きの壁、イスラム教の聖地岩のドームとアルアクサモスクがあり、パレスチナ住民地区も混在)で決行すると宣言し、これを新政権が容認しました。これにパレスチナ(ガザ地区)のハマスが反発、デモを決行したら報復すると宣言。というのも、このデモそのものが、現在はパレスチナ自治区に所在する東エルサレムの奪回を主張するものであり、旧市街のダマスカス門周辺のアラブ人地区でパレスチナ人と揉め事になることが必至なため、ネタニヤフ政権でさえ容認しなかったのに、今回容認したのです。デモ当日、案の定、デモに反発したダマスカス門周辺に集まるパレスチナ人が投石、イスラエル官憲が催涙弾やゴム弾で鎮圧・分散・逮捕・拘束で応じ、パレスチナ側に多くの負傷者が出て、本来デモを治めるはずのイスラエル官憲はデモ(ユダヤ人)を擁護してパレスチナ人を鎮圧する形でした。これにパレスチナ・ガザ地区のハマスが当然のように猛反発し、焼夷弾を装着した鉄パイプ改造ロケット弾を発射。荒野に落下して草を燃やしただけでしたが、イスラエル政府は激怒。16日朝及び17日夜の2度、報復攻撃としてガザ地区のハマスの拠点らしき施設に精密誘導兵器で爆撃しました。こうしたらこうなるだろうと、この図式は、起こる前から誰の目にも明らかな話なのに、彼らはそうせざるを得ない心情を抱えています。何と愚かな。我々第3者の目には理解に苦しむ行為でも、ユダヤ人やパレスチナ人にとっては、こうしたらこうなるだろうと分かっていても、やむにやまれぬ民族の血がそうさせるのでしょう。この辺は、前提条件が全く異なる話しながら、「かくすれば かくなることと知りながら 止むにやまれぬ大和魂 」(吉田松陰)の句を彷彿とさせます。ともあれ、僅差の勝利でネタニヤフ前首相を破った連立政権は、超タカ派のベネット首相の下、対パレスチナ強硬路線は継承するぞ!と世に示しました。5月21日に停戦が成ってから3週間余りで、爆撃の応酬という元の黙阿弥になりました。

President-elect Raisi
ライシ師当選を喜ぶ支持者 (Supporters of Iranian President-elect Ebrahim Raisi celebrate after he won the presidential election in Tehran, Iran, June 19, 2021.)(2021年6月19日付VOA記事「Observers See Low Iranian Election Turnout as Disavowal of Leadership」より)
イランに反米強硬路線の新大統領が誕生の見込み
 6月19日、イランの大統領選挙にてイスラム法学者で現司法長官のエブラヒム・ライシ師が勝利。8月には大統領就任の運びとなりました。しかし、この選挙は「大勝利」とは程遠い複雑なものでした。選挙前から明らかだった流れとして、最高指導者ハメネイ師は自分の分身的な考えを持つライシ師に全幅の信頼を寄せ、他の候補者を潰しにかかり、もはや出来レースでした。投票率は48%と言われ、多くの国民が出来レースだった今回の選挙をボイコットしたこと、と同時に、ロウハニ前大統領に対する改革派の対外協調路線への期待が崩れ、改革派にも国民はNoを示した形でした。

 選挙による国民の投票支持はともかく、ライシ師は長くイスラム法による法の支配の行政を握ってきており、過去何度もの民主化運動への弾圧や人権蹂躙ぶりから、西側の受けはすこぶる悪い方です。しかし、当人は外からの毀誉褒貶には無頓着。専ら、自国内の引き締め、富国強兵策と排他的な対外強硬路線を訴えています。

 イラン核合意交渉が始まっていたのに、ライシ師の登場で暗雲どころか交渉の席を立つことになるかもしれません。ライシ師は、まず西側の対イラン経済制裁の先行無条件解除を要求する一方、自国の核開発は固有の権利と主張します。だめだこりゃ。

こうなると怖いのはイスラエルとイランの激突
 こうなると、パレスチナどころの話ではありません。
 イスラエルという国は、誰が政権の座にいようと関係なく、自国の安全保障に対して弓引く国あらば、その可能性が生じた段階で、奇襲的に一方的な先制攻撃をしてその可能性自体を潰す国です。国際社会から非難を受けようがお構いなし。自国が軍事的脅威に晒されるなどということがあれば、一切の躊躇もなく、徹底的に敵国の懸案の軍事手段(例えばイランの核開発施設)を排他的かつ他言無用で撲滅する国なのです。

 今回、イラン核合意交渉が行き詰まり、イランはIAEAの査察も拒否し、独善的にウラン高濃度濃縮(ということは核弾頭を作れることを意味)を進めると宣言するとしたら、その夜にはイラン核開発施設を空爆とサイバー攻撃の合わせ技で撲滅します。事実、過去何回もやってますから。
 これまでのイランなら、ロウハニ大統領は「ここで対イスラエルの軍事手段に出ると形勢が不利になる」と情勢を読んで、忍耐を示しました。しかし、ライシ師は思考過程がハメネイ師とクローンですから、あえて空気は読みません。対イスラエルの軍事手段に出るでしょう。そして、それは第5次中東戦争を意味します。イスラエルとイランの戦争状態。とりもなおさず、戦域はペルシャ湾などいわゆる中東・湾岸地域全体の船舶の航行、航空機の飛行、政治経済の流れは戦争状態に突入します。

 強硬派ばかりのメンツとなった中東情勢は益々混迷を深めて来ました。
 イスラエルもイランも、国民の意思でそうしたのだからどうしようもないですね。双方の政権が対外強硬路線同士だと、衝突しそうな状況で交渉や駆け引きの余地がなく、仲介が両者に引き下がるタイミングを提供しても言うことを聞かず、衝突に至らざるを得なくなります。
 穏健に流れるのが何よりですが、ここから先の中東情勢は間違いなく荒れ模様となりそうです。

(了)

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2021/06/14

周庭さん釈放: インスタ真っ黒に見る心中

agnes chow
Agnes Chow (centre) has been dubbed the "goddess of democracy" by her supporters(2021年6月13日付BBC記事「Hong Kong activist Agnes Chow released from prison 」より)

周庭さん釈放
 2021年6月12日、香港の民主活動家周庭(アグネス・チョウ)さんが中国の香港国家安全維持法による実刑の刑期を終えて釈放されました。釈放後の一言を待っていた報道陣に取り囲まれ、周庭さんはやつれた表情を強張らせたまま、一言も残さずに支援者に付き添われて車で立ち去りました。その後、周庭さんはインスタにて、真っ黒な画像を載せ「苦しい半年と20日がようやく終わった。痩せて弱々しくなってしまったので、これからゆっくり体を休めたい」などとコメントを添えています。(参照:2021年6月13日付BBC記事「Hong Kong activist Agnes Chow released from prison 」)

周庭さんのインスタ
周庭さんのインスタグラム

インスタ真っ黒画像
 インスタに真っ黒な画像を投稿した周庭さん、私見ながら、心中察するに余りありますね。まさに真っ黒な画像が、周庭さんの気持ちを象徴しているように思えてなりません。
 
 今回の釈放は、12月の判決以来の周庭さんの刑務所内での行動が模範的であったため、本来判決通り10ヶ月のところ、刑期が短縮されたということですが、釈放後の顔を見れば論より証拠、決して晴れ晴れしい嬉しい釈放の日ではなかったようです。

 それというのも、釈放後も引き続き官憲は四六時中周庭さんをウォッチし続けます。周庭さんの行動や発言や電話連絡やネットアクセスは徹底的にチェックされ、本人のみならず連絡相手にも中国の香港国家安全維持法に基づく処罰の脅威が今後の生活に影を落としています。また、釈放前には刑務所にて「おまえ、分かっているだろうな?」と脅されていることは間違いないでしょう。もしかして、釈放に当たって取り引きがあったかも知れません。周庭さんは、仲間の民主活動家を売るようなことは絶対にしない代わりに、「釈放によって以前のように民主活動家のヒロイン・カリスマにならないよう大人しくしておけよ!また活動を再開して民主デモを扇動するようなら、いつでも逮捕・監禁して、今度はシャバに帰らさず、痛い目に合わせるぞ!お前だけじゃない、既に収監しているお前の仲間が苦しい立場になるんだぞ!」と脅されているのではないか、と推察しています。

 周庭さんが収監されていたのは「大欖女子懲教所」という殺人犯から麻薬常習犯などの重大犯罪で服役している受刑者が大勢いる場所でした。この刑務所内で洗濯作業に従事していたといいます。そこで模範囚であったから、というのが刑期短縮の理由とされています。周庭さんと同時期に収監された民主活動家らは53名いました。高名な黄之鋒(ジョシュア・ウォン)さんは刑期13ヶ月半、林朗彦(アイヴァン・ラム)さんは刑期7ヶ月にて、それぞれ収監中です。周庭さんは刑期短縮で釈放されましたが、他の民主活動家らはほとんどがまだ刑務所に留め置かれ、どのような状態に置かれているのか不明です。中国では、収監中に何をされるか分からない国です。薬物を飲ませて廃人にした例もあります。新疆ウイグルの「教育施設?」という名の強制収監・洗脳施設で行われていることもしかり。(細部は私のブログ2020年12月30日付及び2021年2月17日付をご覧ください)それを見せられたのか、聞かせられたのか、周庭さんは言い聞かされて釈放されたのでしょう。

 中国政府は、まだ若い女性であり、香港の若者から民主の女神と人望の高く、国際的にも注目されているインフルエンサーの周庭さんを刑期短縮で釈放しました。「中国政府も話が分かるじゃないか・・・」との好感度アップを狙ったのかも。しかし、釈放する周庭さんには言って聞かせたでしょうね。

 万感の思いで釈放の日を迎えた周庭さん、釈放の場面では衰弱・憔悴した表情で記者たちに一切コメントをしなかった周庭さん、そしてインスタでの真っ黒な画像の投稿でした。釈放されても監視の目が常にある中、香港の民主活動家に明るい方向性は見えません。まだ24歳の彼女には背負いきれないプレッシャーではないでしょうか。今の気持ちを色にしたら「真っ黒」だったのかも知れないし、中国政府・香港政府に対する抗議の意味で「真っ黒」だったのかも知れないし、それらのないまぜな気持ちの象徴として「真っ黒」なのかも知れません。

 周庭さん、まずはゆっくりご静養ください。

(了)

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2021/06/11

中国ワクチン2回でも抗体不十分かも

中国ワクチン2回でも抗体不十分かも

 2021年6月3日付VOA記事「Bahrain Offers Pfizer-BioNTech Boosters to Those Previously Vaccinated with Chinese Shot」によれば、中東のバハレーンやアラブ首長国連邦では、既に中国製のコロナワクチンを2回接種しているにも拘らず、コロナ感染者の新たな波に苦しんでいる模様です。

 両国とも、比較的早期に中国から提供された中国製コロナワクチンCINOPHARMの接種を実施しており、世界でもトップクラスのワクチン接種率で多くの国民が2回接種を概に終えていました。 にも拘らず、「十分な抗体ができていない」という懸念が国内で広がっており、結果的にバハレーンでは、接種から6ケ月足らずで追加接種をすることになりました。

 バハレーンの場合、この追加接種では、中国製のCINOPHARMかファイザー・ビオンテック社のワクチンか、選択できるようにした模様です。
booster vactination
バハレーンにおけるワクチン接種状況(People wait in Sitra Mall to get vaccination against the COVID-19 in Sitra, Bahrain, March 23, 2021.)(前掲VOA記事より)

(了)


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