プーチンの謀略:EU移民流入問題とウクライナ国境ロシア軍大動員

プーチン恐るべし
日本のマスコミはあまり取り上げていませんが、今欧州では表題のような二つの危機に直面しています。一つは、ベラルーシ経由で中東からEU入国を目指す難民がポーランド国境を超えて流入している件、もう一つはロシア軍がウクライナ国境に集結し侵攻作戦開始するのではないかと懸念されている件です。
(参照:2021年11月27日付VOA記事「We're Ready, Ukrainian Soldiers Say on Frontier With Rebels」、同22日付VOA記事「Is Putin Saber-Rattling or Preparing for War?」、同20日付東洋経済記事「ベラルーシから欧州へ『移民殺到』人道的な大問題、英国はロシアとの偶発的な戦争リスクに言及」ほか)
EU移民流入の問題点: ベラルーシの陰謀
中東やアフリカからEUへ流入する難民の問題は以前から存在していました。今回の問題の特質は、中東(ほとんどがシリアのクルド人)でベラルーシがEUへの移民を斡旋し、ツアーを組んでベラルーシ航空でベラルーシに入国させ、ベラルーシ軍が半ば随伴・誘導して数千人もの移民たちをポーランド国境の森林から密入国させようとしていることです。移民たちはポーランドを経て移民受入れに寛容なドイツを目指しています。しかし、ポーランドも軍を動員して密入国を拒んでおり、結果的にこの人たちが難民化しています。もはやポーランドの問題ではなく、EUの問題になっています。
EUはベラルーシ側に猛抗議していますが、ベラルーシのルカシェンコ大統領は「元々欧米西側諸国がイラク戦争等で難民を作り、それをドイツ等EU諸国が歓待するから難民流入が起きた。」と逆ギレする始末。ルカシェンコ大統領自身が、旧ソ連共産党一党独裁の最後の生き残りで先制君主状態のため、国内では民主化を求める国民への弾圧著しく、西側諸国からの非難を浴びています。海外に逃れた政府批判のオピニオンリーダーを「テロの恐れあり」という口実で航空機ごとベラルーシに着陸させ逮捕・収監した事件も記憶に新しいところです。ルカシェンコ大統領は、国際的な非難と経済制裁に対しての外交カードに使う腹づもりで、政策として難民流入を画策している模様です。
クリミアの悪夢再燃?: ウクライナ国境へのロシア軍の臨戦態勢
もう一方の問題は、ロシア軍のウクライナ国境付近への大動員(特殊作戦部隊含む9万2千名もの大軍)による軍事的緊張です。2014年のウクライナのクリミアへの軍事介入と同地の併合という悪夢が、またすぐそこまで来ている状況です。
ウクライナ軍の情報当局のチーフは、1月下旬にも侵攻開始を準備していると読んでいます。元々、ウクライナ東部のロシア国境が近い地域やロシア系住民の多い地域には親ロシア派の武装組織がおり、併合を希望させ政情不安を煽ります。侵攻前には、ウクライナ国内を更に政情不安に陥れるため、マスコミやネットで偽情報による世論操作やサイバー攻撃によるネットワーク障害をあちこちで生起させるなど、あの手この手を駆使し、政情不安を高めます。「ウクライナ軍から挑発された」との口実で奇襲的に開戦。陸海空の通常戦力とサイバー攻撃などのマルチドメインの攻撃により、短期間にウクライナの一部を占領します。その地のロシア系住民の保護の目的で、占領を続け、後に併合する、という流れです。クリミアもそうして併合され、国際的な非難や制裁もありましたが、結果的に併合が既成事実化しています。
EUも米国もロシアに警告していますが、プーチン大統領はどこ吹く風状態。国境付近に大軍を配置したとて、それ自体は「演習」という口実で何とでも言い逃れできるわけです。
いずれもプーチンの謀略
これらは、いずれもロシアのプーチン大統領の謀略だと推察されます。プーチンは意図的に西側諸国を揺さぶっているのです。ウクライナ国境へのロシア軍の大動員のみならず、ベラルーシからポーランドに不法侵入する難民問題もベラルーシのルカシェンコ大統領を操っているのはプーチンです。その直接の狙いは、難民問題を外交カードに使って圧政を敷くベラルーシのルカシェンコ大統領の権力維持すること、及び、国境への大動員などの政情不安を煽ってウクライナの現政権(反ロシア)を倒し親ロシア化すること、であろうと推察されます。間接的な狙いとしては、欧州の国々の不安を煽って疑心暗鬼にさせることにより、ロシアと西欧の中間にある旧ソ連だったバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)やウクライナ、ジョージアなどの国々(特にウクライナ)で多少の小紛争が起きてロシア軍の介入などが起きたとしても、「さもありなん」と既成事実化する(欧州における)世論の土壌を作っているものと思われます。
日本からは遠い国の日本とは関係のない出来事と思うことなかれ。ロシアの東の隣人は日本ですよ。海を介して国境の島や町が北海道にはあります。北方領土のような係争地もあります。北の漁場では、我が国の漁船が拿捕もされる漁場なのです。これが国際情勢の厳しい現実です。
(了)


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