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2022/01/29

ウクライナ侵攻迫る!北東南3方向包囲し北からキエフ電撃奪取か

米ロ交渉は予想通り物別れ
 2022年1月28日のメディア各社が報道するところでは、バイデン米大統領はウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談し、2月初旬にもロシアのウクライナ侵攻が始まる可能性があると警告した、とのこと。先週実施された米ロ外相会談と今週の米側書面回答の結果、予想通り物別れに終わりました。ロシア側の求めた安全保障上の保証「NATOはこれ以上の東欧諸国の加盟(特にウクライナ)はしない」に対して、米国の正式回答は「NATOのドアは開かれている」という原則の強調でした。ロシアのプーチン大統領の次の一手が、衆目の集めるところです。(参照:2022年1月28日付BBC記事「Ukraine crisis: Biden warns Russia may invade next month」ほか)

 悲しいかな、国際法上も人道上もあってはならないことながら、バイデン大統領が警告した「ロシアのウクライナ侵攻が間もなく始まるかも」の蓋然性が一段と高まっていることはもはや誰の目にも明らかになりました。

ウクライナ侵攻はどのようなものになるか?
 ロシアのウクライナ侵攻があるとすれば、いかなる作戦構想となるか?プーチンの腹は何か、プーチンの立場から私見ながら一考察を試みます。
ロシアのウクライナ侵攻の一案 

 まず結論から申し上げて、
 ロシア軍は、2月初旬にもウクライナの北・東・南の3正面から同時に電撃的に侵攻開始、北から首都キエフ、東からハルキフ及びドニプロ、南からオデッサの4大都市を侵攻開始当日のうちに迅速に奪取する。奪取後、ロシア軍は同地を確保して停戦に応じる態勢を確保。侵攻開始に連動して、予めウクライナ国内に潜入させた特殊工作員をもって現ゼレンスキー大統領以下の閣僚を暗殺するとともに、親ロシア派による自称臨時政権を樹立して「ゼレンスキー派の残党及びこれに与する政府軍の一掃」を要請させる。じ後、ロシアは「ウクライナの親ロシア派の要請により、必要最低限の緊急避難的に限定的軍事作戦を遂行」を主張し、「目的達成により一方的に停戦」を発表し、国連に調停を求める。紛糾する国連の議論では、既に臨時政府を樹立した親ロシア派の暫定ウクライナ政府(自称)に代弁させる。当然、前ゼレンスキー政権側も国連で自己主張するが、安保理事国のロシアと中国が「正当なウクライナ政府は親ロシア派だ」と一歩も譲らず、米国はじめ欧米国と一線を画して意図的に国連議論を紛糾させる。この間にウクライナ国内は親ロシア派政権がゼレンスキー派及びその支持勢力をを放逐し、ウクライナの親ロシア化を達成し、現状をもって既成事実化させる。要するに、2014年のクリミア併合のウクライナ版を遂行する。・・と見ています。
A convoy of Russian armored vehicles
Russian troops boarding landing vessels

 この3正面作戦は、奇襲を受けたウクライナ政府軍の戦力を集中させず分散させたままにするとともに、それぞれの正面の奪取目標は明確なため、24時間以内努めて即日日中のうちに目標都市を奪取・占領することで、ウクライナ政府軍や米軍含むNATOに対応の余地を与えずに、4大都市の奪取・占領を既成事実化してしまうものです。わずか1日の電撃作戦で4大都市を確保して親ロ政権を樹立して一方的に停戦を宣言するので、これ以上の戦線拡大はありません。米国やNATOが軍事介入しようにも、親ロ政権を樹立したら錦の御旗はウクライナ新政府にあります。もって、第三次世界大戦か?などの懸念を早々に払拭し、既成事実を積み上げる算段です。
作戦に先立ち、侵攻開始前夜に徹底的なサイバー攻撃で政府中枢や電力・通信網の指揮通信機能をマヒさせ、侵攻開始早朝から航空攻撃やミサイル攻撃で政経中枢をマヒさせ、攻撃準備射撃による圧倒的な制圧射撃の下、戦車・装甲車の主要幹道からの都市への迅速な機動戦と、空中機動による空中機動部隊の4大都市への電撃的な急襲占領、及び日中のうちの両部隊の提携により、あれよあれよのうちにウクライナの政経中枢を握ってしまうのです。ちなみに、首都キエフは北のベラルーシ国境からわずか100キロ、第二の都市ハリコフも東のロシア国境から50キロ、第三の都市ドニプロは親ロシア派の実効支配するドニエツク州から200キロ、南のオデッサは港湾なので海から0キロ、という立地のため、空中機動部隊と地上の戦車・装甲車の突進による奇襲攻撃にはうってつけ。この間に予め仕込んでおいた親ロシア派が救国臨時政府を立ち上げ、ロシアにゼレンスキー派と政府軍の放逐・一掃を支援要請するという按配です。

プーチンの頭の中(戦略思考)
 上記の侵攻作戦の立案の基礎として、プーチンの頭の中の戦略思考をプーチンになり切って考察します。具体的には、ロシアの直面している問題認識、これに対する戦略目的、戦略目標を整理してみます。

 直面している問題: 現ウクライナ政府は、ロシアから離反し米・西欧に傾倒。このままではウクライナがNATO加盟国となり、NATO軍がウクライナに駐留・最新装備の配備・演習実施することとなる。まさにロシアの喉元にNATO軍がいる、という安全保障上の危機に陥る恐れあり。(旧ソ連の共和国であったバルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)は、ロシアの猛反対に拘わらず2004年に既にNATOに正式加盟済み。)
 戦略目的: ロシアの東側(欧州正面)の安全保障の確保(危険要因の排除)
 戦略目標: ロシア東側に欧州とのバッファゾーン(緩衝地帯)の重要な一角、ウクライナを確保

 この戦略目的を達成するための目標として、ウクライナをロシアにとって緩衝地帯として確保し続けたかったわけで、その外交交渉において、米・西欧側に「ウクライナのNATO加盟はしない」と約束させる腹でした。
 元々、国家の戦略の具現のためには、lines of Operationsといって外交作戦、軍事作戦、経済作戦、その他ありとあらゆる国家の資源を作戦展開し、様々な分野の作戦を駆使して総力戦で戦略目的・目標を達成しようとするものです。その意味では、現在ロシアが実施中なのは、軍事作戦においてウクライナ国境沿いに10万もの兵力を配置して「侵攻も辞さない」という圧力をかけ、これにビビらせて外交作戦において、ウクライナに「NATO加盟はしません。ロシアとは友好関係を続けます」と、米欧には「NATOはウクライナの加盟は認めません」との約定をさせようと、動いていたわけです。これをバックアップする経済作戦では、欧州各国の冬の命脈を握るロシアの天然ガスの輸出を止めちゃうぞ、という恫喝もNATOを構成する欧州各国の足並みを崩す効き目を発揮しています。
 しかし、米・西欧との外交交渉の回答はNO。恐らく、プーチンにとっては回答がNOなことを驚いておらず、当初から読んでいた通りになのでしょう。ロシアのウクライナ侵攻の大義名分・正当性を積み上げる意味で、まずは外交交渉という正攻法のアリバイ手続きを踏んだのです。
 さて、一応「外交交渉努力は尽くしたのだ」というアリバイを手に入れたプーチンは、その上で引き続き外交、経済、その他の作戦を同時並行的に進行しつつも、主作戦正面は軍事作戦という最も効果のある分野に移行します。

 軍事作戦では、国家の戦略目的・目標を達成するには、何が核心的な軍事目的・目標になるか、を考えます。要するに、ウクライナをロシアの緩衝地帯として確保するには、軍事作戦では何が求められるのか、という命題です。この際、Center of Gravity「重心」というものを考えます。そして、その重心を軍事作戦によって奪取するか撃破するか等して、重心を奪い取るとか我にとって望ましいものに挿げ替える、ということを考えます。現在のウクライナ国の「ロシアから離反し、欧米につく」という政策と多くの国民の支持の「重心」となっているものは、西側寄りのゼレンスキー政権と国民の支持です。従って、ゼレンスキー政権の打倒と親ロシア政権の樹立、が望まれます。ゼレンスキ―大統領及びその政権の閣僚を殺傷するとか逮捕拘束するとか、或いは敗走させることです。もし大統領はじめ閣僚が生き延びたとしても、ロシアの傀儡の親ロシア派が「我こそが正当なウクライナ政権」を名乗って政権を取ればいい。他方、国民の現政権の政策の支持、特に「ロシアから離反し欧米寄り」の考えを一掃するにはどうしたらいいでしょうか?そうするための純物理的な軍事作戦の対象に置き換えて考えると、何でしょうか。私見ながら、

 戦略重心: ゼレンスキー政権及び欧米寄りの民心の打倒・一掃
 軍事目的: ウクライナの現政権の放逐、政経中枢の奪取
 軍事目標: 首都キエフ(第1の都市)及び主要都市ハリコフ、ドニプロ、オデッサ港の併せて4大都市の攻撃・奪取、
ではないか、と考えたわけです。
 ちなみに、この軍事作戦は、ロシアが軍事作戦によって占領した地域を我が領土にしようというものではありません。あっという間の怒涛の電撃戦で首都を含む主要都市をロシア軍が占領してしまうことで、ゼレンスキー政権及びこれを支持するウクライナ国民に「やられた!」という衝撃を与え、ロシアの傀儡の親ロシア派が臨時政権を立てた際に、「もうだめだこりゃ、仕方ないさ。・・・」と諦めさせ、長いものに巻かれる感情にさせることに意義があります。

 今回は、十分起こり得るロシアのウクライナ侵攻がどんなものになるかを具体化するとともに、なぜそう考えるかを解説してみました。プーチンならこのくらいはやるだろうな、というアホな元自衛隊幹部の戯れ言です。しかし、戯れ言で終わることを祈ってやみません。

(了)


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2022/01/20

ウクライナ侵攻前夜:ロシアはサイバー攻撃、緊張下の前線で兵士は...

 2022年1月19日、ブリンケン米国務長官がウクライナを訪問しゼレンスキー大統領と会談、21日にもロシアのラズロフ外相との米ロ外相会談が予定されていますが、緊張緩和の糸口は全くつかめていません。(参照:2022年1月20日付VOA記事「VOA Interview: Blinken Warns Russia of Action Should It Invade Ukraine」)
 私見ながら、ロシアは間もなくウクライナを侵攻開始すると推察しており、本ブログでは、緊張下のウクライナの状況の一端私見介します。
A convoy of Russian armored vehicles
クリミアの高速道を走るロシアの装甲車の車列 A convoy of Russian armored vehicles moves along a highway in Crimea, Jan. 18, 2022. (前掲VOA記事より)

ウクライナ政府にロシアがサイバー攻撃
 2022年1月16日、ウクライナ政府は同政府の数十のウェブサイトがロシアのサイバー攻撃を受けて機能停止したと発表し、ロシアを非難しました。その直前にマイクロソフト社も「ロシアが」とは言わないだけで、ほぼ同様の発表をしてこれを裏付けています。(参照:2022年1月16日付VOA記事「Ukraine Blames Russia for Cyberattack」及び「Microsoft Discloses Malware Attack on Ukraine Government Networks」)

Russian ciber attack
サイバー攻撃を受けて麻痺したウクライナ外務省のウェブサイト(A laptop screen displays a warning message in Ukrainian,Russian and Polish that appeared on the official website of the Ukrainian Foreign Ministry after a massive cyberattack,in this illustration photo taken Jan. 14,2022. )(前掲VOA記事より)

私見ながら既に侵攻開始なのかも
 当然、ロシアはサイバー攻撃への関与を否定しています。しかし、2014年のロシアのクリミア侵攻の際も、まずサイバー攻撃でウクライナの電力や通信機能を麻痺させて、政治経済の中枢やウクライナ軍の作戦指揮機能を混乱させ電撃的に軍事侵攻を達成させた、という事実があります。
 私見ながら、現在懸念されているロシアによるウクライナ侵攻は、既に非物理的なサイバー正面のハイブリッドな戦闘から始まっているのかも知れません。このサイバー攻撃という新たな作戦のディメンションは、軍事侵攻というこれまでの可視的かつ純物理的な生臭いものから、目に映らず人知れず指揮通信機能を蝕む作戦を開始できる新たな時代にしてしまったのです。
また、つい先日、ロシアがウクライナ国内に複数の工作員を潜入させており、ウクライナ国内で開戦のきっかけとなるテロ、国内の動揺を煽る騒擾活動、などを準備している可能性がある、との物騒なニュースが米国ホワイトハウスの報道官からありました。エックスデーは着々と近づいているのかも知れません。

侵攻前夜の緊張下、前線の兵士は...
 いつ開戦するか分からない緊張下のウクライナ兵士のある日の状況が、2022年1月15日付VOA記事「Ukraine's Trenches, Strays Bring Respite to Russia-Wary Troops」に載っていました。 …と言っても、ご安心ください。微笑ましいエピソードです。
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ロシア軍の支援を受ける親ロシア武装勢力と対峙する塹壕の中のウクライナ政府軍兵士と犬猫(Ukrainian servicemen look at a cat, on the front line with Russia-backed separatists in Donetsk region)(前掲VOA記事より)

 前線のウクライナ軍兵士は、いつ戦争勃発となるかも分からない前線に掘った塹壕の中でド緊張の日々を送っていますが、彼らの唯一の慰めとなっているのは、親ロシアに追い出されたウクライナ住民が現地に置いて行った犬や猫です。捨て去られた犬や猫はノラになりながらも、塹壕の中の兵士達にすり寄り兵士達に可愛がられて、塹壕で第2の飼い主を得てペットとしての第2の人生を始めています。兵士達にしてみれば、故郷に置いてきた愛する妻子やペットとのスキンシップを思い出させる存在ですし、危険が差し迫った際には動物のカンで敵の斥候兵の近接を察知して犬が吠えたり、「砲弾が落ちてくる!砲弾落下から身を守る掩蔽部に入れ!」と吠えるは咬むはで急き立てて身の危険を教えてくれることもあるようです。

何事もない平和?な塹壕での日々が続くことを祈ってやみません。

(了)

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2022/01/12

カザフとウクライナ: まるでジャイアンなロシア



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カザフスタンの反政府デモをテロとみなして徹底鎮圧
 2022年1月初旬、カザフスタンで燃料値上げ等に抗議する反政府デモに対し、政府は彼らをテロとみなして徹底鎮圧の姿勢で臨み、ロシア主導の集団安全保障条約機構(CSTO)に加勢を要請し、直ちにロシア軍が来援、治安維持に当たる状況となりました。政府側の苛烈な鎮圧により、デモ側の人的被害は9日の発表で死亡164名、逮捕・拘束者6千名に上る模様です。
 ロシアのプーチン大統領は、旧ソ連圏の親ロシア国家・政権に対して、盟主ロシアの圧倒的軍事力を後ろ盾とし、親ロシア政権の体制を強力にバックアップする姿勢を示しました。

ロシアのウクライナ侵攻阻止をめぐるロシアと米国はじめ西側諸国の外交の行き詰まり
 ロシアの侵攻開始が懸念されるウクライナ情勢をめぐり、米国のバイデン政権は、1月10日にスイスのジュネーブにて米ロ間の高官協議、続いて12日に北大西洋条約機構(NATO)ロシア理事会、13日に欧州安保協力機構(OSCE)の会議を持って、ウクライナ情勢の緊張緩和やロシア側の安全保障の保証要求などについて協議を予定しております。
 しかし、一連の会議の前から、ロシアも米欧も異口同音に「緊張緩和」や「懸念の払拭」に至る会議の成果に期待していない旨のコメントを発しています。それは、ロシア側が無理を承知の要求(※)を米欧にかまし、その要求の達成を追求してガンとして妥協・交渉の余地を見せないことに起因しています。(※ロシア側の「安全保障上の保証」3条件: ①今後NATOはロシア近隣の東ヨーロッパ諸国へと加盟国拡大をしないこと、②NATO軍はロシア近隣のバルト諸国等における活動〈NATO部隊の配置や訓練の実施、NATO製のミサイル配備などを含む〉を中止し同地から撤退すること、③(最重要)NATOはウクライナを決して加盟国としないこと。)
 結局、ロシアは外交交渉をアリバイのように続けるものの、外交交渉で解決する気はないようです。

「旧ソ連圏を絶対手放さないぞ」と時代の空気を読まずに主張するロシア
 本来、ロシアも中国も北朝鮮も、曲がりなりにも近代国家としての常識的な「国際協調」や「民主」や「自由」の尊重などを体裁だけでも整えるものです。「体裁だけでも常識的・良識的であろうとする」ことが国際社会の社会規範であり、時代の空気だったはずなのに、なにか最近のロシア・中国を見ていると、そうした時代の空気はかなぐり捨てて、自己中心で悪ぶることなく自己の立場の正当性を主張し自己のエゴを臆面もなく貫き通す、人気漫画「ドラえもん」のジャイアン化してきているなぁ、とつくづく思うところがあります。今ロシアがやっていることは、1950~60年代の米ソ冷戦構造下のソ連の衛星国に対する態度ですよね。ハンガリーやチェコでのソ連に対する離反の動きが出た際に、ワルシャワ条約機構の枠組みを盾に、ソ連軍が治安維持の名目で完全にその動きを圧殺。今回のカザフスタンやウクライナに対するロシアの態度は、旧ソ連圏の親ロシア国家・政権は力づくで守り抜き、ロシアの望まない民主化推進やいわんやNATO加盟などは絶対許さない、という「自己中心で悪ぶることなく自己の立場の正当性を主張し自己のエゴを臆面もなく貫き通す」、まさにジャイアン状態です。これでは、冷戦期のソ連の態度と同じです。

第2次世界大戦前夜の英国チェンバレン首相の宥和政策の轍を踏むべからず
 惜しむらくは、これを諫めるべき米国バイデン政権の態度が紳士的・良識的すぎること。ジャイアンに対し、「できすぎ君」の態度で臨んでいることです。ジャイアンに対しては、相手の良識や国際協調の精神などに期待することなく、危機に臨んでは「ジャイアン」返しで臨むこと。第2次大戦勃発前の英国のチェンバレン首相のドイツに対する宥和政策の轍を踏んではいけない。すなわち、西側も軍事力で事を構える態度で、「レッドラインを越えるんじゃないぞ!越えたら我々も腕づくでねじ伏せるぞ!」という意を決した態度で対応することです。
 私がこの件に拘るのは、ロシアを見て自分の意を強くする日本の困った隣人、中国と北朝鮮がこれに続くからです。奴らが「自己中心で悪ぶることなく自己の立場の正当性を主張し自己のエゴを臆面もなく貫き通す」ジャイアンとして、日本及び周辺諸国に必ずや災厄を巻き起こすことになるからです。火事は対岸のうちに消しましょう。

(了)

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2022/01/03

ウクライナ侵攻前夜:プーチンの「危機」ゲームかも

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 新春早々、暗い話で恐縮ですが、ウクライナがロシアから侵攻される危機に立たされていることにご注目を。ヨーロッパの話ながら、ロシアのウクライナ侵攻を黙認してしまうと、中国の台湾侵攻の敷居を低くし、民主国家台湾の存亡の危機につながります。しばらく、この話にお付き合いください。

年末の米ソ首脳会談も平行線        
 ロシアのウクライナ侵攻が「年明けにも開始されるのでは」と懸念されているウクライナ危機について、年も押し迫った2021年12月30日に電話での米ソ首脳会談がありました。バイデン米大統領はロシアのプーチン大統領に、ロシア=ウクライナ国境沿いの緊張緩和を求めるとともに、よもやロシア軍がウクライナに侵攻するようなことがあれば「重い代償を払うことになる」と再度強調した模様です。対するプーチン大統領は、既に公表したロシア側の「安全保障上の保証」3条件を念押しして返しました。①今後NATOはロシア近隣の東ヨーロッパ諸国へと加盟国拡大をしないこと、②NATO軍はロシア近隣のバルト諸国等における活動を中止し同地から撤退すること、③(最重要)NATOはウクライナを決して加盟国としないこと、というロシアの「安全保障の保証」3条件は、バイデン大統領にとって了承しかねる要求であり、バイデン米大統領はこれに「No」と回答しました。他方、全くの平行線のままでは何ら打開の糸口がなくなるため、「それでも今後予定されているロシアとの交渉の進展に期待する」と今後に期待をつなげるコメントを残した、とのことです。(参照:2021年12月30日VOA記事「Biden Urges Putin to De-escalate Ukraine Tensions」)

President Joe Biden speaks with Russian President Vladimir Putin
2021年12月30日、ロシアのプーチン大統領と電話で会談中のバイデン米大統領 In this image provided by the White House, President Joe Biden speaks with Russian President Vladimir Putin on the phone from his private residence in Wilmington, Del., Dec. 30, 2021. (Adam Schultz/The White House via AP)(前述のVOA記事より)

 この話だけだと、なーんだ大丈夫そうだね、というお正月気分ののどかな話ですが、現地はトンデモない状況なのです。

ロシア=ウクライナ国境は「侵攻前夜」のド緊張               
 今やロシア=ウクライナ国境では、あたかもロシアのウクライナ侵攻前夜のような極度の緊張で覆われています。10万を越す兵力を国境沿いに展開するロシア。それに呼応してウクライナ国内の親ロシア武装勢力が、ロシア製の新兵器で武装してロシア側ではなくウクライナ政府軍に銃口を向けて臨戦態勢を取っています。ウクライナ側は、ウクライナ政府軍が親ロシア武装勢力と圧倒的優勢なロシア軍に対峙しています。

 旧帝国陸軍が犯した満州事変という日中戦争の泥沼の契機となった事件(陰謀)は、兵士の1発の銃声だった、と言われています。前述のような敵/味方が対峙するド緊張の正面では、ウクライナ軍であれ、親ロシア武装勢力であれロシア軍であれ、全くの偶発であろうが、陰謀で計画的な発砲であろうが、どっちかが敵に対して発砲した瞬間、全軍の戦闘開始になります。今、ロシアはその瞬間を待っているのです。

2022年1月5日付読売新聞記事「ウクライナ対露警戒加速」にウクライナの緊迫感を伝える丁度良い記事が出ました。同記事によれば、ウクライナはロシアの侵攻に備えて国家総動員態勢の自衛に努めており、昨年12月中の措置として、女性の軍務従事のための登録制度を開始、米軍供与の対戦車ミサイルを導入した演習開始、キエフ市で首都防衛対策本部が設置、ロシアの情報戦に対抗するための情報安全保障戦略の発効などに取り組み、年明け早々の元日には一般国民のレジスタンス(抵抗運動)の法律施行、ロシア船舶の国内の河川運行禁止の法律施行など、国を挙げての対ロシア徹底抗戦態勢に入っている模様です。正月気分の日本の皆さんにはにわかに理解いただけないとは存じますが、死に物狂いでロシアの侵攻に徹底抗戦する世情になっているのです。

私見ながら:全く進展なし       
 そんなド緊張状態の緩和を企図してバイデン米大統領がセッティングした年末の米ロ首脳会談は、残念ながら上記のように全くの平行線でした。今回の会談内容は、12月中旬に双方が交わした主張の繰り返し以上のものはない状況でした。唯一の解決の糸口として、年明けに3回ほど事務レベルの米・NATOとロシアとの協議の場が設けられました。双方の大統領はお出ましにならず、事務レベルの協議なので、いろいろ幅広い議論はするにしても双方の主張が繰り返されるだけで、結論は出ないでしょうね。事務レベルで結論が出るわけがない。

 ということは、もしロシアがやる気であれば、ただの時間稼ぎ。協議中であっても、前述のように、偶発的もしくは計画的なキッカケ(例えば「敵に向けた銃声1発」など)が起きれば、「ウクライナ側から許されざる挑発があった」という大義名分の下にロシアは一機に侵攻を開始するでしょう。しかしながら、最近読んだ記事で、「ナルホド、そういう考え方もありうるな・・・」という説に触れました。

プーチンの「危機」ゲーム説
 American Enterprise Instituteの研究者レオン・アーロン氏の説では、プーチン大統領はリスクを承知でブラフをかましているかも知れない、というのです。「本気で侵攻するつもり」で国境沿いに軍隊を大動員し、国内外を危機に置く。それによりウクライナのような当事国は勿論、まだNATOに正式加盟していない旧ワルシャワ条約機構の国々も戦々恐々でしょう。米国をはじめNATO加盟国の西欧諸国も身近な戦争の危機に晒されます。更に、ロシア国内において、ここ十数年権力の座にいるプーチンでさえ、一応民主制なので2024年の大統領選挙でもう一度勝たなければいけません。およそ国家というものは、自国が生きるか死ぬかの戦争の是非を問われる状況にあっては、小異を捨てて大同につき、国家国民は大統領を核心として一致団結して危機にあたろうとするものです。アーロン氏は、プーチンは本当に戦争になるかもしれないリスクを承知したうえで、「危機」を作為して国内外を自分の思い通りに動かす、非常に危険なゲームをやっているのではないか?というのです。英文のVOA記事に明確にそう書いているわけではありませんが、私はそう理解しました。そして、「それはプーチンならナルホドあり得るな」と合点がいきました。ただし、私個人はいまだにプーチンは「本気でやる気だ」と思っていますが・・・。

 ともあれ、日本は正月気分で、興味関心は新たなコロナ陽性者の急増やオミクロン株の急増でしょうが、ヨーロッパでは、特にウクライナでは、国家が生きるか死ぬかの存亡の危機に立つほどの緊迫状況にあることをお忘れなく。(一部、1月5日に補足しました。)

(了)

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