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2022/02/25

ついに侵攻開始: プーチンの侵攻企図と新冷戦の始まり

NHK2月25日
2022年2月25日NHK記事「【随時更新】ロシア軍がウクライナに軍事侵攻」より

だからプーチンは「侵攻」と腹を決めているって言ったでしょ!
 ホラ見たことか。ロシアがウクライナを侵攻しました。  
 「侵攻はない」と語っていた学者さんやロシア通?の専門家さんたちの慌てぶり、「プーチンが何を考えているのか分らない」とおっしゃる。国際紛争、特に軍事については文民の学者先生には分かりませんよ。元自の将官もピンキリですが、非常に見識の高い方が大勢いらっしゃるので、コメントを求めていたらもう少しまともな報道になったことでしょう。
 どのマスコミも、今起きている断片的な航空攻撃(ウクライナ各地への航空基地、レーダーサイトや防空ミサイル等の基地、主要な部隊司令部、兵站基地等)や地上侵攻(双方が何人殺害したなど)を報じて、そこから「プーチンは今後どうするつもりか?」というトンチンカンな質問をニュースキャスターが専門家さんに尋ね、専門家さん達も思い思いの話をしています。ある専門家の方が、侵攻開始後の西側の出方を見てプーチンは振り上げた拳をどこで収めるか考えている、という発言にビックリ。そこに真理はありません。プーチンが思い付きで侵攻を開始して、西側や国連などの出方を見て、その都度考えを変えると思いますか?ロシア軍が「取りあえず侵攻しろ、細部は後で指示する。」なんて命令をもらって侵攻開始したとでも思っているのでしょうか?

プーチンは米欧の顔色なんて見ておらず、侵攻は戦略目標を達成するまでやりますよ
 およそ軍事作戦というものは、当初から綿密な全般作戦計画というものがあって、明確な戦略目的のもとでそれを達成するための軍事目的が定められいます。その軍事目的を達成するために周到綿密な作戦が立てられ、その目的を達成するため、作戦正面を地域で分けたり、作戦分野で分けたり、数個の作戦部隊を編成して、その各部隊にはそれぞれ明確な達成すべき「目標」が示され、それらの部分部分の目標達成の総合で全体の軍事目的が達成されます。それを作戦準備から作戦初期、中期、後期と各段階区分をして綿密周到な計画が立てられているはずです。つまり、今ニュースで皆さんが見ている「侵攻」は、侵攻作戦のごくごく一場面に過ぎないのです。侵攻開始以前から仕込みがあって、「侵攻開始」という目に見える物理的な軍事作戦の前から、工作員の浸透やサイバー・電磁分野での作戦準備は着々と進められていたのです。今後も、ロシア軍は当初の計画通りに作戦を続け、与えられた目標を達成するでしょう。・・・だから、今マスコミを通じて見ている断片的な映像から「侵攻」の絵姿を推しはかろうとしても当てになりません。

 読むべきは、プーチンの企図=腹です。
 西側から厳しい経済制裁を受けることは承知の上での侵攻です。ウクライナ侵攻を決行することで失うものより、侵攻により得られる国益が大きいからGoをかけたに違いありません。以前から、私のブログで申しましたように、ロシアのウクライナ侵攻の戦略目的は、侵攻によってウクライナをロシアの領土として獲得することではありません。ジョージアやベラルシのように、以前のソ連の頃の忠実な大ロシアの一共和国、親ロシアの友好国に戻すことです。具体的には「ロシアから離れ、米欧寄りの政策を採り、NATO加盟を標榜する現ゼレンスキー政権を倒し、親ロシア(傀儡)政権を立てること」、それともう一つ「現政権を支持する米欧寄りの国民の考え方にショック療法で考え方を諦めさせ、ロシアが言うことを聞けというんだから仕方がない、と諦めさせること」です。当初はこの戦略目標を東部親ロ派実効支配地域問題で国内政治を揺さぶって達成しようと画策したものの、結局2014年から8年かかって何も進展しなかったので、手っ取り早く軍事作戦によって電撃侵攻で現政権と国民の意識を瓦解させたわけです。
 プーチンは、当初から純物理的な陸上部隊の地上侵攻で東部2州を完全占領とか、ドニエプル川の線まで侵攻して東西を分断するとか、ウクライナ全土を占領するとか、そんなことは考えていません。それじゃ大義名分が嘘になる。上記の戦略目標を達成するには、まず政治中枢やウクライナ軍の脳や目や耳や防空槍先をボコボコニして当面前後不覚状態にマヒさせ(今その状態)、主要都市を無血入城(努めて少ない軍事衝突で)により制圧、この間に現政権を引きづり落とし(暗殺テロや身柄の拘束など実力行使も含む)親ロシア派の救国臨時政権を打ち立て、彼らに「我こそが真のウクライナ政権」と正当性を主張させ、ロシア政府がすぐさま承認し、その傀儡政権の要請を受けて、一部の安定化作戦のための憲兵的な治安部隊を残してロシア軍は大義名分を果たして平和維持作戦終了により撤退。これを今後1週間くらいで軍事作戦を終了させるでしょう。(元々の私の読みではもっと電撃的に1日~数日でやる、と思っていましたが。)侵攻状態を長引かせずに、さっと引き、流血の軍事衝突を最小限にし、大義名分「ジェノサイドを受けていた東部のロシア系住民の保護のための緊急避難的な平和維持作戦なのだ」を繰り返し主張して一歩も譲らないでしょう。この侵攻状態を長引かせないことが事態の沈静化のためには必須です。

ロシアの侵攻作戦を西側は傍観しかできないが、戦後の新冷戦で一致団結すべし!
 恐らく、ここまでは直接軍事介入できない米欧NATOとしては甘んじて見ているしかすべがないのです。手は出せないのですから。この後が肝心です。ロシアは、撤退後にロシアの傀儡政権の正統性を主張し、この政権の政策として東部親ロシア地区でジェノサイドをした下手人(どうせ濡れ衣ですけどね)を摘発します。この際にロシアのウクライナに残留した治安部隊が陰に日向に力を発揮し、反ロシア派狩りが始まります。この際に旧ゼレンスキー政権に協力していた親米欧派は弾圧され、ある者は逮捕・裁判・処刑・投獄、その他大勢の声なき大衆はビビりまくって親ロ派に転向せざるを得なくなるわけです。要するに、旧ソビエト社会主義連邦時代のウクライナ共和国の頃の監視社会に戻る感じです(それは行き過ぎなんですが、イメージとして)。この傀儡政権の親ロ政策を駐留ロシア治安部隊がバックアップして、親ロシアの国=新生ウクライナにする、それがプーチンの描いた未来予想図です。

 恐らく新冷戦状態の始まりでしょう。ロシアは中国と組んで、我が道を行く枢軸組になり、対する西側はこれに徹底して政治と軍事で対抗するしかありませんね。だから、我々西側としては、まず戦後のウクライナをプーチンの未来予想図のようにさせないように一致団結して、ロシアに対抗するべきです。この新冷戦初戦でガツンとかましてやらねばなりません。国際社会をなめんなよ!と。どうせバイデンは軍事手段はとりませんから、経済制裁と、新冷戦における西側の政治経済的一致団結において、日本も徹底的に貢献すべきです。また冷戦、ロシアがその覚悟なら仕方がありませんね。長い長い戦いの始まり、歴史は繰り返しますね。

(了)

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2022/02/20

ついに侵攻開始か:ウクライナ東部親ロ地区の衝突をキッカケにロシアの侵攻は始まる

damaged by shelling in Luhansk region
ウクライナ東部ルガンスク、砲撃を受けた幼稚園。相互に相手側の不意の砲撃であったと主張。(A Ukrainian soldier stands next to a damaged building housing a kindergarten after it was shelled, in the town of Stanytsia Luhanska, Luhansk region, Ukraine, Feb. 17, 2022.)(2022年2月19日付VOA記事「Shelling, Mortar Fire Intensify in Ukraine’s Donbas as War Clouds Gather」より)

2022年2月19日現在の状況
 2022年2月18日、バイデン米大統領は記者会見にて、あらためてロシアのウクライナ情勢が切迫していることを強調し、「ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻を決断したと確信」と明言しました。情報源など細部を語りませんでしたが、複数の精度の高い情報からの発言でしょう。但し、同大統領は外交交渉の余地は残っていることを強調しました。かたやロシア側は、ウクライナ侵攻の計画などないと完全否定し、欧米が意図的に軍事的緊張を煽っていることが危機の原点、と主張しています。ウクライナ国境付近のロシア軍が軍事演習を終えて撤退していく状況をメディアに流し、「撤退開始」を内外にアピールしています。
 その一方で、ウクライナ東部の親ロ派武装勢力の実効支配地域をめぐって、市街における砲撃やテロの可能性のある爆発等があり、親ロ派武装勢力とウクライナ軍との間で銃撃と相互に相手側からの不意急襲であった旨の非難合戦が始まっています。
(参照:2022年2月18日付VOA記事「Biden Believes Putin Has Made Decision to Invade Ukraine」ほか)

プーチンは既に「侵攻」と腹を決めている
 私見ながら、以前からこのブログで申し上げていたように、ロシアのプーチン大統領は「侵攻」と腹を決めています。プーチンは、NATOにウクライナのNATO加盟を拒否するよう「安全保障の法的保証」を要求しましたが、それはロシアも和平を求めて外交努力を尽くしたのだ、という内外に向けた政治的PR=アリバイ作りに過ぎません。軍事侵攻でウクライナ全土を占領する必要などないのです。プーチンの狙いは、「ロシアから離反し、欧米につく」というウクライナのゼレンスキー政権の政策と多くの国民の支持を徹底的に砕き、ウクライナの政権を親ロ派に挿げ替え、ウクライナ国民に「ロシアがそう言うなら仕方ないさ」とNATO加盟や欧米寄りを諦めさせることです。その一番効き目のある即効性のある手段が、首都キエフ及びハリコフ、ドニプロ、オデッサ等のウクライナの主要都市への電撃戦的攻撃・奪取です。侵攻開始当日中に首都の政治中枢を押さえ、ゼレンスキー政権の閣僚を一掃し親ロ派の救国臨時政権を立たせたら、きびすを返してこれまた電撃撤退。目に見える軍隊は撤退し、これに代わり治安警察が通報(密告)に基づく反ロ派の摘発やデモ行為の鎮圧に暗躍し、治安維持を大義名分にした政治経済中枢の親ロ派による力の支配をするでしょう。これでウクライナは国家として、名実ともにロシアの友好国に戻ります。NATO非加盟なんてまどろっこしい要求なんて屁でもない、ウクライナは盤石の対米欧の防波堤に復帰するわけです。勿論、国際社会、なかんづく米欧からは非難され、厳しい経済制裁も受けるでしょう。それは2014年のクリミア併合への経済制裁以降、ずっと厳しい制裁に耐えてきたし、その影響下での国家運営について計算づくですよ。クリミア併合後の国際社会へのロシアの釈明と同様に厚顔無恥にこう言うでしょう。「計画的な侵攻ではなく、あくまでウクライナ東部の親ロ派地区へのウクライナ軍の非人道的な攻撃に対する人道的な措置、特に、ロシア国籍を持つロシア国民の保護、東部親ロ派地区の自治政府の救援要請を受けての救援部隊の提供、という目的のための緊急避難的な必要最低限の措置だったのだ」と主張して譲らないでしょうね。

侵攻シナリオ:東部親ロ地区での軍事衝突での親ロ住民の被害をPRし、ロシア系住民保護を大義名分としたロシアの侵攻が始まる
 既に2022年2月中旬からチラホラと本格化してきた東部親ロ派実効支配地区のあるドネツク及びルガンスク州での小競り合い、小衝突がキッカケになるでしょう。ロシアはそのネタは既に工作員を潜入させて仕込んであります。冒頭の写真:砲撃を受けたルガンスクの幼稚園のようなテロ的攻撃があり、これへの対応で親ロ派武装勢力とウクライナ軍との銃弾や砲弾レベルの交戦があり、ここで親ロ派はウクライナ軍からミンスク合意に違反する無慈悲かつ非人道的な攻撃を親ロ派住民が流血の被害を受けた、というショッキングな映像を流すでしょう。そして親ロ派住民は「ロシアよ、助けに来てくれ!」と悲痛に叫ぶ。こうした映像が世界のメディアに衝撃的に流された、と言うも束の間、ロシアの電撃侵攻が始まるわけです。この前振りは、まさに2月19日現在で仕込んであります。親ロ派地区のロシア系住民をロシアに避難させ、そのシーンを世界のメディアに流していますから。
 既述のような東部親ロ派地区での、恐らくロシアの自作自演の「ウクライナ軍による凶行」をめぐる親ロ派武装勢力とウクライナ軍の衝突がキッカケとなって、この地域のロシア系住民の保護やこの地区の自治政府からのロシアへの救援要請にロシアが応じた形で、「緊急避難的な必要最小限の人道的措置」として軍事侵攻がおきるでしょう。

President Biden Feb19,2022

プーチン大統領が侵攻を決断したと語るバイデン大統領(President Joe Biden speaks about Ukraine in the Roosevelt Room of the White House, in Washington, Feb. 18, 2022.)(2022年2月18日付VOA記事「Biden Believes Putin Has Made Decision to Invade Ukraine」より)

米国バイデン大統領は侵攻抑止のために情報全開示型の情報作戦を開始
 最近の米国ホワイトハウスは、あからさまにロシアのウクライナ侵攻企図に結びつくの情報を垂れ流しのように公表しています。これは、ロシアのウクライナ侵攻を抑止するための手法について、バイデン大統領が腹を決めたのでしょうね。米国及び関係国のあらゆる情報収集手段を駆使して得たロシアの侵攻に関わる情報を、本来なら情報精度の超高い極秘情報から超低いガセネタを含め敢えて一切ガッサイ「全開示」し、米国ホワイトハウスのクレジットを付けて公表してしまう、という作戦に出た、と私見ながら推察しています。根拠としては、2014年のクリミア併合の際に、事前に米国は様々なロシアのクリミア侵攻企図の情報を得ていたものの、それらを国家機密として伏せてテーブルの上と下での外交交渉等をやっていたら、その途中で奇襲的に侵攻開始してしまった、という苦い教訓がありました。だから、今回は情報の精度が低いゴシップ記事的なガセネタも交じっているのを承知の上で、知り得た情報をホワイトハウスの公表という形で世界に垂れ流ししているのでしょう。そう言えば、数週間前に「ロシアがフェイクニュース映画を作っている」というネタを公表しましたが、あれなんか絶対情報制度は高くないでしょうね。ガセかも。しかし、ああいう情報を次々と流すとロシア国内も含めて、世界の耳目を集めます。一回耳に入ってしまうと、それが本当に起きた時に、「あぁ、そう言えばニュースで言ってたやつだ!本当だ!」とか、「これってニュースでロシアの陰謀だって言ってたよな」などの先入観を持ってしまいます。そこを狙っているのでしょう。国際世論として、この情報操作により、「ロシアがウクライナ侵攻の準備をしている。間もなく侵攻するぞ!」という先入観が出来上がります。こうしたことに一番痛恨に思うのは誰あろう、プーチン大統領でしょうね。やろうとしていたことの情報が流されてしまい、そこまでやろうと思っていなかったことまで実しやかにガセネタが流されてしまう。結果として、プーチンのウクライナへの侵攻企図に対して最も痛恨の効き目を発揮するでしょう。プーチンはバイデンが言っていることの逆をいかざるを得なくなりますよ。ここ数日のうちに侵攻開始しようとしていたのに、時期をずらさざるを得ない、とか。いやいや、そもそもロシアにはウクライナ侵攻の企図など、初めからなかったのだ、全ては米国のねつ造したフェイクニュースなのだ、というシナリオに改編せざるを得なくなる、とか。

 その効き目が発揮することを祈ります。

(了)

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2022/02/12

ロシア軍は侵攻準備態勢に:バイデンの米軍参戦否定をプーチンはGoサインと理解

Russian troops moving to Ukraine border 2

ロシア軍のウクライナ国境への移動・集結、各国の国外退避勧告始まる
 2022年2月12日現在で、米国はじめ西側の研究機関やウォッチャーが指摘していることですが、ロシア軍がウクライナ国境近傍に集結しつつある様々な衛星画像がネットやマスコミに出回っています。どうやらロシア軍は侵攻準備態勢に入った模様です。米国の大統領補佐官が11日にコメントしたように、北京五輪開催中の侵攻開始も十分あり得る、ということを出回っている衛星画像から窺い知れるロシア軍の配置や態勢がそれを裏打ちしています。もはや侵攻は秒読みの段階のようです。
 米国のホワイトハウスは、2022年2月11日、「ロシアはウクライナ侵攻に十分な兵力を集結させた」と発表し、外交面でのロシア側の強硬な姿勢に鑑み、ウクライナ国内の米国国民に対して48時間以内に国外に退避するよう勧告しました。英国、オランダ、ノルウェー、ラトビアなど欧州各国も、在ウクライナの自国国民に国外退避を勧告しています。日本も同様に、在ウクライナの邦人に直ちに退避するよう勧告しています。(参考: 2022年2月12日ロイター記事「ロがウクライナ侵攻に十分な兵力集結と米警戒、退避勧告相次ぐ」ほか)

 ちなみに、軍事侵攻は戦車・装甲車等の機動部隊が急遽国境を越えて攻め込む、というマンガのようなものではなく、まずは人知れず第5の戦場「電磁スペクトラム」という分野のロシアの一方的な攻撃から始まります。要するに、サイバー攻撃、電子戦攻撃、通信・レーダー・GPS・指揮統制妨害等、ありとあらゆる手段を使って、ウクライナの政治・経済、電力、物流、そしてウクライナ軍の組織的戦闘などを、一定時間全く機能しなくなるようにし、侵攻前にこれから戦場となる敵地を我が有利に作戦が展開できる土俵にしてしまうわけです。その電磁スペクトラムの攻撃を受けて前後不覚になっているウクライナの混乱下に、物理的な軍事作戦が開始されます。まずは航空機によるsurgical air strike(外科手術的航空攻撃)及び地上発射戦術ミサイルや長射程火砲による圧倒的な攻撃準備射撃でウクライナ軍のレーダーや航空基地、司令部、軍の脳や目や耳をボコボコに叩き、同時並行的に首都キエフなどの主要都市の政治経済の中枢の本部機能をピンポイントで潰しに来るでしょう。そして間髪を入れず、空挺部隊や空中機動部隊の首都への奇襲。これと提携するための戦車・装甲車等の国境突破、と続くでしょう。
 こんなのがオッパじまる前に、各国は在留自国民に対し、数日中にウクライナ国外への退避を勧告しているわけです。

ギリギリまで外交努力は続くが、バイデン大統領が余計なことを言った!
 フランスのマクロン大統領は、ロシアのウクライナ侵攻という事態を回避するためのシャトル外交に努力を傾注、ロシアのプーチン大統領と会談、次いでウクライナのゼレンスキー大統領と会談するなど、八面六臂の外交交渉努力を積んで、ご本人的にはかなり手応えがあったようなコメントがありました。他方、英国のジョンソン首相は、侵攻不可避と見切ったのか、ウクライナへの装備面での支援や緊急物資や緊急人道支援のための部隊派遣準備、自国のエネルギー調達の分散など、精力的なリスクマネージメント的外交を実施しています。
 その一方で、私見ながら「あ~、それを言っちゃお終いよ。」と落胆したのが、バイデン米大統領の2022年2月11日の会見での発言「(もしウクライナ侵攻が起きた場合、)米軍をロシアとの戦争に参戦させるようなことはしない。我々が今対峙しているのは世界最強の軍隊なのだ。」です。この人はバカなのか?なぜ、こんなことを言ったのか?なぜ国務長官や大統領補佐官はこのバカ大統領を羽交い絞めにしてでも止めなかったのか?こんな発言をさせたらいけないことを言ってしまったのです。この発言で、私見ながら、プーチンは「おうそうか、バイデンはGoサインを出してくれた。」と受け止めます。米国大統領としての自覚がなさ過ぎる。歴代の米国大統領は、第1次世界大戦参戦時のセオドア・ルーズベルト、第2次世界大戦参戦時のフランクリン・ルーズベルトも、朝鮮戦争参戦時のヘンリー・トルーマンも、湾岸危機・戦争参戦時の親父の方のジョージ・ブッシュも(息子はともかく)、国際的な危機に際して「ちょっと待った!」と敢然とこれに立ち向かう大義名分を高らかに明示し、世界に冠たる米国大統領として姿勢を見せたものです。バイデン大統領って人はバカなのか?ただの民主党の古参議員じゃないんだから、「ロシアが相手じゃ、そんなところで戦いません!」なんて絶対言ってはなりません。なぜなら、米国と同盟を組んでいる全ての国がズッコケますよ。え~!相手がロシアだったら戦わないの?それじゃ、NATOもクワッドも日米安保条約もありゃしないじゃないですか。自称外交のプロというお育ちのいい古参議員なので、腹の中ではそう思っていても仕方がないかもしれませんが、米国大統領としてはそんなこと言ってはならないのです。何でもっと利口なコメントしなかったのか?会見で記者に「もしロシアがウクライナ侵攻を開始した場合、米軍は・・?」と聞かれたとしても、「米国としては全てのオプションを否定しない」とか「参戦するとも、しないとも言わない」とか、言えたでしょう?バカなのか、この人は?またトランプに上げ足を取られること間違いありませんよ。
 この発言でプーチンは意を強くしたに違いありません。「こいつが米国大統領なら大丈夫だな」と。プーチンにしてみれば、「米軍が出てこないなら、奇襲的侵攻でウクライナの政権を親ロシアに挿げ替えて、サッサと撤収し、国際世論のブーイングや経済制裁が来ても何とかやり過ごせる。」と確信したでしょうね。このバイデン大統領の発言で、私見ながら、余計に侵攻の蓋然性が高くなったな、と肩を落としました。考えても見てください。もし、バイデン大統領がこのコメントに代えて、「仮定の話にはコメントできない。ロシアのプーチン大統領は賢明にも侵攻するようなことはないと信じている。他方、米国はいかなる国のいかなる軍事侵攻も絶対に看過しない。たとえ米国の若い兵士達が命を懸けることになっても、米国は国際秩序の安定のために国際的な役割を果たす。」とコメントしていたなら、プーチンは二の足を踏みます。「え!米軍出て来るな、これは・・・」と。

「侵攻はありえない」というしたり顔の専門家?の皆さんは認識が甘すぎる
 誤解のないように、予め申し上げますが、前項のように「ロシアのウクライナ侵攻が始まる」と私が言っているのは、ロシアの侵攻開始を待ち望んでいるわけでも、興味本位で煽っているわけではありません。2014年のロシアのクリミア侵攻やウクライナ東部の親ロシア武装勢力支援という前例、同様に侵攻されたジョージアの前例など、ロシアのつい数年前の歴史的事実からの合理的な推測です。
 にもかかわらず、2022年1月26日付JBプレス「ロシアのウクライナ侵攻はあり得ない、これだけの理由、ウクライナの悲劇と茶番劇」(杉浦 敏広氏)、同年2月8日付産経新聞「ウクライナ大規模侵攻はない、その理由」(遠藤良介氏)、等々、「起きない」派の専門家の方々がいろいろお書きになっています。さまざまな議論・分析はいいことですよ。しかし、根拠が甘い。本当にソ連~ロシアの、少なくとも世界大戦後の現代史を勉強しましたか?もっと近々の湾岸戦争以降でもいいですよ。国際情勢とか紛争とかって、学問ではなく生身のドキュメンタリーですよ。プーチン大統領になってからのロシアというここ二十年だけでもいい、勉強しました?ジョージアやクリミアをどう説明するの?
 侵攻はない、という方々の一つの論拠に経済制裁でロシア経済が弱体化するという議論があります。バイデン大統領は明言してませんが、恐らくSWIFTへのロシアのアクセスを断つ、とかロシア銀行のドル建ての決済を断つとか、そういった金融的な実力行使を想定しているようですが、それってクリミア併合後に欧米にやられた様々な経済制裁を今も甘んじて受けているロシアにとって、それほど致命的なんでしょうか?大和総研の菅野泰夫氏の分析では、前者についてはロシア版SWIFTの導入で効果は半減し、後者についてはロシアの貿易のドル建てへの依存率の低減やロシア中銀の外貨準備高のドル構成比の低減の努力で、いずれも致命的にはならない、との指摘です。(参照: 2022年01月25日付大和総研記事「「米国の経済制裁も効かず、ロシアによるウクライナ侵攻は時間の問題か?ガス供給の政治利用でエネルギー価格高騰の副作用も」) 国際社会は、この数十年北朝鮮やイランに対し、非常に厳しい経済制裁を課してきました。相当ダメージあるはずだ、とよく言いますが、聞いているのでしょうがその割には北朝鮮もイランも元気ですよね。ロシアしかり、チェチェン紛争やジョージア紛争やクリミア併合後にロシアも経済制裁受けてますが、キツイんでしょうが全然元気ですよね。クリミアが併合できたのだから、「このくらいの制裁で済むのなら侵攻してよかったね」という話かもしれません。話が逸れました。すみません。ここで言いたいのは、経済制裁が侵攻を思いとどまる決定打にはならないぞ、ということです。
 
(了)

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2022/02/05

プーチンの腹:在留ロシア人保護/ミンスク合意不履行を大義名分に侵攻へ

ロシア軍ベラルシに展開
ロシアがベラルシに3万もの軍隊を共同訓練を口実に派遣、ウクライナの北からの侵攻部隊が配備に?(2022年2月4日付ロイター記事「ロシアが口実でっち上げも、米情報機関が分析 侵攻正当化で」より)

緊迫度を増すウクライナ情勢
 今週だけでも各国のウクライナ情勢の沈静化を巡る動きが活発化、ウクライナ情勢は益々緊迫度を増しています。
 2022年2月1日、ロシアのプーチン大統領は欧米との安全保障を巡る交渉難航についてコメントし、「ロシアの懸念が無視された」と不満を表明。他方で、ロシアから欧州へガス供給や石油輸出国として、生殺与奪の軍配を握って欧州各国にグイグイ揺さぶり中。
 2月2日ジョンソン英国首相が電話会談で、次いで3日トルコのエルドアン大統領がウクライナのゼレンスキー大統領を訪ねて首脳会談をし、状況打開を模索中。ロシアは、2月3日ショイグ国防相をベラルシに派遣するとともに3万ものロシア軍部隊がベラルシとの共同演習を口実にウクライナの北側に展開、北からの侵攻態勢を準備か。米国はポーランドとチェコに3000名規模の米軍派遣をする旨発表し、米軍部隊が欧州正面に出発するニュース映像が流れる・・・。
 (参照:2022年2月3日付日経新聞「プーチン氏なお強硬 欧州安保 米欧の回答に不満」、2022年2月3日付ロイター記事「ウクライナ侵攻は「悲劇的な誤算」、英首相がプーチン氏と電話会談」、同年2月4日付ロイター記事「トルコ大統領がウクライナ訪問、ロシアとの紛争で仲介申し出」ほか)

 私見ながら、2月3日付日経新聞の同紙コメンテーター秋田浩之氏の「暴れるロシア、中国の憂い」というご意見を読んでビックリ。ご認識が甘い。同氏は、ウクライナ侵攻を抑止するために、中国に侵攻がもたらす中国の国益へのマイナス効果を理解してもらい、中国にロシアに対し一線を画してもらう、という二階でケツをあぶるような遠回しの解決策をご提示しています。そんな悠長な話で解決しますか?北京五輪での習・プーチンの満面の笑みをたたえた2匹のタヌキのニュース映像等を見ましたが、習もプーチンも、盟友から一線を画されたくらいで自国の死活的国益を断念するようなメンタルの弱い指導者ではありませんよ。日経新聞は日本の主要紙の中では割と国際情勢ものが充実した記事が載るので愛読させていただいていますが、この辺の甘い認識をみるとお坊ちゃまだなと思ってしまいます。先生、もうはや秒読みなのに、そんなのんびりした遠回しの解決策で緊張緩和しますか?
 上記のような状況であれば、一番効果テキメンにロシアの侵攻企図を潰す策は、米軍の展開先がポーランドやチェコではなく、親善訓練名目でウクライナに展開することです。米軍がウクライナに駐留中にロシアが侵攻開始するということはさすがにないでしょう。なぜなら米ロの直接の軍事衝突となるからです。良識派のバイデン大統領は、NATO加盟国ではないウクライナへの米軍の展開はまずい、と合理的に判断しているのでしょうが、キテレツなトランプだったら、決定的な効き目のあるウクライナ派遣をしているでしょうね。勿論、新たな議論を呼びますが、ウクライナを見殺しにするよりはよほど「良心的」だと思います。しかし、バイデンじゃやらないですね。

見えてきたプーチンの腹
putin images

 私見ながら、ウクライナ情勢を巡るプーチンの本心は「電撃侵攻によりウクライナをロシアの衛星国に戻す」の一択と見ています。ただ、国際社会への言い訳/大義名分として、「ウクライナがNATO加盟したら安全保障上不安だから」というのは説得力がないので、もっと国際世論にも自国民にも響く大義名分を旗印に掲げるだろう、と思っていました。ここ最近のロシアのウクライナや欧米への主張を見ていて、ハハーンこれだな、と見えてきたものがあります。2015年のミンスク合意の不履行問題です。

ミンスク合意とは
 ミンスク合意とは、2014年のクリミア侵攻と同時並行的に問題がクローズアップされたウクライナ東部のロシアが支援する親ロ派武装蜂起とウクライナ政府軍の衝突にて、ウクライナ政府と親ロ派武装勢力との間で、紆余曲折の後、2015年にロシア、仏、独も交えてミンスクにて停戦協議をして結んだ合意のことです。ロシアの圧倒的な軍事的威圧の下で、親ロ派に有利、ウクライナには屈辱的な停戦合意でした。ウクライナは親ロ派武装勢力が実効支配するドネツク州とルガンスク州を親ロ派の自治州として認め、国政への発言権も認め、国境管理などの規定などもロシアや親ロ派に有利なものになっています。具体的な停戦合意の実施をめぐり、ウクライナと親ロ派2州、ロシアの間で紛糾し、結局のところ合意はあるものの停戦の遵守に至らず、これを良しとしないウクライナ政府軍と親ロ派武装勢力の間で睨み合いと小衝突が続き、親ロ派はルガンスク州・ドネツク州を武力で実効支配が続き、ウクライナも合意不履行が続いています。
 (参照:2022年1月27日付日経新聞「ウクライナ問題、仏独ロ含めた4者交渉継続で合意」ほか)

凶悪な手口でロシアの死活的国益化
そして、ここからのプーチンのグロテスクさが凄い。なんと親ロ派2州において、親ウクライナ反ロシアの住民を追い出し、2019年以降は親ロシア派地域住民にロシア国籍を付与する政策を開始しました。これに多くの親ロシア派住民が応じ、かくしてウクライナ東部の親ロ派2州は72万人(2021年12月調べ)ものロシア国籍の住民が住む独立州ないしロシアの準領土にしてしまったわけです。プーチン恐るべし。

 こうした背景の下で、ロシアはウクライナにミンスク合意の履行を要求するよう有形無形の圧力をかけています。もはやロシアにとって、隣国の内戦問題ではなく、孤立し助けを求めている自国民・同胞が住む地域の問題=自国民の保護という死活的国益の問題に引き上げられました。

 そして、2022年2月3日、米国政府が公表したのが、ロシアがウクライナ侵攻やむなしの国内外の世論操作のためにやらせ(フェイク)ニュース映像」を企画している、という件です。ウクライナ東部の親ロ派実効支配地域が舞台で、ウクライナ政府軍と思しき部隊が親ロシア派住民の街に残虐非道な攻撃、街や家屋が破壊され、罪なき親ロ派住民の血まみれの死体が転がる.......こんなシーンのニュース映像が出回ったら、これは効果的。ロシア国民向けには自国民保護の義憤にかられ「ウクライナ討つべし!」という戦意高揚に、国際世論的には「こんな酷いことが起きているならロシアが軍事介入するのもうなづける」という同情に、そういった世論操作を狙ったものです。あいにく、ロシアのこの企画は既に西側で報道されてしまったので、効果は半減でしょう。

プーチンはミンスク合意不履行と自国民保護を大義名分に侵攻する腹、と見た
 ウクライナ情勢をめぐって欧米はじめ関係国がロシアに緊張緩和を説いていますが、これらの試みは全く成果が出ません。それもそのはず、プーチンは初めから外交交渉など当てにしておらず、ウクライナ侵攻の腹を決めています。後はタイミングと大義名分の熟成を待っているのみ。この大義名分、すなわち「内外に説得力のある『軍事介入やむなし』の口実」がウクライナの親ロ派支配地域に対するミンスク合意不履行=この地域に住むロシア国籍住民の保護だと推察します。もう大義名分の仕込みが済んでいるので、あとはウクライナ政府軍による親ロ派支配地域へのPRするに十分な攻撃、というキッカケです。これはウクライナ軍の内部や親ロ派支配地域に潜入させた特殊工作員が仕込みを済ませているでしょう。何かの拍子にウクライナ軍と親ロ派武装勢力が衝突し、その際に衝突の犠牲になってPRに足る親ロ派住民の大きな犠牲が出るのではないか、と見ています。これを大々的に報道し、この際、被害に遭った可哀想な親ロ派住民=ロシア国籍を持つロシア人の惨状と現地住民のロシアへの助けを求める悲痛な声が映像として世界に流れるでしょう。ロシアはウクライナを避難し、その直後、電撃侵攻が始まる……。

 プーチンの腹算用は既にできており、後はGOの機会を窺っていることでしょう。

(了)

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