fc2ブログ
2022/03/31

停戦交渉進展?:プーチンの腹は「停戦」ではなく「戦線の立て直し」

停戦協議

停戦協議の進展
 2022年3月29日、トルコのイスタンブールで行われたロシアとウクライナの停戦協議にて、ウクライナ側は中立化に応じ関係国を多角的に巻き込んだ新たな安全保障枠組みを提示、対するロシア側は首都キーウ周辺の軍事作戦を縮小するなど、両サイドがそれなりの妥協案を出して双方「持ち帰り検討」というところまで進展が見られました。今後の展望として、次はゼレンスキー、プーチン両大統領の首脳会談が期待され、停戦へ……という流れの可能性が希望的観測として議論されています。
(参照: 2022年3月30日付主要各紙朝刊、同年3月31日付ニューズウィーク日本版「ウクライナ戦争は終わった、アメリカ抜きで」、ほか)

停戦協議を受け停戦に向かうか?
 私見ながら、ロシアのプーチン大統領の腹は停戦協議による停戦など全く当てにしておらず、プーチンにとっての一定の成果が得られない限り停戦する気はない、と推察します。停戦協議に進展が見られたとしても、これはプーチン大統領が軸足を停戦に向けている証左では全くなく、むしろ現在の侵攻作戦の立て直しを図っている、と考えられます。

初期の3正面作戦から東部に戦闘力集中へ
 元々の侵攻作戦は、3正面からの電撃侵攻のつもりだったと見られますが、この初期の作戦はいずれの正面もことごとく、ウクライナ軍の善戦とウクライナ市民の頑強な抵抗に遭って戦線は膠着してしまった、というのが正直なところでしょう。プーチンは軍指導部にさぞや激怒したものと思われます。軍トップの国防大臣が最近ちっとも表に出て来ず、「粛清されたか?」との憶測も出ています。ロシア軍は何回か攻撃の立て直しを試みた模様です。キーウ攻略が良い例ですが、キーウ総攻撃のための包囲をしようと前線部隊を包囲する位置へと展開させたところ、その先端戦力の戦車・装甲車及びその全身を上空から支援する攻撃ヘリがウクライナ軍の携帯対戦車ミサイルや携帯対空ミサイルで相当数が撃破され、前線の部隊の戦闘力を維持するための後方支援部隊がドローン攻撃を受けて補給線が断たれ、結果的に攻撃が頓挫した模様です。現状では前線は広域過ぎ、かつ補給線は長大過ぎる状況と見られます。3正面で短期決戦するつもりだったのが、長期化して戦線が拡大し、維持できなくなったというところでしょうか。

 今回の停戦協議を通じて、「ロシアとしても和平交渉に尽力し、一定の譲歩をして『ウクライナとの協議に応じて』キーウ周辺の攻囲を解き、本来の特別軍事作戦の目的通り『東部の安全確保・非ナチ化』に当たる」という大義名分を得て、戦線を立て直すものと推察します。

プーチンは一定の成果が得られるまで絶対に折れない
 結局、停戦協議は決して無駄ではないものの、外交努力に全ての期待をかけるべきではありません。
 ロシアが、停戦協議を紛争解決手段とは考えておらず、「軍事作戦」と同様、「外交作戦」なのです。他国へのエネルギー供給を脅しの材料に使っている「経済作戦」もその手段のうちの一つです。ロシアの戦略目的として「ウクライナをロシアの影響力の傘下に取り戻す」を据え、これはプーチンの中で不変です。この目的を達成するため、今回の侵攻以前から、政治、外交、経済等の各種の作戦を展開して下準備をし、国境近辺に相当な戦力を事前展開する形で軍事作戦をその一助をしていました。そして、「これならやれる」と判断して侵攻を開始しました。当然、軍事作戦を主軸に。一たび侵攻を開始したからには、多少軍事作戦が遅れようが、所期の成果が一定程度得られないことには、作戦を途中で中止したりできません。始めたからには、停戦交渉などで得られた妥協では絶対に得られないのです。ウクライナの言っている「新たな安全保障の枠組み」など、ロシアのプーチンが受け入れるわけがありません。
 今回の戦線の立て直しで、まずは東部2州の完全掌握、そしてマリウポリが要衝となっている「クリミア半島への回廊」を確保する。これが最低条件。ここから更に南部の海の玄関=戦略都市オデッサを狙うか、もしくはド二エプル川以東のウクライナの東半分までは侵攻を続けるかもしれません。或いは、東部、回廊を確保した後は、再度戦力を集中して首都キーウを包囲・総攻撃をするかもしれません。

 結論として、ロシアとの外交交渉など絶対に信用してはいけません。
 悲しいかな、戦闘を長期化させ、ロシア国内での反プーチン派によるクーデターを待つしかないかもしれません。

(了)

にほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へ
にほんブログ村

国際政治・外交ランキング
スポンサーサイト



2022/03/25

ウクライナ善戦: ドローンでロシア軍の補給を断つ!

ロシアはなぜキーウ総攻撃できないのか?
 2022年3月25日(日本時間)現在、ロシア軍の侵攻は逐次制圧地域を広げているものの、いまだキーウ(ウクライナ発音:「キエフ」はロシア語発音なので訂正)総攻撃のような決定的な戦闘を仕掛けておらず、ウクライナ軍の善戦によりキーウ周辺の一部の地域ではウクライナ軍がロシア軍から奪還しているほど。しかし、全般態勢としては依然「膠着状態」と言えます。
 私見ながら、ウクライナにとっては誠に幸いなことですが、何故かくもロシア軍の侵攻が停滞気味なままなのか、不思議でなりませんでした。何故、2014年のクリミア侵攻の際に見せたロシア版クロスドメイン作戦(※)を全面展開しないのか?陸軍兵力も空軍力も海軍力もウクライナの4倍以上あるのに、ことここに及んで持てる戦力を全力発揮していません。侵攻初期はともかく、プーチン大統領に参謀総長は胸ぐら掴まれて怒られたはずなのに、何故全力を発揮しないのか?

 理由を探して米軍の記事をあさっていたら、ロシアの戦力発揮を阻んでいる一因はこれかな?というものに突き当たりました。あくまで一因であって、これでは「ウクライナ軍がいかに局地戦をうまく戦っているか」の一因に過ぎませんが…。
Turkish Drone
ウクライナ軍のドローンがロシアの車両縦隊を爆撃している景況(Image grab from footage released by the Ukraine defence ministry on Sunday allegedly shows a convoy of Russian military vehicles hit by the Ukrainian army's Bayraktar drones in the Kherson region )
Turkish drone 2
キーウにおけるウクライナ独立記念日でパレードに参加するトルコ製ドローン「バイラクタルTB-2](A Bayraktar drone seen during a rehearsal for the Independence Day military parade in central Kyiv, 18 August 2021)(2枚とも2022年2月28日付Middle East Eye記事「Russia-Ukraine war: Turkey's Bayraktar TB2 drones proving effective against Russian forces」より)

トルコ製ドローン「バイラクタルTB-2」でロシア軍の補給路を断つ!
 その一因が見出し語の通り、トルコ製ドローン「バイラクタルTB-2」でロシア軍の補給路を断っている、という戦術のようです。
 これまでも、マスコミ報道で西側がウクライナ軍に供与した米国製の携帯対戦車火器ジャベリンや携帯対空誘導弾スティンガーの活躍が話題に上っていました。確かに、これらの火砲がロシア軍の先端戦力となる戦車や攻撃ヘリの出足を挫いて局地戦を有利に展開しているのは事実のようです。昔、中東戦争当時、アラブ連合の部隊がまともに戦っては勝てないイスラエル軍の戦車や航空機の突進を止めるため、ロシア製の携帯対戦車火器や対空火器で比較的善戦した戦例がありました。しかし、これだと出足を挫くことはできますが、包囲した上でのキーウ総攻撃のような場合は、徹底的な事前の攻撃準備射撃があるので、展開していたウクライナ軍も徹底的な火砲の砲弾がアメアラレと降ってきた際は、一旦退くか、地下壕などに退避せざるを得ません。なのに、何故ロシア軍は総攻撃できないのか?この一因は、見出し語の通り、このトルコ製ドローンが敵部隊の情報収集や先端戦力の戦車の撃破で活躍しているのみならず、いやむしろ私が注目しているのは、前線のロシア軍部隊の後方の補給路を補給のために往来している補給用の輸送トラックや兵站基地(後方支援部隊の集まる補給・整備の拠点地域)を目標に大暴れしていることです。ちなみに、トルコ製ドローンのバイラクタルは、実はナゴルノカラバフ紛争の際にトルコがアゼルバイジャンに供与し、ロシア製の武器で攻撃してくるアルメニア軍の前線及び後続部隊に対して攻撃的に使用し大活躍しています。戦闘というものは、前線の戦闘部隊が戦うわけですが、この戦闘部隊の戦闘を補給や整備等でしっかり後方支援をすることで戦闘が維持できるわけです。ウクライナ軍は、このドローンをロシア軍の後方支援部隊の撃破に運用することで、前線の部隊に給油、弾薬補給、損傷・故障武器の整備、ケガ人の後送・補充兵の前送などを断つことで、巨人ロシア軍の足元をガンジ絡めにして停滞させているのです。あたかも、旧約聖書の一節の巨人兵ゴリアテが体の小さなダビデの、まともに戦っても勝てないので投石器で石を放って頭部に当てて倒した逸話のように、弱者の戦法で絶対的強者ロシアの鼻をあかせてくれています。
 実に、素晴らしいです。
(参照: 2022年3月21日付ArmyTimes「How a Turkish drone became the star of the Ukrainian defense | Actionable Intelligence」、3月6日付DW「How useful are Turkish-made drones fighting in Ukraine?」、3月16日付 Eurasia Daily Monitor 《Volume19/Issue36》「A Dangerous Drone for All Seasons: Assessing the Ukrainian Military’s Use of the Bayraktar TB-2」(Can Kasapoglu)など)

懸念: ウクライナ軍の善戦も継戦能力に課題
 ウクライナ軍の善戦、勇戦敢闘には頭が下がります。他方、いつまで続けられるのか、継戦能力の課題は避けられません。西側は継続的に支援をするでしょうが、当のウクライナ軍は、兵力の枯渇も勿論ですが、ロシア軍がウクライナ国内の軍用燃料貯蔵庫や兵站基盤を狙い撃ちしてきているので、戦闘を維持する後方支援の問題は前述のロシアのみならず、ウクライナの問題でもあります。
 退役米空軍大将デイビッド・デプチュラ氏は、「これまではウクライナは善戦できたが、そうは長続きできないだろう。ロシアの底力がこれから発揮されるだろう。」と展望を述べています。(参照:2022年3月3日付National Defense記事「Just In: Ukraine’s success against Russia in the Air may not last, ex-Air Force General says」)

それでも、がんばれウクライナ!

(了)

にほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へ
にほんブログ村

国際政治・外交ランキング
2022/03/18

ロシアが軟化、近く停戦か?:違う!時間稼いで戦闘準備しキエフ総攻撃をしてくる

Ukrainian firefighters extinguish a blaze at a warehouse after a bombing in Kyiv March 17 2022
爆撃された市街で消火活動を続けるキエフの消防士(Ukrainian firefighters extinguish a blaze at a warehouse after a bombing in Kyiv, March 17, 2022.)(2022年3月17日付VOA記事「Russian Missiles Strike Near Lviv Airport」より)

3月18日(日本時間)の状況
 2022年3月18日現在、ロシア軍の攻撃は東部や北部、南部のみならず西部にまで及ぶようになり、キエフを始め地方都市への攻撃も無差別的になってきました。ニュース映像では、「子供が中にいる」と表示していた1000名近い避難者が中にいた劇場が爆撃されたり、南部でロシア軍に包囲された地区の病院が傷病者であふれ、薬物・器材の欠乏から救える命が救えない状況、などが連日報道されるようになってきました。ロシア軍の侵攻の戦線はジリジリと制圧地域を広げているものの、各地でウクライナ軍は善戦しており、局地的にはロシア軍の攻撃を撃退した正面もあるほど。これまたニュース映像でよく流れるシーンとして、ロシア軍の戦車・装甲車が路上で数珠つなぎ状態にスタックし、そこにウクライナ軍の携帯対戦車ミサイル「ジャベリン」で迎え撃ち、次々に戦車が撃破される場面、ロシア軍の攻撃ヘリが低空で攻撃してくるのを、ウクライナ軍の携帯地対空ミサイル「スティンガー」で撃墜される場面、などなど・・・。他方でロシア軍は、いまだキエフ総攻撃のような決定的な戦闘を仕掛けてきません。
 ということで、現在の状況を一言で言えば、「戦況は膠着状態」です。

ロシアが軟化?近日中に停戦か?という報道が・・・
 他方、停戦協議は進展か、ロシアが軟化?ウク側もロシア側も近く交渉が成立するような期待感を感じさせるニュースが、(なぜか日本のマスコミであって、海外メディアはそうでもないのですが)巷間溢れています。例えば2022年3月17日付JIJI.COM「停戦交渉、一定の進展か ウクライナ、ロシアの軟化示唆」、同日付日テレNews「“ロシアの態度が軟化”近日中に停戦の可能性も」など枚挙に暇がありません。

 期待感をしぼませる最大の難敵はプーチン。しかし、ロシアの閣僚会議でのプーチン発言の報道によれば、プーチン自身が、特別作戦(侵攻作戦)が思うようには進捗していないこと、経済制裁がロシア経済を圧迫し失業率や物価が上昇するなどレバーブローのように効き始めていること、ロシア国内の反戦デモなどの反対分子を「クズ」や「ハエ」など口汚く罵倒するなど自身が苛立っていること、などを認める発言があった模様です。これは確かに、朗報ですね。さすがのプーチンも戦線膠着やウクライナの根強い抵抗、西側の結託した経済制裁、などプーチン自身の誤算もあって、苛立ちを隠せないのも事実かも知れません。
しかし、本当でしょうか?

否!違う!騙されてはいけない。これはキエフ総攻撃の時間稼ぎだ
 私見ながら、プーチンはそんなヤワな男ではありません。プーチンが「うまく行かないことばかりなので、この辺りで妥協した方がいいかな?」と思うと思いますか?確かに、前述のようなうまく行かない要因ばかりに苛立っていることとは思いますが、まだ開戦から3週間程度、このくらいで進退窮まるような男ではありません。プーチンが今回のウクライナ侵攻を開始する前に、深謀遠慮して決心したはずです。プーチンの考えたロシアとしての戦略目的、戦略目標があって、これを達成するため、軍事作戦のみならず外交、経済、等々のありとあらゆる手段を使って、その達成を追求しているはずです。軍事作戦について言えば、どう考えても焦眉の急は「キエフ陥落」。これはキエフ市民の犠牲なんぞ度外視して必ず達成すべき目標として、プーチンは参謀総長に厳命しているはずです。そして、軍事のみならず非軍事・非正規の手段も含め「ゼレンスキー政権の放逐」も。キエフ総攻撃はロシア軍に正攻法の空地の戦闘でやらせるでしょうが、後者は非正規の特殊工作員によるセレンスキー暗殺か拘束、最低でもキエフから後方都市へ避難をさせることで、「ゼレンスキーはキエフ市民を捨てて逃亡した」と喧伝して「臨時救国政府」を名乗る親ロ派傀儡政権を樹立し、世界に正当な新生ウクライナ政府として発信を始めさせる。これがプーチンの腹であり、この2つは絶対に達成すべき目標として、部下のケツを蹴飛ばして任務完遂させるはず、と推察します。
putin images
狡猾!プーチン大統領

では、ここ最近の停戦協議の進展のニュースは一体何か?
 私見ながら、キエフ総攻撃のための時間稼ぎでしょう。キエフ正面の部隊の行動は、現在、キエフ手前10数キロで見たところ停止しています。前線で出過ぎた部隊がウクライナ軍の伏撃にあって相当な損害を受け、現在地で補給整備や人員の補充などを受けている模様。これは、「当面の戦闘を停止して停戦協議の行方を見守っている」のではなく、「キエフ総攻撃を戦闘準備中」と推察します。

 皆さん、マスコミのニュースで一安心されているかも知れませんが、プーチン(あれ?日本のマスコミかも)に騙されてはいけません。プーチンにとっても誤算続きで苛立ちもありましょうが、だからこそ、適当な妥協はできないのです。プーチンの腹は、侵攻を開始した戦争目的である「ウクライナの自国の影響下に留める」ことを最低限果たすため、「西側寄りのゼレンスキー政権を親ロ政権に挿げ替えて、西側寄りのゼレンスキー政権を支持するウクライナ国民に自由志向を諦めさせる」という戦略目標は絶対に果たすつもりでしょう。それを達成するための具体的な軍事作戦への目標が前述の「キエフ総攻撃によるキエフ陥落」、非正規軍の特殊工作員を使った「ゼレンスキー政権の放逐」です。時間はかかってしまいましたが、この2つを徹底して追求してくると思います。プーチンはこの二つの達成に政治生命をかけている、と推察します。

 ちなみに、プーチンの腹はそうだ、と言っているのであって、私自身は「プーチンはそうするだろう」と思いますが、「情勢や戦況が本当にそうなるだろう」とは思いません。情勢や戦況はそうはいかないでしょうね。故に、長期戦になると思うのです。ロシア軍も総攻撃するし、特殊工作員やら軍事手段やらありとあらゆる手段も使ってゼレンスキーを仕留めようとすると思います。しかし、それが思ったようにうまく行かず、戦闘は膠着し紛争は長期化すると思うのです。
 ただ、ちょっと心配なことが。最近のゼレンスキー大統領のキエフ市内のあちこちへの登場(SNS発信ネタ)は、既にキエフ市内に潜入している特殊工作員に付け込む隙を与えてしまうので要注意。もう少し慎重に行動していただきたいところです。今、ゼレンスキーを失うと、これは非常に痛い。
 頑張れ!ウクライナ

(了)

にほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へ
にほんブログ村

国際政治・外交ランキング
2022/03/12

いよいよキエフ攻防戦:必死の抵抗空しく焦土と化し数日で陥落か

いよいよキエフ攻防戦へ
 2022年2月24日から開始されたロシアのウクライナ侵攻は既に2週間が経過。初動で出遅れたロシア軍は、態勢を立て直して本格侵攻モードに入り、建前上は初動と同様「市民を標的としない」と言いつつ、今やロシア軍の攻撃は事実上「無差別化」し市民の犠牲を顧みません。
2022年3月11日(日本時間)の段階で、ロシア軍は初動で攻めあぐねたウクライナの首都キエフに対し、ロシア軍は包囲の態勢をとりつつ最短で北15キロの位置まで来ています。数日前から包囲しつつあり、包囲環を圧縮して最終的な攻撃の戦闘展開をとっているところと思われます。いよいよキエフ市街地での攻防戦が開始されようとしています。

軍民共に待ち構えるキエフ
 2022年3月10日付CNN記事「ロシア軍待ち構えるキエフは『要塞化』、防衛の決意固い市民」によれば、ウクライナ軍のキエフ防衛部隊と残留市民は共同してキエフ市の「要塞化」に努め、来たるべきロシア軍の市内への侵入を待ち構えている模様です。残留一般市民も、健気なまでにキエフ防衛のために対戦車障害を道路に置いたり、土嚢を積み上げたり、火炎瓶を作ったり、兵士のために食糧や物資を供給したりするなど、各自のできることで貢献しようとしています。ウクライナ軍と残留一般市民の士気は高く、ロシア軍から愛する街キエフを守り切る気概に満ち、手ぐすね引いてロシア軍を待ち構えている状況です。

kyiv-defenses-super-169.jpg
首都キエフへ進軍するロシア軍を待ち受けるウクライナ軍の兵士ら/Chris McGrath/Getty Images (前掲CNN記事より)
kyiv-defenses-super-169 (1)
市中心部での店舗の営業を続けるリュドミラさん(左)と夫のドミトロさん/Ivana Kottasova/CNN (前掲CNN記事より)
スクリーンショット (79)
スクリーンショット (78)
キエフ市街の要塞化の状況(2022年3月12日付BBC「Ukraine war: Kyiv prepares for Russian attack」より)

キエフ攻防戦の行方 
 私見ながら結論から言うと、前述の努力にも関わらず、割と短期、数日でロシア軍がキエフを陥落させるでしょう。
 まず、間もなく始まるであろうロシア軍の猛烈かつ圧倒的・無差別な砲爆撃で市街地は焦土と瓦礫の山と化すでしょう。砲爆撃の間、地下のシェルターに退避していた市民は、シェルターであっても相当な被害者が出るでしょう。砲爆撃の衝撃音で震え上がった上に、瓦礫を掻き分けて地上に上がって2度ビックリ。愛する街キエフの跡形もない程の焦土になって、膝から崩れ落ちることでしょう。その上でロシアは総攻撃開始前に市民の退避を促します。キエフ防衛に気概を燃やしていたはずの市民は、もはや戦意を喪失することでしょう。ロシア軍は、南西方向に人道回廊を設定してほとんどの市民を退避させ、その上で、もはや市民は退避させウクライナ軍しか残っていないという前提で、満を持して人道考慮を一切しない完膚なきまでの総攻撃を開始します。ウクライナ軍も善戦するとは思いますが、ロシア軍の包囲部隊が補給路と退路を断ち、殲滅するつもりでしょう。
 このように、事前砲爆撃で1日、人道回廊で1日、総攻撃(掃討含め)に2日で、最短計4日でキエフ陥落・占領を宣言するでしょう。

 残酷なことを面白がって書いているのではなく、戦術的妥当性及び軍事合理性から言ってこうなる、という現実論です。現在、継続的にロシア・ウクライナ間で停戦協議をしており、先日は外相会談もありましたが、プーチンは当面妥協する気はないでしょう。一応、国際社会に向けたエクスキューズとして、和平努力はしてますよ、というポーズをとるために交渉を継続しているだけであって、停戦のための議論をするつもりは全くありません。先日のラブロフ外相のコメントでも明らかです。プーチンは、ロシア軍に対し、「何が何でも首都キエフを奪取せよ!」と厳命しているでしょうから、ロシア軍は初動の戦闘のような遠慮がちな攻撃を廃し、完膚なきまでの圧倒的な戦闘力発揮をするでしょう。ネックは市民の存在。だから前述のような事前の砲爆撃で焦土化し、市民の士気を挫いた上で人道回廊の設定で市民を退避させると思います。市民にとっては闘魂満々だったでしょうが、焦土と化した愛するキエフの街並みに愕然とし、闘魂は消え去るでしょう。
 
 CNNの記事のような草の根努力は、前述のように灰燼に帰すでしょう。やはり拠点防御を市民交えて続けるのは難しいですね。しかし決して無駄ではありません。この無念の涙と国内戦の現実認識が、これから始まる長い長いウクライナ市民の根強い抵抗のスタートになるのです。拠点防御でなく、あちこちで随時随所のレジスタンスはヨーロッパの市民の抵抗の伝統です。国の主権はロシアに奪われ、親ロシアの傀儡政権が立つでしょうが、ここからの長い長い抵抗にこそ、一縷の望みが繋がるのです。長期に抵抗を続けることで国際社会を後押しし、プーチンから妥協を引き出したり、あわよくばプーチン政権が倒れたり、・・・望みが繋がるわけです。
 がんばれウクライナ!

(了)

にほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へ
にほんブログ村

国際政治・外交ランキング
2022/03/07

ウクライナ情勢:BBC「5つのシナリオ」が白眉

ウクライナ情勢:BBC「5つのシナリオ」が白眉
 ウクライナ情勢の行方について、各メディアが様々な議論を展開していますが、2022年3月3日付BBC記事「Ukraine: How might the war end? Five scenarios」(James Landale)には脱帽しました。私が3月1日付で書いていた前回のブログと同じ頃に、この5つのシナリオを書いていたんでしょうね。今回、3月5日にブログを書いていたのですが、そこで書こうとしていたのが「あり得る3つのシナリオ」だったのですが、このBBCのJames Landaleさん(BBCの外交担当編集委員)の記事で既に書かれていたのを5日にネットで発見し、書く気をなくしてしまいました。そんなことはともかく、この5つのシナリオの読みが実に鋭く深い。しかも理想論や希望的観測などではなく、読みが非常にリアル。どれ一つとっても、現実主義者の私でも「十分あり得るな」と納得のいく現実的シナリオです。秀逸な記事なので、他のメディアにも転載され始め、7日付でBBC日本版にも和文ででていました。
ザックリと5つのシナリオとJames Landaleさんの結論をご紹介し、私見を付け加えさせていただきます。

① ロシア猛攻で短期終結
 前回の私のブログの私の読みとかぶりました。初戦で手間取ったロシアがプーチンにケツを叩かれて大発奮、エンジン全開で猛攻し、サイバー攻撃も駆使し、主要インフラと通信網を断ち、市民の犠牲も顧みず無差別の砲撃や空爆を開始。首都キエフを数日でさせます。同時並行的に傀儡政権を打ち立て、ゼレンスキー大統領は暗殺か拘束、もしくは国外逃亡し亡命政権を樹立。プーチン大統領は勝利宣言し、一部の治安部隊を除きロシア軍撤退。じ後、ウクライナはベラルーシ同様、モスクワの衛星国家に戻る・・・。

② 紛争の長期泥沼化 
 キエフ攻防戦で市街戦となり、道路単位の市民交えた頑強な抵抗にあい長期化。1990年代のチェンチェン紛争での首都グロズヌイ攻防戦のような長期に渡る泥沼の市街戦の末、徹底的に破壊された瓦礫の街が残った記憶がよみがえる。ロシア軍がかなりの都市を占領したとしても、広大なウクライナ全土を制圧し続けることは困難。劣勢とはいえ、ウクライナ軍は西側からの補給とバックアップを受け、我慢強い市民の頑強な抵抗により、ロシア軍は自らの補給線が伸び切る中、随時随所で粘り強い反乱軍の抵抗に遭う。かくして、ロシアはアフガン侵攻末期の状態に陥る。

③ 欧州戦争へ拡大
 プーチンがこの機に乗じて、モルドバやジョージアなどに便乗侵攻するとか、ロシアの飛び地カリーニングラードの保護の大義名分で、ロシア本土との回廊を確立すべくバルト三国(NATO加盟)に要求し、これが拒否されると実力行使に出るなども考えられる。また、西側諸国がウクライナ政府や政府軍へ資金や武器供与をはじめ様々な補給支援を行っていることについて「侵略行為であり、侵略行為に対する正当防衛」を掲げて攻撃するぞと恫喝したり、実力行使をしてくるかもしれない。これはNATOとの戦争のおそれがあるため、普通なら回避するはずだが、今のプーチンは敢えてエスカレーションの危険性を知りつつ犯すかも知れない。このエスカレーションには核オプションすら今のプーチンならあり得るかも知れない。

④ 相互に妥協し外交的解決
 今すぐの外交交渉での解決ということではなく、紛争が長期化した上での話。さすがのプーチンも戦況思うに任せず、経済制裁もボディーブローのように効き始める中、西側がプーチンの体面を保った形で妥協案を提示してくる場合は大いにあり得る。例えば、中国もロシアを見限る兆候が出てくるとかのボディーブローもあり得る話。プーチンにとって、長期泥沼の様相を呈したウクライナ侵攻の明るい出口が見つけられない場合、戦争継続の方が自身の地位が危ういことを懸念し始めるはず。頑強に抵抗するウクライナにしても、さすがに多大な市民の犠牲が続き、焦土と化した祖国の姿に、現実的な妥協に甘んじて、その代わり紛争のない元の生活に戻ることを選ぶ可能性は十分ある。

⑤ プーチンの失脚
 これも今すぐの話ではなく、紛争の長期化の上での話。紛争が長期に及び、ロシア市民も今回のウクライナ侵攻の大義に疑問を抱き、次々と無言の帰国をする若いロシア兵の遺体と家族の号泣を毎日見て、なおかつ大同団結した国際社会の経済制裁がボディーブローどころか高山病の酸素欠乏のようにいれば、市民生活への影響は非常に厳しくなり、プーチンへの支持は如実に落ちる。市民の反戦デモないし反政府・反プーチンデモが起こる。当然治安部隊がこれを市民の流血も辞さない厳しい鎮圧で対抗する。この連鎖は、やがてロシアの政治・軍事・経済のエリート達ももはやプーチンを見限る時が来よう。国民による革命かも知れないしクーデターかも知れないが、ついにプーチン失脚、新政権の登場・・・というシナリオも十分あり得る。

BBC記事の結論
 この「結論」がまた渋い。どのシナリオになる、とは筆者は言わない。「どのシナリオか、あるいはシナリオの組み合わせか、別の結末かも知れない」と筆者は言う。そして、「今のこの紛争が今後どういう展開になるとしても、世界はすでに変わった。かつて当たり前だった状態には戻らない。ロシアと諸外国との関係は、以前とは違うものになる。安全保障に対する欧州の態度は一変する。そして、国際規範に立脚する自由主義の国際秩序は、そもそも何のためにその秩序が存在するのか、再発見したばかりかもしれない。」と結ぶ。

私見ながら
 私見ながら、3月5日の段階の私の3つのシナリオは、「もはや①短期決戦はない」と読んで、②紛争長期化、そして長期化を前提とした④外交的解決(妥協)、及び長期化の劇的末路としての⑤プーチン失脚でした。我ながらこれは現実的にあり得るシナリオだなぁ、と思っていたらBBCの記事を見てガックリでした。何だ、既にこんなの出てるじゃないか、と。

 私自身、前回のブログで①の短期決戦一択と読んでおきながら、3月5日の時点でロシアの猛攻の不徹底ぶり、戦況の遅滞ぶりでロシア軍の猛攻を見限りました。何かがおかしい。私のロシア軍に対する現役自衛官時代の認識からすれば、ありえない体たらく。これは何かがおかしい。何かが違う。メディアを通じて漏れ伝わるロシア軍の低い士気・モラルの話も、それは末端の兵隊さんはウクライナに侵攻するとは聞かされておらず、兄弟国に侵攻するのは士気が上がらないのは理解ができるし、こういうニュースはウクライナ側の情報戦でもありますから。しかし、そんなこと以上に、ロシア軍の周到緻密なはずの攻撃計画が杜撰すぎるし、キエフ攻略なんか不徹底もいいところ。純軍事的に軍事的合理性を追求すれば、完膚なきまでキエフ市街を砲撃・空爆で焦土化したのち、上空に攻撃ヘリを飛ばして目標発見即撃破しつつ、戦車・装甲車で前進する形でキエフを掌握することはできるはず。それをやらない、恐らく本気で無差別侵攻を「やる気がない」としか考えられません。これは軍上層部で何かが起きているのでしょう。初戦が遅れたため、3月に入ってロシア軍が猛攻を開始して、西側にはここまでロシアが無差別に戦っているように見えていますが、実はロシア軍なりに市民を巻き込む流血の市街戦を避けているのかも。おそらく、プーチンは「何をやっているんだ!無差別にガンガン行け!」とは言うでしょうが、「市民の被害が及ぶのを避けよ」とは言わないでしょう。軍の上層部がプーチンに意に反して自己規制しているのかも。ささやかな抵抗として。・・いやぁ、自分で書いててあり得ない話ですが、本来のロシア軍ならあり得ないんですよ、こんな不徹底な作戦は。

 そこで、頭をよぎるのは、一部のメディアが指摘する「プーチンがおかしくなった説」。よく指摘されるのが、プーチンを知る各国要人が、「以前のプーチンと人が変わった。」という話。今や、コロナ対策でプーチンは人を近づけず、側近としか言葉を交わさず、パワハラ気味が目立つ状況とのこと。ロシア軍上層部も見限り始めているのかも?・・といぶかっています。もって、⑤プーチン失脚はあり得る、と思います。以前なら考えられませんが、今のプーチンなら、周囲がプーチンを見限る要素がありますもの。

 その上で、いやいや待て待て、プーチンのパワハラは今に始まったことじゃなし、独裁者ゆえの独断と偏見、年取った頑固さなどで、多少人が変わってきたとしても、頭脳明晰にして懐が深いプーチンの本質は変容していない、とすれば・・・、と考えて④の外交的解決です。紛争が長期化すればこの線は出てきます。紛争継続で得られるものより、停戦交渉で当初の目的に近い目標が達成できれば御の字でしょう。今、プーチンが拘っているのは、「ウクライナの中立化、非武装化」ですが、これは吹っ掛けてきています。NATO加盟を希望するのはウクライナの意思ですが、国内に内戦問題を抱えたり独立問題を抱えている国はNATOに新規加盟できないルールなので、ウクライナのNATO加盟は実は困難なのです。それを法的に保証しろ、と言っていた当初の要求を西側が飲めば、それでもいいと思うかもしれません。私が提唱していたゼレンスキー政権の打倒は、暗殺しない限り無理でしょうね。もはや英雄でしょうから。元々はウクライナをロシア寄りに戻し、ウクライナを衛星国に戻す、というのがロシアの戦略目標だったと思いますが、満額回答でなくても、多少の妥協はするでしょう。但し、キエフを陥落し主要都市を占拠し、傀儡政権を立てて、表面上はウクライナを掌握したとしても、それでもゼレンスキー政権若しくは暗殺されてその後継者が、ウクライナ西部かポーランド等に逃れて曲がりなりにも「正統なウクライナ政府(もしくは亡命政府)」を存続させ、長期に渡る流血の紛争が継続したあげくの話ですが。

(了)

にほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へ
にほんブログ村

国際政治・外交ランキング
2022/03/01

ウクライナ善戦の陰に米軍?:米軍仕込みのクロスドメイン作戦かも。しかしロシア猛攻へ。

img_92960ba7d067f11eed22fc1512f85f37271680.jpg
ウクライナ・ルガンスク州で攻撃に備えるウクライナ軍(2022年2月24日撮影) (c)anatolii Stepanov / AFP

ウクライナ軍の善戦と米軍の影(仮説)
 2022年2月25日から開始されたロシアのウクライナ侵攻。既に4日経過し、2月28日にキエフはじめ主要都市はいずれも占領されていません。ウクライナが善戦しているのは賞賛に値しますね。その勇戦敢闘ぶりには敬意を表します。ただ、世界最強の軍隊、特に世界最強のクロスドメイン(領域横断)作戦能力(※米軍はマルチドメインオペレーションションと呼称)を有するロシア軍の侵攻がうまくいっていないというのは、玄人的には俄に信じられない程、大変興味深い話です。

 私見ながら、侵攻前までの数年間に、米軍がロシアのクリミア侵攻や親ロシア支配地域での戦闘を徹底的に研究して、ウクライナ軍に対し様々なクロスドメイン作戦の装備や訓練を施し、ウクライナ軍は米軍仕込みのクロスドメイン作戦により、まんまとウクライナを舐め切っていたロシア軍に作戦をクロスドメイン返ししたのではないか、と仮説ながら考えています。
 この侵攻が終わって、様々な分析がなされると思いますが、その頃そうしたバックグラウンドがもれ伝わるのではないか、と思っています。

背景
 背景を話すと長くなるのですが、手短に。
 2014年のクリミア侵攻の際にはロシア版クロスドメイン作戦により、ロシア軍はものの見事にパーフェクトゲームをし、後にその作戦を調査した米軍が驚愕し、完全に装備から作戦運用まで「米軍はロシアに勝てない」とビビりまくった程です。このクロスドメイン作戦というのは、従前の陸海空の物理的な軍事行動に加えて、いわゆる情報作戦(従前の情報・諜報のみならずSNSやフェイク画像、フェイクニュースなども駆使)による国内外世論の我田引水、サイバー作戦や電磁波を駆使した作戦、更に宇宙空間も戦力にした作戦、などの多角的な領域の作戦を組み合わせた作戦概念です。ロシアの現参謀長ゲラシモフは、2013年に論文を発表、これをゲラシモフ・ドクトリンと称して、「世界の戦争のルールは変わったのだよ」と世界の軍隊に向けて高らかに勝利宣言していました。何だコイツ、と思っていたら2014年のクリミア侵攻で実戦争で証明したわけです。前述のように、米軍はクリミア侵攻とゲラシモフ・ドクトリン以降、ロシアへの遅れを取り戻すべく、軍・参(軍需産業)を挙げて粉骨砕身していました。この流れで、日本の防衛省・自衛隊も数年前からマルチドメインとかクロスドメインと言い出したわけです。
 このような背景があるので、私見ながら、侵攻が始まればロシアは1日~数日の電撃戦で、主要都市は占領され、傀儡政権は成立し、ロシアの言うことを聞く新生ウクライナ人民共和国が成立する、と思っていました。現実主義者の悪いところですね。

注目すべきは道路や屋根に突き刺さる爆発してないロケット弾
 ニュース映像でよく出る場面として、ロシアのミサイルやロケットが道路上や民家の屋根を突き破って爆発せずにロケットっぽい形状を残して突き刺さっている風景がありますよね。また、ロシアは「市街地を攻撃しない、軍事目標だけだ」と言ったのに市街地の高層アパートにロケットだかミサイルが突っ込んで爆発している場面もよく目にします。アホなマスコミのレポーターは「ロシアが市民を巻き添えに無差別攻撃をしている」ようなことを言っていますが、ロシア軍は世界が注目している今回の侵攻でそんな無手勝流なことはしません。私見ながら、ロシアが無差別攻撃をしているのではなく、ロシア軍は軍事目標に対して射撃したのに、米軍仕込みのクロスドメイン作戦により、特に電磁波領域の攻撃により、その精密誘導機能を妨害或いは破壊して目標を外させ、誘導不能状態で落ち、しかも爆発しない状態で突き刺さったもの、と考えられます。俄かに信じていただけないかもしれませんが、クリミア侵攻の際、まさにロシア軍がウクライナ軍に対してこの電磁波攻撃でウクライナ軍の誘導兵器はいかれてしまい、今回のように爆発せずに突き刺さっていたシーンが多くあったのです。もっとすごいのは、ウクライナ軍の無線通信を探知し、その発信源に数分後には精密誘導弾が落ちたのです。また、ウクライナ軍の司令官の奥さんに電話して「息子さんが大怪我した」と知らせ、その奥さんが司令官と電話で話した発信源を探知して精密誘導弾が直撃、とか。ロシア恐るべしでしょ!そういう時代なんですよ。今回、ニュースに出てきませんが、ウクライナはトルコや西側諸国から優秀なドローンや対ドローン妨害電波の装備を入れていますから、ドローン戦でもクリミアの雪辱を晴らしていると思います。更に、ウクライナ発の映像で、捕虜ないし投降したロシア兵が「訓練だと言われて命令通り前進したらウクライナへの侵攻だった。この戦争は間違っている。ロシアはこの戦争を止めるべきだ」などとコメントしている画像がネットを介して世界に、そしてロシアにも流れています。これこそクロスドメイン作戦です。

今後、ロシア軍とプーチンは猛攻してくる
 初戦においてウクライナ軍が勇戦敢闘しているとして、それは賞賛すべきですが、ロシア軍とプーチンを舐めてはいけません。プーチンは今激怒しているでしょう。ゲラシモフ参謀長はケチョンケチョンに叱責されているでしょう。あたかも鬼滅の刃の無惨様に報告に行った猗窩座状態。そしてゲラシモフは「了解しました。直ちに侵攻作戦のスピードを上げ、いついつまでに当初の作戦目標を達成します。」と約束させられていることでしょう。このあと、ロシア軍が全力を挙げて苛烈なる総攻撃を仕掛けてきます。ベラルーシも参戦するでしょうね。今後数日でロシアが猛攻を開始し、首都キエフを含む主要都市を占領し、ゼレンスキーは暗殺、もしくは拘束されて濡れ衣を着せられ、世界に自己批判をする映像を流され、葬られるでしょう。そして親ロシア派による救国臨時政府が成立し、新生ウクライナ政府がロシアに要請しているという図式でロシア軍による旧ウクライナ政府軍の残党の掃討作戦に移り、国内はロシア治安部隊が治安維持の名目で監視社会になるでしょう。親欧米派は治安部隊に徹底的に検挙され駆逐されます。その他大勢の国民は、何とか国外に逃げるか、全てを諦め声を発さず新生ウクライナ政府に従うか。・・・と現実主義者は妄想しています。

 「えっ?停戦交渉始めたってニュースで言ってたよ!世界的な反戦・ロシア非難・プーチン批判のデモやSWIFTなどの厳しい経済制裁でプーチンも停戦を求めるだろうってニュースで言ってたよ!」という声が上がりそうですが、そんなのプーチンにとって今に始まった事ではありません。カエルのツラに小便。停戦交渉もプーチンのブラフですよ。国内外への和平交渉努力PR=アリバイ工作ですよ。プーチンが自分が決断して始めた侵攻作戦を、こんな中途半端な形で収束するわけがありません。必ず手痛い仕返しをしてきます。今後の作戦は、クロスドメインもヘチマもあったもんじゃない。国際的な批判があろうが何だろうが、残虐非道な純物理的な力づくの流血戦になると思います。今後は流血の市街戦になるでしょう。市民も火炎瓶を準備するなど国民を挙げた抵抗をする気でしょうが、残酷なロシア軍はライフラインを潰して市民生活を成り立たせない手を取るでしょう。この寒さの中、暖房も電気も水も絶たれ食料も医薬品もなく、市民はやむなく市街戦からの退避するしかありません。ウクライナ軍の作戦は住民保護も兼ねて益々苦しい戦いになるでしょう。
 残酷なようですが、初戦の善戦が災いしてロシアを本気にした形ですね。

希望の光があるとすれば
 但し、プーチンも焦ってきているのは確かでしょう。なんぼロシアの残虐な猛攻があろうが、ウクライナ軍のクロスドメイン作戦と勇戦敢闘、市民の火炎瓶などによる根強い抵抗、そして西側からの帰還ウクライナ兵や各国からの義勇兵、西側の根強い支援でウクライナ紛争を長期化させましょう。デンマーク首相が義勇兵参加を国家として認めた、というニュースも耳にしました。(私も、行けるなら義勇兵で行ってみたいですよ。言葉が通じないか。)加えて、世界各国からのロシア非難とロシアの国際的孤立化。さすがのプーチンも剛を煮やして妥協の道を探らせる….。そんなシナリオが希望の光ですかね。現実主義者の私には、希望の光は微かにしか見えませんが、灯っているのは確かです。
 頑張れ、ウクライナ‼ 行けるなら義勇兵で行きたいですね。

(了)

にほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へ
にほんブログ村

国際政治・外交ランキング