ドンバスの戦いが勝敗を決す!膠着戦に持ち込みロシアに勝て!
ドンバスの戦いが勝敗を決す!膠着戦に持ち込みロシアに勝て!
2022年4月29日現在、ロシア軍は侵攻作戦を仕切り直し、指揮系統や編成を立て直して戦闘力を結集して、ドンバス地域と呼ばれる東部2州からクリミアまでの完全掌握のための攻勢を開始した模様。・・・ところが、ロシアが得意とするはずの平原・開豁(かいかつ)地での徹底的な攻撃準備射撃の後のロシア戦車の蹂躙が始まる・・・思いきや、ウクライナの塹壕陣地線を容易に突破できず、ロシア制圧地域は予想された程広がっていません。ロシアは、未だに兵站・後方補給線の確保がおぼつかず、指揮・通信の維持確保も解決しておらず、指揮官が命じても兵士の士気・モラルにも問題を抱え、等々、我々が警戒している程には精強・強靭な戦闘ができていないようです。ウーム、どうやら西側の軍事関係者はロシア軍を過大評価し、ウクライナ軍を過小評価していたようです。2014年のクリミア侵攻当時のロシア軍の最先端ハイブリッド作戦を世界に知らしめた姿、全くしてやられたウクライナ軍の無力な姿が脳裏にあるために、その後のそれぞれの国軍の、無努力による没落と臥薪嘗胆的努力による国軍のみならず市民レベルの不屈・精強・強靭化を見誤っていました。
そうであるならば、西側連合は大同団結して全面的にウクライナをバックアップし、ウクライナがドンバスの戦いを守りきり、戦線を膠着させることで、莫大な戦費と戦力の損耗をロシアに課し、ロシアを枯渇・弱体化させ、もって停戦させることを目指すべきだと思います。結果的に、米国のブリンケン国務長官とオースティン国防長官が提唱した「もはや2度と戦争を起こさせないようロシアを弱体化する」ことができます。核心的には、ロシアのプーチン大統領を失脚させることが早道だと思いますが。

ドンバス平原(2022年4月28日付BBC「War in Ukraine」を加工)
ドンバスの戦いの重要性
ロシアは、明らかに侵攻当初の「侵攻目的・目標」を下方修正した模様です。当初は、ウクライナをロシアの影響下の衛星国に戻そうと企図し、電撃侵攻で主要都市を落とし、もってゼレンスキー政権を駆逐し、親ロ政権を打ち立てて、その目的・目標を達成できると考えていたと思います。ロシアにしてみれば、ウクライナの国民達は、突然の戦乱に右往左往するだけで、ロシア様に抗戦意志を示すことなどないだろうと、タカをくくっていたことでしょう。しかし、開戦してみたら、電撃侵攻などできず、各正面でウクライナ軍に猛烈な抵抗に遭い、更にウクライナの市民たちも強烈に抵抗し、戦線は膠着。そこで、戦線を整理して、ロシア軍の態勢の立て直し。この際に、状況を総合的に整理し、当初の侵攻目的とそのための達成目標を大幅に縮小し、「東部2州及びクリミアの線の確保」に下方修正しています。
その新たな侵攻目的「東部2州及びクリミアの線の確保」からすれば、ロシア軍の達成すべき目標は「ドンバス平原でウクライナの陣地線を突破し、ドンバス平原を確保すること」と推察します。ここでいうドンバス平原とは、東部2州のうちのまだロシアに制圧されていない地域、ハルキウ~イジューム~ドネツク~サボリージャの以西・以北の地域です。この地域は、開豁(かいかつ)しただだっ広い平原です。まさにロシア軍がその真価を発揮できる、慣れ親しんだ平原の戦車・装甲車の突進・蹂躙ができる地域です。しかも、ロシアの制圧地域からロシア本土からの兵站・後方補給を受けられるので、どう考えてもロシア軍に有利、ウクライナ軍にとっては不利。ウクライナ軍の主力部隊も、まさにこのドンバス平原に結集し、塹壕を掘って縦深の地域に陣地線を構成し、ロシアの突進を受け止めては潰す防御を敷いています。ロシアにとっては、この平原を突破してウクライナ主力部隊を撃破すれば、必然的に侵攻目的「東部2州及びクリミアの線の確保」が達成できます。ウクライナにとっては、ここを失えば、東部2州~クリミアの以東以南は2度と返ってこないロシアの占領地になってしまいます。従って、このドンバス平原の戦いの帰趨が、今回のロシア侵攻の決戦場と言っても差し支えないと思います。
ドンバスの戦いの展望
4月初旬に戦線を立て直し始めたロシア軍のドンバス平原への総攻撃は4月中旬からヌルっと開始されました。この辺が今回のロシア軍の作戦の、軍事的合理性や戦術妥当性上からは理解のできない、おかしなところです。4月中旬から下旬に渡り、ハルキウ~イジューム~ドネツク~サボリージャの両軍の接触戦(前線)において、ロシア軍の突破攻撃が処々で見られました。ロシア軍が一部で突破をしては、ウクライナ軍に回り込まれて後退するなど、ウクライナ軍は概ね押されながらも線を維持しています。あれ?膠着してるじゃん!
ドンバス平原のウクライナ軍の塹壕陣地。こうした陣地線と対戦車障害が数線に渡って構成されている。(2022年4月19日付inews.com.uk「Why is Russia targeting eastern Ukraine? Putin’s goals explained as ‘second phase’ of war begins in Donbas」より)
これまでのところ、平原とはいいながら、4月下旬の大地の凍結からのぬかるみ状態が幸いして、ロシア軍は平原に展開して大戦車軍団の展開ができず、結局は道路に数珠つなぎになった縦隊の攻撃になっています。陣地線に横に展開したウクライナ軍は、ロシア軍の縦隊攻撃の先頭集団に集中砲火。一部でロシア戦車に突破されても、その突破されたフタを閉めて突破部隊の退路を断ってこれを殲滅。最強を誇ったロシア戦車軍団とガップリの四つ相撲を実施中です。実はウクライナ軍は、クリミア侵攻及び東部2州の親ロ派武装勢力との抗争で、当時からこのドンバス平原での陣地戦を想定した陣地構築をしていました。第1次・第2次世界大戦の頃と変わらず、地面に穴を掘って塹壕を作るという原始的で最も強靭な防御陣地です。(我が陸上自衛隊も今だに訓練で掘っていますよ。)ロシアが態勢を立て直して東部戦線に戦力を集中しているように、ウクライナ軍も主力部隊をここに配置しています。しかしながら、キーウ攻略の頃のロシア軍と違い、今回の攻勢では指揮・命令系統が大分是正され、突進部隊と後続部隊の連携が以前よりはできており(それでもウクライナの通信妨害により混乱している模様です)、一進一退の攻防となっています。
展望としては、ここは我慢比べですね。ドンバス平原の戦いのどこかの正面で、例えばイジューム正面で深く突破されたりしたら、ロシア軍はその開いた突破口を開けたまま維持し(突破口の形成)、逐次にその開けた穴を拡大し(突破口の拡大)、更にその正面から後続部隊が続々と攻撃衝力を増して、縦深に突進部隊が展開し、もって戦果を拡張します。そうすると、陣地線で頑強に抵抗していたウクライナ軍は突進部隊に包囲され、陣地線は瓦解します。そうされないよう、ウクライナ軍はどこかで突破されたらすぐさまフタを閉め、後続部隊を阻止し、突破部隊を分断孤立させて殲滅します。こうして陣地線を維持しているわけです。まさに、今がその正念場。長い苦しい戦いをしています。
ロシア軍の攻撃も、ウクライナ軍の防御も、その継戦能力を維持するために必要なのは兵站・後方補給の維持です。ゆえに、ウクライナのゼレンスキー大統領は西側各国に武器の供与をはじめとする兵站・後方補給支援を求めているわけです。特に、戦車、火砲、対戦車火器、対空火器。しかし西側の最新兵器をもらってもすぐに使いこなせないので、手っ取り早いのは旧ソ連製の兵器ですね。この辺は旧ワルシャワ条約機構軍仲間だった東欧諸国からの供与がありがたいところです。西側はここで大同団結してウクライナを支えましょう。
他方のロシアは、有り難いことに莫大な戦費が日々かさみ、既に相当の人的・物的戦闘力を消耗しています。なのにバックアップしてくれる国がありません。中国なんかが全面バックアップしたら、また面倒な話になりますが、有り難いことにありませんね。
ゆえに、西側の大同団結のウクライナへのバックアップを続け、ドンバス平原の戦いを膠着し続けてもらいましょう。この間、マリウポリに残されたウクライナ軍と市民を始め、様々な悲劇は続きます。苦しい、長い、暗い毎日でしょう。しかし、この我慢比べで長期持ちこたえれば、ロシアの方が先に音を上げるでしょう。枯渇していく経済力に耐えきれず、必ずロシアの方から停戦を呼び掛けてきます。だから、苦しい戦いを続けてもらうしかない。
頑張れ!ウクライナ
(了)


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2022年4月29日現在、ロシア軍は侵攻作戦を仕切り直し、指揮系統や編成を立て直して戦闘力を結集して、ドンバス地域と呼ばれる東部2州からクリミアまでの完全掌握のための攻勢を開始した模様。・・・ところが、ロシアが得意とするはずの平原・開豁(かいかつ)地での徹底的な攻撃準備射撃の後のロシア戦車の蹂躙が始まる・・・思いきや、ウクライナの塹壕陣地線を容易に突破できず、ロシア制圧地域は予想された程広がっていません。ロシアは、未だに兵站・後方補給線の確保がおぼつかず、指揮・通信の維持確保も解決しておらず、指揮官が命じても兵士の士気・モラルにも問題を抱え、等々、我々が警戒している程には精強・強靭な戦闘ができていないようです。ウーム、どうやら西側の軍事関係者はロシア軍を過大評価し、ウクライナ軍を過小評価していたようです。2014年のクリミア侵攻当時のロシア軍の最先端ハイブリッド作戦を世界に知らしめた姿、全くしてやられたウクライナ軍の無力な姿が脳裏にあるために、その後のそれぞれの国軍の、無努力による没落と臥薪嘗胆的努力による国軍のみならず市民レベルの不屈・精強・強靭化を見誤っていました。
そうであるならば、西側連合は大同団結して全面的にウクライナをバックアップし、ウクライナがドンバスの戦いを守りきり、戦線を膠着させることで、莫大な戦費と戦力の損耗をロシアに課し、ロシアを枯渇・弱体化させ、もって停戦させることを目指すべきだと思います。結果的に、米国のブリンケン国務長官とオースティン国防長官が提唱した「もはや2度と戦争を起こさせないようロシアを弱体化する」ことができます。核心的には、ロシアのプーチン大統領を失脚させることが早道だと思いますが。

ドンバス平原(2022年4月28日付BBC「War in Ukraine」を加工)
ドンバスの戦いの重要性
ロシアは、明らかに侵攻当初の「侵攻目的・目標」を下方修正した模様です。当初は、ウクライナをロシアの影響下の衛星国に戻そうと企図し、電撃侵攻で主要都市を落とし、もってゼレンスキー政権を駆逐し、親ロ政権を打ち立てて、その目的・目標を達成できると考えていたと思います。ロシアにしてみれば、ウクライナの国民達は、突然の戦乱に右往左往するだけで、ロシア様に抗戦意志を示すことなどないだろうと、タカをくくっていたことでしょう。しかし、開戦してみたら、電撃侵攻などできず、各正面でウクライナ軍に猛烈な抵抗に遭い、更にウクライナの市民たちも強烈に抵抗し、戦線は膠着。そこで、戦線を整理して、ロシア軍の態勢の立て直し。この際に、状況を総合的に整理し、当初の侵攻目的とそのための達成目標を大幅に縮小し、「東部2州及びクリミアの線の確保」に下方修正しています。
その新たな侵攻目的「東部2州及びクリミアの線の確保」からすれば、ロシア軍の達成すべき目標は「ドンバス平原でウクライナの陣地線を突破し、ドンバス平原を確保すること」と推察します。ここでいうドンバス平原とは、東部2州のうちのまだロシアに制圧されていない地域、ハルキウ~イジューム~ドネツク~サボリージャの以西・以北の地域です。この地域は、開豁(かいかつ)しただだっ広い平原です。まさにロシア軍がその真価を発揮できる、慣れ親しんだ平原の戦車・装甲車の突進・蹂躙ができる地域です。しかも、ロシアの制圧地域からロシア本土からの兵站・後方補給を受けられるので、どう考えてもロシア軍に有利、ウクライナ軍にとっては不利。ウクライナ軍の主力部隊も、まさにこのドンバス平原に結集し、塹壕を掘って縦深の地域に陣地線を構成し、ロシアの突進を受け止めては潰す防御を敷いています。ロシアにとっては、この平原を突破してウクライナ主力部隊を撃破すれば、必然的に侵攻目的「東部2州及びクリミアの線の確保」が達成できます。ウクライナにとっては、ここを失えば、東部2州~クリミアの以東以南は2度と返ってこないロシアの占領地になってしまいます。従って、このドンバス平原の戦いの帰趨が、今回のロシア侵攻の決戦場と言っても差し支えないと思います。
ドンバスの戦いの展望
4月初旬に戦線を立て直し始めたロシア軍のドンバス平原への総攻撃は4月中旬からヌルっと開始されました。この辺が今回のロシア軍の作戦の、軍事的合理性や戦術妥当性上からは理解のできない、おかしなところです。4月中旬から下旬に渡り、ハルキウ~イジューム~ドネツク~サボリージャの両軍の接触戦(前線)において、ロシア軍の突破攻撃が処々で見られました。ロシア軍が一部で突破をしては、ウクライナ軍に回り込まれて後退するなど、ウクライナ軍は概ね押されながらも線を維持しています。あれ?膠着してるじゃん!
ドンバス平原のウクライナ軍の塹壕陣地。こうした陣地線と対戦車障害が数線に渡って構成されている。(2022年4月19日付inews.com.uk「Why is Russia targeting eastern Ukraine? Putin’s goals explained as ‘second phase’ of war begins in Donbas」より)
これまでのところ、平原とはいいながら、4月下旬の大地の凍結からのぬかるみ状態が幸いして、ロシア軍は平原に展開して大戦車軍団の展開ができず、結局は道路に数珠つなぎになった縦隊の攻撃になっています。陣地線に横に展開したウクライナ軍は、ロシア軍の縦隊攻撃の先頭集団に集中砲火。一部でロシア戦車に突破されても、その突破されたフタを閉めて突破部隊の退路を断ってこれを殲滅。最強を誇ったロシア戦車軍団とガップリの四つ相撲を実施中です。実はウクライナ軍は、クリミア侵攻及び東部2州の親ロ派武装勢力との抗争で、当時からこのドンバス平原での陣地戦を想定した陣地構築をしていました。第1次・第2次世界大戦の頃と変わらず、地面に穴を掘って塹壕を作るという原始的で最も強靭な防御陣地です。(我が陸上自衛隊も今だに訓練で掘っていますよ。)ロシアが態勢を立て直して東部戦線に戦力を集中しているように、ウクライナ軍も主力部隊をここに配置しています。しかしながら、キーウ攻略の頃のロシア軍と違い、今回の攻勢では指揮・命令系統が大分是正され、突進部隊と後続部隊の連携が以前よりはできており(それでもウクライナの通信妨害により混乱している模様です)、一進一退の攻防となっています。
展望としては、ここは我慢比べですね。ドンバス平原の戦いのどこかの正面で、例えばイジューム正面で深く突破されたりしたら、ロシア軍はその開いた突破口を開けたまま維持し(突破口の形成)、逐次にその開けた穴を拡大し(突破口の拡大)、更にその正面から後続部隊が続々と攻撃衝力を増して、縦深に突進部隊が展開し、もって戦果を拡張します。そうすると、陣地線で頑強に抵抗していたウクライナ軍は突進部隊に包囲され、陣地線は瓦解します。そうされないよう、ウクライナ軍はどこかで突破されたらすぐさまフタを閉め、後続部隊を阻止し、突破部隊を分断孤立させて殲滅します。こうして陣地線を維持しているわけです。まさに、今がその正念場。長い苦しい戦いをしています。
ロシア軍の攻撃も、ウクライナ軍の防御も、その継戦能力を維持するために必要なのは兵站・後方補給の維持です。ゆえに、ウクライナのゼレンスキー大統領は西側各国に武器の供与をはじめとする兵站・後方補給支援を求めているわけです。特に、戦車、火砲、対戦車火器、対空火器。しかし西側の最新兵器をもらってもすぐに使いこなせないので、手っ取り早いのは旧ソ連製の兵器ですね。この辺は旧ワルシャワ条約機構軍仲間だった東欧諸国からの供与がありがたいところです。西側はここで大同団結してウクライナを支えましょう。
他方のロシアは、有り難いことに莫大な戦費が日々かさみ、既に相当の人的・物的戦闘力を消耗しています。なのにバックアップしてくれる国がありません。中国なんかが全面バックアップしたら、また面倒な話になりますが、有り難いことにありませんね。
ゆえに、西側の大同団結のウクライナへのバックアップを続け、ドンバス平原の戦いを膠着し続けてもらいましょう。この間、マリウポリに残されたウクライナ軍と市民を始め、様々な悲劇は続きます。苦しい、長い、暗い毎日でしょう。しかし、この我慢比べで長期持ちこたえれば、ロシアの方が先に音を上げるでしょう。枯渇していく経済力に耐えきれず、必ずロシアの方から停戦を呼び掛けてきます。だから、苦しい戦いを続けてもらうしかない。
頑張れ!ウクライナ
(了)


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