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2022/08/30

ウクライナ軍、南部戦線へルソンで反撃開始!:IAEAのザポリージャ原発調査は荒れますね

ウクライナ軍、南部戦線へルソンで反撃開始!
 2022年8月29日、ウクライナ軍は南部戦線へルソン州での反撃を開始する、と発表しました。遂に南部戦線での反撃開始の模様です。ただし、反撃攻勢(counteroffensive)に必要な西側からの十分な装備品や弾薬が手元にあっての、満を持した攻撃開始ではなさそうなので、ハッキリ言って数日のうちにみるみる攻撃が進展してロシアを追いやっていく、という話しにはならないでしょう。今の戦力同士なら(ロシア軍は東部戦線ドンバス平原で戦っていた虎の子部隊を南部に転用しました)、南部のロシア軍は押されても結構抵抗するでしょうから、チビチビしか攻撃進展はないのではないかと推察します。「反撃開始」と言っても、テレビのニュースで大進撃を見れるわけではなく、数日後からちょっとずつの攻撃成果が地図上に見えてくる、という感じではないでしょうか。

 時あたかもザポリージャ原発での出所不明の砲爆撃が続いており、ロシア・ウクライナ双方が相手側の原発への攻撃であると非難の応酬をしています。それを受け、原発における原子力災害の脅威があることから、IAEAが現地への調査が同日、現地に向けて出発しています。
 いやー、これは荒れますね。だって、ザポリージャ原発の位置は南部戦線ヘルソン州に隣接していますから、ウクライナの攻勢とロシアの防御戦闘に関連して、火の粉が飛びまくりです。いやいや、プーチンのことですから、むしろこの時期にザポリージャ原発に来るというIAEA一行を狙って、ザポリージャ原発砲撃の下手人はウクライナ説の情報操作など、何か仕掛けてくるかも知れません。 そんなかんだで、IAEAの現地入りは恐らく手前で足止めを食らって入れない状況となるか、もしくは、ロシアの缶詰め型エスコートでザポリージャ原発入りし、終始を通じロシアからの情報操作を受けた缶詰型の調査となるか、…。いずれにせよ、IAEAは「これでは全く調査にならない」と不満を表明し、ロシアは「ウクライナの責任」と非難する図式になるしょうね。

ZNPP.jpg
(2022年8月29日付ISW Ukraine conflict updatesより)

ウクライナ軍が主張する「ザポリージャ原発を盾にするロシア軍」を画像が証明
 上記の写真は、Maxar Technologies社がリリースした8月29日の衛星画像です。写真の赤い屋根はザポリージャ原発の原子炉で、写真の半分より上に右上がりに斜めに走っている渡り廊下を見てください。その屋根の真下にロシア軍の戦闘車両が一定の間隔で駐車してあります。本来真下なので上空から見えづらいはずですが、たまたま太陽の光と影の関係で日に当たって見えています。小さいので分かりづらいですが、画像を拡大してみてください。これを軍事用語で「隠蔽(いんぺい)・掩蔽(えんぺい)」(=隠蔽:何かの陰に身を隠す状態、掩蔽:何かを盾にして身を守る状態)と言います。
 要するに、ロシア軍は、ザポリージャ原発が原発ゆえに攻撃してこないことを承知で、これを盾にして部隊を隠蔽・掩蔽に使い、ここからウクライナ軍を砲撃しているわけです。
IAEA.jpg
ザポリージャ原発に調査に向かうグロッシIAEA事務局長ご一行。調査が無事に終了しますように。(2022年8月29日付グロッシ事務局長のtwitterより)

IAEAの調査の行方
  IAEAの調査が来た際には、「安全上の事由から」との口実で、こうしたロシア軍の配置や隠蔽・掩蔽の場面は見せないでしょうね。
 そして、IAEA調査団がいるうちに、意図的に「ウクライナ軍からの攻撃」を計画的に起こし、IAEA調査団を一時的に危険に晒したうえで(もしかしたら、数名はけが人が出るかも)、ロシア軍が彼らを守って安全な場所に避難させ、命拾いさせた上で、ウクライナの攻撃であった「証拠なるもの」を見せて、ウクライナの攻撃であることを信じ込ませる、…。こんな茶番劇を演じるでしょうね。
 IAEA調査団の目的は、ウクライナかロシアか?いずれが原発砲撃の犯人か?を調査するのではなく、出所不明の砲撃の結果原子力災害にならないように、調査で原発の運営状況や問題点など現状を確認ののち、原発の安全性を確保するための提言をするものと存じます。なぜなら、8月25日~27日の間の砲撃で原発の原子炉から100mも離れていない建物が砲撃され、水処理施設が破損、更に火災が発生し、送電線が切断して電力供給が止まり非常用電源が作動する事態に。もしこの非常用電源に何かあれば、福島第一原発のようなメルトダウンに至ったかもしれませんでした。そうした原発の危険性を、どこまで理解して(恐らく理解してないと思いますが)砲撃しているのか?我々が現地を確認して、直ちに必要な処置を国際社会に訴えねば‼…、とIAEA職員は義侠心に燃えていると思います。

 しかし、恐らく調査そのものは、そもそもザポリージャ原発に入れないか、あるいは入れてもロシア軍の缶詰型エスコートのため、満足のいく調査ができずに終わると思います。


 南部戦線、へルソン州でのウクライナの反撃結果は、初期的には現地情報が錯綜していて、すぐには具体的な反撃進捗の絵が出てこないと思います。まぁ、数日後のですが吉報(「ちょっとずつの攻撃進展」程度の話だと思いますが)を待ちましょう。

 頑張れ!ウクライナ

(了)

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2022/08/26

平穏なウクライナ独立記念日: 今回は違ったがロシアは大動員をかけるキッカケを仕掛けてくる

Ukrainian Indipendence Day
ウクライナの独立記念日を祝して首都キーウの街頭に大破したロシア戦車・火砲・装甲車等が陳列され、市民が賑わう平穏な状況(People gather in Kyiv to look at destroyed Russian military equipment) (2022年8月24日付CNN記事「.Ukraine's Independence Day darkened by deadly missile strike」より)

気持ち悪いほど平穏なウクライナ独立記念日
 昨日2022年8月24日はウクライナの独立記念日でした。「何か起こるかも」と予測しておきながら、案外大きな事態は起きませんでしたね。お恥ずかしい限りです。 実際、列車に対するミサイル攻撃があり、20数名が死亡、50数名が負傷という痛ましい事案は起きました。(最新のAFPの報道によると、25日ロシア国防相が発表した数字では、24日に起きたウクライナ中部ドニプロペトロウシク州で行われた鉄道駅攻撃にて、「200人以上のウクライナ兵を殺害」と発表。一方ウクライナ側は、子供を含む25人が死亡、としている。《2022年8月25日付AFP記事「駅攻撃でウクライナ兵200人超殺害 ロシア発表」より》)不幸中にも幸いなことですが、その他に、大行事を自粛していたのが功を奏したのか大勢が集まるイベント会場へのミサイル攻撃で大勢が死傷などという事案は起きず、比較的平穏なウクライナ独立記念日となりました。それ自体は平穏でよかったのですが、この静寂が気持ち悪いですね。嵐の前の静けさではないか、と訝ってしまいます。
(参照: 前掲2022年8月24日付CNN記事「.Ukraine's Independence Day darkened by deadly missile strike」、ほか)

2022年8月25日(日本時間)の戦況
 -全般/トピック: 侵攻開始からはや半年が経過した。ロシア軍は、3月中旬のウクライナ侵攻の占領地域の最大値だった3月21日頃に比し、デンマークと同等以上の地積である45,000平方キロもの土地を失い、7月半ばに一旦攻撃休止からの攻勢再開宣言をしたはずだったのに、それ以来の39日で前述の失った土地の1%に当たる450平方キロの土地を新たな攻勢で獲得した。…要するに攻勢再開以降、ごくわずかな攻撃しか成功していない。
 ⁻2022年8月24日、上海協力機構(SCO)加盟国の国防相との会談にて、ロシアのショイグ国防相は、「ロシアの戦争目標は不変ながら、ウクライナでの攻撃作戦の全体的なペースを減速させている」と述べ、宣言したはずの攻勢再開の減速・停滞を認めたことになる。しかし、「作戦は計画通りに進んでおり、ロシア軍は全ての目的を達成するだろう」と付言した。

 ⁻ロシア軍の主作戦正面である東部戦線ドネツク正面において、ロシア軍は、イジュームの南西と南東、バハムートの北東と南、ドネツク市の西と南西で限定的な地上攻撃を行い、いずれも成果を得ていない。

 -ロシア軍の支作戦正面である北部戦線ハルキウ正面において、ロシア軍は地上攻撃を実施せず。前線集落への砲撃を続けた。

 -ロシア軍の支作戦正面である南部戦線ヘルソン正面においても、ロシア軍はヘルソン州北西部で限定的な地上攻撃を行ったが、ウクライナ軍に撃退され、領土の獲得は確認されず。他方、ウクライナ軍は、ロシア占領地域からへルソン州、ザポリージャ州への後方補給線を標的に砲撃し、南部戦線のロシア軍の兵站基盤の破壊を続けている。

 -ロシアの占領地域では、相変わらずロシア軍や占領政策を執行する行政機関に対するパルチザン活動(テロ攻撃)が活発に起きており、ロシアの占領政策が停滞する課題となっている。特に、ロシアが指名した特定の行政官をターゲットにしたIED(即興爆発装置)攻撃が続いており、占領行政機関に対する攻撃が著しい。特に、ロシアに指名された行政機関の長(親ロシア派ウクライナ市民)を狙い撃ちにしており、つい先日もロシアが任命したザポリージャ州長官が殺害された。
  また、ロシアの占領地域では、ロシア当局が占領地域の子どもたちをロシアへ強制的に移送しているのではないか、と懸念される問題も指摘されている。ロシア側の言い分では、「心理的援助を必要としている」子どもたちを特定し、「リハビリテーション」のためにロシアで教育キャンプと心理的リハビリを図る、という施策理由になっている。

  -ロシア軍の人事/兵員不足については、半年間に渡るウクライナ侵攻により、ロシア軍の人員損耗が著しく、部隊・将兵の要員補充が最大の課題となっている。プーチン大統領としては、今のところ全国民に向けて大動員をかけるような国家的な動員をかけず、地方の少数民族共和国を狙い撃ちで、金で釣る形で入隊を大募集している。 地方の少数民族にとっては破格の高給(月給30,000〜300,000ルーブル《約500〜5,000ドル》)に釣られて、目新しいところではタタールスタン共和国のアルタイ地方などの志願兵が、短期契約にて一定数の応募があり、部隊を新編した模様。しかし、その実態は「大隊」と称しているものの、大隊のテイをなしていない中隊・小隊規模の人数であり、総合的な戦力発揮ができる戦闘単位である大隊戦術グループを構成できる基幹部隊にはなれない。よって、その運用は限定的なものになろう。こうした志願兵募集にて、モスクワなどの都市部ではなく地方の少数民族ばかりを狙い撃ちにしていることについて、都市と地方の格差が問題視される兆しが出ている模様。
 兵員不足を補う動員に関しては、いずれロシアは国家として動員に踏み切らざるを得なくなる状態、と推察。
 (参照: 2022年8月24日付 ISW記事 「Ukraine Conflict Updates」、ほか)

侵攻の失速、戦況の膠着、戦争の長期化は明らか:プーチンは大動員すると見た
 さて、私見ながら、ここでプーチン大統領の腹を読みます。
 侵攻開始から半年、プーチン大統領もどう屁理屈をこねようとも、侵攻の勢いは目に見えて失速、戦線は各正面で膠着状態、いやがおうにも戦争は長期化せざるを得ない状況です。振り上げた拳の持って行きどころとして、一定の目に見える成果を上げないことには、始めてしまった侵攻を収束できないでしょう。 では、何が一定の成果でしょう?もう少し頑張って攻撃して、東部2州全土の獲得、いやそれ以上の獲得?行ければ行きたいのでしょうが、この辺で手を打って現状維持の現占領地域の確保?それとも、ある程度現占領地域から下がって、固く守れる線で線引きする形で譲歩? ウーム、結局下がるとか譲歩は選択肢になく、「もう少し頑張る」の一択でしょう。
 これはウクライナも同様で、ロシアの勢いを止めたのは上出来とはいうものの、クリミアを含むロシアに占領された全ての地域からロシア軍を撤退させて全土を2014年以前の状態に戻す?それは気の遠くなるような長期戦を覚悟しないといけないでしょう。では、一定の占領地をロシアに譲歩するのか?戦闘の行く末の膠着状態で国境とするのか? ウーム、ウクライナとしても、結局、「領土の譲歩なんてありえない、徹底抗戦だ」の一択でしょう。 ただし、ウクライナ政府の意志はともかく、米国をはじめとする西側支援諸国がどこまで面倒を見てくれるか、どこまでの徹底抗戦を認めてくれるか、にかかっているでしょう。(最新情報では、米国から追加で継続支援を約す30億ドルの支援が発表されました。 参照:2022年8月24日付VOA記事「Biden Praises Ukraine's 'Extraordinary Courage,' Sends New Military Aid」)

 思いのほか平穏な独立記念日となったのは、ロシア側が特段ウクライナの独立記念日を意識していなかったからでしょうか?私見ながら、意外でした。戦局上で打つ手なしのプーチン大統領にとって、今一番打ちたい手は国家総動員的な動員をかけて、ウクライナ戦争で必勝態勢をとることです。それ以上に、国民の心を「ウクライナ戦、必勝!」と認識統一することです。それには、国民の愛国心、敢闘精神を燃え滾らせる何かキッカケがないといけません。丁度、拍子のいいことにウクライナが、ロシア人にとっても古くから愛しき土地であるクリミア半島に攻撃してきました。クリミアに居住していた、或いは保養で訪れていたロシア人がウクライナの攻撃を恐れて列をなし、ロシア本土に引き上げていく状況です。これを使う手はない、これを根拠に「国民よ、今ロシアは、他国に侵略されている!立て若者よ、銃を取れ!我らが父祖の地、祖国ロシアを守るのだ!」と大号令をかけるものと推察します。ロシアも一応は選挙で選ばれた議会で国家の方向を決める議会制民主制のはずですから、いくらプーチン大統領であっても、民心をつかまずに政令で動員をかけても、国民の反発を買うだけです。誰だって納得できる理由もないのに、召集されて戦場に行きたくはないですからね。国家が国民に兵員の召集をかける大義名分、それに対する過半数の国民の賛同、がないと無理な話ですよ。だから、プーチンはキッカケが欲しいはずです。できれば、第2次世界大戦で米国が対日参戦するキッカケになった日本軍の真珠湾奇襲のような、「なんてことをするんだ!卑怯だぞ!許せない!」という国民の愛国心、国家防衛の動機付けを燃え上がらせるようなキッカケが欲しいわけです。ロシアが今回の侵攻でよく使う、「偽旗作戦」でウクライナを装ったひどい事案を起こす、などの謀略です。

 そのキッカケは独立記念日がらみではありませんでしたが、プーチンのことですから、必ず何か仕掛けてくる、と推察します。ウクライナは引き続き警戒を厳にしていただきたいですね。 そして、もし何か起きたら、すぐに煽情的に反発せず、物理的証拠とデータを揃えて、第3者の検証を迅速に実施・公表して、少なくとも国際社会としてはウクライナの仕業ではなく、ロシアの捏造・陰謀である、という国際社会からのバックアップを担保する公表ができるよう、ウクライナ政府や西側諸国は勿論のこと、西側マスコミにも警戒機敏に動いていただき、何かあったら対応できるよう構えておいていただきたいところです。そういう意味では、ザポリージャ原発は鬼門ですね。最近、よく問題視されているザポリージャ原発への攻撃問題で、ウクライナの仕業を装って(ロシアの偽旗謀略にて)攻撃によって引き起こされる原子力災害の脅威でヨーロッパ中を放射線被ばくの恐怖に陥れる、とかね。原子力発電所という、極めて機微な場所を自らの拠点にしてしまっていますから、西側マスコミも入れず、物的証拠も押さえづらく、ロシアの言うままに情報操作が進んでしまいますから、始末が悪いですね。注視していきましょう。

それでも頑張れ!ウクライナ

(了)

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2022/08/23

プーチンの盟友の娘の爆殺事件の波紋:ウクライナ独立記念日に報復があるかも

プーチンと盟友
写真左:ネオユーラシア主義思想家のアレクサンドル・ドゥギン氏、写真右:プーチン大統領、写真中央の建物はロシア治安機関FSB(旧KGB)ビル(2022年8月22日付Newsweek記事「Russia Blames Daria Dugina's Killing on Female Ukraine Citizen」より)

プーチン盟友の娘の爆殺事件
 ロシアのウクライナ侵攻開始から半年、ロシアの侵攻の勢いは衰え、ウクライナの反撃の条件が整ってきた状況ですが…、2022年8月20日土曜、見出しのような事件が起こりました。偶発か?計画的犯行か?全く分からない爆殺事件ですが、22日月曜、ロシア治安機関FSBの発表では、「ウクライナの特殊機関の犯行」との発表がありました。亡くなったのは、プーチン大統領の側近中の側近で「プーチンの頭脳」とも言われているアレクサンドル・ドゥーギン氏の娘で、ダリア・ドゥーギナ女史です。父のドゥーギン氏は、プーチン大統領の永年の盟友で、プーチン大統領の指導の下で「広大な新ロシア帝国を作る」ことを提唱しており、ウクライナ併合の提唱者として今回のウクライナ侵攻の立案者の一人とも言われていました。亡くなったダリアさんは、父ドゥーギン氏とともに参加したイベントからの帰宅途中、車に仕掛けらた爆弾が爆発して死亡したのですが、父ドゥーギン氏と同乗するはずが、たまたまドゥーギン氏は別の車両に乗って助かったとの情報も。

 「ウクライナの犯行」とは、あくまでロシア側の主張であり、当のウクライナは「犯罪国家ではない」と全否定しています。一方で、ロシアの反プーチン組織「国民共和党軍」(NRA)が犯行声明を出しています。ロシアは、このNRAの犯行声明に関しては一切無視して、ダリアさんの殺害前にダリアさんを内偵していたウクライナ人女性がいたことを根拠に、ウクライナ犯行説を声高に主張しています。ロシアの治安機関FSBによれば、1979年生まれのウクライナ国籍の女性が、爆殺前のダリアさんを終始尾行しており、爆殺に関与し、犯行後エストニアに逃亡した、とまことしやかに主張しています。
(参照: 2022年8月22日付Newsweek記事「Russia Blames Daria Dugina's Killing on Female Ukraine Citizen」、同年8月23日付FNNプライム記事「“プーチン側近”の娘殺害に反プーチン勢力が犯行声明」、ほか)

8月24日はウクライナの独立記念日、何か起こる!?
 時あたかも、ウクライナの南部での反撃が刻一刻と近づく中、更にウクライナはよせばいいのに2014年に侵攻・併合されたクリミア半島への攻撃を開始しました。私見ながら、どうせやるならロシア軍施設や補給基地での砲爆撃があったとしても、一切コメントせず、人知れず攻撃を続ければよいのです。それをウクライナ自らの犯行(攻撃)とは言わなくていいのに、ウクライナは「クリミアを開放する戦い」と公言してはばからない方向に舵を切りました。更に、ウクライナ政府は、南部クリミア半島(クリミア自治共和国)奪還のために昨年立ち上げた国際会議「クリミア・プラットフォーム」の第2回会合を本日8月23日に開催します。
 私としては断腸の思いと今後の懸念で憤懣やるかたありません。いやー、クリミア半島に関しては、ロシア人もクリミアには歴史・伝統的な愛着心があります。これまでのウクライナは、ロシアの一方的侵略行為に対する正当防衛でしたので、欧米こぞって全面支援できましたが、クリミアへの武力奪回に踏み切る今回の梶切りにより、プーチンに国家対国家としての宣戦布告をしているようなものではないか…と強い懸念を感じています。これだとプーチンが激怒するのは勿論ですが、広くロシア国民一般に対しても、「今、ロシアに対する侵略行為が起きていて、ロシア国家そのものが脅かされている」という正当な愛国心に火をつけてしまいます。いやー、くわばらくわばら・・・。

 更に、時あたかも明日8月24日はウクライナの(ロシアからの)独立記念日。国家・国民を上げての祝賀行事がありますが、ゼレンスキー大統領はロシアが何か仕掛けてくることを懸念して、行事や祝賀で人が大勢集まることを自粛するよう指示しています。

 プーチンのことですから、今後考えられることとして、ロシアによるウクライナへの「報復」として、明日、8月24日のウクライナ独立記念日に、独立記念日を象徴する行事や場所に対してミサイルやドローンによる砲爆撃、或いは工作員による爆破テロなど、何  か仕掛けてくるでしょう。そしてロシア国民に、「祖国ロシアを脅かす敵に対して正義の鉄槌を下した!さぁ、ロシアの民よ立ち上がって銃を取れ、祖国を守るのだ!」と国家総動員令を出すのではないか、……。そんな懸念をしています。

 それでも頑張れ!ウクライナ

(了)

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2022/08/18

ウクライナよクリミア攻撃は慎重に!:パンドラの箱を開ける可能性も

クリミア攻撃
爆発炎上するクリミアのロシア軍弾薬庫(2022年8月17日付NHKニュース「クリミアの弾薬庫爆発 ウクライナによる反撃との見方も」より)

 今回は、焦点の話からいきなり始めます。

クリミア半島での弾薬庫等爆発事件
 2022年8月16日、ロシアが2014年に侵攻・併合したクリミア半島で弾薬庫が爆発し、ロシアはウクライナの特殊部隊による攻撃との見解を示したが、ウクライナはこれに関して明確にはコメントしてきませんでした。しかし、同日、ウクライナのゼレンスキー大統領はウクライナ軍の関与の可能性を示唆し、ロシアの占領地域の住民に対し、ロシア軍が使う施設から離れるようコメントしています。(参照:2022年8月17日付日本経済新聞記事「ロシア軍拠点への攻撃を示唆 ゼレンスキー氏『占領地住民、退避を』」、同日付NHKニュース「クリミアの弾薬庫爆発 ウクライナによる反撃との見方も」ほか)

 いやー、純軍事作戦的に分析すれば、9日にもクリミア半島のロシア軍のサキ航空基地が爆発しましたが、この一連の攻撃は、南部戦線へルソン州地域の奪還を目標とした反撃のための攻撃準備なのでしょう。ウクライナの特殊部隊に潜入させ、へルソン州を奪還する作戦にとって敵ロシア軍の兵站・後方補給の基盤になるクリミア半島のロシア軍の補給基地や弾薬庫を徹底的に潰しておくこと、が狙いのものと推察します。純軍事的には理解できます。しかし、クリミアはちょっとまずい。いわんや、ゼレンスキー大統領が自軍の攻撃である可能性を示唆したり当該地域の住民に避難を求めたりという思わせぶりな発言はまずいです。ここは慎重に!

パンドラの箱を開けてしまわないように!
 ウクライナ軍がクリミア半島に直接攻撃する、というのはロシアを(特にプーチンを)激怒させるレッドゾーンを踏み越えるものと推察します。今のところ、プーチン大統領は何らコメントしていませんが、これはまずい。現在のウクライナ侵攻は、ロシアにとって「外征戦争」ですが、これが今回のウクライナ軍のクリミア攻撃により「ロシア本土が敵国から侵攻されることに対する祖国防衛戦争」に格上げしてしまうことになりかねません。私見ながら悪いシナリオが頭に去来します。今回の一連のクリミア攻撃を受け、プーチンは、第2次世界大戦を「大祖国戦争」と呼んで国民総動員で戦ったことになぞらえて、対ウクライナ戦争を「第2次大祖国戦争」と位置付けて、これまで避けていた「国家非常事態宣言」や「国家総動員」をかける・・・・。そんな口実をプーチンに与えてしまうのではないか、と懸念します。いわんや、核兵器、化学・生物兵器など、「何でもあり」の口実になってしまいますから。

 ウクライナを支援する欧米諸国も、もしウクライナ側が「クリミア半島の奪回」を公言しだしたら、或いは、西側が武器供与しているHIMARSなどの装備を使用してロシア領内(併合されたクリミア)に損害を与えていたら(まだしていませんけど)、絶対「それは話が違う」とウクライナを制するでしょう。
 前回のブログでも述べたように、ウクライナのクリミア攻撃という事象には「キナ臭い感覚」を覚えます。これを良い口実に、プーチン大統領は「祖国が危機に瀕している!」と国民を発奮させ、萎えかけていたロシア軍の士気にガソリンを注ぎ、一転して祖国防衛の愛国心に燃えさせてしまいます。それというのも、クリミア半島も元々はウクライナの土地ですが、ロシア民族の歴史観からして、「クリミア半島はロシアのもの、麗しき土地、懐かしき土地」という潜在意識があります。ウクライナ人からすればウクライナの土地かも知れませんが、歴史的には度々ロシアの支配下に置かれ、現ウクライナの土地になったのも、ソ連時代にウクライナ出身だったフルシチョフ書記長が当時のウクライナ共和国に割譲したことが由縁でした。先月、ロシア首相のメドベージェフ氏は、「もしウクライナがクリミアを標的にすれば『審判の日』がすぐに待っている」と警告したことを忘れるべきではありません。
 そして、このキナ臭い不安感は、恐らく米国をはじめ欧米諸国も共有していると推察します。欧米はウクライナの侵攻前の失地回復を支援してきた訳ですが、ここでクリミアというパンドラの箱まで開けたがるウクライナには、必ずや「ちょっと待て!」と言うと思います。既述の通り、クリミアもロシアに侵攻されて取られた土地ですよ。しかし、今年の2月下旬以降のウクライナ侵攻と2014年以降のクリミア侵攻とは絶対的な違いがあります。それはロシアの国益意識です。前者、すなわち今回のウクライナ侵攻はそもそもロシアの国益?だったかも怪しい。ウクライナの土地を強奪することに国益があった訳じゃなく、ウクライナがNATOやEUに寝返っていくことによる安全保障上の脅威観でした。他方、後者、すなわちクリミア半島は、恐らくロシアの「死活的国益」でしょう。2014年まではウクライナの土地だったクリミア半島を、さながら強姦のように侵攻・併合したのちに、ロシア人が自分の国の土地として数多く入植しています。既に8年経ち、クリミアはほぼロシア化しています。そのロシア人たちが、今回の一連のクリミア攻撃で本土への避難を始めている状態です。欧米諸国は戦々恐々としていると思います。2014年のロシアのクリミア侵攻の際、ロシアでは国民の熱い支持があり、欧米は非難したものの経済制裁を科したものの、事実上「黙認」しましたからね。そのクリミアに対し、ウクライナが真に奪還作戦を目指しているとしたら、絶対ウクライナに自制を求めることになるでしょう。
 ウクライナのゼレンスキー大統領も、その機微なところはもわかっているのだと思います。わかっているけれど「やむにやまれぬ(大和魂ならぬ)ウクライナ魂」なのかもしれません。しかし、・・・ここは慎重に行きましょうよ。ウクライナは、一連のクリミア攻撃について一切公言してはならず、またロシアの軍事拠点や弾薬庫等の兵站基盤以外は、絶対に目標にせず、純粋に南部戦線へルソン州の奪回のための必要最小限の攻撃でなければなりません。或いは、いっそのこと、上記のように言う手もあるかもしれません。「現在実施中の一連の攻撃は、あくまで南部戦線へルソン州の反撃・奪回のための必要最小限の攻撃であり、クリミア半島そのものに対する奪回を目標とした作戦ではない。」と。

 慎重に!がんばれウクライナ!

(了)

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2022/08/13

続・断末魔のロシア:各正面で打つ手なし、占領地も混乱。ウクライナの総反撃への期待と不安 

爆発前後のサキ航空基地
爆発前後のクリミアのサキ航空基地(2022年8月12日付BBC記事「Crimea blasts significantly hit Russian fleet」より)

2022年8月13日現在(日本時間)の戦況
 -ロシア軍の主作戦正面である東部戦線ドネツク正面において、現在の接触線に沿ってシヴェルスクの東、バハムートの北東と南東、等において限定的な地上攻撃を行ったものの、バハムート北東部の一部で進撃するも、その他は概ねウクライナ軍に撃退された。今後もバハムートへの進撃を試みると見積もられる。この地上攻撃以外の正面では、接触線沿い及び内陸の都市部への砲爆撃を続けている。
 -ロシア軍の支作戦正面である北部戦線ハルキウ正面において、ロシア軍はもはや地上攻撃を実施せず。ハルキウ市とハルキウ北東及び南東の市街や集落に対する砲爆撃を続けた。
 -ロシア軍の支作戦正面である南部戦線ヘルソン正面においても、ロシア軍は地上攻撃を実施せず。ヘルソン州の行政境界に沿い、及びヘルソン州に隣接したミコライウ州とドニプロペトロウシク州の市街地に対して砲爆撃を続けたのみ。他方ウクライナ軍は、限定的な地上攻撃の他は、かなり継続的に実施しているヘルソン正面のロシア軍の兵站拠点と弾薬庫を標的にしたHIMARSによる徹底的な兵站壊滅作戦を続行。ロシア支配地域のヘルソン州行政顧問が、8 月 12 日のウクライナの砲爆撃により、ロシア軍がノヴァ⁻カホウカ水力発電所を確保しようと軍事装備と弾薬を輸送するために使用した橋が全て使用不能になったことを認めている。
 -米国国務省は8 月 11 日、ザポリージャ原子力発電所への出所不明の砲爆撃があった件について声明を発出し、同原発周辺におけるロシア軍の軍事活動を停止し、原発の管理権をウクライナに返還し、非武装地帯の創設するよう求めた。ちなみに、ロシア軍は同原発に悪名高い民間軍事会社ワグナー(ワグネル)の部隊を配置しており、原発周辺への地雷の敷設など、要塞化を進めている模様。
 -ロシアの占領地域では、①パルチザン活動の脅威化、②アゾフスタリ製鉄所で強靭に抵抗したアゾフ連隊の捕虜に対する見せしめ公開裁判、の2点の動きあり。
  ①占領地をロシア連邦に併合する国民投票を準備中のところ、そうはさせじとパルチザンによるテロ攻撃が数多く起きており、そのテロ攻撃の標的がロシアの占領当局の要員や親ロシア派のウクライナ住民協力者であるため、国民投票準備を阻み占領当局を悩ます最大の要因になっている。8 月 8 日夜、メリトポリの統一ロシア党本部で起きた爆破事件(選挙責任者が標的)、 11 日、ロシアのパスポートとロシアの自動車登録を配布していたロシア内務省のサービス センターの自動車爆破事件(地区登録検査局局長が標的)、また10日にマリウポリの中央地区でも大規模な爆発があったなど、枚挙に暇がない。占領地域のロシア当局の要員にとってパルチザン活動は日常的恐怖の存在であり、駐留ロシア軍の行動も対パルチザン活動に相当な戦力を割かれており、もはや無視できない勢力となっている。
  ②マリウポリのロシア占領当局は、アゾフスタリ製鉄所を拠点に強靭に抵抗したアゾフ連隊の捕虜を「裁判+処刑ショー」とすべく、マリウポリ市立交響楽団ホールを裁判所兼捕虜拘置所に改造し、見世物として公開用の法廷と捕虜を拘置する公開用のオリ等を準備し、これをビデオで公開。この公開法廷は 8 月 24 日、31 日に開かれる模様。これに合わせ、占領当局はロシア国民へのPRとして、「マリウポリでの反ロシアの過激ウクライナ人の抵抗に対処するためにロシア軍は行動を起こしている」というロジックで演出しており、市中ではアゾフ連隊の部隊章付きの制服を着た民間人の逮捕劇をPR用に行っている模様。
 -ロシア軍の人事については、8日米国防省が発表した数値ではウクライナ侵攻開始以来、ロシア軍の戦死傷者の総数は7万~8万に達するとのこと(参照:2022年8月9日付朝日新聞「ロシア軍の死者・負傷者『7万人~8万人に達した』」)。この穴埋めのため、ロシア国内の少数民族共和国への志願者募集キャンペーンを実施しているが、実はかなりサバを読んだ充足率らしく、大隊規模(500数十名)と称して100名そこそこの中隊規模だったりしているのが実情の模様。戦場にいるロシア軍の 約60%は、こうした短期契約の志願兵で構成されており、しかも契約金も支払われておらず、ロシア軍の士気は非常に低い模様。この人員損耗をカバーする要員確保のため、ルハンシク州などの占領した地域のウクライナ住民にて強制動員をかけており、占領下の召集ウクライナ住民のみで8000名を確保する計画がある。また、こうした部隊を指揮する将校を養成するため、本来の将校を養成する士官学校ではなく、急造の将校養成コースを設置し、軍曹経験者を消耗品的な将校・小部隊指揮官として大量生産している模様。そんな中、8 月 11 日に黒海艦隊司令官イーゴリ・オシポフが更迭され、ヴィクトル ソコロフ中将に交代した模様。主要指揮官の更迭はまだ続きそうだ。
(参照: 2022年8月12日付及び11日付ISW記事 「Ukraine Conflict Updates」、ほか)
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ロシア軍に打つ手なし
 上記の動き、特に本来の侵攻作戦の主作戦正面の東部戦線、支作戦正面の北部及び南部において、もはや主要な攻勢作戦は影を潜め、「攻撃は続けてまっせ」という内外へのPR用の地上攻撃以外は、脈絡のない砲爆撃のみ。私見ながら、このPRとは、もはや「内外へのPR」というよりもプーチン大統領へのPRかもしれない。そのくらい、全船を預かる現地ロシア軍部隊に打つ手はない状況です。何より、侵攻作戦の継続には十分な兵力(兵隊さんの数)が最低条件です。今回の場合、東部2州の完全制圧や現在の占領地域の確保のためには、部隊として数十コ大隊規模が必要ですが、後続戦力がもうありません。仕方なく、貧乏な少数民族をお金で釣って志願兵としたり、占領地のウクライナ住民を強制動員したりしている状況です。動員されたウクライナ住民に後ろから銃を突き付けて鉄砲を持たせて戦わせるとして、同胞ウクライナ軍と戦えると思います?少数民族にしても、急に軍事教練を受けて鉄砲を持たせられたくらいで、まともな戦闘ができますか?人数の問題ではなく、これでは戦えません。まぁ、彼らの運用用途は最も不足している最前線の戦闘要員ではなく、後方地域の兵站・補給整備などでしょうけど。

占領地内も混乱
 ロシア占領地内のパルチザン活動の活発化は目を見張るものがありますね。パルチザンの構成要員の方々も命懸けでやっているわけだから大変だと思いますが、イラク戦争やアフガン戦争における米軍を標的としたテロ攻撃と同様、反占領当局・反占領軍に対するテロ攻撃って、弱者の戦法ながら非常に効き目があるんですね。今や、占領地の占領当局の要員は、日常的なテロ攻撃にビビりまくり、ロシア軍の行動も大いに制約を受け、占領政策の推進も遅々として進んでいない模様です。これをロシア国内の国民に覆い隠すため、アゾフ連隊の公開裁判のようなPR策をいろいろやる訳です。恐らく、その公開裁判、そしてその先の公開処刑は、ロシア国内では一定の支持者がいるかもしれませんが、心あるロシア国民やウクライナや欧米をはじめとする国際社会の目にどう映るでしょうか?ISIL(いわゆる「イスラム国」)が中東ででかい面をしていた頃、拘束した西側や敵対アラブ諸国の軍人・民間人をオレンジ色の囚人服を着せ丸見えのオリに入れて、斬首処刑したり体に火をつけて焼死させたり、そんな処刑ショーをネットで垂れ流していました。あの頃と同様、ロシアが公開する裁判や処刑は、国際社会の目には暗澹たる残酷ショーにしか見えないでしょう。

ウクライナの総反撃への期待と不安
 既述の通り、ロシア軍の侵攻も峠を越え、もはや打つ手がなくて断末魔の様相を呈している、・・・そうなると、ウクライナの総反撃の開始に期待がかかります。どうせやるのなら、早く、大々的に、かつ、徹底的に総反撃してくれ、と余計な期待をしてしまいがちです。総反撃をするとすれば、既に今後の反撃の足がかりを得ている南部の2方向でしょう。①ヘルソン市に20kmとほど近い北西のポサド-ポクロウスキからヘルソン市への進撃、及び②ヘルソン市から60km北東のダヴィディウ橋の橋頭堡からノヴァ⁻カクホウカ市への進撃。この2軸でスクリュードライバー的に南部ヘルソン正面でグイグイと穴をあけ、そこから後続の戦力を西側装備で突っ込ませて戦果拡張すれば、一挙に南部戦線で失地を回復していけるでしょう。いやー、期待が膨らみますね。当然、反転攻勢を開始するには十分な兵力・火器・装備・弾薬を予め準備しなければならず、西側からの供与・配分を含め、一定の時間が必要なのでしょう。

 ところが、8月12日付のニュースで、9日にロシア支配下のクリミア半島のロシア軍のサキ航空基地に出所不明の一連の爆発が起き、1名死亡、8機の戦闘機等が大破し、ロシア黒海艦隊の戦力は著しい打撃を受けた模様、との報(参照:2022年8月12日付BBC記事「Crimea blasts significantly hit Russian fleet」)。メディアの報道ぶりでは、ウクライナ特殊部隊の仕業で、これが反撃開始の狼煙であるとの見方も出ていました。ネットで爆発前と後の航空基地の写真を見て確信を持ちました。・・・これは事故じゃない。爆発ではなく、特殊部隊が潜入して爆破装置をつけるか、或いはドローンで精密誘導した誘導弾による爆撃ですね。写真のような各機離隔して掩護壕になっているわけですから、これが偶発の事故で次々と誘爆するわけがありません。当然、人為的ですね。
 この報で、私自身は現役時代を彷彿とさせるようなキナ臭い感覚を覚えました。私の独り言ながら、「クリミア半島はヤバいって。だってプーチンは激怒し、萎えかけたロシア軍の士気にガソリンをかけて火をつけてしまう…。」という不安感を苛みました。勿論、クリミア半島も元々はウクライナの土地です。しかし、プーチンは勿論ですがロシア民族の歴史観からして、「クリミア半島はロシアのもの、麗しき土地、懐かしき土地」という意識があります。もともとはウクライナ人の土地かも知れませんが、歴史的には度々(ほとんどかも)ロシアの支配下に置かれ、現ウクライナの土地になったのも、ソ連時代にウクライナ出身だったフルシチョフ書記長が当時のウクライナ共和国に割譲したことが由縁でした。つい先月にも、ロシア首相のメドベージェフ氏が、「もしウクライナがクリミアを標的にすれば『審判の日』がすぐに待っている」警告していました。

 このキナ臭い不安感は、恐らく米国をはじめ欧米諸国も共感しているのではないかと思います。欧米はウクライナの侵攻前の失地回復を支援してきた訳ですが、ここでクリミアというパンドラの箱まで開けたがるウクライナには、必ずや「ちょっと待て!」と言うと思います。既述の通り、クリミアもロシアに侵攻されて取られた土地ですよ。しかし、今年の2月下旬以降のウクライナ侵攻と2014年以降のクリミア侵攻とは絶対的な違いがあります。それはロシアの国益意識です。前者、すなわち今回のウクライナ侵攻はそもそもロシアの国益?だったかも怪しい。ウクライナの土地を強奪することに国益があった訳じゃなく、ウクライナがNATOやEUに寝返っていくことによる安全保障上の脅威観でした。他方、後者、すなわちクリミア半島は、恐らくロシアの「死活的国益」でしょう。もはや人の国の土地なのにね。イギリス領当時の香港に対する中国の感情に近いかもしれない。だから、2014年の侵攻当時にロシア国民の熱い支持もあったし、欧米の「当惑のあげく黙認」という反応に至ったのだと思います。

 いやー、ゼレンスキー大統領、気持ちは分かるけど、この際クリミアに手を出すのは控えましょうよ。プーチンの手持ち札の中には禁断の「核兵器」をはじめ「生物・化学兵器」もありますが、今のところ一応の合理的判断でそうした札を切り札として使っていません。そのキッカケを作ってしまいますよ。止めときましょう。あいつが死んでから長い目で取り返せばいいじゃないの。あいつが達者なうちは止めときましょうよ。

 頑張れ!ウクライナ‼

(了)

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2022/08/08

断末魔のロシア:原発攻撃など支離滅裂な作戦展開、縦割り組織の成果PR競争か

Zaporizhzhia Nuclear Power Plant
攻撃を受ける直前のザポリージャ原子力発電所 (A view of the Zaporizhzhia Nuclear Power Plant near the Ukrainian city of Enerhodar, Aug. 4, 2022.)(2022年㋇8日付VOA記事「UN Chief Calls for Access to Ukraine Nuclear Plant After New Attack」より)

2022年8月8日現在(日本時間)の戦況
 -ロシア軍の主作戦正面である東部戦線ドネツク正面において、イジュームの南西と南東、シヴェルスクの東、バハムートの東と南で限定的な地上攻撃を行うとともに、ドネツク市の北西と南西の郊外を地上攻撃し、その一部で攻撃が進捗し、アヴダイフカ・ドネツク市の接触線にてウクライナの防御陣地線を破ることを企図している模様。(東部2州の確保を諦めていないことをPRしているものと推察。)
 -ロシア軍の支作戦正面である北部戦線ハルキウ正面において、ロシア軍はハルキウ周辺の市街や集落への砲撃のみ実施。使用火砲は、防空用のS-300対空ミサイルなど本来の用途と違う火器を使用。(武器弾薬が枯渇している証左と推察。)
 -ロシア軍の支作戦正面である南部戦線ヘルソン正面において、ウクライナ軍が今後の反撃の足がかりにする橋頭堡を推進しつあり、ロシア軍はそうはさせじと東部戦線から相当数の兵力転用を受けたほか、空中偵察に基づく砲撃を加えたり、異軸からウクライナが支配するミコライウ市東部を地上攻撃で反撃を試みて失敗するなど、防戦中。
 他方、同南部戦線でロシア軍が支配下に置いているザポリージャ原発において、5日、6日と連続して出所不明の砲撃があり原発機能が一部損傷を受け、核惨事が国際的に懸念されている。ロシア軍は、大型兵器を原発近傍に保管して原発を盾にしており、ロシア軍が自作自演型の原発砲撃でウクライナ軍の仕業とPRしている可能性大。
 -ロシアの占領地域では、占領地をロシア連邦に併合する国民投票を準備しており、9月11日のロシアの統一投票日に合わせ、占領地域でも国民投票にかけて併合を推進する模様。占領下のメリトポリ市長によれば、ウクライナ住民の頑強な抵抗とパルチザンによるテロ攻撃でロシアの国民投票準備は遅々として進まず。それに業を煮やしたロシア軍は、パルチザンの攻撃を最小化するために武装兵士が各家庭を訪れてインタビューする「自宅投票」に切り替える模様。武装兵士のインタビューは、ロシア併合の是認を銃で強要するもの。これは、南部のみならず、東部ルハンシク州でも同様で、ルハンシク州では国民投票に積極参加する者のみに、食料・水・住居補修資材などの人道援助が与えられるなどの施策がとられている。
 -イランから導入されたドローンは、既に各作戦で運用されている模様。これに関連して、8月9日にイランの衛星をロシアが代行打ち上げし、その衛星を数ヶ月間ロシアがコントロールし、衛星情報をウクライナ侵攻作戦に使用する、とロシアが発表。これに国営イラン宇宙衛星機関が猛反発し、打ち上げ直後からイランのコントロール下に入るのであって他国の軍事目標のためには使用させない旨を8月7日に発表した。
(参照: 2022年8月7日付ISW 「Ukraine Conflict Updates」、2022年8月6日付BBC時事「Any attack on nuclear plant 'a suicidal thing' - UN chief.」 ほか)

支離滅裂な作戦・施策が暗示する縦割りの成果競争
 上記の各作戦正面の展開ぶりを見ていると、私見ながら、もはやロシアは各正面がそれぞれ分断孤立されたかのような別々・勝手な作戦をしているように見え、支離滅裂もいいところ、と推察します。ザポリージャ原発の件も然り、恐らく上層部の命令で自作自演したのではなく、南部担当指揮官の考えでしょう。場当たり的で、政治・外交との連携は全く考えていない。元々自作自演だから、原発への砲爆撃と言っても、一応核惨事には至らないように爆破被害はコントロールしていて「大丈夫、大事には至らない」と計算づくの作戦だったのでしょう。彼らが原発の核物質の安定的な管理のために壊してはいけない部位や機能を正確に理解していたかは甚だ疑問です。しかし、砲爆撃後の国際的な反響の大きさ・批判の大きさは計算外だったのではないでしょうか。「ウクライナの犯行だったのだ!」と主張しつつも、プーチン大統領から「本当にウクライナ軍の仕業か?お前たちがやったんじゃないだろうな?」と詰問されているのではないでしょうか?イランの軍事衛星の発射や衛星情報の軍事利用の発表についても同様、政治・外交との連携、イランへの配慮も全く考慮しておらず、こう発表することによるプーチンへのPR度しか考えていないのでしょうね。仮に、担当者間で軍事衛星の情報をウクライナでの作戦に使う内諾を得ていたとしましょう。だったら秘密にしておいて衛星情報を活用すべきですよ。言う必要なかったのに公表されてしまったら、そりゃイランは激怒して全否定しますよ。下手をすれば、使わせてくれるはずだった軍事衛星は使わせないでしょう。なぜなら、イランは西側とのイラン核開発問題の協議で制裁解除が念願ですので、殊更に対立軸を深めることになるのを避けたいと考え、ウクライナ侵攻に親ロシアとして関わりたくないのです。先般のプーチンとハメネイ師・ライシ大統領の首脳会談後の声明でも、ポーズの上で「反米」姿勢はロシアと協調していますが、ウクライナ侵攻への実質的支援としては「ドローン数百機の提供」が関の山でした。それ以上の深入りは拒んでいます。

 上記のような各正面の支離滅裂さを見ていると、ついに負ける国が終末期に見せる「断末魔」の景況を呈してきた、と推察します。

 言葉足らずなところがあるので、少々補足します。
 戦略・戦術の定石的な考え方、戦術的妥当性からすれば、主作戦正面の東部での作戦目標の達成を第一優先とし、他の支作戦正面はひたすら主作戦正面に寄与する作戦を展開するものです。例えば、東部ドネツク州全土確保が主作戦正面なら、支作戦正面の北部や南部は、敵戦力を吸収することで主作戦正面に寄与することが役割であって、多少の犠牲となってもいいわけです。南部でヘルソン市が奪回されそうで、ウクライナ軍の主努力が南部に集中するとすれば、それはロシアの主作戦正面である東部にウクライナ軍が手薄になるわけで、その間にドネツクを陥落させればいいのです。(にも拘らず、ロシア軍は危機に瀕する南部ヘルソン正面に東部から兵力を転用しています。)仮にヘルソン市がウクライナに奪回されても、肉を切らせて骨を断つことができ、以前から内外に宣言していた軍事目標「東部2州の解放」ができます。奪回されたヘルソン市については後で対応すれば良いのです。
 ロシアはそれをせず、各正面がそれぞれ分断孤立されたかのような別々・勝手な作戦をしているようです。

 思えば、昨年12月から今年2月の電撃侵攻の初期までのロシアの一連の行動は、政治、外交、経済、資源政策から軍事(特に部隊のウクライナ国境への事前展開に至るまで、全てがプーチンの描いた一途の戦略のもとで、戦略目的から戦略目標を達成するためのlines of operationという一連の作戦として、軍事作戦を基軸としつつも政治、外交、経済などの各作戦はそれぞれの正面で役割を果たすべく作戦展開していました。ところが、当初の戦略目的、戦略目標が何度も書き換えられ、その度に、基軸となる軍事において時の軍事作戦指導者がプーチンの求める成果を上げることが出来ず更迭されて、・・・今や、統一された指揮官なく、各正面毎とりあえず与えられた任務を果たすのみ。この際、プーチン大統領の要求が高いので、何とかPRできるように各個が勝手に成果競争をしているようです。隣接正面との作戦連携や相互支援、いわんやシナジーなんて知ったこっちゃない。いかに自分の正面は成果を出しているかをPRすることに全集中しています。

もはや優れた将官はいないかも
 英国国防省の情報では、ロシア軍は2月のウクライナ侵攻開始以来、唯一の統合指揮官だったアレクサンドル・ドヴォルニコフ陸軍大将を含め、少なくとも6名の軍管区司令官以上級の指揮官を解任した模様です。全般状況に睨みを効かせ、各正面の地位・役割から作戦の優先順位や戦力配分を定め、各正面担当部隊に対して適時適切な命令を与えてその作戦遂行を律する統合司令部が存在しません。その上、各正面の指揮官でさえ、度々更迭されています。もはやロシア軍には、指揮系統の一貫性が欠如しています。これでは戦場での作戦指導は断末魔の状態になっているでしょう。戦場にいるロシアの将校たちに多少同情したくなります。
(参照: 前掲2022年8月7日付ISW 記事)

 ロシア軍には歴史的・伝統的な底力があります。劣悪な環境に耐え、武器・装備・弾薬・食料・医療品の困苦欠乏にも耐え、それでも黙々と与えられた任務の達成を我慢強く追及するミリタリーマインドが息づいています。だから、相当手ごわいでしょう。西側装備のウクライナ軍も相当にこれから手こずることでしょう。
 しかし、 It won’t be long…… もうそう長くはないでしょう。
 せいぜいこの冬一杯までは持つかな。しかし、じりじりとウクライナが失地を回復していくでしょう。
 It won’t be long……

 頑張れ!ウクライナ

(了)

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2022/08/03

引き潮ロシア:東部2州確保を断念、ウクライナの反撃に応じ南部ヘルソン正面に部隊を転用

BM21 grad MLRS
ウクライナ軍のBM21多連装ロケット発射システムの射撃。米国はじめ西側供与の強力な火砲が大きな戦力となっている。(Ukrainian servicemen fire with a BM21 Grad multiple launch rocket system in a frontline in Kharkiv region, as Russia's attack on Ukraine continues, Aug. 2, 2022.)(2022年8月2日付VOA記事「Latest Developments in Ukraine: August 2」より)

8月3日現在(日本時間)のウクライナ戦争の戦況
 -ロシア軍の主作戦正面である東部戦線ドネツク正面において、ロシア軍はスロビャンスク北部やシヴェルスク及びバハムートへの地上攻撃は偵察に毛の生えた程度、いずれも攻撃自体は頓挫している。他方、この正面のロシア軍東部軍管区の部隊を南部戦線ヘルソン正面に転用すべく、部隊の大移動が確認されている。
 -ロシア軍の支作戦正面である北部戦線ハルキウ正面において、ロシア軍は東部と同様、偵察程度の地上攻撃のみで頓挫し、ハルキウ周辺の市街や集落への砲撃のみ。
 -ロシア軍の支作戦正面である南部戦線ヘルソン正面において、ロシア軍はウクライナの反撃攻勢に備えた防御の強化に力を注ぐとともに、東部戦線からの転用部隊の受け入れを準備中。
 -ロシアの占領地域、特に南部ヘルソン正面では、親ウクライナ/反ロシア住民によるパルチザン活動に手を焼き、これを弾圧するため、親ロシア協力者の募集、密告制の推奨、占領政策のPR放送などに力を注いでいるが、住民の親ウクライナ/反ロシア感情は根強く、効果は見られていない。他方、占領地域内でのロシア軍及び行政機関は、占領地域をロシアに併合する国民投票の準備に最大の努力を傾注。
 -南部ヘルソン正面でのウクライナ軍の反撃攻勢は、じわじわと推進。既にロシアに占領されていた46コの集落を奪還した模様。今後、反撃の勢いは増大する模様。
 -7月28日、ロシア軍がマリウポリで徹底抗戦したウクライナ軍アゾフ大隊の捕虜を収容していたオレニフカ刑務所が出所不明の砲撃を受け53名が死亡した件について、ロシアはウクライナ軍によるHIMARSの砲撃と主張。国際的な調査にて、米国当局の査察官は、HIMARSを使用した形跡なし、近隣に砲撃で生じる凹み状の穴もなくウクライナ軍のHIMARS以外の砲撃でもないと確認。ロシア軍の精密誘導ミサイルもしくは仕掛け爆弾と思われる。
(参照:2022年8月1日付ISW記事「Ukraine Conflict Updates」ほか)

ついに潮目が変わった!引き潮、ロシア
①東部戦線に勝ち目なし
 ウクライナの反撃攻勢は慎重に進んでいる一方、主作戦正面のはずのドネツク全州の占領を諦めたようで、むしろ奪還される恐れのある南部ヘルソン正面に虎の子の東部軍管区の部隊を転用しました。戦史は勿論のこと、軍事作戦の常識から言っても、「取る」と内外に宣言していた主作戦正面の攻撃を一時停止して、もっと危ない他正面に部隊を振る、なんてあり得ません。これは、もはや「東部戦線に勝ち目なし」と見極めをつけた証左です。さぁ、いよいよロシアに引き潮の予兆が見えました。
(参照:2022年8月1日付ISW記事「Ukraine Conflict Updates」)

②トルコにもイランにも見限られる
 引き潮の予兆の二つ目は、プーチンがNATO加盟国トルコと中東の台風の目イランと協議し、四面楚歌状態から脱却し新たな局面を打開しようと試みたが、イランからのウクライナ侵攻の容認取り付けとドローン調達くらいしか成果がなく、イランを実質的に巻き込むことはできなかった点です。
 プーチン大統領は、7月20日にイランのテヘランを訪れ、トルコのエルドアン大統領、イランのライシ大統領と「アスタナ和平プロセスサミット」にて、主たる議題だったシリア情勢に加えてウクライナ戦争の話も取り上げて協議した模様です。各国とも、それぞれの思惑があった訳で、ロシアは当然ウクライナ侵攻への理解と支援の取り付け、できればイランをいずれかの形で巻き込みたかったと思いますし、イランは米国とイスラエル主導の(対イラン)中東防空同盟への対応、及び核開発問題で四面楚歌状態なのでロシアの理解と支援を得たいこと、トルコはシリア北部のクルド勢力の掃討のための軍事作戦をロシアとイランに容認してもらいたいこと、等々です。サミット後の記者会見の内容から、ウクライナ侵攻関連における成果はメディアを通じ「イランからのウクライナ侵攻の容認取り付けとドローン調達。トルコネタは特になし」という話は漏れ伝わってきましたが、私見ながら、この成果以外にも内々にはあったのだろうと推察し「今後イランはウクライナ情勢に新たなワイルドカードとして乱入してくるのではないか?」と懸念していました。例えば、「イラン革命防衛隊のボランティア部隊がロシア勢として対ウクライナ戦に加わる」、とか、「イラン革命防衛隊の海軍艦艇が黒海に派遣される」とか、少なくとも「米国・イスラエル主導の中東防空同盟に対抗したイラン・ロシア間の防空共同対処構想のぶち上げ」など、ウクライナ情勢が複雑・混迷化することを懸念しましたが、最近の報道で同サミットの内容は既に報道されたもの以外にはないことが分かり、安心しました。
 ということは、プーチンはトルコ、イランも交えた協議で何か打開を試みたものの、既述の成果以外にはなく、実質的にはほとんど戦局を打開するような一手にならなかった、ということです。つまりイランもトルコも、負け馬に乗ろうとはせず、見限られたということです。
(参照:2022年7月26日付wedge記事「プーチンのイラン訪問で反米同盟強化の路線は鮮明に」、下の画像も同記事より)
プーチン大統領、ハメネイ師、ライシ大統領
イランの最高指導者ハメネイ師(中央)とライシ大統領(右)と会談し、ウクライナ侵攻の「お墨付き」をもらったプーチン大統領

③兵力不足を少数民族から志願兵を金で釣っておいて金払えず
 引き潮の予兆3つ目は、しょうもないヨタ話のようで、こういう話がロシア国内の市民の口コミで広がると、市民レベル・草の根的に国家や政府に対する信用・信頼が落ちるだろうな、という話です。
 ロシア政府は、兵力不足のため、ロシア連邦内の少数民族の共和国にボランティア部隊への志願を募り、高給支給を約したようですが、その志願兵部隊は約束された給料も支給されておらず、不平が出ている模様です。その高給?というのも、入隊時の一時金が3000ドル(1ドル133円として約40万円)、日給30ドル(約4千円)ですから、大した高給ではないのですが、少数民族からすれば高給なんでしょう。それが払えなかったというのですから、ウクライナに送られた志願兵は士気が相当落ちているでしょう。
(参照:2022年8月1日付ISW記事「Ukraine Conflict Updates」)
 
 勿論、まだまだ南部戦線のみならず、東部でも北部でも戦闘はしぶとく続き、秋から冬まで苦しい時期は続くでしょうが、ロシアは今後ジリジリとウクライナに押され始めます。強気のプーチンも益々苦境に立たされ、打開を求めて悪あがきするでしょう。それに対し、日本も含めて、西側は大同団結して「力による現状変更は許されない」という国際社会の当たり前のルールを教えてやらねばいけません。そして、ウクライナ侵攻の戦後の平和維持のため、国連平和維持活動に自衛隊も積極的に参加すべきです。日本なんか、あの地域に国益がないので丁度いいにではないかと思います。まぁ、戦後を語るのはまだ早いですね。

 ともあれ、先が見えたぞ!頑張れウクライナ!

 (了)


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