ロシアの年末の逆襲:ウクライナ全土に砲爆撃のお歳暮

キーウ上空のミサイル迎撃の状況 (画像:2022年12月29日付BBC記事「Massive Russian missile barrage pummels cities across Ukraine」より)
ロシアの年末の逆襲:ウクライナ全土に砲爆撃のお歳暮
「空襲警報、直ちに避難所に避難してください。」
2022年12月29日木曜の零下厳寒の早朝、首都キーウを始めとするウクライナの各地に空襲警報がかかりました。電気は予防的に遮断されて停電、人々は防空壕や地下鉄等へ避難しました。同日5時半ころ、黒海上のロシア海軍艦船からの巡航ミサイル発射を始めとするロシア軍からの砲爆撃の兆候を感知したウクライナの警戒管制システムの情報により、ウクライナ主要都市など各地で空襲警報が発せられました。
そして同日朝から長いところでは8時間にわたって、過去最大規模のロシアからの砲爆撃のお歳暮がウクライナ各地を襲いました。首都キーウを始め、ハルキウ、オデッサ、ミコライウなどの主要都市、東部および南部ヘルソンなどのロシアからの奪還地域、更にはリヴィウなどのウクライナ西部の都市にも、ほぼ全土への最大規模の砲爆撃でした。既述の主要都市・地方都市という政治経済の集中点・人口集中地域に加えて、現在血みどろの激戦が行われている東部ドンバス戦線の最前線各正面にも、ロケットや砲弾の雨が降り注いだ模様です。
ロシアは新旧装備の詰め合わせで自軍の砲爆撃力の質量を見せつけた
砲爆撃で発射されたのは、いわゆる「ハイロー・ミックス」で、空軍機や海軍艦船からの巡航ミサイルのような戦略ハイテク最新装備もあれば、旧ソ連時代から使っていたようなカチューシャ多連装ロケットのような戦場用のローテク旧式装備まで、ありとあらゆる砲爆撃手段を駆使したものでした。
枯渇したのではなかったのか?少なくとも、誘導ミサイルなどのハイテク装備は枯渇したはずだったのに……、と思っていましたが、今回の砲爆撃で「実は、まだまだあるのですよ」と砲爆撃力の質量の豊富さを見せつけてきた形です。一体、どこに、いや、どこから手に入れたのか?
ロシアの軍需産業は、これほど多くのミサイル・ロケット・砲弾などの砲爆撃を供するに十分な生産能力は持っていません。ロシアへの経済制裁によるサプライチェーンの問題もあって、軍需産業を支える部品や材料も手に入りづらくなっています。よって、ロシアは世界各地でそういった装備や装備を支える部品や材料の入手に血眼になっています。ここで頼りにしている相手が、やはりイランや北朝鮮です。英国の国連大使の発言では、ロシアが数百発の弾道ミサイルや高性能攻撃ドローンを含むより多くの武器をイランから入手しようとしている、とのこと。英国の情報では、ロシアが北朝鮮[をはじめとした第3国から、厳しく制裁を課された統制品目をあちこちの国から調達しようとしている、とのこと。やはり、直接的にはイラン、北朝鮮のドローンやロケットや砲弾、そして間接的には誘導武器の周辺パーツ・材料などを中国が搦め手から供与している模様です。
あちこちからの供与を基に、何とかギリギリ、まだまだ前線での戦闘を継続しつつ、今回のような都市やインフラへの戦略砲爆撃を継続していく武器・弾薬のバックアップを保っている模様です。しぶといものですね。
最大規模の砲爆撃を食らったウクライナでは
迎え撃つウクライナ軍側は、早期警戒システムとミサイルやロケットの迎撃をする地上部隊との間の連携が非常に良好に機能している模様です。不幸中の幸い的な話ですけど、玄人的には驚くべき防空能力を発揮しています。元々保有していたロシア製のS-300対空ミサイルの防空システムをはじめ、西側供与の最新の防空システムや対空ミサイルなどを駆使して、首都キーウでは9割がた迎撃したようですが、すり抜けた砲爆撃や迎撃したミサイル等の破片が落下して、建物などに大きな被害を与えました。一部では、首都キーウン防空のために撃った迎撃ミサイルS-300が射ち漏らしてベラルーシ領空に飛来し、ベラルーシの迎撃ミサイルで撃ち落された模様です。
空襲警報の避難呼びかけが功を奏して、幸い人的被害は最小厳に食い止められました。しかし、狙いはウクライナ主要都市の人口集中地域とその電力などの重要インフラだったようです。電気に関してはキーウの40%、西部リヴィウの90%の電力が失われたほどの大きな被害でした。
特に、今回のように、軍事用語で「弾幕」と言えるような圧倒的な質と量の広範囲への砲爆撃があると対応が困難なのは、もはや仕方がありません。防空能力が向上し迎撃能力高くなったとしても、今回のオーバーキル的な全土への最大規模の砲爆撃があると、結局は迎撃能力を超える砲爆撃には一定の被害を甘んじざるを得ないようです。悲しい現実ですね。
他方、ウクライナへは、今後今以上に西側からの最新の防空・迎撃システムが導入される予定です。例えば、ドイツからのIris-Tシステム、フランスやオランダからも追加の防空ミサイル、また、米国からは最先進的な地上ベースのミサイル防衛システムであるパトリオットミサイルが、それぞれ導入が予定されています。これらは導入までの基幹や、導入後のウクライナ軍の要員の訓練等の戦力化までの猶予期間がかかりますが、逐次に確実に戦力になっていきます。
(以上の参照: 2022年12月29日付BBC記事「Massive Russian missile barrage pummels cities across Ukraine」、同日付Global news記事「Massive Russian missile attack in Ukraine targets power stations amid freezing temps」、同日付The New York Times記事「Russian Missile Barrage Staggers Ukraine’s Air Defenses」ほか)
年末に暗いニュースで年を越しますが明るい新年を迎えたいものです
本日2022年12月31日朝10時前に北朝鮮の弾道ミサイル3発が発射され、いずれもEEZ街に落下しました。今年37回目の北朝鮮の弾道弾発射、その射ち納めでしょうか。
ロシアも北朝鮮も、一部の国家指導者の偏執狂的な考えでこうした無意味なことがシャーシャーと行われています。この両国は「首長」の首を取らない限り変わらないのかも知れません。悲しい現実ですね。
願わくば、来るべき新年は少しは明るい現実を迎えたいものです。
(了)


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