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2023/01/29

ロシアはミサイル・ドローン攻撃を主軸に長期に渡り西側と対峙する戦略に...でも、その前に2月にドンバス大攻勢がある!と読む

M1A1 main battle tank
米国から供与されるM1A1主力戦車は、戦場にてロシア戦車を圧倒すると専らの下馬評(2023年1月28日付BBC記事「How tanks from Germany, US and UK could change the Ukraine war」より)

ロシアはウクライナ侵攻の戦略を対NATO長期戦にシフトした可能性あり 
 2023年1月26日(木)、欧米西側諸国から主力戦車の提供を受けることになったウクライナに対し、ロシアの猛烈な砲爆撃が再開されました。タイミングとしては、ウクライナのゼレンスキー大統領の「ロシアの侵攻を止めるには適切な武器が必要」という欧米の主力戦車へのラブコールを受け、英国のチャレンジャー、ドイツのレオパルドⅡ、米国のM1A1などの各国が主力戦車の提供に応じたとの報道の直後でした。
 この動きを受け、27日(金)、EUの欧州対外行動局ステファノ・サンニーノ事務総長は、「ロシアは侵攻作戦を別のステージに移行し始めた(Russia started moving the war into a different stag.)」と語り、「ロシアの攻撃目標はもはや軍事目標ではなく、民間人と都市に対する無差別攻撃になった。プーチン大統領は『特別軍事作戦』の構想そのものをNATO及び西側諸国に対する戦争に切り換えた。(Putin has moved from a concept of [a] special [military] operation to a concept now of a war against NATO and the West.)」と記者会見で述べています。
(参照:2023年1月27日付VOA記事「Ukraine Hit by Deadly Wave of Russian Missile Strikes as Zelenskyy Calls for Aircraft, Missiles」、及び「EU: Russia Taking Ukraine War to ‘Different Stage’」ほか)
 
東部戦線の地上戦は激戦しつつも前線は膠着
 前述のようなくだりだけ見ると、地上戦はもはや静かな状態のように聞こえますがトンデモナイ。東部戦線ドンバス平原をめぐる戦闘は激戦状態です。今のところの焦点は、要衝バハムート市をめぐる攻防戦であり、プリゴージンの傭兵ワグネル部隊が奪取したと過早に宣言したソレダールなどの周辺の街を「取った/取られた/押した/押し戻した」という攻防で相当の期間に渡り武器・装備が無為に費やされ、相当数の将兵の血が流れています。
 最近のロシア側の戦況報告(ロシア国内向けの)では、「ヴァルダダールというこの地域の戦略的重要性を有する街を間もなく奪取できる。ヴァルダールの確保により、ドンバス地域全体の奪取が見えてきた」という希望的観測に満ちたことを喧伝しています。しかし、私見ながら、ISWの戦況分析でもほとんど語られないような街の話であり、ヴァルダール自体が戦略的に重要性のある要衝ではありません。要するに、「陸上戦闘は頑張ってまっせ!激戦を乗り越えて、やっとこれからドンバス全体をを取り戻すところまで見えてたんですよ!」という過大広告ですね。フェイクと言ってもいいかもしれない。
(参照:2023年1月27日付Newsweek記事「Potential Russian Capture of Vuhledar May Provide Key Strategic Advantages」

今後はミサイル・ドローン等の砲爆撃戦を主軸に長期に渡り西側と対峙する……でも、その前に地上戦でドンバス戦線大攻勢がある、と読む
 前述の2つの流れからすると、ロシアはもはや地上戦を諦め、今後はミサイルやドローンによる非軍事目標への砲爆撃戦でウクライナのインフラや市民生活を圧迫すること戦術に換えたように見受けられますが、……私見ながら、私はちょっと違う読みをしています。

 なぜロシアが東部戦線の戦況でこういう広報活動をしているのか?そして、なぜつい最近、プーチンはウクライナ侵攻の総司令官を軍のトップのゲラシモフ将軍に挿げ替え、その下に前総司令官の空爆好きの空軍スロヴィキン将軍を仕えさせ、かつ地上戦の作戦ではこいつを置いてほかにいないラパン准将を置いたか?

 私見ながら、まず初めの自問から自答します。
 ヴァルダール奪取をめぐるロシアの戦況広報は、膠着しているが故の「頑張ってまっせ」アピール以外の何物でもないでしょう。要するに、地上戦はもはや今後の西側主力戦車の戦場到着をもって押され気味になることが必至なので、今のうちに見かけ上の成果をPRしている、ということではないかと推察します。
 一つの可能性ですが、西側主力戦車が戦場に届く前に、ロシアがドンバスで大攻勢をかけて来ることは十分考えられます。もはや地上戦で長期戦を戦えるほど兵站が続きませんから、短期決戦で。この大攻勢の攻撃目標は、ウクライナから脱してロシアに併合された東部2州の線まで何とか取り返しすことでしょう。そこでこの東部2州と現状で確保しているクリミア地区とロシア本土を結ぶ地続きの回廊(ヘルソン州南部とザポリージャ州南部)の確保をもって、当面の有利な地歩を確立しておいて停戦交渉を切り出す、ということは十分可能性があると思います。ちなみに、「大攻勢」については、ゲラシモフは先週記者会見で宣言してますから。これを「キーウ再攻略」と読む人もいます。確かに、ミサイル・ドローンによる徹底的な砲爆撃に加えて、キーウ北方100キロほどのベラルーシから電撃的な侵攻作戦、というのも可能性としては考えられますが、キーウ侵攻ということは、その後ウクライナ全土を占領奪取する長―い地上戦となりますが、もはやロシアにそこまでの兵力はありません。だから私は「キーウ再侵攻はない」と見ています。むしろ、今の前線でウクライナに取り返された東部2州の地域の奪回の方が現実的。それを、まだ西側の主力戦車が戦場に届くまで、かつ地面が凍っていてロシアの戦車・装甲車が蹂躙できる2月中に(3月後半から凍土が溶けてぬかるみ状態になる)やろうとしているのではないか、と読んでいます。まさに、このために予備役を動員して兵員を確保し、北朝鮮やイランや中国ほか第3国から武器や材料を輸入したりして自国の防衛産業も大車輪操業状態で武器・弾薬・装備品を大増産していたわけですから。それを短期決戦でぶつけてくるのではないか?と推察します。
 
プーチンの腹:有利な態勢を確保してから長い停戦交渉を砲爆撃戦を交えて戦うつもり
 私見ながら、プーチンの腹は小見出しの通りではないかと推察します。
 現状が不利なので、この大攻勢でとりあえず停戦交渉で十分元を取れる態勢を確保しつつ、停戦交渉を持ちかける。とはいえ、「そんな勝ち逃げは許すまじ」とウクライナも西側もそれを良しとせず、停戦交渉は当然こじれて長期化します。プーチンは、それを見越してミサイル・ドローンによる非軍事目標への砲爆撃主体にて、ウクライナ市民のやる気を挫きながら、長―い戦いをウクライナ及び西側諸国と渡り合うつもりなのではないか、と推察します。この段階で地上戦で「押した/押された」の攻防をやると、西側の主力戦車が戦闘加入していますから「押される」一方になります。だから、そこを見越して地上戦は2月の大攻勢をもって終了し、それ以降の地上戦闘を避ける。西側主力戦車に押される話も勿論ですが、西側が関わってくると、ウクライナと戦っているはずがNATOとの戦争になりかねません。そこは西側も避けたがっているシナリオなので、ウクライナは地上戦を継続したがるでしょうが、地上戦に持ち込まずにミサイル・ドローンによる砲爆撃戦ばかりに切り替える、とプーチンは考えているのではないか、と思います。既に確保した東部2州の線を維持するのみで、そこはその線が「現状の線」で交渉が始まりますから。プーチンは、そういう深謀遠慮の下で2月に大攻勢をドンバス戦線でかけてくるのではないか、との読みです。

 それでも頑張れ!ウクライナ

(了)

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2023/01/24

ウクライナ侵攻の余波で韓国の防衛産業が東欧で急成長:日本は甘受せざるを得ないが…

Korean weapons sales
ポーランドが大量に導入を決めた韓国製K239「チャンムー」ロケット砲システム(Korean K239 Chunmoo rocket artillery system):射程239km=80マイル、バンカーバスター榴弾とクラスター弾を弾頭として搭載するMLRS。ザックリ言うと安めのHIMARS。(2023年1月18日付Eurasia Daily Monitor記事「South Korea Grounds Its Position in the Central and East European Defense Market」より)

ウクライナ侵攻の余波で韓国の防衛産業が東欧で急成長:日本は甘受せざるを得ないが…
 まだまだ激戦しつつも戦線の膠着が続いているウクライナ戦争。今回は自衛隊OBの私には珍しい防衛産業のネタです。
 ロシアとの地理的近さから緊張感の高い東欧諸国(いわゆる中欧を含むロシア以西/ドイツ以東のヨーロッパ諸国)は、ウクライナに対する支援をする傍ら、自国の防衛力の整備に余念がありません。そんな中、韓国の防衛産業が史上空前の売れっぷりを示し、はや世界№.8 に上ってきました。2012年~2016年の期間では韓国の武器輸出先の4分の1がヨーロッパであり、そのうちの半分以上が英国でした。それが2022年までの間でポーランドはじめ東欧を開拓し、輸出額は2012年〜2016年当時と比し177%にも成長しています。
 第2次大戦の敗戦を経験した日本としては、日本の防衛産業を「ウクライナ侵攻の機に乗じて成長させよう」という訳にはいかず、商機ですが甘んじてこの状況を受け止めるしかないですね。しかし、日本の活躍できる分野をテコにいろいろ付け入る余地はあると思うんですけどね…。
 今回は自衛隊OBのくせにビジネスに口出すなと怒られそうですが、そういうお話です。
 
ウクライナ侵攻の余波で韓国の防衛産業が東欧で急成長
 ロシアのウクライナ侵攻がロシアと地理的に近い東欧に与えたインパクトは、非常に大きいと言えましょう。冷戦期の東西の軍事的緊張以来の、東欧から地続きの隣近所で起きている軍事侵攻という現実に直面しているワケですから、自国の防衛力整備を強化するのは当然の反応です。
 その急先鋒がポーランドで、そのポーランドが武器輸入先に選んだのが韓国でした。ポーランドは2022年6月、韓国から1,000台のK2主力戦車、672台のK9自走榴弾砲、48機のFA-50軽戦闘機の導入で87億7000万ドルの契約をし、更に同年10月には35億5000万ドル相当の兵站パッケージと弾薬供給を備えた218基のK239 ロケット砲システムも導入する契約を結んでいます。これは韓国防衛産業にとって過去最大規模のセールスであり、またポーランドはこれら一連の防衛力整備により、非核保有国として軍事大国の仲間入りであり、東欧の砦になりつつあります。
 ポーランドの事情として特筆すべき点が二つあります。まず、冷戦期にソ連の強い影響下にて、ウクライナ侵攻は明日は我が身の緊迫感を持っていること。そしてもう一つ、冷戦後に西欧に経済的にも安全保障でも接近して、今やEUにも NATOにも加盟しているものの、西欧諸国から距離を置かれていることに不信感を持ち、西欧諸国からは武器輸入しない政策を取っていることです。
 韓国は、このポーランドへのアプローチとして、武器輸出のみならずその生産とメンテナンスでアフターケアでき、かつ近隣諸国にも武器輸出したものの生産とアフターケアを提供できる生産ハブ兼兵站施設を建設し、地元も潤うように複合的なパッケージを提供しています。更に、原子力発電所の建設、半導体や水素産業などのポーランドとの提携も進めています。
(参照:2023年1月18日付Eurasia Daily Monitor記事「South Korea Grounds Its Position in the Central and East European Defense Market」)

 日本は甘受せざるを得ないが…
 悔しいですが、第2次大戦の敗戦を経験した日本としては、日本の防衛産業を「ウクライナ侵攻の機に乗じて成長させよう」という訳にはいかず、商機ですが甘んじてこの状況を受け止めるしかないですね。日本の防衛産業は、日本のお家芸の産学連携のような研究開発にも武器輸出にも重い制約が課され、かつ各企業も防衛産業をあまりPR できない「日蔭産業」の状況です。
 武器輸出は難しくとも日本もちょっとは頭の使いどころがあるだろうと思うのは、韓国は前述の防衛産業(武器輸出)の急成長について、実は原子力発電ほかの分野のセールスとのタイアップないしパッケージで成長させていることです。こういうのは往時の日本のお家芸だったのでは?経済・通商の専門ではない、ただの自衛隊OBのたわごと過ぎませんが、武器輸出は難しくとも、いろいろ付け入る余地があるのに…と。例えばウクライナへの重要インフラ攻撃で応急復旧や対策が喫緊の課題となっている電力復旧・電源確保の分野でウクライナで効果的な支援を提供し、と同時に同様の心配を抱える東欧諸国にこうした分野のビジネスにつなげるなど、日本の活躍できる分野をテコにいろいろ付け入る余地はあると思うんですけどね。


 今回はいつもと全く違う分野の話を取り上げてみました。
 ちなみに、前回のブログのネタにて、ロシア国防省/軍首脳部とワグネル部隊/国内タカ派の対立にプーチン大統領が後者を支持し軍の再建に舵を切った話をしましたが、2023年1月22日付ISWのupdateではそのネタが整理され捕足されていました。私の読みとほぼ同じでしたよ。まぁまぁ当たってるでしょ。関心のある方はISW記事をご覧ください。

頑張れ、ウクライナ!

(了)

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2023/01/19

対立や脱走、ロシア軍内に軋み大: 立て直し図るプーチン大統領とゲラシモフ参謀総長

Russian generals
中央がショイグ国防相、右がゲラシモフ参謀総長兼総司令官 (2023年1月17日付Newsweek記事「Think Tank Points to New Sign Putin Is Preparing for Second Mobilization」より)

対立や脱走、ロシア軍内に軋み大: 立て直し図るプーチン大統領とゲラシモフ参謀総長
 現在の戦況は、東部戦線の要衝バハムート攻防戦及びその近傍のソレダールをめぐる攻防戦ほか、激戦ながら概して大きな戦況に動きがない膠着した状態です。
戦況は激戦ながら膠着しつつある中、前回の2023年1月13日付のブログ「ロシア軍の東部戦線ソレダール奪取と総司令官交代から垣間見る内部抗争」にて触れたロシア軍・国防省とワグネル部隊・タカ派について、その後興味深いニュースがありました。

 まとめてみますと表題の通りです。
 ロシア軍内(軍隊、国防省、ワグネル部隊、タカ派論客らも含め)に対立や指揮・統制系統の乱れや機能低下が著しく、そのような中、暗躍するワグネル部隊の中で指揮官クラスがウクライナ側に脱走するなど、様々な軋みがかなり大きく、もはや戦争継続自体が危ぶまれる状況です。一部の元軍人で司令官クラスのタカ派論客からは、「このままではロシアはこの戦争に勝てず、いずれプーチン政権は倒れ内乱になり、滅びる運命にある」とまで危機を煽る直言がウェブ上に出回っています。私見ながら、これらを踏まえて、プーチン大統領が本来組織としてあるべき姿を軍のナンバーワンである参謀総長のゲラシモフ大将に命じ、国防省から軍の指揮系統から総点検して大改革による立て直しを図っているのではないか、と推察します。

軍・国防省 vs ワグネル部隊・タカ派 の対立の行方
 ロシア国内には元軍人など愛国主義的なタカ派の軍事ブロガーがおり、彼らがウェブ上で対ウクライナ戦を煽ったり批判したり、それが国民世論形成の一翼を担っており、プーチン大統領も一目置く状態です。その渦中に傭兵ワグネル部隊を擁するプリゴージンがおり、そういったタカ派の支持を得ており、これに対する国防省の戦況公表をめぐる対立は、相変わらず激戦状態です。
非正規軍でありながら元特殊部隊等の軍人の傭兵からなるワグネル部隊は、現在もソレダール攻防戦の主力部隊として戦闘中であり、ソレダール鉱山を確保したことをもって「ソレダールをワグネル部隊が孤軍奮戦の上で事実上占領している」と位置づけ、プリゴージンは度々宣伝しています。対する政府・国防省としてはこれを認めず、あくまでロシア軍の大きな作戦の中の一地域の戦闘としてソレダールを捉え、「一部で成功があったが、未だ奪取・占領に至らず、現在戦闘中」と説明し、婉曲的にプリゴージンの勇み足的な宣伝を否定しています。プリゴージンはペスコフ報道官に対し「あいつは全く信用できない」とこき下ろし、軍首脳や国防省、ひいては最近国防省に贔屓をしているプーチンに対する恨み節を語り、プーチンに賛同する有名人をクソミソにこき下ろす「言いたい放題状態」です。これに対しペスコフ報道官は、会見にて記者からプリゴージンと国防省との間の対立を指摘された際の説明において、「そういった指摘は主として外国の敵から情報操作としてなされる。一部に国内にも同様の行動をとる友人もいる。」という言い方でいなしています。されど、概して対立は顕在化しています。
 他方、ゲラシモフ大将の総司令官任命については、政府・国防省・軍首脳に対して非常に批判的な国内のタカ派勢力も容認的な態度で、むしろタカ派の期待の星だった前任者スロブキンと協調してエネルギーインフラの砲爆撃作戦を継続してくれ、という論調が多い模様です。
(参照: 2023年1月16日付ISW記事「Ukraine Conflict Update: Russian Offensive Campaign Assessment, January 16, 2023」)

ワグネル部隊の指揮官クラスがウクライナ側に脱走した事件も
 先週1月13日(金)にノルウェーの国境で1名のロシア人が不法入国でノルウェーの国境警備隊に身柄を拘束されました。その男が東部戦線で勇名をはせたワグネル部隊の一指揮官だったことで大騒ぎになっています。彼はアンドレイ・メドベージェフという男で、プリゴージンも一目置いており、本人がノルウェーの市民権を持ち北欧系のスペシャリティーを持っていることから、北欧諸国の傭兵からなる大隊の大隊長として雇用していた模様です。プリゴージンはこの男のことを「囚人を虐待した張本人」と非難している模様ですが、この男の逃亡を支援した組織によれば、この男はワグネル部隊が犯した多くの人権侵害や戦争犯罪に耐えかね、傭兵の雇用期間を契約を勝手に無期限に延長されたことが契機となって部隊から逃亡し、ノルウェーへの亡命を希望している、とのことです。恐らくは、ワグネル部隊の人権侵害や戦争犯罪の証拠を持っており、それを西側のロシアの戦争犯罪を糾弾する組織に提供することを交換条件に自分の身柄の安全を図っているものと思われます。
 大隊長級の指揮官自らが部隊を裏切って逃亡した、という事実は、ワグネル部隊は、日々の作戦遂行において、人権侵害や戦争犯罪など殺伐とした状況下に身を置いて毎日を過ごしており、ワグネル部隊内でも対立や指揮統制の乱れが起きており、指揮官クラスが逃亡をするほどのギリギリの精神状態であることが垣間見られます。
(参照: 2023年1月16日付BBC記事「Ukraine war: Russia's Wagner Group commander requests Norway asylum」)

元ロシア将官が「このままでは戦争に負け、内戦になり、ロシアは滅ぶ」と論戦を張る
 タカ派軍事ブロガーとしてロシア国内で有名な元ロシア軍司令官イゴール・ガーキンは、「このままではウクライナ戦争で何百万もの死傷者を出し、国内には内戦が起き、3日で国が滅びるだろう」という憂国の投稿をウェブ上に投降し話題になっている模様です。同様の投稿は、ロシア国会下院の元副代理のマーク・フェイギンも掲示しており、「ウクライナでのプーチンの包括的な敗北は、権力を求めるさまざまな派閥や地域との血まみれの内戦を引き起こす」と警告しています。更に、同氏は「もし、ウクライナが南部ヘルソン~ザポリージャ~東部ルハンスク・ドネツクを完全に奪回するようなことがあれば、クリミア攻防戦が始まる前にプーチン政権は崩壊するだろう」と述べています。ここまでは軍事評論家や政治評論家の発言としてまだ許されるのかも知れませんが、同氏は更に次のようなことまで発言しています。「・・・最も簡単なのは、ロシア国内のエリートが決心し、西側と交渉において、プーチンの代替品を選択し、その停戦を前提にそれが成り立つ新生ロシアの初期枠組みを提案し、将来の自由選挙に向けて取り組むこと、である」と。よくこんなことを言って捕まりませんよね。

 これが西側の普通の国なら、だれがどういう議論や主張をしようが自由ですが、ロシアですからね。特別軍事作戦の遂行や国家の方針に対するマイナスの議論や主張は法律で厳しく罰せられるお国柄ですから、そんなロシアでこれらの論調が出始めていること自体、かなり軋みが大きくなっている証左と言えましょう。
(参照: 2023年1月15日付 Newsweek記事「Former Russian Commander Warns of 'Civil War' That Will 'Kill' Russia」)


そうした軋みを正すため、プーチン大統領とゲラシモフ参謀総長兼ねて総司令官が大改革か?
 この流れの記事を漁り読みしていて、全くの私見ながら「へぇー・・・」と認識を新たにしたのがプーチン大統領の立ち位置の転換です。今回のウクライナ侵攻前から、プーチン大統領は時にロシア国内のタカ派の愛国心を煽ってみたり、自分の口からは言いたい発言をタカ派に代弁させてみたり、核攻撃のような過激で危険なタカ派意見を観測気球のように言わせてみたり、軍首脳や国防省の戦争指導のまずさをタカ派にこき下ろさせたり、かと思えばタカ派をつけ離してみたり、・・・要するに、タカ派の意見を世論のリードや観測気球として利用してきた訳です。プーチン大統領はタカ派をうまく利用している、という認識でした。そのプーチン大統領が、今回は結構本気で国防省・軍首脳に肩入れし、無責任なタカ派の批判や意見に耳を貸さず、本腰を入れて国軍/国防省の改革に乗り出し、本気で長期戦でウクライナ侵攻を成功させるべく姿勢を転換したのではないかと推察します。
 例えば、以前はプリゴージンのワグネル部隊の勝手な行動や自画自賛広報に対して時に賞賛したり支持したり、多少のウェブ上の過激な発言にも目をつぶり、公にプリゴージンを否定したりしてきませんでした。しかし、前述のペスコフ報道官の戦況記者会見の発言のように、プリゴージンのワグネル部隊の手柄話を否定しています。これまでになかったことですが、プーチン大統領自身の発言でも、今回の「ワグネル部隊単独によるソレダール奪取」というプリゴージンの主張を否定し、あくまで国防省と軍首脳の作戦計画に基づく作戦遂行の成果である、と説明しています。今回の一連の動きを踏まえ、ISWの分析でも「プーチン大統領自身がロシアの情報空間におけるプリゴージンの影響力を意図的に引き下げようと努力している可能性あり」と見ています。

 また、ゲラシモフ参謀総長をウクライナ侵攻の総司令官に任命した件も、当初の私の見立てでは「プーチンは常にタカ派vs軍/国防省のバランスを取って政権維持/軍事作戦遂行に利用していて、今回の対立顕在化と総司令官交代の動きも同様」と見ていましたが、「今回は軍/国防省に肩入れしてみた」という一時的なものではなく、どうやら今回は本気で軍本来のあるべき姿を正しているように思えます。
 例えば、今回の改革の一つで、国防省を「国防総省」に改編しています。また、最前線の作戦を国家としてしっかりサポートできるように、最前線の戦闘部隊~戦闘支援部隊~戦務支援部隊~後方補給基盤~国内の軍需産業などの一貫した戦争遂行を支える挙国体制を立て直しています。その陣頭指揮に軍のトップのゲラシモフを立てている訳です。しかも、最新のニュースでは、どうやらロシアは1月中にも第2回目の動員を計画している模様です。記事には書いていませんが、私見ながら、今度は前回のような部分動員ではなく、この侵攻作戦を戦争と認め、本格的な国家総動員態勢になるかも。いよいよ本気を出し、本腰を入れだしたのかも知れません。
(参照: 前掲ISW記事、及び2023年1月17日付Newsweek記事Think Tank Points to New Sign Putin Is Preparing for Second Mobilization」)

 と、いうわけで、ロシア国内の軍をめぐる対立などの軋みが大きくなっている中、プーチン大統領もただの独裁者じゃありませんから、ここはロシアの抱える問題を真摯に状況を把握し、本来あるべき姿に立て直し始めたのではないか、と推察しております。敵ながら天晴れ、適切な判断だと思います。

敵もふんどしを締め直しているから手強いぞ!
それでも頑張れ!ここが踏ん張りどころだウクライナ!

(了)

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2023/01/13

ロシア軍の東部戦線ソレダール奪取と総司令官交代から垣間見る内部抗争

Wagner.jpg
ソレダール鉱山にて民間軍事会社ワグネル部隊によるソレダールの「奪取」を喧伝するブリゴージン氏 (Wagner boss Yevgeniy Prigozhin in a picture claiming to show the mercenaries in a Soledar salt mine)(2023年1月12日付BBC記事「Ukraine war: Who controls Soledar and why it matters」より)
ロシア軍の東部戦線ソレダール奪取?と総司令官交代から垣間見る内部抗争
ピンチはチャンス!ソレダールを死守してロシアの反攻を潰すべし!

 2023年1月12日現在、ロシアのウクライナ侵攻の情勢に大きく2つの変化がありました。
 ロシアが東部戦線ソレダールを再び陥落させ、かつ総司令官を総参謀長でもあるゲラシモフ大将自身が握る、という2つの動きの威勢のいいヘッドラインが報道されています。しかし、その背景にはロシア側で国防省・軍vsと非正規軍民間軍事会社の軍隊ワグネルの内部抗争の構図があり、これにそれぞれの支持勢力があり、これまではプーチン大統領はこれらをうまくバランスを取りながらマネージメントしてきましたが、どうやらかなり金属疲労が起きて軋みが大きくなっていると推察されます。ウクライナにとって、東部戦線ソレダールが取られると要衝バハムートの攻防戦はますます厳しくなります。実はソレダールはまだ完全に陥落していない模様なので、ウクライナ軍はこのピンチをむしろ「ロシア内部抗争に付け入るチャンス」として、この激戦を死守してもらいたい、という趣旨でお話し致します。

ロシアのソレダール再奪取と総司令官の交代
 前述の通り、2023年1月半ばの段階で、2つの大きな動きがありました。まず第一に、東部戦線の要衝バハムートの近郊の町ソレダールをロシア側が「陥落させた」可能性があること、もう一つは、つい3ケ月前にプーチン大統領からロシアの特別軍事作戦の総司令官に任命されたスロビキン空軍大将からロシア軍参謀総長ゲラシモフ陸軍大将に交代したこと、という大きな動きがありました。前者はロシアにとっては夏以降はウクライナの反撃攻勢に押され放題、せっかく侵攻作戦で獲得した地域をウクライナに奪還されてばかりでしたので、東部戦線で要衝バハムートをめぐる激戦で、近隣の街を攻撃奪取したとすれば久々の快挙です。ロシアのタカ派の軍事ブロガーやオリガルヒ(プーチンと結託した新興財閥)はヤンヤの歓声と称賛を与えています。また、後者のゲラシモフ総司令官の誕生は、ロシア軍全体の作戦の総責任者が自ら特別軍事作戦(ウクライナ侵攻)を指揮するとすれば、指揮系統の統一という観点で作戦遂行がより強力になるとロシア政府は喧伝しており、確かに挙国体制が明確になります。前者・後者二つ合わせて、ロシア側にとっては久々に戦勢を巻き返す契機と言えましょう。

「ソレダール奪還」問題で民間軍事会社ワグネルとロシア軍の内部抗争が見える
 11日に民間軍事会社ワグネルの事実上の総帥ブリゴージンが、「東部の要衝ソレダールをワグネル部隊単独で激戦を制し陥落させた!市街はウクライナ兵の死体があちこちに…」と公表して自分の手柄とばかり喧伝しました。ブリゴージンは元々はプーチン大統領の料理人で、その腕を買われてプーチンの子飼いのヤリ手の起業家として金融業で財を築き、今ではプーチンの私兵ともいうべき民間軍事会社ワグネルも所有する男です。こいつは国家の代表機関でも国防省や軍でもないのに、会社の体をした傭兵ワグネル部隊を使って今もアフリカや中東で暗躍し、ウクライナ侵攻でも国防省や軍の指揮下には入らず、半ば勝手に軍事作戦を遂行しています。今回の東部戦線バハムートをめぐる攻防戦もその一つで、軍の指揮掌握下ではなく、ワグネル部隊が勝手に東部戦線の一翼を担って勝手に作戦を実施しています。要衝バハムートを落とすためにはソレダールという緊要地形を手に入れる必要があって、ここに戦力を集中して半ば攻撃進展している模様です。ウクライナ侵攻の全体像がうまくいっていないことのスケープゴートとして、国防省や軍首脳部がロシア国内のタカ派の批判の的になっており、彼らの目には逆説的にブリゴージンの傭兵ワグネル部隊の活躍は胸のすく思いのようで、人気の的になっています。ブリゴージンもそれを知っての上で、自己顕示欲を丸出しで軍首脳の作戦遂行をこき下ろし、ワグネル部隊が孤軍奮闘しているようにロシアのネット上でPRしています。
 面白くないのは国防省とロシア正規軍。よって、ワグネルが孤軍奮闘して「ソレダールを奪取」とは認めたくないので、「奪取」を否定し、かつワグネル部隊には全く言及せず、ロシア軍の作戦の一環としてソレダールで善戦しているように公表しています。
これに対し、当初ブリゴージンのワグネルが陥落させたとの報に大喜びで絶賛したタカ派軍事ブロガーやオリガルヒ達は、この国防省の正式発表で冷や水をかけられ激怒。
 これが、ロシア側の「国防省・軍」vs「ワグネル部隊+ロシアのタカ派」という構図です。
 
「総司令官交代」問題も内部抗争が透けて見える
 今回、ゲラシモフ参謀総長がスロビキン将軍からウクライナ侵攻の総司令官を引き継ぎます。
 このスロビキン空軍大将は、元々シリアのアレッポで市民の巻き添えを意に介さず完膚なきまでに反体制力を撲滅した悪名高い空爆王で、ウクライナ侵攻においても、10月以降の徹底したウクライナ電力インフラへの砲爆撃を指揮しました。ウクライナの電力インフラ破壊は絶大な効果はありましたが、ウクライナ国民の交戦意志を喪失させるまでには至りませんでした。今後はゲラシモフ参謀総長がウクライナ侵攻作戦の全権を握って、陸海空の作戦遂行と全軍あげた後方支援による総力戦でロシアの猛攻撃が再興されるのかも知れません。

 しかし、この交代劇も実はロシア国内の内部抗争の端緒が見えるのです。
 実は、前述の国防省/軍vsワグネル部隊+タカ派の構図で言えば、スロビキンは「ワグネル部隊+タカ派」の期待の星でした。タカ派達からすると、国防省や軍首脳の方針は手ぬるく不徹底に見え、スロビキンのようにやるべき時は冷徹に無垢の市民の巻き添えなど顧みず、完膚なきまでに徹底的な作戦を遂行する指揮官が待望されました。そのスロビキンをプーチン大統領が総司令官にしたので、タカ派は大喜びでした。
 他方、総司令官になったスロビキンは、作戦遂行上の必要性からプーチン大統領と直談判できるまでに力を持ちました。一応、軍の指揮系統的には、ショイグ国防相やゲラシモフ参謀総長に事前に話を通すべきですが、スロビキンはそれを無視して大統領と直談判する地位にまで至っていました。これは国防省や軍首脳にとって憤懣やるかたない話です。当然、ウクライナ侵攻の作戦遂行と国防省/軍としてのその支援体制は一枚岩ではなく、ギクシャクし齟齬がありました。

 面白いことに、1月10日の段階では以前にも一時的に総司令官に名の上がったラパン大佐という部隊指揮官が総司令官につく、という発表がありました。米国ISW(戦争研究所)の10日付の戦況分析にも出ていました。スロビキンより格下ですし、タカ派からも作戦指導についてバッシングを受けていた人物なので、私も本当か?疑いました。その翌日、11日付けで前述のように「ゲラシモフ参謀総長が総司令官に」との正式発表となりました。
 私見ながら、この急転直下のゲラシモフ参謀総長の抜擢にこそ今回の総司令官交代の本質が透けて見えると推察します。要するに、プーチン大統領が国防省/軍首脳vsワグネル部隊+タカ派の勢力のバランスを取りながら、結局はプーチン大統領の保身を図っている、と読んでいます。私見ながら、スロビキンは力を持ちすぎ、ブリゴージンのワグネル部隊は自分勝手が過ぎ、タカ派も調子に乗り過ぎているので、ここらで舵を切り直して、国防省/軍首脳に活躍の出番を作ってやった、ということだと思います。舵を切ったはいいですが、さすがにラパン大佐程度のタマでは荷が重すぎるので、軍の最高責任者であるゲラシモフを担ぎ出したわけです。他方、軍のトップですから、もはや次のタマはありません。(勿論、だめなら次のタマを込めるだけですが。)当然、今回せっかくあるべき姿に回帰して国防省/軍首脳に舵取りをさせてくれる機会が与えられたので、彼らも腹を決めて総力戦で臨むでしょう。要するに、長期戦となろうし、春からの攻撃再興においては勝たねばならないわけです。プーチン大統領にネジを巻かれた感じですね。

ピンチはチャンス!ソレダールを死守してロシアの反攻を潰すべし!
 迎え撃つウクライナ側に取ってみれば、「ふざけんな!」ですよね。
 目下激戦中のバハムート攻防戦は絶対落とすわけにはいきません。ロシア側の報道のように、ソレダール地区は確かにワグネル部隊の優位になっているようですが、まだ陥落はしていません。仮に陥落したとしても、ソレダールがロシアの手に落ちると、ソレダール鉱山の地下坑道などロシアにとって有力な攻撃基盤にはなりますが、決して要衝バハムート攻防戦における決定打ではありません。ブリゴージンは「ワグネル部隊が戦略的価値の高いソレダールを奪取したのでバハムートは陥ちる」と喧伝しているほどの戦略的な重要性はソレダールにはありませんし、ワグネル部隊ももはや攻撃衝力が尽きています。
 ピンチに違いないものの、ウクライナ軍にとってピンチはむしろチャンス!ここでソレダールやバハムートを死守して、ワグネル部隊の攻撃を頓挫させれば、ロシア側の「イケイケ」的な戦勢は一機に減速します。ロシア側は東部戦線のバハムート攻略が現在の主攻撃/焦点ですから、ここでコケたら春の攻撃再興も攻撃の足がかりを失います。
 バハムート攻防戦は非常に激戦で苦戦の真っ最中ですが、ここが頑張りどころ、正念場です。ここでバハムート攻防戦に戦闘力を集中し、ワグネル部隊を中核としたロシア側の攻撃を断固潰しましょう。
 
 頑張れ!ウクライナ、勝利の日は近い!

(了)

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2023/01/07

プーチン新年の挨拶で見せた馬脚: 背景はいつも同じモデルでフェイク記念写真

the same woman
the same people
(いずれも2023年1月7日付BBC記事「Ukraine war: What does facial recognition software make of Putin’s backdrop crowd?」より)

プーチン新年の挨拶で見せた馬脚: 背景はいつも同じモデルでフェイク記念写真
 年初めに小ネタですみません。
 BBC記事に興味深いものがありました。
 2023年1月7日付BBC記事「Ukraine war: What does facial recognition software make of Putin’s backdrop crowd?」によれば、…というより画像を見れば一目瞭然ですが、ロシアのプーチン大統領が2022年12月31日夜に行った年末年始の国民への挨拶のテレビ演説で、背景に並んでいた女性兵士は、全く別の機会のプーチン大統領の行事参加の際の記念写真にも別の服装で、いつも映り込んでいる模様です。これは、実はこの女性のみならず。下の画像をご覧いただくと、これまた一目瞭然ですが、こうしたプーチン大統領の現地視察などでの広報写真には、いつも映り込むモデルさんたちがいて、毎回そのシチュエーションに合わせた服装で役を演じているようです。要するに、プーチン大統領の現地視察では、その現地視察をそれらしく広報する撮影スタッフがいて、モデルさんにそのシチュエーションにピッタリの服装を着せて、広報効果の高い「宣材写真」を撮っている、ということが明らかになりました。

 当のBBC記事は、上記のような指摘が多々あるため記事として特集を組んで顔認証ソフトでその適合率を検証する、という真面目な客観的なものです。適合パーセンテージは必ずしも100%に近いものではありませんが、これらの写真画像を並べてみれば、我々人間の目による顔認証で十分同じ人だな、と判定できます。

 ロシア政府としては、プーチン大統領が国民的イベントや地方の行事や様々な現場を足しげく現地視察によって状況を把握している姿を広報し、特に、コワモテなプーチン大統領が案外気さくで、ローカルな人たちと同じ場所で同じ視点で気さくに意見交換しているようなイメージを流布したくて、こうしたフェイクな広報活動をしているのでしょう。しかし、やはりそこに「フェイク」を使うのは信義にもとります。それでは「情報操作」になりますよね。まぁ、そういうお国柄なのでしょう。

新年の挨拶でプーチン大統領が「(ウクライナ侵攻で)勝利する」と宣言
 この年頭(実際には大晦日夜)のテレビ演説にて、プーチン大統領は進行中のウクライナでの特別軍事作戦(ウクライナ侵攻作戦)について「我々の家族とロシアのために勝利する」と言明しました。 プーチン大統領は、一年を振り返り「困難だったが、必要な判断を下し、ロシアの主権を完全に手にするために重要な一歩を歩んだ年だった。…(中略)…これまで欧米諸国がロシアへの侵略の準備を進めてきた。…(中略)…(欧米諸国は)ロシアを弱体化させて、分裂させる目的で、ウクライナとその国民を利用してきた。」等の持論を展開し、新年に向けて必勝の意志と国民の更なる団結を呼び掛けました。
(参照: 2023年1月1日付毎日新聞記事「プーチン氏、新年のあいさつで「勝利する」 軍服の兵士と出演」)

 この演説の際に、冒頭の画像のような背景にしたわけです。年齢、性別さまざまな軍人を並べ、将兵たちがプーチン大統領を核心に一致団結して国難に当たっているかのようなイメージで。
 国民の多くは、この背景の将兵たちは実際のどこかの部隊の兵士達なんだろうな、みんな国家に忠誠を誓い、プーチン大統領の指揮統率の下、一致団結しているんだろうな・・・、という力強い印象を持ちますよね。これをいつものモデルさんたちを配役したフェイクの広報、ただのイメージ背景なのだと知ったら、ロシア政府が企図した国民へのイメージ戦略・情報操作も、さぞや権威が失墜することでしょう。これもDXの時代、顔認証ソフト等の精度が上がったが故の副作用ですね。


ロシアに負けるな!2023年も頑張れ!ウクライナ

(了)

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