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2023/03/28

激戦バハムート第5弾:バハムート中心部維持するも満身創痍、ロシア攻勢失速とはいえ予断許さず

Medevac1.jpg
要衝バハムートの戦闘は終わっていない。衛生兵チームが負傷兵を部隊の救護所に搬送する場面(2023年3月24日付VOA記事「'Just a Typical Day': Rescuing Wounded Soldiers on Ukraine Front」より)

要衝バハムートの戦況が「安定」との発言あり
 状況が動きましたね。
 2023年3月25日(土)(現地時間)にウクライナ総司令官ザルジヌイ中将がフェイスブックで明らかにしたところによりますと、「.. due to the tremendous efforts of the defence forces, we are managing to stabilise the situation.(=ウクライナ国防軍の多大な努力のおかげで、(バハムートでの戦闘は)我々は安定した状況を維持している。)」と、バハムート攻防戦は峠を越えた旨のコメントを表敬しています。同中将は英国軍参謀総長のラダキン提督とも意見交換し、英国国防省は同日、「ロシア軍のバハムート攻撃は極端な消耗のため大部分が行き詰まった模様であり、作戦の焦点をバハムートの南北に転換した模様」との分析を公表しました。

 とはいえ、バハムートでの戦闘が終わったわけではありませんのでご留意を。バハムート攻防戦はまだ激戦が続いており、決してロシア軍を撃退し、バハムート市内のロシア軍に占領された地域を取り返したわけではありません。バハムート市の状況について、ウクライナ軍地上部隊司令官シルスキー准将はこう語っています。「… (ロシア軍は)… had not given up hope of taking Bakhmut at all costs despite losses in manpower and equipment... they are losing significant strength …(= ロシア軍はいまだにバハムートをいかなる犠牲も厭わずに奪取したいという願望を諦めていない。単に兵力を失っているだけだ。)」

 実際、バハムートのウクライナ軍とロシア軍の接触線の状況は下図のように、数日前と大きな変化はなく、ウクライナ軍はバハムート市の中心部分を保持しているものの、市内の相当部分をロシア軍に占領されたままの状態で、この接触線のまま攻撃・防御が散発的に起きている状況であって、両軍ともに戦闘による死傷者が続いている状況です。また、バハムートのすぐ南にある隣町アウディイウカではロシアの猛攻で市街が破壊されて月面のような状況で、市当局は全面避難を決定しています。
(参照:2023年3月27日付ISW記事「RUSSIAN OFFENSIVE CAMPAIGN ASSESSMENT, MARCH 27, 2023」、同年同月23日付BBC記事「Ukraine Evacuating 'Post-Apocalyptic' Frontline Near Bakhmut: Official」ほか)
Bakhmut as of Mar27 2023
バハムート市の戦況図(2023年3月27日付ISW記事「RUSSIAN OFFENSIVE CAMPAIGN ASSESSMENT, MARCH 27, 2023」より)

バハムートのウクライナ軍守備隊の満身創痍の戦い
 2023年3月24日付VOA記事「'Just a Typical Day': Rescuing Wounded Soldiers on Ukraine Front」にバハムートでの「典型的な日常」の1コマが報道されていましたのでご紹介します。VOA(米国の国営報道機関)の特派員がバハムートの最前線の衛生兵チームに同行取材した内容です。

 また最前線の兵士が負傷したとの連絡があり、衛生兵チームは最前線のすぐ後方の患者集合点に救急車両で向かい、負傷兵士受け入れのため日暮れの瓦礫だらけの街角で待つ。最前線から同僚兵士が負傷兵を引きずってくる。衛生兵はゴムの手袋を装着し、負傷兵を受け取る。負傷兵は引きずってきてくれた同僚兵士にVサインをする。衛生兵チームは負傷兵の負傷状況、バイタル等を確認し、救急車両の中で応急処置をする。救急車両が最前線後方の部隊救護所に着く。部隊救護所には負傷兵が次々と運ばれ、既に救急処置を受けた負傷兵達はその負傷の状態により、更に後方のクラマトルスクの野戦病院に後送するかどうかの判断がなされる。また、砲弾が自分のすぐそばに落ちた衝撃で脳震盪になった者が力なく横たわる。中には救護所で既に大量に出血し手の施しようがなく、やがて息絶え、黒い遺体袋に入れられて静かに後送を待つ者も。衛生兵は、次々と担ぎ込まれる負傷兵の処置委追われながら、先ほど大量出血で息を引き取った兵士への処置を思い出して、「彼はまだ若かった。」と肩を落とす。
Medevac2
衛生兵に搬送される負傷兵がここまで引きずってきてくれた同僚兵士にVサイン(前掲VOA記事より)

 こんなことが日常的に起きているのがバハムートです。そしてこれはバハムートに限らず、ウクライナの前線のあちこちで同様の状況です。

ロシア攻勢失速といえども予断許せず
 「バハムトでロシア軍失速」、「東部要衝バハムト安定」などの報道がなされ、もはやバハムート攻防戦は戦闘が終わったかのような印象をお持ちの方が多いと思いますが、既述のウクライナ地上部隊司令官の言葉のように、ロシア軍はバハムート攻略を諦めていませんし、ウクライナ侵攻もまだまだ続きます。
 ウクライナの春季攻勢が待望される中、ロシアはメドベージェフ元首相がクリミアへの攻撃があれば核兵器使用も辞さない旨の恫喝発言をしたり、プーチン大統領が隣国ベラルーシに戦術核を配備する決定をしたり、
・・・まだまだ風雲急を告げるウクライナ情勢。余談が許せません。

それでも頑張れ!ウクライナ
春は必ずやって来る!

(了)

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2023/03/23

激戦バハムート第4弾:ロシア軍猛攻で包囲進む中ウクライナ軍は弾薬不足でギリギリの戦い

激戦バハムート
 2023年3月23日(日本時間)現在、ウクライナ戦争における203高地、戦闘の焦点となるバハムート攻防戦ではロシア軍の冬季攻勢のピークと見られ、ロシア軍の猛烈な砲爆撃と戦車と徒歩兵によるバハムート市内への浸透が続き、ウクライナ軍バハムート守備隊は弾薬の枯渇の中で善戦し、バハムート市街戦の戦闘は危機的状況の中、益々激しさを増しています。
 昨日3月22日、ウクライナのゼレンスキー大統領は、隠密裡に激戦地バハムートを訪れバハムート守備隊の将兵の奮戦敢闘の労を労い激励して帰りました。
(参照:2023年3月22日付BBC記事「Ukraine war: Zelensky visits front line near Bakhmut as Russia targets cities」、下の画像も同記事より)
Zelenskys visit to Bakhmut
最前線バハムートを訪れたゼレンスキー大統領

各正面でロシア軍が猛攻、ただしイタチの最後っ屁かも
 ISWの分析によれば、ロシア軍は現在、戦闘の焦点バハムート正面に加え、バハムートの北のスヴァトーバ〜クレミンナの線、及びバハムートの南のアウディウーカ正面において作戦テンポを上げて攻勢を強めている模様です。加えて、キーウをはじめとするウクライナの主要都市へのドローン攻撃を行っています。とりわけ、バハムートを含めとする東部戦線の各地の正面で攻勢を強め、一定の攻撃進展が見られています。特に、バハムートでは図に見られるようにロシア軍の包囲の輪が縮まりつつあり、ロシアの傭兵部隊ワグネル総帥のブリゴージンは「バハムートの44%をワグネルが占領した」と喧伝していますが、彼は常に戦果を誇張しているので話し半分に理解した方が賢明です。それでも、バハムートの奪取を目指してロシア軍が猛攻していることは間違いありません。
 他方、緻密な戦況分析で定評のある米国のISW(戦争研究所)の分析では、このロシア軍の猛攻について、継戦能力(兵力+後方補給能力)及び後続の新戦力の欠如から、猛攻を仕掛けているものの今実施中の攻勢がピークで、もはや後が続かない模様です。要するに、イタチの最後っ屁的な最後の猛攻を見せている模様です。
(参照:2023年3月21日及び22日付ISW記事「Ukraine Conflict Updates: RUSSIAN OFFENSIVE CAMPAIGN ASSESSMENT」,
下の図も同記事より)

Bakhmut Mar22

ウクライナ軍のバハムート守備隊ももはやギリギリ:バハムート市街戦の実相
 対するウクライナ軍バハムート守備隊も、ウクライナ軍の春季攻勢の準備のため再補給は最小限に制限され、撃つ弾薬に事欠く状態でギリギリの善戦をしております。ここ数日のロシアの猛攻で、戦闘はついにバハムートの中心部周辺に及んでいます。上の図をご覧ください。赤いエリアは既にロシア軍に取られており、黄土色のエリアは最近ロシアの支配下に入ったと宣言しているエリアです。ついにここまで来ています。
 ロシア軍がバハムート市街の中心部周辺に北と南からジリジリと迫る中、ほぼ包囲されたバハムート守備隊は、数ヶ月にわたる激戦を経て、兵力や武器弾薬の補給を受けているものの、戦闘疲労が著しく、武器弾薬が枯渇しつつあり、火力を使い果たしています。特に、装甲車両と榴弾砲等の野戦砲の弾薬が不足し、ロシア軍の市内への侵入を防ぎきれない状況で、それでもギリギリの状況で同地を死守しています。
(以下参照:2023年3月20日付MilitaryTimes記事「Ukrainian forces running out of shells, equipment in fight for Bakhmut」、下のドローンに手榴弾をつける兵士の画像も同記事より)
 
 苦戦している最大の要因は、ロシア軍の拠点や前進を叩く野戦砲や多連装ロケットなどの「砲弾」、市街戦を戦うための小銃・機関銃・携帯肩撃ち対戦車弾などの「弾薬」、バハムート市街での銃撃戦で身を守る「装甲車両」が不足しているためです。今必要なのは十分な砲弾、弾薬、装甲車両の再補給ですが、ウクライナ軍指導部としては、春季攻勢のための兵力と武器弾薬の確保を重視しており、バハムートへの再補給を制限している模様です。バハムート守備隊の将兵は、砲弾、弾薬、装甲車両の不足を不満に思いつつも何とか士気を保って潰走することなく持ち堪えている状況です。
 バハムート市内には、ロシアの砲爆撃により雨あられと砲弾が炸裂、その間隙を縫ってロシア軍の戦車と歩兵が射撃しながら侵入してきます。特に、最近のロシア兵は動員された訓練不足の市民兵が小銃だけの武装で次から次へと出てきては、ロシアの砲爆撃の開けた穴に身を隠しながら躍進してきます。これを廃墟となった町中で迎え撃つ訳ですから、結構な至近距離であり、ロシア兵の死傷者は非常に多く、一方のウクライナバハムート守備隊の死傷者も相当出ています。ロシアはウクライナより人口が大きいので、訓練不足とはいえ動員すればまだまだ兵力は造成できます。ウクライナは限りある人的資源で戦っているので、そのギャップを埋めるのが欧米のハイテクの最新装備/武器弾薬(※)になっており、ウクライナ軍はゆっくりと着実にNATO軍の標準装備の部隊に生まれ変わりつつあります。とは言え、ハイテク装備を持っていても、戦場の負傷に関しては第1次世界大戦当時からあまり進化はなく、バハムートの市街戦で負傷した将兵は仲間が引きずって後方に下げ、衛生兵の応急処置を受けます。傷ついた将兵の多くは銃撃や砲弾の炸裂した破片によって引き起こされた外傷と、直近の砲弾爆発などによって引き起こされた脳震盪とその後遺症であり、衛生兵の持つ傷の消毒、止血帯による止血、輸血、縫合、モルヒネなどの応急処置以上のことはしてやれず、バハムートから後方の安全な野戦病院に後送されるのが遅れると生命に関わります。ロシアの砲弾落下が激しいときは当然後送してやれません。
drone.jpg
※ハイテクにもいろいろあるその一例、バハムートで結構有効な即興の武器:ドローンに手榴弾を装着して、敵を発見したら上から手榴弾を落とすもの

ギリギリの激戦、消耗戦で勝敗を決するのは「執念」だ、頑張れウクライナ!
 バハムートの攻防戦も事ここに至りました。相当厳しい状況です。
こうしたギリギリの戦闘では、以前から申し上げているように、時代錯誤と思われるかも知れませんが、精神力がものを言います。要するに、激戦のシーソーゲームを制する決め手は絶対に勝つという「執念」です。
 ロシア軍にも意地があるでしょうが、自分の国土が侵略されつつあるウクライナ軍にとってみれば、国家/国民の存亡を賭けた死に物狂いの戦いです。バハムート攻防戦は、本来のバハムートの戦略的価値以上に、今や両国の意地の焦点となっています。国を守る執念において、ウクライナの方が執念の質と苛烈さが違うでしょう。我々第3者はその執念の差に期待し「頑張れ!」と祈るしかありません。
 
 頑張れ!ウクライナ
 バハムートを守り切れ!

(了)

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2023/03/16

激戦バハムート第3弾:ロシアの攻撃ピーク越え、ウクライナが勇み足的春季攻勢でバハムートを辛勝と読む!

Bakhmut 3
ウクライナ軍のバハムート守備隊の必死の防戦(2023年14日付BBC記事「Ukraine war: Heavy losses reported as battle for Bakhmut rages」より)

バハムートを諦めないウクライナ
 バハムートの激戦は続いています。ウクライナのバハムート守備部隊は今やマリウポリのアゾフスタリ製鉄所の地下施設で戦ったアゾフ連隊と同様、バハムートの地下施設に籠城して孤立無援的にギリギリの戦いをしており、ロシアの攻撃が下火になったとはいえ、戦闘が長期化するほど先細ることは避けられません。ウクライナ軍としては、マリウポリの時のようにこの英雄達を見殺しにはできず、早く救いたいと思っています。ゼレンスキー大統領の言葉の端々に、ウクライナ国民の総意「バハムートを諦めない」という言葉を表明しています。
その頑張りが功を奏したのか、ここ最近のISWの分析や他の信頼できる報道から推察するに、日本時間3月16日現在の時点でどうやらロシアの冬季攻勢はピークを越えており、ウクライナはバハムートを守り切れると、私見ながら読んでおります。

ロシアの冬季攻勢はもはやヤマを越えた模様   
 ISWのここ最近のロシア軍の動きの分析によれば、ロシア軍の攻撃行動の1日当たりの頻度を比較すると、ここ数週間で100回規模から逓減しており、ここ数日では20回規模にまで落ちています。攻撃の焦点も、これまでは明確にバハムートでしたが、ここ数日の動きではバハムートへの攻撃は砲撃と地上攻撃が散発的にあるだけで、むしろバハムートの北40キロに位置する要衝ライマンを目標としているような攻撃が、スヴァトーベ(バハムートの北100キロ)〜クレミンナ(バハムートの北75キロ)の線で行われています。(参照:2023年3月15日付ISW記事「Ukraine Conflict Updates: RUSSIAN OFFENSIVE CAMPAIGN ASSESSMENT, MARCH 15, 2023」、同年同月同日付Reuter記事「Explainer: Bakhmut: Why Russia and Ukraine are battling so hard for one small city」、同年同月14日付BBC記事「Ukraine war: Heavy losses reported as battle for Bakhmut rages」、ほか)

 全般的な攻撃頻度が逓減していること、及びバハムートへの攻撃が下火になり攻撃指向が更に北の要衝に変わったかもしれない兆候があること、これをどう見るか?
 ある分析では、これをロシアの「戦術的停止」と読み、元駐ロシア米国大使のマイケル・マクフォール氏は、「ロシアの戦術的停止による時間稼ぎは、戦争の長期化を望まない西側にとって致命的な効果を発揮し『支援離れ』をきたす」と懸念を表明しています。(参照:2023年3月9日付Newsweek記事「Putin's Military Gains Raise Concerns Ukraine Will Fall: Ex-Ambassador」)また、別の分析ではライマン方向の攻撃にウクライナ軍が対応できるのか憂慮する向きもあります。

 しかし、私見ながら、これは戦術的停止ではなく、「もはやバハムート攻略作戦の攻撃衝力が維持できないため、バハムートより戦略的価値の高い要衝ライマンへの攻撃に目移りしたもの」と見ています。要衝ライマンは、つい数ヶ月前まではロシア軍が占領していたドンバス平原でも有数の都市であり、ライマンを攻略できればスロヴィヤンスクまで幹線道路で南西25キロ、クラマトルスクまで更に20キロなど、ロシアが渇望する東部2州の完全制覇都も容易になります。ただし、バハムート攻略を諦めて更に北の要衝ライマン攻略に鞍替えするというのは、初めから無理な話です。攻略一歩手前まで行ったのに攻撃衝力がなくて攻めきれなかったクセに、要衝ライマンが落とせるワケがありません。攻撃衝力とは、敵の防御に対しぶちかまして第一線を突破するだけの攻撃戦力、及び敵の第一線を突破した直後にその突破口を拡げ、後続の新戦力を投入して戦果を拡大するだけの継続的な戦力の維持、これを可能にする武器弾薬の継続的な補給などの兵站力のことです。現在のロシア軍には、もはやそれだけの兵力も兵站力がありません。戦力は戦闘損耗で疲弊し、武器弾薬も枯渇し、後が続かない状況です。要するに、甚だ私見ながら、「ロシアの冬季攻勢はもはやピークを越えて右肩下がり」と見ています。

今後の展望:ウクライナは辛うじて維持しているバハムートを春季攻勢で逆包囲して解放、ロシアに奪われた東部2州をエグる!
 ウクライナは、一時は西側諸国が撤退を勧めたほど陥落一歩手前まで行ったバハムートを守り切るでしょう。これはウクライナがバハムートでロシアを撃退するというわけではなく、ロシアがこれ以上進展のないバハムート攻略にこれ以上の将兵の損耗に耐えられず、「これ以上の攻撃はできなくなった」というのが正しい理解だと思います。

 ここで、ウクライナは先手を打つと推察します。
もはやウクライナ、ロシア両国にとって両国民レベルでその攻防戦に注目し政治課題になっているバハムート攻防戦に勝つため、いや、バハムート守備隊を守るため、ウクライナが「今が戦機だ!」と春季攻勢に打って出るのではないか、と推察しています。ロシアの攻撃が下火になる中、まだバハムート攻防戦は細々と続いているのですが、このロシアの停滞状況を「戦機」捉えて、ウクライナの春季攻勢が始まると読みます。西側の大方の分析では春季攻勢の開始は西側供与の主力戦車などの新戦力がウクライナの第一線に揃う「5月」と読んでいますが、私は「戦機」を捉えてウクライナは恐らく4月、早ければ3月下旬に始めるのではないかと推察しています。ウクライナは全ての新戦力が揃うのを待たずに、やや勇み足的に春季攻勢を掛けるだろう、と思うのです。
 恐らく、ウクライナの春季攻勢は、バハムートではなく東部戦線の異軸からバハムートを北または南から逆包囲する形で、ロシア軍の薄皮陣地を破ってスクリュードライバー的に戦果を拡張するでしょう。この春季攻勢の攻撃は、戦力を半ば展開し切り疲弊したロシア軍の薄皮防御を打通して、占領された東部2州をエグる形に進撃するでしょう。ロシアは尻に火が付いた状態になり、ワグネルをはじめとするバハムート攻略部隊はもはや退かざるを得ません。これで事実上バハムートを回復でき、ウクライナは世界に「バハムートを守りきった。ロシアに勝った!」と宣言するでしょう。まだ戦争に勝ってはいないのですが、こう高らかに勝利宣言することがロシアに対する破壊的な攻撃となるのです。私見ながら、ここにウクライナの勇み足的春季攻勢開始の意味があると推察します。

 世界中の注目の中、ウクライナが要衝バハムートで辛勝するということは、内外に大きなインパクトがあります。まずウクライナ国内、「ロシアに勝った!」とウクライナ人の団結、規律、士気はダダ上がり状態になるでしょう。他方、ロシア国内では国民レベルで士気が落ちますよね。ワグネル総帥のブリゴージンやロシア連邦内のチェチェン共和国の首長カディロフなどの右派陣営や有力な軍事ブロガー達が国防省や軍指導部を酷評し、憂国の炎上状態になるでしょうね。ロシア国民も大きく動揺し、怖いから名指しを避けていたプーチン大統領への不信感や反戦運動も必ずやあちこちから火の手が上がるでしょう。もはやこれは避けられない。また、西側諸国のウクライナ支援は「勝ち馬に乗る」或いは「バスに乗り遅れるな」状態になるように拍車がかかるでしょう。焦るプーチン大統領は核兵器使用をチラつかせたり、モルドバのクーデター画策、ベラルーシ方向からの首都キーウ攻撃の脅威など、いろいろ揺さぶりを掛けてくるでしょう。しかし、もはや春季攻勢のインパクトの方が凌駕しているでしょうね。プーチンが地団駄踏んで悔しがる姿が目に浮かびます。

 勿論、上記は私の勝手な推測に過ぎません。
 さぁ、どうなるでしょうか。

 頑張れウクライナ!
 頑張れバハムート守備隊!
 春季攻勢で東部2州をエグったれ!

(了)

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2023/03/11

ウクライナの正念場:バハムート攻防戦はウクライナの203高地!守り切れ!ver.2

Bakhmut battle 3
バハムート攻防戦の前線近傍のウクライナ軍の野戦病院で救急処置を受ける兵士(2022年12月22日付Newsweek記事「Russia's Bakhmut Problems Show Putin 'Overestimated' His Forces: Commander」より)

やはりバハムートは203高地
 私のブログで前々回(2月23日付)に同タイトルで激戦中のバハムートが203高地化しつつある話をさせていただきました。実は、正直「頑張れウクライナ!…でも、もってあと1週間くらいかな」と懸念していました。よって前回(3月5日付)のブログでウクライナ政府がバハムートの撤退を準備している旨の情報があったので、もはや撤退は仕方ないこととし、次の線でロシアの進撃を止めればいい、と思っていました。ところが、あにはからんや、ウクライナは逐次にロシアに地歩を取られつつもバハムート撤退はせず、ゼレンスキー大統領もバハムートを固守する姿勢を表明し、既に激戦も3月中旬に入りました。いやービックリです。ウクライナ軍の「ロシアに寸土も獲られまい!」という不屈のド根性と国を守る執念の強さには敬服します。ハッキリ言って、軍事的な損得勘定=戦術的妥当性からは「撤退して次の線で止める」が正解です。しかし、この地を巡ってウクライナにとってもロシアにとっても相当数の将兵の命が犠牲となっており、今ここを諦めたら既に犠牲となった命が無駄死にになるという、軍事的損得勘定を越えた政治的ないし「国家・国民としての意地」の問題なのでしょう。まさに、日露戦争の際の「203高地」状態ですね。

2月22日及び3月10日のバハムート戦況比較
Bakhmut.jpg
3月8日のバハムート戦況図(2023年3月9日付The Guardian記事「Ukrainian forces still trying to hold Bakhmut despite heavy casualties」より)

戦況:バハムートの半分までロシア軍に押しこまれた状態でも頑強に抵抗
 上の図をご覧ください。
 上段は前々回のブログの2月22日の状況と3月10日の状況の比較です。2月22日の段階でバハムートの主要部の7割がたはウクライナが保持していた状況が、最新の3月10日の図(右)ではバハムートの半分までロシアに押しこまれている状況が分かります。下の図は3月8日付の戦況ですが、バハムートの北からロシア軍が回り込んで包囲し、バハムートの退路を断とうとしているのが分かります。

 戦況はウクライナが劣勢で、悲観的に見れば「もはやバハムート陥落まであと数日か」と危ぶまれます。要衝バハムート攻防戦の戦況は、ロシア軍の攻撃が3月10日の1日だけでも188回あちらこちらで起き、ロシア軍は猛烈な砲爆撃の波状攻撃に連携してジリジリと戦車と歩兵が地歩を進めており、これに対しウクライナ軍は地下通路や塹壕を駆使して神出鬼没に迎撃し、ロシア軍に前進に伴う損耗を強要しています。市内のほとんどの建物は廃墟となり、道路のあちこちに両軍兵士の死体や戦車・装甲車の残骸がある状況です。ウクライナ軍の補給は今はまだギリギリ保っていますが、ロシア軍に包囲されて退路を断たれると全滅してしまう危機に瀕しています。身も凍る厳寒の中で困苦欠乏に耐えながらも戦う将兵たち、その武器・弾薬の補給は細りつつあり、将兵たちももう相当数が死傷しています。更に、ここに避難を固辞して市内に残留する市民がまだ数千名もいます。地下壕内で身を潜め、戦闘の合間に水や食料を求めて地上に出てきます。しかし、ウクライナ軍からの補給も逐次に途絶え、地下壕の出口もロシア軍の占領下になっていき、出るに出られない市民たち。地下から出てロシア軍に連行されると次なる地獄の始まり。…もはや生存の限界線と言えましょう。

 しかし、この経過に17日間もかかっていることを考慮に入れると違った見方ができます。逆説的に「危機的な状況の中、ウクライナ軍は結構持ちこたえている。もう少し頑張ればロシアの攻撃衝力が尽き、守り切れるのでは!」とも楽観できます。かれこれ半年以上このバハムート攻防戦で撃さんが続いています。戦況進展に長期間を要し、かつバハムート攻防戦という一局地戦のために莫大な数量の将兵、武器・弾薬が費やされ、ウクライナ軍のみならずロシア軍もギリギリの線での消耗戦をしているわけです。まさに203高地。バハムート攻防戦をめぐる惨状はウクライナ側のみならず、ロシア軍にとっても言えることで、同じ厳寒の中、武器・弾薬の補給が細り、相当数の将兵が死傷しています。臨時の召集令状で動員された市民兵やワグネルに動員された囚人たちも、このバハムートの最前線で相当数の死者を出しています。2月下旬にワグネル創始者ブリゴージンが、「これまでバハムート正面で奮戦していたワグネル部隊にロシア軍からの武器弾薬の補給が断たれ、死傷者が倍増している」とロシア軍指導部を強烈に批判していました。ワグネルが干されつつあるのは事実でしょうが、ワグネルのみならず、ロシア軍そのものも全体としての兵力や武器弾薬が枯渇しつつあるのも事実です。もはや、ロシア国民もこの地が当面の焦点になっていて、多くのロシア軍将兵の血が流れているという事実をロシア国内の報道で知っており、この要衝の「陥落」という吉報を待ちつつも、一方で更なるロシア軍の死傷者が日々増えていることを憂い、ロシア中が固唾を呑んで見守っている状況です。

 一方、実は戦況の進展が非常に遅いことについて、ISWなど一部の分析で「ロシア軍は戦術的停止の策をとっている」と見る向きがあります。兵力や武器弾薬の枯渇に起因しつつも、意図的に激戦的膠着戦をつづけることにより、ウクライナ側に兵力や武器弾薬の損耗を長期間にわたって強要し、ウクライナ軍の継戦能力の疲弊を高めると共に、もって西側諸国の支援疲れ・支援離れを起こさせる、という狙いと指摘されています。これについて、元駐ロシア米国大使のマイケル・マクフォール氏は、ロシアの戦術的停止による時間稼ぎは、戦争の長期化を望まない西側にとって致命的な効果を発揮し「支援離れ」をきたす、と懸念を表明しています(参照:2023年3月9日付Newsweek記事「Putin's Military Gains Raise Concerns Ukraine Will Fall: Ex-Ambassador」)。ISWも、ロシア軍の戦術的停止に関連して、ウクライナ軍がこのままバハムート攻防戦での同地固守を続けて兵力の損耗が続くと、ウクライナ軍が待望していた春季攻勢のための攻撃戦力が枯渇してしまい、戦況を巻き返せなくなってしまうのではないか、と懸念しています。
(参照:2023年3月11日付CNN記事「バフムートで激戦続く ワグネル戦闘員の「第3波」正規軍で置き換え」、同年同月10日付ISW記事「Ukraine Conflict Updates」、同年同月9日付The Guardian記事「Ukrainian forces still trying to hold Bakhmut despite heavy casualties」、ほか)

展望は?戦況劣勢なるも執念が勝敗を決す。ウクライナが守り切る!
 前々回のブログでも同じことを言いましたが、大事なことなので何度も言います。
 こうした攻めるも守も両軍紙一重の苦しい戦いにおいて勝敗を決するのは、はっきり言って「精神力」です。「なんて時代錯誤なヤツだ!」と笑わないでくださいね。時代錯誤のようですが、これは万国共通の各国軍の軍事常識です。換言すると、敵味方の戦力が均衡した膠着戦では、「絶対に守り切る/奪取する」という攻防戦の渦中の両軍将兵の執念の強さが勝敗を決めます。その意味では、国家を、領土を侵略され、「俺たちが下がればその土地は敵の領土となりその自分の親兄弟を含む住民が敵の領民となってしまう…」という切実な思いのあるウクライナの方が執念が強い、と言えましょう。これは昨年2月下旬のロシアの突然の侵攻開始以来、様々な場面で世界がウクライナの不屈の精神に驚かされたことで、その執念の強さについては半ば証明されていると思います。対するロシア軍は、そもそもウクライナ侵攻に「命を賭して戦う/国を守る意義」を見いだせないまま、大義のない戦争をしていることに将兵は気づきつつあります。よって、この執念の差があれば、ウクライナが3月一杯粘り切り、逐次に戦場に届く西側の主力戦車などの新装備を先頭に、4月から反転攻勢を開始し、バハムートの翼側からロシア軍に攻勢をかけて包囲を解きます。バハムート守備部隊がギリギリ守り切った203高地=バハムート東半分は包囲を解かれ、残留市民も地上に出てこれるでしょう。

 勿論、狡猾なプーチン大統領や知恵者ゲラシモフ参謀総長兼総司令官のことですから、バハムートという一局地戦ではなく、対ウクライナの全般戦況を動かす手段、例えばミサイル・ドローン・長射程砲による主要都市の砲爆撃、特に電力インフラ等への壊滅的打撃であるとか、西の隣国モルドバでのクーデターによる西側寄りの現政権の転覆でウクライナに対する牽制や西側諸国からの補給路の遮断、などいろいろ画策してくると思われます。そうした揺さぶりに耐え、バハムートを守り切れば、裏を返してロシアの世論に大打撃となりましょう。固唾を呑んでいたロシア国民達も、これまで腹の底では思っていても口に出せなかったプーチンの戦争に疑いを白日の下に公言し始めるでしょう。既に現在でも、ロシア野党や反旗を翻した反政府武装勢力の暴発など、ロシア国内でのプーチンの戦争への批判が起こりつつあります。

 頑張れウクライナ!ついでに頑張れロシアの反政府勢力!
 今が正念場だ!

(了)


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2023/03/05

ウクライナに新たな急所:隣国モルドバにロシアの魔手が伸び一触即発

ウクライナの急所:包囲されたバハムートは最終ステージの激戦中
 ロシアの冬季攻勢の焦点となっている東部戦線の要衝バハムートは、すぐ近傍の地域がロシアに支配され、結果的に北・東・南の3方向を包囲され、いよいよ撤退せざるを得ない可能性が高まってきています。ウクライナ政府高官も「完全撤退ではなく一部からの」と前置きしつつ、状況によって統制された撤退をすることを認めています。ウクライナもバハムートを死守しようとすると守備部隊の全滅に至ってしまうので、統制の取れた作戦撤退を標榜しているのだと思いますが、難攻不落だったバハムートを陥落させたロシア軍は、これで全軍の士気が上がり勢いを増して進撃してくるでしょう。当然、ウクライナは次の線でロシアの更なる進撃を止めるよう全力を挙げるのでしょうが、下手をしたらロシアの冬季攻勢の目標であるルハンシク・ドネツク2州の完全回復を可能にしてしまいます。何とかウクライナには踏ん張ってもらいたい正念場となっています。(参照:2023年3月3日付ISW記事「RUSSIAN OFFENSIVE CAMPAIGN ASSESSMENT, MARCH 3, 2023」、同日付Newsweek記事「Bakhmut may fall amid possible Ukraine retreat」ほか)
 
ウクライナのもう一つの急所:隣国モルドバにロシアの魔手が伸び一触即発
 私見ながら、ロシアは地上作戦での直接的な領土の拡張と並行して、ミサイル/ロケット/ドローンなどの都市やインフラ基盤への砲爆撃に加え、さらにもう一つ、ウクライナの隣国モルドバの西側諸国寄り(EU及びNATO加盟を標榜)の現政権に対して親ロシア勢力を使って緊張を高め揺さぶりをかけています。そして、これがウクライナのもう一つの急所になっていると推察されます。
Moldova  Pro-Russian Demo
モルドバの首都キシナウで親ロシア派によるデモ(西側寄りの現政権への反政府デモ)(2023年3月1日付EuroNews記事「Moldova: New anti-government protests backed by pro-Russian oligarch」より)

 実際の話、ロシアのウクライナ侵攻開始後、ウクライナの隣国モルドバは、ロシアとの間で急速に緊張が急激に高まっています。 もともと欧州の最貧国であるモルドバにとり、ロシアのウクライナ侵攻以降のエネルギー危機、インフレ、経済の低迷が著しく、国内世論の動揺が高まっていたところに、モルドバの首都キシナウで、モルドバ国会に少数ながら議席を持つ親ロシア政党が主催したデモが頻発し警察と衝突するなど、物理的な緊張も高まっています。具体的には、上記の写真のように、サンドゥ大統領打倒や危機に瀕しているエネルギー政策の改善を訴えるデモが頻発し、国内の緊張が非常に高まり、先月首相が辞職するという状況です。モルドバ国内にモルドバ政府の力の及ばない親ロシア勢力が実効支配している地域があり、そこにロシア軍が駐留するなど、モルドバで新たな紛争が起きたり、ここから或いはここへの双方の攻撃もあり得る緊迫した状況になりつつあります。

 歴史的経緯からモルドバの現状をザックリと概説いたします。モルドバは、第二次世界大戦時に宗主国のルーマニアがドイツに組した経緯からソ連の領土となり、ソ連の中のモルドバ・ソビエト社会主義共和国でした。ソ連崩壊により独立しましたが、以前ロシアの影響が大きく、国内にロシア系ないし親ロシア勢力の強いトランスリストニア(沿ドニエストル)という地域があり、ここが分離独立を宣言(国際的にはロシア等を除いて承認されず)して内戦状態となっています。ウクライナのクリミア半島や東部2州と同様に、「ロシア系住民がネオナチに弾圧されている」という大義名分の下でロシアが軍事介入し、トランスリストニアには現在も「平和維持軍」と称して1500名ほどのロシア軍が駐留しています。トランスリストニアはモルドバ国内にあって分離独立を宣言して同地を実効支配している状態なので、これが今回のロシアのウクライナ侵攻の渦中で新たな火種を構成している状況です。前述の首都キシナウは正統なモルドバの首都で、そこにも親ロシア勢力がいて国家の騒擾状況を画策しているわけです。これに対し、モルドバのサンドゥ大統領は、「ロシアがモルドバ国内で国家の転覆を画策している」と国際社会に訴え、西側諸国に注意喚起しています。具体的には、民間人になりすましたロシア人ないし親ロシア勢力の破壊工作員が軍事訓練を受け、モルドバ国内で暴動や暴力行為、政府機関へのテロ、要人の誘拐などの破壊工作を計画・実施している模様です。これに加えて、ロシアは「ウクライナ軍が親ロシアのトランスリストニアに対して軍事的な攻撃を仕掛けようとしている」と主張し、トランスリストニア地域で出所不明の砲爆撃などを起こして、それをウクライナ軍の仕業に見せかける「偽旗攻撃」をするつもりではないか、と西側諸国も警戒しているところです。
(参照:2023年3月3日付ロイター記事「モルドバ議会、ロシアのウクライナ侵攻非難する宣言を採択」、同年3月2日付Newsweek記事「Moldova, rival Transnistria warn security risk intensifies over Ukraine war」、同年3月1日付EuroNews記事「Moldova: New anti-government protests backed by pro-Russian oligarch」、同年2月26日付CNN記事「Why Moldova fears it could be next for Putin」、ほか)

プーチンの執念:「ウクライナもモルドバも、ロシアから離れ西側に寝返る奴は許さない」
 モルドバの西側寄り現政権の転覆を図るロシアの狙いは、短期的には「ウクライナ侵攻の促進のための有力な援護射撃」というものです。ウクライナの西部で国境を接する隣国モルドバの戦略的価値は高く、まず第一にウクライナにとってはこれまで脅威のなかったモルドバに新たな作戦正面(形の上では東西両正面に)ができることとなり、また、第二に西側諸国のウクライナ支援の動脈の一つであるモルドバ経由のルートが閉じることになります。

 私見ながら、そもそも論として、モルドバの西側寄りの現政権の転覆を図るロシアの狙いというのは、長期的には、ロシアというよりプーチン大統領の執念が大きく関与していて、要するに「ウクライナもモルドバも、どこのどいつでも同じことだが、ロシアから離れて西側に寝返るなんて奴は絶対に許さない。元のロシア領に奪回してやる」、という帝国主義的な古い考えです。これを言い出すと、ウクライナ、モルドバに限らず、エストニア、ラトビア、リトアニアというバルト海に面した旧ソ連の共和国もそうですし、もっと言えば旧東側諸国、ワルシャワ条約機構の傘下にあった東ヨーロッパ諸国に対して同様の思いを持っている、と言えましょう。事実、チェチェン、ジョージアなどの国や地域では、プーチン大統領は直接軍事介入して完膚なきまでに叩きのめしたあげく全土ないし主要地域をロシアの傘下に服させています。・・・くだらないですね。つくづく思いますが、ウクライナ侵攻は「プーチンの戦争」と呼ばれていますが、やはりプーチンを殺さないと収まらないのでしょう。

冬季攻勢で獲れるだけ獲るつもりのロシア:今が一番キツイ時期だが頑張れウクライナ!
 ついにロシアの冬季攻勢のピークを迎え、攻防の焦点になっていたバハムートが陥落の瀬戸際に立つ状況になりました。ウクライナ軍のバハムート守備隊の計画的撤退や、まだ数千名もいる残留市民の後送作戦をしなければならない状況です。ウクライナ軍のバハムート撤退後には、ロシア軍がバハムートを占領し、バハムート陥落についてロシア国内向けはは勿論のこと、国際社会に向けても喧伝することでしょう。そして、次なる進軍を開始してきます。既述のように、間もなく新たなモルドバ正面も形成されそうです。ロシアは4月以降の西側からの戦車などの新装備の到着の前に、冬季攻勢の地上作戦の進撃によって獲れるところまで獲りまくるでしょう。そして、そこで防勢転移し、その当時の接触線をもってstatus Quoステイタス・クオ=現状ラインとし、ここからウクライナの春季攻勢の開始前に「いち止めた!」と和平交渉への外交攻勢に転ずるでしょう。

 3月のこの2・3週間が勝負ですね。ウクライナにとって、今が一番きつい時でしょう。しかし、ロシアも相当きついはずです。バハムートを守り切ることはさすがに困難でしょうが、バハムートが陥落しても、何とかロシアの進撃を最低限で止めてもらいたいところです。
頑張れウクライナ、春には再度攻勢をかけられる。もう春はそこまで来ている!

(了)

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