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2020/03/21

コロナ禍の裏にロシアのフェイクニュース作戦?

 3月16日(月)、欧州連合(EU)が「ロシアが西側のメディアに対して意図的な偽情報を流し、西側特に欧州諸国の連携対応を阻害、パンデミック対応にパニックを画策し、状況を悪化させている」との報告を発表しています。今やコロナ禍、欧州でも米国でも外出禁止令がでるような状況ですが、この感染拡大や国内のパニック的な状況の一因はロシアなのかも…というお話です。
(参照: VOA記事2020年3月20日付「Analysts: Russia Using Virus Crisis to Sow Discord in West 」(下の写真も同記事より))
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プーチン露大統領とマクロン仏大統領(FILE - French President Emmanuel Macron,right,and Russian President Vladimir Putin at the Elysee Palace in Paris,Dec. 9,2019.)

<状況>
① 2020年3月16日(月)、欧州連合(EU)の外務省に相当する欧州対外行動局(※)は、「ロシアが西側のメディアに対して意図的な偽情報を流して状況を悪化させている」との報告を発表。報告によれば、ロシア政府は、英語、仏語、独語、イタリア語、スペイン語等の西側言語で各種メディアを通じて、コロナウイルス対応に追われる西側諸国に対し、様々な悪意のある偽情報を流し、西側諸国の感染症対策における連携を阻害している、とのこと。1月下旬以降で80回を越えるフェイクニュースを流し、この中には「コロナウイルスは米軍の生物兵器だ!」という偽情報も含まれる。
  同報告では、裏にロシアの陰謀あり、と声高に指摘している。「クレムリンの狙いは、こうした偽情報で西側欧州諸国の連携対応を阻害することにより、パンデミックを助長し、西側諸国の公共衛生の危機的状況に悪化させて、西側諸国の結束を瓦解させることを画策すること。これらはクレムリンの戦略の一環である。」とのこと。
(※筆者注: 欧州対外行動局(the European External Action Service)は、欧州連合の外交機関。欧州連合の外交・安全保障政策をはじめ欧州連合の外交代表として機能。)

② これに対し、ロシアは真向否定。ロシア政府のスポークスマンは、「具体性のない一方的な反ロシア思考に過ぎない」と反論。実際、ロシアはコロナウイルス感染者は200名しかおらず死亡者はゼロ。一方、欧州は感染者8万名で死亡者は3500名にも上る。ロシアは、この欧州に比しての自国の感染の低さが自慢であり、プーチン大統領の主導するロシア政府の感染症予防・拡大阻止政策が適切であると自画自賛する所以でもある。
  しかし、欧州のロシア専門家の分析では、これらはロシアの、米国とEU及びNATOの結束力を断ち切ることを狙うロシアの戦略、と見る。プーチンは、冷戦後の欧州情勢が「欧州に取り囲まれるロシア」という構図になっており、これを突き崩す欧州の新しい親ロシア的な戦略環境を構築したい、と願っている。プーチンはあらゆる機会にそうした手を打とうと狙っており、好機を今回のコロナ禍はまさにチャンスであり、様々なフェイクニュースを打って、欧州諸国と米国の結束を崩そうと画策している、と見ている。

③ 米国のロシア専門家ノースカロライナ大学のクラウス・ラレス教授の見方も同様。同氏によれば、2016年の米大統領選挙にてロシアからの様々な選挙への干渉(トランプ勝利を画策したと言われる)を受けたので、今回の2020年選挙も警戒している。2019年12月、仏のエリゼ宮でのマクロン仏大統領とプーチン露大統領との会談において、マクロン大統領はロシアのスプートニク・ニュース社とRTテレビが欧州の結束を揺るがすフェイクニュースを発信することについて苦情を述べたという。また、1973年のオイルショック及び2008年の世界的な金融危機の際に、ロシアは欧州の結束を弱体化するためにあらゆる機会手段を通じて手を打ったという。よって、今回のコロナ禍の最中にロシアがフェイクニュース攻勢をかけてきても何の不思議もない、とのこと。こうしたフェイクニュースの惑わされず、特に、コロナ禍で喘ぐ欧州がフェイクニュースに引っかかって、マスクや人工呼吸器の取り合いになって医療破綻しないよう警告している。

<私見ながら>
○ トランプさんが「フェイクニュース」という言葉を使って以来、皆さんこの言葉を使いますが、国家がフェイクニュースを使ってある国に対してある方向に誘導しようとする行為を、軍事的には「Information Operation情報作戦IO」と言います。
  例えば、米国の情報作戦の例として、1990年代の旧ユーゴスラビアをめぐるバルカン戦争があります。米国は、国際メディアの論調を米国の政策に有利な方向に誘導するため、メディアの記者たちに報酬を払って記事を書かせたり、米国が支援する側の敵の残虐行為を誇張し、時にヤラセまで使ってニュース映像を作り、国際的なメディアの論調を操って国際世論を誘導していました。米国だから、後でリークする者がいてこうした陰謀が明るみになりますが、ロシアではリークした裏切り者は消されますから、明るみにならないかもしれませんが。
  脱線しましたが、VOA記事の指摘の通り、ロシアがコロナ禍を好機と捉えて偽情報を乱発して世論操作し、欧州内や米国内のパンデミックのパニックを誘導しているというのは間違いないでしょうね。中国もコロナ禍を何とか乗り越えて、今や、情報作戦に参戦しているでしょう。「この非常時に何てことするんだ!」とお怒りでしょうが、これが国際政治・外交・軍事のリアリティなのです。
  しかし、このニュース、残念なのは具体的なフェイクニュースの例と、それによる欧州や米国の混乱ぶりが例示してあれば非常に分かり易いのに、・・・残念!

(了)

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