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2020/06/06

金融の視点: 国家安全法で安定した香港を望む!?

金融の視点: 国家安全法で安定した香港を望む!?
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香港にて天安門事件追悼をする香港市民(Participants holds candles during a vigil for the victims of the 1989 Tiananmen Square Massacre at Victoria Park in Causeway Bay, Hong Kong, June 4, 2020, despite applications for it being officially denied.)
(VOA記事 2020年6月4日付「Hong Kong Legislature Passes Controversial National Anthem Law」より)

<資本は香港の安定を望む!>
 「資本は香港市民の自由や権限より、香港の安定を望む。お金の動きの視点から見れば、香港市民のデモによる香港の混乱こそ問題であり、むしろ国家安全法の導入など中国政府の介入による安定した香港こそ望ましい。なぜなら、中国の銀行を信用できない中国の富が香港の外資系金融機関に集中している。香港が安定したfinancial & commercial centerとして機能することが国際的に重要である。その証左に、英金融大手のHSBCやスタンダードチャータード銀行が、中国政府の国家安全法の香港への導入を支持した。」

<銀行マンの視点にビックリ>
 いやー、参りました。知人の銀行マンの方から、この話を伺いました。私のような金融や経済の視点に疎い者に取っては、まさに目からウロコが落ちる話でした。

 実は、この話を伺うことになった発端は、私の素朴な愚問から始まりました。現在の香港の価値について、「10年20年も前ならいざ知らず、もはや中国の経済力がここまで伸長すると、中国本土に比して香港の稼ぎは数%程度という時代。それでも香港のfinancial & commercial centerとしての価値や地位というものは、変わらず強大なのか?」という質問に対するご回答でした。

 この銀行マンの方のご認識では、
「いやいや反対なのだ。中国が経済的に伸長するほど香港が栄える、という図式。世界中で稼いだ中国の富の行き先は、在香港の外資の金融機関に集まる。中国企業のオーナーや政府高官は、中国の金融機関を信用していないのだ。」

 見方を変えると、全く違った見え方がするものですね、ビックリです。私は、経歴上、国際情勢・安全保障・危機管理からの視点で物事を見てしまいがちです。国際情勢の動きを、国益や安全保障・軍事、地政学や歴史的経緯に基づく脅威への対応などの視点で捉え、それが地球を回す回転軸であるかのように捉えがちです。それはそれで、国際情勢を見る一つの視点・視座としては間違っていないとは思いますが、今回ご示唆をいただいた違った視点から見ると、同じ事象を全く違った色合いで見せてもらった思いがします。やはり、同じ事象を語るに際して、自分の関心正面の視点だけで捉えず、広域多方向からの視点で分析・考察し、最終的に自分なりの総合的結論を出すということが大事なのだと、再認識しました。

<HSBCは苦渋の選択?当然の選択?>
 そんな視点から見てみると、ナルホド、現実主義という点では私も共通なため、金融から見た香港の話、非常によく分かります。実際、HSBC(香港上海銀行)やスタンダードチャータード銀行の「中国政府の施策を支持」という選択のハラが十分理解出来ます。

 日経の記事では「英HSBC、香港国家安全法を「支持」 英中の板挟みも」(2020年6月4日4:53 (2020年6月4日5:50 更新))と受け止めています。本国の英国では、中国の国家安全法の香港導入を厳しく批判していますので、英系金融機関として「板挟み」に苦しむだろう、との見方です。
 
 前述の銀行マンの方がほくそ笑む顔が思い浮かびます。HSBCやスタンダードチャータード銀行は「当然の選択」をしたのでしょう。このことで本国から何らかのお咎めがあるのでしょうが、その時は満面に「苦渋の選択」であったことを装うでしょう。それでも中国政府支持を示したことで、香港での稼ぎは安泰と言えましょう。実によく分かります。

<それでも香港市民の反抗を応援します>
 これらを踏まえた上での総合的結論として、・・・それでも「中国政府の香港への強権発動の政策を許容すべきではない。」と考え、香港市民の反対運動を応援します。今の中国政府の覇権主義を許容していると、まず中国内の新疆ウイグル地区やチベット等の国内の少数民族問題にも目をつぶることになります。中国政府の本質は、第一次世界大戦と第二次世界大戦との間(大戦間期)のナチス党率いる日の出の勢いのドイツの覇権主義と同じに見えてなりません。大戦間期に、西欧諸国がナチスドイツの覇権主義に対し、その危険性に気づいていながらも、目の前の小春日和的な安定や経済的なメリットのために、ヒトラーとの宥和政策に逃げて事を荒立てないようにした結果、ついにポーランド侵攻という明白な侵略を許す結果となりました。これにはさすがに耐えかねて、第二次世界大戦へ突入となりました。

 「大げさだよ」とのご叱責をいただきそうですが、中国政府は台湾に対しても「一国二制度」と言っているのをご存知でしょうか?今回、中国政府は香港返還時の「一国二制度」という国際的な約束を事実上反故にして、香港の制度的な自治を事実上認めない施策を導入したのです。台湾は、事実上の自治国(独立国とは言わないまでも)ですが、中国政府は香港同様、「中国の一部」の「一国二制度」としているわけですから、香港の次に台湾に対して一方的な政策をかましてくることは十分考えられ、その際に国際的非難に対して、今回と同様に「内政干渉」と言うでしょう。外圧くらいならまだしも、台湾に対する海上封鎖や奇襲的侵攻という直接的物理的な圧力もあり得る話です。一昔前と違って、今や中国の軍事力は、海上封鎖も奇襲進行も可能な企図も能力も十分に持っているのですから。

 話を香港に戻すと、今回のような中国政府の香港への強権発動に対して、目の前の利益のために宥和政策を取って増長させてはならない。ならぬものはならぬ、あってはならないことは断じて許してはならない、と国際社会がスクラムを組んでキツイお灸を据えるべし、と思います。香港問題は、内政干渉ではなく国際的約束として、中国政府に一国二制度を守らせねばならないのです。一昔前のソビエト連邦に対する「封じ込め政策」と同様、中国政府が香港に対する強権発動を諦めさせるまで、延いては近隣アジア諸国に対する覇権主義を諦めるまで、国際的協調により封じ込めるしかないと思います。その意味において、米国トランプ大統領(この人はまた違った意味での問題児ですが・・・)の一歩も退かない対中強行姿勢は高く評価します。

(了)

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