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2020/08/05

追悼李登輝元総統:日本人の心を持った台湾の主権と民主化の巨星墜つ

 前回、韓国の救国の英雄白善燁将軍の話を書かせていただきました。今度は台湾の主権を守り民主化を達成した英雄李登輝元総統が2020年7月30日に97歳にてご逝去されました。
345px-總統李登輝先生玉照_(國民大會實錄)
(wikipediaより)

 惜しい方を失くしました。李登輝元総統なくして現在の台湾の繁栄いや存在はなかったでしょう。特に、中国からの再三再四に渡る軍事・外交的恫喝に一歩も退かず、されど決定的衝突を避けて、台湾の(「独立」と言えないまでも)「主権」を守りきったこと。民主化が極めて難しい中国4000年の歴史の中で、台湾人自らの手により、しかも血の粛清もなく民主的手段をもって民主化を成し遂げたこと。この二つの偉業は李登輝元総統なくして成し得なかったと言えます。しかも、李さんご本人は大陸から台湾に渡ってきた中国人ではなく、生粋の台湾人です。終戦後に中国大陸から共産党軍に敗れて台湾に逃げ込んできた国民党の中国人達が台湾を統治し、20%に満たない中国人が80%以上を占める台湾人を搾取する圧政を敷き、この間に2.28事件という大虐殺まで起きています。戦後、農業技術者として誠実真摯に歩んできた李さんが49才を過ぎて、蒋介石の後を継いだ息子の蒋経国に抜擢され、憎むべき国民党に入党し、その中で政府部内の要職や台北市長等を経て、副総統にまで上り詰め、蒋経国総統の死によって総統に就任。そして台湾では無理とまで言われた総統の民主選挙による選出を自ら達成します。普通の国の歴史なら、ここで血で血を洗う内戦や権力闘争がありそうなのに、李さんは全くの民主的かつ平和的な手段のみで、国民党独裁制の中で中国人たちを一人ひとり切り崩し、最後に民主選挙で国民党の独裁体制そのものを解体してしまいました。基本は「不屈の信念を腹に据えた誠実真摯な現実主義」という感じでしょうか。特に、与えられた職務に一生懸命、誠実に任務を果たし、その職務の中で常に国民のためになる何かを創意工夫し、献身的に努力する姿勢が、支配層の中国人をもってしても敬意を持たざるを得ないものだったと言います。

 他方、李さんは親日家としても有名でした。日本統治下の台湾に生まれ、日本の教育を受け、自ら「日本精神」や「武士道」を説き、ご自身がよく「私は22歳まで日本人だったのです。」とご発言されるほどの親日家でした。京都大学農学部に学ばれ、学徒出陣にて出征され、終戦時は陸軍少尉として終戦を名古屋で迎えており、戦死した実兄が靖国神社にお祀りされていることを名誉に思われ、靖国神社に参拝されたほどでした。また、日本語に関しては、「若い時代に日本統治下の教育を受けたから」という環境要因もあるでしょうが、「今でも難しいことを考える時の頭の中の言語は日本語です。」と言われるくらい。むしろ台湾語なまりが強いせいか、中国本土の標準語の北京語は一番の不得意だったと言います。
Lee_Teng-hui_younger.jpg
中学時代の李登輝さん(Wikipediaより)

 そんな李さんが、口癖のように仰っていた我々日本人に対する言葉は、「最後に、もう一度繰り返して申し上げておきたい。日本人よ自信を持て、日本人よ「武士道」を忘れるな、と。」でした。(李登輝著「『武士道』解題―ノーブレス・オブリージュとは」小学館、2003年)
 また、こうも仰っています。
・・・まことに残念なことには、1945(昭和20)年8月15日以降の日本においては、そのような「大和魂」や「武士道」といった、日本・日本人特有の指導理念や道徳規範が、根底から否定され、足蹴(あしげ)にされ続けてきたのです。・・・
・・・いま日本を震撼させつつある学校の荒廃や少年非行、凶悪犯罪の横行、官僚の腐敗、指導者層の責任回避と転嫁、失業率の増大、少子化など、これからの国家の存亡にもかかわりかねないさまざまなネガティブな現象も、「過去を否定する」日本人の自虐的価値観と決して無縁ではない、と私は憂慮しています。・・・
(前掲「『武士道』解題―ノーブレス・オブリージュとは」)

 いやー、ご指摘が痛いほど滲みますね。
 白善燁将軍、そして李登輝元台湾総統、お二人とも我々現代の日本人が見失ってしまった日本人本来のアイデンティティーをお持ちの方でした。心からご冥福をお祈りいたしますとともに、ご指摘のように「武士道」精神、道徳心を我々一人ひとりが日々自らに問わなければいけない、という思いを強くいたしました。
〈合掌〉

補追: 腹に据えかねることがあります。李登輝さんのご逝去に関連した記者の質問に対し、菅官房長官は「政府として誰も台湾での葬儀に行かない」旨の発言をいつものように淡々としました。中国政府を刺激しないように、という外務官僚の台本通りに回答したのでしょうが、お前は官僚か?バカ野郎もいいところです。中国の「南京大虐殺」や韓国の「従軍慰安婦」、更に「尖閣列島」などの問題で、ともすると中国や韓国に責められっぱなしの日本を、李登輝さんは明快に、かつ、キッパリと否定され、援護射撃をしてくれました。常に日本のことを親身に憂い、直言をして来てくれた大恩ある李登輝さんに、葬儀の参加により政府として誠意を見せるくらいの胆がないのか?せめて苦渋に満ちた顔で言えよ。聞くところによると、オリンピックが延期になった森元首相が行くと仰っているようです。森さんじゃなぁ・・・。習近平の鼻をあかして、歴代総理が数名並んで行くくらいの政治家としての胆力を見せてもらいたいものです。せめてもの救いは、安倍総理が李登輝さんのご逝去についてコメントを求められた際、涙ぐんでいたことです。
李登輝さんが繰り返し述べられた日本人への言葉を今一度記します。
「最後に、もう一度繰り返して申し上げておきたい。日本人よ自信を持て、日本人よ「武士道」を忘れるな、と。」

(了)


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