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2020/08/16

イスラエルとUAEの和平合意: トランプの賭けはテロを招く

「イスラエルとUAEの和平合意:  トランプの賭けはテロを招く」

<要旨>
  私見ながら、トランプの賭けは裏目に出る、と読んでいます。
  今回のイスラエルとUAEの国交正常化へ動きは、米国内での票稼ぎにはなると思いますが、せっかく最近大人しくしていたイスラム過激派にテロの大義名分を与えてしまい、世界のあちらこちらでテロが起き、結果的にトランプの責任論が選挙戦の焦点になるのではないかと思います。
voa 20200813
大統領のオーバルオフィスにてクシュナー補佐官(女婿)とフリードマン在イスラエル米国大使を伴って得意満面で発表するトランプ大統領U.S. Ambassador to Israel David Melech Friedman and White House senior adviser Jared Kushner applaud after U.S. President Donald Trump announced a peace deal between Israel and the United Arab Emirates from the Oval Office of the White House.
(2020年8月13日付VOA記事「Trump Announces UAE to Open Diplomatic Ties with Israelより)

<状況>
① 2020年8月13日トランプ米大統領は、自ら仲介したイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が国交正常化に「歴史的」を合意した旨、発表した。

② 合意のため、イスラエルはヨルダン川西岸の一部の併合計画を延期。但し、UAEは「併合断念」と理解、イスラエルはあくまで「延期」、という不協和音。

③ 国連事務総長は「和平進展に期待」と評価、一方パレスチナは「裏切り行為」と非難

<私見ながら>
○ トランプの賭けは裏目に出る
  結論から言うと、米国内での票稼ぎにはなると思いますが、せっかく治っていたイスラム過激派にテロの大義名分を与えてしまい、世界のあちらこちらでテロが起き、結果的にトランプの責任論が選挙戦の焦点になるのではないかと懸念します。

  多くの方がご指摘のように、トランプの狙いは大統領選挙の得点稼ぎです。大統領選の主たる正面は内政ですが、コロナ禍にあってもビジネスを継続するという手法を取りました。トランプ大統領自身がもともとコロナをなめてかかっていたこともありますが、コロナ対策をミニマイズする政策はリスキーながら経済を止めることはもっとリスキーなのだ、という考えです。賛否ありますし、実際相変わらず感染者が蔓延していることも事実。しかしトランプ大統領にとって、内政ではここは引き返せないでしょうね。他方、外交では、あちこちと反目する彼の外交手法において、目に見える得点が欲しい。それが親イスラエルの彼にとって、UAEという湾岸地域で経済も上々で割と穏健な国が、イスラエルと国交正常化できるなんて、願ってもない「中東和平への貢献」しているのだとPRできるポイントです。米国内のユダヤ票やトランプさんの支持母体であるキリスト教福音派のみならず、一般国民にもPRできる話ではあります。

  しかしながら、問題はトランプ大統領の中東和平の根幹は「親イスラエル」であって、問題の本質である「イスラエルとパレスチナの和解」は諦めていることです。むしろパレスチナとは交渉せず、力のあるアラブ諸国がイスラエルとなし崩し的に和解してしまえば、パレスチナも切り捨てられた現実を受け入れざるを得ないだろう、というのがトランプ大統領の考えです。なんたって、8月13日の得意満面の記者会見にて、「力があるほかの豊かな国が加われば、パレスチナも自然と追随するようになるだろう。」という発言に、その真意が如実に出ています。

  しかし、ここが問題なのです。こうした金持ちが札束で貧乏人の頬を叩くようなやり方は、イスラム原理主義者のテロリストみならず、幅広く一般庶民的なイスラム教徒の反発心をくすぐるものになり、新たな根強い怨嗟=反米テロの火種になるでしょう。恐らく米国は、UAE同様に、サウジやバーレーンなど、選挙に向けて、次々と湾岸のアラブ諸国を切り崩す外交攻勢をかけ、中東和平への貢献をPRするでしょう。しかし、湾岸アラブ諸国の国内で、あるいは米国や欧州で、必ずや反発があるでしょう。これに刺激された世界のあちこちのイスラム原理主義者や過激派は、組織的計画的なテロから思いつき的な自爆テロまで、せっかく治っていたテロ熱を再燃させてしまうことになりかねません。彼らも時期を心得ていて、やるなら11月の大統領選挙に向け、ここ2ケ月くらいの短期間にて短期決戦を仕掛けてくるでしょう。「トランプが仲介したイスラエルとアラブ諸国の国交正常化」に「反対」の意思表示を派手にやるのだろうと推察します。テロは国際的な動揺を与えて、大統領選にインパクトを与えるでしょう。特に、パレスチナを切り捨てる形のアラブ諸国切り崩しは良くないのだ、これがテロの再燃を招いているのだ、という反トランプやリベラルが喜びそうな話題を提供し、選挙戦の一つの焦点になるのではないかと推察しています。

○ サウジはUAEに続くか?
  UAEもサウジも、政府指導者=王様達の思惑として、今更パレスチナのアラブの大義を杓子定規に持ち出す堅物はおらず、そんなことより、目の前の経済や対イラン協調、換言すれば対イラン包囲網の方が大事なのです。そのため、米国の手厚い後ろ盾が欲しい。特に、米国の主要装備やサイバー戦能力、加えて、イスラエルの進んだ顔認識AI装備など国内の国民の監視用装備が欲しいのです。だから、米国の仲介で、イスラエルの対パレスチナ譲歩という条件を得られれば、パレスチナの大義に対する格好の言い訳的大義名分が国内説明用に得られるわけです。だから、UAEに続いて、サウジやバーレーンなどがなびいていっても全くおかしくありません。

  それでも、私見ながら、やはりボトルネックとなるのは、アラブ諸国の一般国民。政府とは違う庶民目線の市井のイスラム教徒の彼らは、政府の説明するイスラエルのパレスチナへの譲歩を、国交正常化の大義名分として素直に理解するでしょうか。だってイスラエルは併合を断念してませんから。「一時延期」しているだけですから。これじゃ全くパレスチナへの譲歩になっていない。パレスチナは浮かばれませんよ。だから、前項の話に行き着くと思うんですよ。普通のアラブ人にとって、同じアラブのパレスチナが置かれているイスラエルとの差別的待遇について、悔しくて悔しくて断腸の思いを共有していますから。これは、普通の市井のアラブ人でもそうなので、いわんやイスラム原理主義者をや。パレスチナのハマスを含め、彼らは逆上ものでしょう。テロの再燃は必須、と思います。

  まぁ、あくまで私見に過ぎません。その昔アラブに勤務し、アラブ人を友人に持ち、アラブ人の心情を垣間見た者としての「私見」に過ぎませんが、アホなトランプの今回の外交攻勢には一抹の不安を隠せません。

  (了)

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