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2020/11/01

トルコの野望と米国/NATOの憂鬱

最近、トルコが挑戦的ないし冒険的になっている模様です。
東のコーカサス回廊でナゴルノカラバフ問題の再燃をけしかけ、西の東地中海でギリシャの島々に海軍艦艇が挑発、南のシリア国境ではクルド勢力を追い出し、更に空域でもNATO加盟国でありながらロシアの防空システムを導入しNATO軍の戦闘機を脅かす、......。
米国はトルコを宥めてNATOに繋ぎ止めるようする一方、NATO諸国にトルコに寛容であるよう求めています。これに対し、NATO諸国はもはやトルコの冒険にウンザリ。
そんな状況のようです。
Recep Tayyip Erdogan
10月29日、トルコ国会で怪気炎を上げるエルドアン大統領(Turkey's President Recep Tayyip Erdogan addresses his ruling party lawmakers at the parliament, in Ankara, Oct. 28, 2020. :2020年10月29日付VOA記事「NATO Allies Growing Weary of Turkish Aggression」より)

トルコの野望1: 東方攻勢
前回のブログでナゴルノカラバフ紛争について取り上げましたが、トルコはそこでも台風の目。
ナゴルノカラバフはアゼルバイジャンの国内ながら、アルメニア人が多く住む自治区でしたが、アルメニアと自治区内のアルメニア人勢力に押されて、自治区内にアルメニア軍がいる事実上のアルメニアの飛び地状態。
トルコはこれを憂い、民族的に近いアゼルバイジャンを軍事援助し、ナゴルノカラバフ問題における劣勢な現状の打破をけしかけています。トルコのエルドアン大統領は、アゼルバイジャンを兄弟国と呼び「1つの民族、2つの国」とのスローガンで、言葉巧みに双方の国民のナショナリズムを焚き付けます。これが今回のナゴルノカラバフ紛争再燃の火種でした。こう言うと、トルコが民族的に近いアゼルバイジャンの支援をしている血の濃いナショナリズムに見えますが、エルドアンの腹はもっと黒く、深いのです。この機に乗じてコーカサス回廊をトルコの影響力地域にし、ロシアとイランをけん制することです。

トルコの野望2: 西方攻勢
西方では、歴史的ライバルのギリシャに対し、地中海の権益や資源をめぐり挑発的な行動を仕掛けています。ギリシャの近海で資源探査船で資源調査をする、という挑発行為を繰り返し、ギリシャも海軍艦艇で対応する状況です。(参照:2020年10月21日付VOA記事「Greece Puts Navy on Alert as Turkey Tensions Flare Again」) どこかで聞いたような話だと思ったら、中国が日本の経済水域内で勝手にやっているようなアレですね。ギリシャとトルコは歴史的に紛争が多く、今もキプロス島を二つに割ってそこにPKOまで割って入っている状況ですから、お互いに領海・領土も言い分があるのでしょうが、今や双方ともNATO国として同盟国同士のはずですけど…..。

更に、西側諸国の諫言に耳を貸さず、ロシアの防空システムS-400を導入。現在本格運用開始を準備中の模様。NATO加盟国でありながら、NATO最新鋭戦闘機でさえ撃ち落とせる態勢を取ろうとしています。この問題の深刻さはあまり日本で取り上げられないのが残念なのですが、結構深い話なのです。この防空システムはロシアのウェポンシステムです。導入したって、自分ではまだうまく動かせないし、メンテナンスはロシアにおんぶにダッコの、完全にロシアにウェポンシステムを依存することになるわけです。ということは、トルコの防空に関わる情報、ということはトルコが知り得るNATO軍の空軍の情報も含めて、あらゆる防空上の情報も防空システム上にプロットされます。特に、防空に切っても切れない情報として彼我(敵味方)識別、そして航空機の様々なデータが、・・・筒抜けになるわけです。だから、米国含めNATO各国は「やめろ」と言っています。にも拘らず、トルコは効く耳持ちません。もしかしたらNATO=西側諸国の譲歩を引き出すための交渉材料に使う気かも知れません。

西側にとり獅子身中の虫=トルコ
米国は珍しく我慢しています。我慢強く、トルコを懐柔しようと二国間交渉をしています。加えて、西側諸国にトルコと疎遠にならないように、様々なコミットメントを維持させようと要求しています。しかし、フランスなんかは、表現の自由を旗頭としたイスラム教の預言者モハメッドの風刺画の問題で、トルコがイスラム教国を代表してバチバチの論争をしている最中。(参照:2020年10月29日付VOA記事「France-Turkey Dispute Grows Over Cartoons and Influence in Africa」)また、トルコの前述の東方攻勢と西方攻勢を非常に警戒しているNATO西側諸国は、トルコのここ最近の挑発的・冒険的な姿勢にウンザリ状態です。(参照:2020年10月29日付VOA記事「NATO Allies Growing Weary of Turkish Aggression」、下の写真も同記事より)
Greek Minister of National Defense Nikos Panagiotopoulos
トルコの挑発にウンザリするNATO国の高官(Greek Minister of National Defense Nikos Panagiotopoulos speaks to journalists in Kastanies on March 1, 2020.)

私見ながら
トルコって世界有数の親日国なんですよ。日露戦争で日本がロシアに勝ったことを我がことのように喜んだ国、特に世界最強と言われたバルチック艦隊を破った東郷元帥に敬意を表して「トーゴービール」という東郷さんの似顔絵マンガ付のビール(今もあります)を売り出すほど。そのトルコが、どうしたんだよ、と心配になるような状況です。

私見ながら、この状況は2つの視点で見るべきと思います。
まず一つ目は、策士エルドアン大統領の腹の中。もう一つは、ロシアのプーチン大統領の深謀遠慮です。エルドアンは、策士でやり手です。S-400防空システムの問題も、ロシアと西側諸国をこの兵器を道具に手玉に取っているかもしれません。しかし、忘れてならないのはロシアのプーチンの一枚上手を行く腹の黒さ。なぜトルコが東方攻勢や西方攻勢をするのか?なぜトルコがロシア製の防空システムを買おうとしているのか?陰に日向にロシアの影があります。操られているのはエルドアンかも知れません。よく考えてみると、今の米国やNATOの憂鬱は、「トルコは基本NATOの傘下に留めておきたいのに、ロシアに取られそう・・・困ったな。言うことを聞いてくれないな。」なんですよ。今の状態を、ほくそ笑んでいるのはロシアのプーチンその人なのです。

(了) 


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