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2020/11/23

豪軍がアフガンで戦争犯罪、との悲報: 自衛隊への警鐘

豪軍の戦争犯罪の悲報
 悲しいニュースながら、自衛隊への警鐘ともなる教訓に富むものです。
 2020年11月19日、豪軍(オーストラリア国防軍)は、アフガン戦争の際に米国主導の有志国連合で現地に部隊を派遣し現在まで駐留していますが、2009年から2013年の間に、明らかに戦闘中の不可避の交戦結果ではない事由での、所謂「戦争犯罪」にあたる捕虜や民間人の不法な射殺が39名も起きていたことを公表しました。
 2020年11月19日、豪軍のアンガス・キャンベル国防軍司令官は苦渋に満ちた表情で、豪軍の戦争犯罪疑惑について4年を費やして調査した報告書の内容を発表しました。この戦争犯罪は、豪軍の最精鋭の特殊部隊SAS(特殊空挺部隊)のベテラン古参軍曹が新米兵士に「最初の射殺」を経験させるという、一部の不心得な隊員たちによる恥ずべき兵隊文化であった、と釈明しました。ちなみに、豪軍は今回問題となったこのSASの特定部隊を廃止にしています。自分の所属部隊や出身部隊を軍人人生のバックボーンとする軍人として、不祥事の結果で部隊廃止に至るなどということは最も厳しい処分と言えましょう。
(参照: 2020年11月19日付VOA記事「Australian War Crimes Report Shows Young Soldiers Were Encouraged to Shoot Afghanistan Prisoners to Get First Kill」、及び同日付BBC記事「Australian 'war crimes': Elite troops killed Afghan civilians, report finds」)
ADF Chief
苦悩の表情で記者会見に臨むキャンベル豪州国防軍司令官(Chief of the Australian Defense Force Gen. Angus Campbell delivers the findings from the Inspector-General of the Australian Defense Force Afghanistan Inquiry, in Canberra, Nov. 19, 2020.)(2020年11月19日付VOA記事「Australian War Crimes Report Shows Young Soldiers Were Encouraged to Shoot Afghanistan Prisoners to Get First Kill」より)

私見ながら: 自衛隊への警鐘
 自衛隊も、国際平和協力活動として国連PKOや海賊対処行動など、紛争地と言わないまでもギリギリ紙一重の状況下で勤務しています。自衛隊の国際平和協力活動そのものは、派遣される際の非常に厳しい日本国内の法的制約から、活動する場所や活動内容において、非戦闘地域や非戦闘任務であることが条件ですので、平和的手段のみの大人しい活動です。しかし、偶発的な攻撃行為を受け得る可能性は現地の人々が被る可能性と同じ程度あるわけで、そうしたことも起きうるわけです。例えば、日本隊の現地での活動は、イラクでも南スーダンでもそうでしたが、日本隊の施設小隊が現地の道路、橋、浄水場などの整備をしているとして、その周囲に警備小隊が警戒配置につきます。施設小隊は作業に専念し、この間、警備小隊はずっと周囲を警戒するわけです。他国軍の場合、銃を持ったまま威嚇的な警戒をしますが、自衛隊の場合は指示されない限り丸腰で、しかも通行する現地住民に笑顔で手を振ったりしながら警戒します。顔に笑みをたたえつつも、サングラスの下の目は警戒心を怠らずに。この警備小隊は、普通科隊員によって構成され、この中にはレンジャー、空挺、特殊作戦群などの隊員もおり、彼らは現地で射撃訓練等も実施し、最悪の事態では、作業をしている施設小隊を安全に避難させるため、警備小隊が援護・誘導します。数年前に話題となった平和安保法にて、「駆けつけ警護」とか「宿営地の共同防護」が取りざたされましたが、こうした任務も彼らが実施します。現在は南スーダン派遣も終了し、当面こうした場はありませんが、この警備を担当する部隊の特殊作戦群やレンジャーのベテラン陸曹が、隊員たちの精神的な支柱です。警備小隊の誰もが、経験あるベテランの陸曹を心から信頼し、尊敬し、団結・規律・士気の中心となっています。そして、この精神風土・構造は、今回の豪軍の不法行為・戦争犯罪の下地と同じです。

 今回の豪軍の戦争犯罪は、豪軍の精鋭部隊にて起きました。精鋭部隊は豪軍が現地で担う任務の中でも、一番危険を伴う任務を任されます。自覚もしているし、自負もある。経験あるベテラン軍曹ほど、その自覚や自負ゆえに、「若い経験のない兵士が早く一人前になるように、厳しい状況に置かれても生きて帰れるように」との善意から発して、最初の一人を射撃で倒す「射殺体験」をさせるという不法かつ非人道的な戦争犯罪に手を染めました。若手兵士らは、良心の呵責に悩みながらも、信頼するベテラン軍曹の「善意」を断り切れず、結局は戦争犯罪に手を染めてしまったものです。

 自衛隊では、ベテラン陸曹と雖も、本人もまだ人を撃った経験がないはずなので、状況が全く違うので起き得ない話です。しかし、敢えて今回の豪軍の戦争犯罪の事例を「警鐘」と受け止めるべきだと思います。豪軍の精鋭部隊のベテラン軍曹の感覚や若手を育てたい気持ちは、陸上自衛隊のベテラン陸曹のそれと風土が一緒なので、あり得る話です。「警鐘」というのは、その際の判断基準として、今回起きたような不法行為は「不法」であり「戦争犯罪なのだ」という真っ当な神経を持つべきだということです。「戦地・紛争地」に近い派遣地域には、一種「戦時」感覚の通常とは違う緊張した雰囲気と、であるが故の「非日常」さから、「日本とは違う」という勘違いが起きやすいのです。そうした中で、緊張と非日常の中にあっても「正常」な感覚を見失わないことが肝心です。今回の豪軍の事件では、テロ攻撃をしてきた者やそれと思しき拘束した者たちに対して、若手の経験を積ませる通過儀礼のように実施され、射殺後に、あたかも戦闘中の交戦結果であったかのように死体の近くに銃や無線機を置くなどの偽装をしたそうです。多くの若手兵士は、この行為自体がトラウマとなり、事件後数年経ってからの調査の際に、良心の呵責に耐えかねて自白しています。その神経は正しい。オーストラリアのような民主国家は、もしや不法行為・戦争犯罪があったのではないか、という疑惑で調査をし、その調査において事実が誤魔化されずに明るみになります。

 日本もそうです。国際平和協力活動に参加する陸上自衛隊の隊員たちには、今回の豪軍での戦争犯罪事例を反面教師として、警鐘として受け止め、正常な神経、正常な判断基準を維持していただきたいものです。

(了)

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