FC2ブログ
2021/05/23

ガザ:危うい停戦は次なる紛争のカウントダウンか

ガザ:危うい停戦は次なる紛争のカウントダウンか
 停戦成りましたね。それはそれでよかった。11日間に及ぶイスラエルとパレスチナ自治政府のガザ地区との間の報復攻撃の応酬は、双方が停戦に合意しました。双方が「勝利」と歓喜し、国際的な援助も本格的に入り、破壊された街が逐次修復され、町も人々も活気を取り戻し始めています。
palestinians celebrated in gaza
停戦を「勝利」と喜ぶガザのパレスチナ人(Palestinians celebrate in the streets following a cease-fire brokered by Egypt between Israel and the ruling Islamist movement Hamas in the Gaza Strip, on May 21, 2021, in Gaza City.)(2021年5月21日付VOA記事「Fragile Israel-Hamas Cease-fire Met with Cheers, Criticism」より)

 しかし、この停戦はゴールではなく、極めて危うい崖っぷちの上を歩いている現在進行形の国際情勢だということを念頭に置くべきだと思います。導火線、いや爆発性の危険物がそこかしこに存在するのがパレスチナです。例えば、東エルサレムのパレスチナ人の土地問題で、裁判結果に基づく強制的な差し押さえに対するパレスチナ人の抗議デモが起きて、それに対するイスラエル官憲のデモ対応でパレスチナ人に犠牲者が出たとして、停戦中とはいえコントロールの効かない過激なハマスの鉄砲玉による暴発はあり得ます。自爆テロやロケット攻撃が起きたとして、それを契機に、イスラエルは報復攻撃をします。停戦は棚上げとなる可能性は十分に高い状態です。これを称して「次なる紛争のカウントダウンだ」という論評もあるくらいです。(BBC記事2021年5月22日付「Israel-Palestinian conflict: Aid arrives in Gaza as ceasefire holds」の評論欄「A countdown to the next conflict?(BBC特派員ToM Bateman))
_118610100_067494943-1.jpg
エルサレムのアルアクサモスク前の広場でパレスチナ人を取り締まるイスラエル軍(前述のVOA記事より)
 
朗報はエジプトによる停戦監視だが…ハマス内の分裂の兆しもあって…
 2020年秋からのナゴルノカラバフの紛争を例にとると、2020年9月下旬から軍事衝突となり、10月10日に停戦となったものの数次の停戦棚上げで紛争が続き、結局10月10日頃の4度目の停戦でようやく本腰を入れた停戦後の復旧・復興に入りました。決め手は、ロシアの調停とロシア軍の停戦監視部隊の駐留です。ロシア軍が介在している以上、停戦破りがあれば、ロシア軍が乗り出して対応することになりますから、アルメニアもアゼルバイジャンも慎重になります。
 さて、パレスチナのガザはどうでしょう。今回、米国がイスラエルの首に鈴をつけ、ガザのハマスに対してはエジプトが首に鈴をつけました。そのエジプトが停戦監視部隊を駐留させるという情報ですから、ロシア軍ほどのにらみは効かないものの、一応、第3者たるエジプト軍が停戦履行状況をチェックしてくれるし、イスラエルにとっても心からの信用はしていないでしょうけど、一応の停戦監視の履行の保障にはなるでしょう。
hamas.jpg
停戦後のパレードでのガザのハマス部隊(Hamas militants parade through the streets for Bassem Issa, a top commander killed by Israeli Defense Forces military actions prior to a cease-fire reached after 11 days of conflict between Gaza's Hamas rulers and Israel, in Gaza City, May 22, 2021.)(2021年5月22日付VOA記事「As Israel-Hamas Cease-Fire Holds, Egypt Mediates for Long-Term Truce」より)

 とはいえ、今回バイデン米大統領とともに停戦の調停役を演じたエジプトのアブデルファッタエルシシ大統領の足元(エジプトの政情)も不安定です。それ以上に危ういのが、ガザ地区の実権を握っているハマスの組織内で、外交重視の調停派と武闘思考の強硬派との間で激しい意見対立がある模様です。ガザのハマスの政治指導者ヤヒヤ・シンワー氏の一派は停戦を長期的に維持することを是として外交重視の姿勢をとっていますが、ハマスの軍事部門の司令官モハメッド・デイフ氏やハマス全体の政治指導者イスマイル・ハニエ氏は対イスラエル強硬派です。停戦も再編成や補給のための方便という思考があります。現行の停戦は利害が一致しているからいいですが、今後東エルサレムの土地問題などで再び問題が顕在化した時には、外交重視派と武闘派の意見対立はコントロールの効かない鉄砲玉がはじけることが引き金となって、イスラエル側から鉄砲玉ではなく公然と報復攻撃という形で停戦破りが行われるかもしれません。それというのも、直ぐ上の写真を見てください。今回の停戦を「勝利」と位置付けて歓喜するパレスチナの若者の目には、上の写真のようなハマス部隊の堂々の市中パレードは「停戦を勝ち取った英雄」に映るわけですから、鉄砲玉予備軍は大勢いるわけです。

 パレスチナ情勢は、まだまだ目が離せませんね。

(了)

にほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へ
にほんブログ村

国際政治・外交ランキング
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント