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2021/06/20

イラン/イスラエルの強硬派政権誕生の暗雲

台風の目:イスラエル,パレスチナ,イラン
 イスラエルvsパレスチナの爆撃が再燃、折しもイスラエルでは超右翼のベネット新首相が登場し、益々対パレスチナ・イラン強硬路線が懸念されています。他方、イランでも大統領選挙があり、改革派・対外協調路線だったロウハニ前大統領から厳格な反米強硬派のイスラム法学者ライシ師の大統領就任が大方の予想となっています。イランにとって懸案であった西側との核合意への復帰交渉は、ライシ師の登場による対外強硬路線への転換により、再び暗雲が垂れ込めています。イランの最高指導者ハメネイ師の後継と目され、ヘメネイ師と同様、一歩も退かない頑迷固陋さをもってイスラム法による排他的な富国強兵の国家運営を標榜している方なので、西側との核合意交渉の難航、核開発を絶対に許さないイスラエルの超タカ派ベネット新首相との激突が懸念されます。
Israel attacked Gaza
ガザ地区へのイスラエルの報復攻撃第2撃(Smoke and flames are seen after an Israeli air strike in the northern Gaza Strip, June 17, 2021)(2021年6月17日付VOA記事「Israel Strikes Gaza After Hamas Fires Incendiary Balloons」より)

イスラエルvsパレスチナの再燃
 キッカケはイスラエルの右翼の愛国主義デモの強行により、対パレスチナ挑発となったことです。イスラエル建国戦争の頃、ユダヤ民族にとって長年の夢であった聖地エルサレムの東部(東エルサレム)を占領した日が6月15日で、この日を祝うナショナリズム的なパレードを一部の右翼がエルサレムの旧市街(ユダヤ教の聖地嘆きの壁、イスラム教の聖地岩のドームとアルアクサモスクがあり、パレスチナ住民地区も混在)で決行すると宣言し、これを新政権が容認しました。これにパレスチナ(ガザ地区)のハマスが反発、デモを決行したら報復すると宣言。というのも、このデモそのものが、現在はパレスチナ自治区に所在する東エルサレムの奪回を主張するものであり、旧市街のダマスカス門周辺のアラブ人地区でパレスチナ人と揉め事になることが必至なため、ネタニヤフ政権でさえ容認しなかったのに、今回容認したのです。デモ当日、案の定、デモに反発したダマスカス門周辺に集まるパレスチナ人が投石、イスラエル官憲が催涙弾やゴム弾で鎮圧・分散・逮捕・拘束で応じ、パレスチナ側に多くの負傷者が出て、本来デモを治めるはずのイスラエル官憲はデモ(ユダヤ人)を擁護してパレスチナ人を鎮圧する形でした。これにパレスチナ・ガザ地区のハマスが当然のように猛反発し、焼夷弾を装着した鉄パイプ改造ロケット弾を発射。荒野に落下して草を燃やしただけでしたが、イスラエル政府は激怒。16日朝及び17日夜の2度、報復攻撃としてガザ地区のハマスの拠点らしき施設に精密誘導兵器で爆撃しました。こうしたらこうなるだろうと、この図式は、起こる前から誰の目にも明らかな話なのに、彼らはそうせざるを得ない心情を抱えています。何と愚かな。我々第3者の目には理解に苦しむ行為でも、ユダヤ人やパレスチナ人にとっては、こうしたらこうなるだろうと分かっていても、やむにやまれぬ民族の血がそうさせるのでしょう。この辺は、前提条件が全く異なる話しながら、「かくすれば かくなることと知りながら 止むにやまれぬ大和魂 」(吉田松陰)の句を彷彿とさせます。ともあれ、僅差の勝利でネタニヤフ前首相を破った連立政権は、超タカ派のベネット首相の下、対パレスチナ強硬路線は継承するぞ!と世に示しました。5月21日に停戦が成ってから3週間余りで、爆撃の応酬という元の黙阿弥になりました。

President-elect Raisi
ライシ師当選を喜ぶ支持者 (Supporters of Iranian President-elect Ebrahim Raisi celebrate after he won the presidential election in Tehran, Iran, June 19, 2021.)(2021年6月19日付VOA記事「Observers See Low Iranian Election Turnout as Disavowal of Leadership」より)
イランに反米強硬路線の新大統領が誕生の見込み
 6月19日、イランの大統領選挙にてイスラム法学者で現司法長官のエブラヒム・ライシ師が勝利。8月には大統領就任の運びとなりました。しかし、この選挙は「大勝利」とは程遠い複雑なものでした。選挙前から明らかだった流れとして、最高指導者ハメネイ師は自分の分身的な考えを持つライシ師に全幅の信頼を寄せ、他の候補者を潰しにかかり、もはや出来レースでした。投票率は48%と言われ、多くの国民が出来レースだった今回の選挙をボイコットしたこと、と同時に、ロウハニ前大統領に対する改革派の対外協調路線への期待が崩れ、改革派にも国民はNoを示した形でした。

 選挙による国民の投票支持はともかく、ライシ師は長くイスラム法による法の支配の行政を握ってきており、過去何度もの民主化運動への弾圧や人権蹂躙ぶりから、西側の受けはすこぶる悪い方です。しかし、当人は外からの毀誉褒貶には無頓着。専ら、自国内の引き締め、富国強兵策と排他的な対外強硬路線を訴えています。

 イラン核合意交渉が始まっていたのに、ライシ師の登場で暗雲どころか交渉の席を立つことになるかもしれません。ライシ師は、まず西側の対イラン経済制裁の先行無条件解除を要求する一方、自国の核開発は固有の権利と主張します。だめだこりゃ。

こうなると怖いのはイスラエルとイランの激突
 こうなると、パレスチナどころの話ではありません。
 イスラエルという国は、誰が政権の座にいようと関係なく、自国の安全保障に対して弓引く国あらば、その可能性が生じた段階で、奇襲的に一方的な先制攻撃をしてその可能性自体を潰す国です。国際社会から非難を受けようがお構いなし。自国が軍事的脅威に晒されるなどということがあれば、一切の躊躇もなく、徹底的に敵国の懸案の軍事手段(例えばイランの核開発施設)を排他的かつ他言無用で撲滅する国なのです。

 今回、イラン核合意交渉が行き詰まり、イランはIAEAの査察も拒否し、独善的にウラン高濃度濃縮(ということは核弾頭を作れることを意味)を進めると宣言するとしたら、その夜にはイラン核開発施設を空爆とサイバー攻撃の合わせ技で撲滅します。事実、過去何回もやってますから。
 これまでのイランなら、ロウハニ大統領は「ここで対イスラエルの軍事手段に出ると形勢が不利になる」と情勢を読んで、忍耐を示しました。しかし、ライシ師は思考過程がハメネイ師とクローンですから、あえて空気は読みません。対イスラエルの軍事手段に出るでしょう。そして、それは第5次中東戦争を意味します。イスラエルとイランの戦争状態。とりもなおさず、戦域はペルシャ湾などいわゆる中東・湾岸地域全体の船舶の航行、航空機の飛行、政治経済の流れは戦争状態に突入します。

 強硬派ばかりのメンツとなった中東情勢は益々混迷を深めて来ました。
 イスラエルもイランも、国民の意思でそうしたのだからどうしようもないですね。双方の政権が対外強硬路線同士だと、衝突しそうな状況で交渉や駆け引きの余地がなく、仲介が両者に引き下がるタイミングを提供しても言うことを聞かず、衝突に至らざるを得なくなります。
 穏健に流れるのが何よりですが、ここから先の中東情勢は間違いなく荒れ模様となりそうです。

(了)

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