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2021/07/07

コロナ無しだがロックダウン不況:北朝鮮の強気の泣き言

Kim Jong Un, June 29 2021
党中央委員会の拡大会議(2021年6月29日)で厳しい表情で北朝鮮の現状を語る金正恩総書記(2021年7月5日付VOA記事「7月3日付けVOA記事「North Korea Faces Worsening Economic Woes amid COVID Lockdown」」より)

北朝鮮の現在の状況が見えてきた
 2021年6月15日から金正恩総書記出席のもと、朝鮮労働党第8回中央委員会第3回全体会議が行われ、29日には党政治局の拡大会議が行われ、金総書記が発言し、その内容が30日付の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」に掲載されました。
 その内容から、北朝鮮の現在の状況が読み取れ、それを各国各紙が記事にしています。(2021年6月30日付けNHKの報道「“コロナ対策で危機をもたらす重大事件” 北朝鮮 国営メデイア」、7月3日付けVOA記事「North Korea Faces Worsening Economic Woes amid COVID Lockdown」など)
 それらの報道によると、ザックリ言うと次の4点です。
 ① 北朝鮮は鎖国的なロックダウンを継続しており、これが功を奏して未だコロナ感染なしを維持している。
 ② 国連がコロナワクチンを供与する枠組みを提示しているのに北朝鮮は拒否した。
 ③ このロックダウンの維持により、昨年の台風の影響等による壊滅的な飢饉の状況とのダブルパンチで、経済危機に陥りもはや人道危機の状況である。(金正日時代の1990年代に数百万人が飢饉で犠牲になった頃を引き合いに出す)
 ④ コロナ対策について政府高官の重大な過失があり、「国家と人民の安全に大きな危機をもたらす重大な事件が発生」し「幹部たちの無能と無責任」を指摘した。
 
 上記4点をどう理解するか、がミソですね。
 まず①の「コロナ対策が功を奏してコロナ未だ感染者なし」を高らかに誇示し、②ではコロナワクチンの国際的供与を拒否」するという相変わらずの強気な姿勢の表れ。
 しかし、③で「ロックダウンの影響と飢饉でもはや経済危機・人道危機」という冷静な分析のような泣き言を言い、④では「政府高官がコロナ対策で重大な過失」とのショッキングだが内容を全く明かさずに誰かに責任を負わし、政府の過失を認めざるを得なかった弱気を示しています。
 
 私見ながら、4つともいつもの北朝鮮らしい表面上は強気一辺倒ですが、その実、弱気が如実に交錯しており、北朝鮮にしては相当弱っている感がします。しかし、本当に弱っているのか?というと、北朝鮮ウォッチャーによれば、「それほどの危機的状態とは思えない」(デイリーNKロバート・ローラー氏)という指摘もあります。北朝鮮はワクチンを使いたければ、国連の枠組みにすがらずとも、中国やロシアのワクチン供与を受ける手もあるのに、「それをしないということは本当にワクチンを拒んでいるかも」、という指摘もあります(米スチムソンセンターのレイチェル・ミヨン・リー女史)。
 
強気と弱気の交錯した北朝鮮の本音は?
 上記の①~④と北朝鮮ウォッチャーの専門家の意見を踏まえた私見を述べさせていただければ、
 まず、①の「北朝鮮はコロナ感染なし」というのは虚偽で、事実上感染者はかなり出ているが、鎖国的ロックダウンにより限定的ではある。これまで「感染者なし」と報告してきたことに綻びを生じ、もはや金正恩の知るところとなり、関連高官は責任を取らされて粛清された。これが④の部分であろう。金正恩もコロナの感染状況などを具体的に掌握しているが、これまでの内外への、特に国民への「コロナ感染なし」との説明との整合性から、(今更「実は感染してました」とは口が裂けても言えない。)引き続き、この姿勢を崩さず強気に行く。いわんやコロナワクチンを海外から供与されて、「全国民にワクチンを射つ」なんて極力避けたい。コロナ感染拡大を抑える最有力手段は、北朝鮮の場合は、引き続き鎖国的ロックダウンしかない。従って、海外からの人や物の流入を止め続けたい。だから②の「ワクチンすら外国から入れさせない」。しかし、これが中国をはじめ支援を提供する国々からの支援をも止めることになるというジレンマに陥っている。③の「経済は疲弊し、飢饉が祟って国民は飢えに苦しむ」。・・・と一応、決して他国に困窮を訴えて支援を哀願するような表現は一切せず、極めて冷静な分析を装って弱音を吐く。その弱音の理由は、「本当は経済支援、食糧支援を得たいから」、ということではないのかも。まだ余力はあるのかも。ではなぜ③のように「人道危機」とまで言うのか?私見ながら、バイデン新政権になった米国との交渉の切り口として、米側の譲歩を引き出すための対米国用の「交渉の切り口提示」の発言であり、巧妙な交渉術ではないか、と見ています。
 
 (了)

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