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2021/09/26

アフガンは中国のアキレス腱: 新疆ウイグル泥沼化の可能性

中国とアフガン
2021年7月28日、中国の天津にて、王毅中国外相はタリバンの政治責任者ムラアブドゥルガニバラダールと会談(Chinese State Councilor and Foreign Minister Wang Yi meets with Mullah Abdul Ghani Baradar, political chief of Afghanistan's Taliban, in Tianjin, China, July 28, 2021.)(2021年9月23日付VOA記事「How Uyghurs, Taliban View Each Other — and Why It Matters」より)
 
中国のアフガンへの肩入れ
 2021年8月の米軍撤退、タリバンの破竹の進撃、カブール陥落以来、中国は一貫して政権に返り咲いたタリバンへの支持を表明し、食料、ワクチンをはじめ様々な大型支援を提供し、中国のアフガンへの肩入れが顕著です。タリバンの思惑としては、これまでの超強硬派で強圧的な統治政策を軟化した包括的な政権運営をすること、国際社会が懸念するようなテロの巣窟にはならないこと、という二枚看板の「公約」で国際社会にアピールして、タリバン政権下のアフガニスタンの国際的認知を得ようとしており、その上で国際的な経済的支援を得たい、という腹です。その意味では、中国のタリバンに対する支持・支援は力強い味方・もはやパートナーになっています。中国の思惑としては、これを好機に、米国のアフガン侵攻やアフガン政策、及び今回の米軍撤退について、「アフガンの混乱を見よ!米国は自国の価値観を押し付けた挙句に自国の利益を優先して最後には裏切ってトンズラしてしまう、信頼できないパートナーなのだ。」という厳しい対米批判を展開するとともに、この中央アジア地域から米国を排除した一帯一路政策の一環とした経済回廊を構築して関係強化を図る、というイケイケの攻めの側面があります。他方、中国にとっての守りの側面となる、中国の急所である新疆ウイグル地区からアフガンに亡命した反中グループの動きを覆滅したい、これを絶対に問題化したくない、という思惑があります。 (参照: 2021年9月9日付BBC記事「China offers $31m in emergency aid to Afghanistan」、同年9月23日付 Yahoo Japanニュース「中国・ロシアは味方した…タリバン内閣、国連の舞台に立てるのか」、ほか)
 その中国にとって今後のアキレス腱となる、アフガンとの関係強化の副作用としての新疆ウイグル問題の泥沼化の可能性について検討したいと思います。

スライド1
2021年6月2日、トルコに亡命したウイグル人組織が中国領事館前で中国政府に抗議(Members of Uyghur community living in Turkey stage a protest outside the Chinese consulate in Istanbul, June 2, 2021. They protest agains alleged oppression by the Chinese government to Muslim Uyghurs in far-western Xinjiang province.)(最上段の写真と同じ前掲VOA記事より)

中国がアフガン政策で懸念する新疆ウイグル問題の顕在化
 実は中国は、2021年8月18日から数日に亘り、タジキスタン国内にて中国人民解放軍とタジキスタン軍との共同訓練を実施しています。その主要な演習目的は「アフガンからのテロリストの潜入・侵入の阻止」という対テロ訓練だったのです。というのも、国連の6月及び7月の発表によれば、アフガン国内に中央アジア、ロシアの北コーカサス地域、パキスタン、中国新疆ウイグル地区の人々を含む約8,000名から10,000名の亡命反政府組織の戦闘員が存在する、とのこと。これを踏まえての、アフガンと国境を接した隣国としての事前の備え、と考えられます。

 アフガンから中国にテロリストが侵入?って何?とお思いになるかもしれませんが、そもそもタリバンもつい先日まで反政府組織でしたが、アフガン国内にはタリバン同様、中央アジアや中東の自国内では活動できない反政府組織=テロリスト達の絶好の潜入場所なわけです。勿論、これまでは米軍が駐留していたため、動けずに潜伏している程度でしたが、その漬物石がなくなり、各組織とも活発化が予想されます。そんなテロリストが中国に入って来るなんてことがあるのか?とお思いでしょう。これはアフガンから中国(タジキスタン)への一方通行に非ず、中国からアフガンへの侵入もある訳です。現実問題として、後者とは、新疆ウイグル地区で徹底的な弾圧・迫害・洗脳を受けているイスラム教徒のウイグル人がアフガンへと逃げています。中国にとって、逃げられるだけなら厄介者が出ていく話ですから問題ないのですが、問題は、アフガンで反中テロリストとしての亡命ウイグル人の組織が立ちあがり、訓練を受け、一部はシリアで実戦経験を積んでおり、虎視眈々と中国への帰還を心待ちしていることなのです。
 アフガンでは、ETIM(東トルキスタン・イスラム運動: East Turkistan Islamic Movement)という、亡命ウイグル人を主体とした反中武装組織がアフガンで訓練を受け、活動中です。このETIMは、本家のアフガンのタリバンよりもむしろ、より過激なパキスタンのタリバンでTTP(Tehrik-i-Taliban Pakistan)という反政府武装組織があり、このTTPに庇護されています。
 このTTPがクセモノなので、少々補足いたします。前述の国連の7月の発表の詳細部分によれば、アフガンに所在する外国からの戦闘員とは、その8,000~10,000名のうちの6,000人~6,500人はパキスタン出身と言われ、その武装組織の大半はこのTTPと連携している、と指摘されています。要するに、TTPはパキスタンとアフガンの国境地帯に潜伏し、両国を比較的自由に行ったり来たりの活動、潜伏、支援の獲得等をしています。TTPはパキスタン政府軍と抗争しながらも、実はパキスタン政府も黙認しつつ、たまにこうなる前のアフガンのタリバン支援や対米・対インドを始め対外的な鉄砲玉として上手く使っているフシがあります。要するに、このTTPがアフガンにおける外人テロリスト達のパトロンだったり、一宿一飯の避難場所や訓練場所や実戦経験の場を提供する親玉組織なわけです。
 中国は、ETIMを新疆ウイグル地区における「最も危険で過激なテロ集団」と位置付けて、徹底的に警戒しています。中国政府が恐れているのは、新疆ウイグル自治区のウイグル人が国外に逃げたのち、ETIMの戦闘員となり、反中テロリストとして再入国し、新疆ウイグルの若者たちをリクルートし、あちこちで反政府テロを起こすような事態です。そして、新疆ウイグルでのイスラム教徒の同胞がこんな惨状にある、と国際社会のイスラム同胞にに訴え、中東をはじめイスラム教の諸国から国際的に糾弾される・・・、そんな事態になったら最悪です。ゆえに、新疆ウイグル自治区のウイグル人を収容・洗脳施設に監禁して再教育し、このETIMのような組織のリクルートに乗らない中国人化を図っているわけです。また、中国はアフガン国境に他国国境以上の警備体制をとっています。また、アフガンのタリバン政権に対して、中国にとって脅威となるETIMの取り締まりや新疆ウイグルからの亡命者の出入の阻止などを要求しています。
(参照: 2021年9月20日付VOA記事「Regional Extremists ‘Energized’ by Taliban’s Takeover Could Pose Threat to Pakistan, China Interests, Expert Says」、同年9月23日付VOA記事「How Uyghurs, Taliban View Each Other — and Why It Matters」、ほか)

 注目すべき事件がありました。8月に、中国とパキスタンとの一帯一路政策の一環である「中国パキスタン経済回廊(CPEC)プロジェクト」のパキスタン北部のダム建設計画で、現場に向かうバスへの自爆テロ攻撃があり、中国人技術者9名を含む計13名人が死亡するテロが起きました。パキスタン当局は、「TTPの犯行」と指摘しました。TTPが狙ったのは、パキスタン政府への一撃として、中国との経済振興の旗艦プロジェクトです。TTPにとって、今や戦う相手として地域の主要な敵は、米国なきあと中国なのです。中国にとっては全く迷惑な話だと思いますが、この地域に影響力を持とうとし、政権を取っている政府に肩入れする様々な政治・経済的な支援というものは、反政府組織にとっては「倒すべき敵」に違いありません。・・・そして、全くの私見ながら、私はこのTTPのテロの陰にETIMも加わっているのではないか、と推察しております。さらに言えば、米国のCIAが巧妙に関わっているのではないか、と見ています。穿った見方で恐縮ですが、私見ながら米国のCIAがバックアップしているものと推察します。これまでは極めて水面下でETIMを支援していたと思いますが、米軍完全撤退後のタリバン下のアフガンやそもそもユルユルのパキスタンにあっては、米軍を支援する活動ではなく、親タリバンのイスラム聖戦思考の組織であるTTPやETIMに対する支援ですから、 CIAも逆説的に活動しやすくなったのではないかと思います。当然CIAだとは名乗らず、TTPやETIMの心情的支援者の一組織として軍資金や情報の提供をしている体での巧妙・狡猾な工作だと思いますが・・・。
 上記と関連して、現在タリバンは中国に対し、推定1兆ドルから3兆ドル相当の鉱物採掘プロジェクトを立ち上げを要望しているそうです。このプロジェクトに中国が相当の経費をかけて中国資本の技術者も大挙して関わるとすれば、ETIMにとって格好の目標です。まず、中国国内でのテロは難しかろうが、アフガン国内での中国の影響力行使を攻撃目標にすることは非常に容易です。中国政府はタリバンに徹底的なセキュリティを求めるでしょうが、もともとタリバンは攻めの武装組織で、得意技は百姓一揆的な無手勝流の各自の勝手気ままな武力行使ですから、命令・指示に基づく一糸乱れぬ部隊行動や抜け・漏れのない警戒行動、なんて不得意です。テロリストから見れば隙だらけのユルユル警備。ETIMは神出鬼没の対中目標のテロを起こしては国際社会に新疆ウイグル地区の中国政府のウイグル人に対する弾圧の惨状をアピールできるわけです。中国国内に侵入したETIMと呼応して中国国内でもテロを起こすことも十分考えられます。
 ・・・中国にとっては、古くは英国が、80年代にソ連が、そしてこの20年米国がハマっていた泥沼に、今度は中国自身が足を取られることになるかもしれません。

 (了)

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