プーチンの腹:在留ロシア人保護/ミンスク合意不履行を大義名分に侵攻へ

ロシアがベラルシに3万もの軍隊を共同訓練を口実に派遣、ウクライナの北からの侵攻部隊が配備に?(2022年2月4日付ロイター記事「ロシアが口実でっち上げも、米情報機関が分析 侵攻正当化で」より)
緊迫度を増すウクライナ情勢
今週だけでも各国のウクライナ情勢の沈静化を巡る動きが活発化、ウクライナ情勢は益々緊迫度を増しています。
2022年2月1日、ロシアのプーチン大統領は欧米との安全保障を巡る交渉難航についてコメントし、「ロシアの懸念が無視された」と不満を表明。他方で、ロシアから欧州へガス供給や石油輸出国として、生殺与奪の軍配を握って欧州各国にグイグイ揺さぶり中。
2月2日ジョンソン英国首相が電話会談で、次いで3日トルコのエルドアン大統領がウクライナのゼレンスキー大統領を訪ねて首脳会談をし、状況打開を模索中。ロシアは、2月3日ショイグ国防相をベラルシに派遣するとともに3万ものロシア軍部隊がベラルシとの共同演習を口実にウクライナの北側に展開、北からの侵攻態勢を準備か。米国はポーランドとチェコに3000名規模の米軍派遣をする旨発表し、米軍部隊が欧州正面に出発するニュース映像が流れる・・・。
(参照:2022年2月3日付日経新聞「プーチン氏なお強硬 欧州安保 米欧の回答に不満」、2022年2月3日付ロイター記事「ウクライナ侵攻は「悲劇的な誤算」、英首相がプーチン氏と電話会談」、同年2月4日付ロイター記事「トルコ大統領がウクライナ訪問、ロシアとの紛争で仲介申し出」ほか)
私見ながら、2月3日付日経新聞の同紙コメンテーター秋田浩之氏の「暴れるロシア、中国の憂い」というご意見を読んでビックリ。ご認識が甘い。同氏は、ウクライナ侵攻を抑止するために、中国に侵攻がもたらす中国の国益へのマイナス効果を理解してもらい、中国にロシアに対し一線を画してもらう、という二階でケツをあぶるような遠回しの解決策をご提示しています。そんな悠長な話で解決しますか?北京五輪での習・プーチンの満面の笑みをたたえた2匹のタヌキのニュース映像等を見ましたが、習もプーチンも、盟友から一線を画されたくらいで自国の死活的国益を断念するようなメンタルの弱い指導者ではありませんよ。日経新聞は日本の主要紙の中では割と国際情勢ものが充実した記事が載るので愛読させていただいていますが、この辺の甘い認識をみるとお坊ちゃまだなと思ってしまいます。先生、もうはや秒読みなのに、そんなのんびりした遠回しの解決策で緊張緩和しますか?
上記のような状況であれば、一番効果テキメンにロシアの侵攻企図を潰す策は、米軍の展開先がポーランドやチェコではなく、親善訓練名目でウクライナに展開することです。米軍がウクライナに駐留中にロシアが侵攻開始するということはさすがにないでしょう。なぜなら米ロの直接の軍事衝突となるからです。良識派のバイデン大統領は、NATO加盟国ではないウクライナへの米軍の展開はまずい、と合理的に判断しているのでしょうが、キテレツなトランプだったら、決定的な効き目のあるウクライナ派遣をしているでしょうね。勿論、新たな議論を呼びますが、ウクライナを見殺しにするよりはよほど「良心的」だと思います。しかし、バイデンじゃやらないですね。
見えてきたプーチンの腹

私見ながら、ウクライナ情勢を巡るプーチンの本心は「電撃侵攻によりウクライナをロシアの衛星国に戻す」の一択と見ています。ただ、国際社会への言い訳/大義名分として、「ウクライナがNATO加盟したら安全保障上不安だから」というのは説得力がないので、もっと国際世論にも自国民にも響く大義名分を旗印に掲げるだろう、と思っていました。ここ最近のロシアのウクライナや欧米への主張を見ていて、ハハーンこれだな、と見えてきたものがあります。2015年のミンスク合意の不履行問題です。
ミンスク合意とは
ミンスク合意とは、2014年のクリミア侵攻と同時並行的に問題がクローズアップされたウクライナ東部のロシアが支援する親ロ派武装蜂起とウクライナ政府軍の衝突にて、ウクライナ政府と親ロ派武装勢力との間で、紆余曲折の後、2015年にロシア、仏、独も交えてミンスクにて停戦協議をして結んだ合意のことです。ロシアの圧倒的な軍事的威圧の下で、親ロ派に有利、ウクライナには屈辱的な停戦合意でした。ウクライナは親ロ派武装勢力が実効支配するドネツク州とルガンスク州を親ロ派の自治州として認め、国政への発言権も認め、国境管理などの規定などもロシアや親ロ派に有利なものになっています。具体的な停戦合意の実施をめぐり、ウクライナと親ロ派2州、ロシアの間で紛糾し、結局のところ合意はあるものの停戦の遵守に至らず、これを良しとしないウクライナ政府軍と親ロ派武装勢力の間で睨み合いと小衝突が続き、親ロ派はルガンスク州・ドネツク州を武力で実効支配が続き、ウクライナも合意不履行が続いています。
(参照:2022年1月27日付日経新聞「ウクライナ問題、仏独ロ含めた4者交渉継続で合意」ほか)
凶悪な手口でロシアの死活的国益化
そして、ここからのプーチンのグロテスクさが凄い。なんと親ロ派2州において、親ウクライナ反ロシアの住民を追い出し、2019年以降は親ロシア派地域住民にロシア国籍を付与する政策を開始しました。これに多くの親ロシア派住民が応じ、かくしてウクライナ東部の親ロ派2州は72万人(2021年12月調べ)ものロシア国籍の住民が住む独立州ないしロシアの準領土にしてしまったわけです。プーチン恐るべし。
こうした背景の下で、ロシアはウクライナにミンスク合意の履行を要求するよう有形無形の圧力をかけています。もはやロシアにとって、隣国の内戦問題ではなく、孤立し助けを求めている自国民・同胞が住む地域の問題=自国民の保護という死活的国益の問題に引き上げられました。
そして、2022年2月3日、米国政府が公表したのが、ロシアがウクライナ侵攻やむなしの国内外の世論操作のためにやらせ(フェイク)ニュース映像」を企画している、という件です。ウクライナ東部の親ロ派実効支配地域が舞台で、ウクライナ政府軍と思しき部隊が親ロシア派住民の街に残虐非道な攻撃、街や家屋が破壊され、罪なき親ロ派住民の血まみれの死体が転がる.......こんなシーンのニュース映像が出回ったら、これは効果的。ロシア国民向けには自国民保護の義憤にかられ「ウクライナ討つべし!」という戦意高揚に、国際世論的には「こんな酷いことが起きているならロシアが軍事介入するのもうなづける」という同情に、そういった世論操作を狙ったものです。あいにく、ロシアのこの企画は既に西側で報道されてしまったので、効果は半減でしょう。
プーチンはミンスク合意不履行と自国民保護を大義名分に侵攻する腹、と見た
ウクライナ情勢をめぐって欧米はじめ関係国がロシアに緊張緩和を説いていますが、これらの試みは全く成果が出ません。それもそのはず、プーチンは初めから外交交渉など当てにしておらず、ウクライナ侵攻の腹を決めています。後はタイミングと大義名分の熟成を待っているのみ。この大義名分、すなわち「内外に説得力のある『軍事介入やむなし』の口実」がウクライナの親ロ派支配地域に対するミンスク合意不履行=この地域に住むロシア国籍住民の保護だと推察します。もう大義名分の仕込みが済んでいるので、あとはウクライナ政府軍による親ロ派支配地域へのPRするに十分な攻撃、というキッカケです。これはウクライナ軍の内部や親ロ派支配地域に潜入させた特殊工作員が仕込みを済ませているでしょう。何かの拍子にウクライナ軍と親ロ派武装勢力が衝突し、その際に衝突の犠牲になってPRに足る親ロ派住民の大きな犠牲が出るのではないか、と見ています。これを大々的に報道し、この際、被害に遭った可哀想な親ロ派住民=ロシア国籍を持つロシア人の惨状と現地住民のロシアへの助けを求める悲痛な声が映像として世界に流れるでしょう。ロシアはウクライナを避難し、その直後、電撃侵攻が始まる……。
プーチンの腹算用は既にできており、後はGOの機会を窺っていることでしょう。
(了)


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コメント
国民洗脳から目を覚ませ!
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2022-03-04 14:46 国民洗脳から目を覚ませ! URL 編集