ロシアは新司令官の指揮で東部で総攻撃をかけてくる

新司令官ドゥボルニコフ将軍。先日のウクライナ東部ドネツク地域の駅への無差別攻撃の命令はこの新司令官、との報道も。(Western officials believe it was Dvornikov who gave the order for the attack, it is reported)(2022年4月9日付Mirror紙記事「Russian general behind monstrous attack on Ukrainian railway station named in reports」より)
「ロシアのウクライナ侵攻に新司令官」のニュース
2022年4月9日頃から、欧米メディアがロシアのウクライナ侵攻の新司令官として、アレクサンドル・ドゥボルニコフ将軍をプーチン大統領が任命したことを報じ始め、同将軍の過去の戦歴でのシリアやチェチェンにおける一般市民の犠牲を意に介さない残虐行為や、そうした戦歴から「シリアの屠殺者」という異名で呼ばれることなどばかり報じられています。そして、今後のウクライナの戦況において、更なる一般市民への残虐行為が懸念されるというニュースばかりが報じられています。なるほど、確かに同将軍の指揮で行われる今後の作戦は、一般市民の犠牲を厭わない残虐な行為がそこここに見られるでしょう。
このニュースの見方:プーチンの腹を読むべし
しかし、このニュースで、「今後は冷血で残虐な性格の指揮官が残虐なことをする」などという情緒的で短絡的な見方をすべきではありません。今回の新司令官の任命についての、プーチンの企図、目的・目標を見逃さないでいただきたい。
同将軍が指揮した過去の残虐行為への拒否反応なんぞで見誤ってはいけない大事なことがあります。今後の戦線で起きうる残虐行為について懸念することよりも、もっと注目すべきことは、プーチンはこの新司令官を任命することで何を目的とし、いかなる達成目標をこの新司令官に課し、何をさせようとしているのか、それが大事なポイントです。
では、プーチンの考えとは?
2022年4月12日、プーチンはベラルーシの盟友ルカシェンコ大統領と会談後の記者会見で、ウクライナでの特別軍事作戦が現在までのところ所期の目標を達成しておらず膠着していること、この目標を達成するまで特別軍事作戦を続けることを初めて言明しました。(2022年4月13日付NHKニュース)
勿論、記者会見でプーチンが話したことが常に本心であるとは限りません。ただ、私見ながら合点が入ったニュースが関連情報としてありました。ウクライナ侵攻の前後でプーチン大統領にウクライナの情勢や戦況を一元的に報告していたFSB(旧ソ連時代のKGB。プーチンの出身母体)の相当数の幹部に厳罰処分をした、とのこと(同NHKニュース)。プーチン自身が、自分が得ていた情報が事実に基づくものでなく、FSBのフィルターのかかった歪曲されたものであったことに気づき、断罪した模様です。プーチンは今、再度情報を整理し、ウクライナの情勢や戦況など全般状況を踏まえて腹を固めたものと推察されます。その上で、記者会見の発言「目標(成果)を達成するまで作戦を続ける/やめない」と言ったわけです。そして、その施策の一環として今回の新司令官任命です。プーチンは、この司令官に目標を達成せよと命じているはずです。そして、プーチンからの信任と命令を受け、ドゥボルニコフ将軍は必ずその目標を達成するでしょう。その目標達成とは、巷間報道されているところでは「ウクライナ東部2州の完全掌握」であり、加えて、既に事実上のロシア領のクリミア、その北のドニエプル川の南岸地域からメリトポリ、マリウポリを経て東部2州ドネツク及びルハンシクに至るアゾフ海を挟んでロシアと地続きで陸路で結ぶ回廊を作ることである、というものである可能性が高いようです。この目標を達成する上での軍事作戦上のネックは、東部2州についてはドネツク州の北半分の制圧、及びほぼ制圧しているのに未だウクライナ軍の生き残りが頑強に抵抗し、残留市民の抵抗も根強いマリウポリ地区の完全掌握でしょう。この目の前の課題を、この数週間に亘りロシア軍は膠着状態のまま改善できませんでした。そこで新司令官の着任です。
情け容赦なき総攻撃が始まる
新司令官は、愚直に現状を打破する作戦を敢行するでしょう。要するに、ロシア軍の体制を立て直し、指揮命令系統を厳格かつ簡潔明瞭にし、使える部隊長を配し、指揮通信の確保のための通信の強靱化措置をとり、北部正面(キーウ攻略)の部隊の東部正面への転用は勿論のこと、全ロシア軍のアセットから必要な部隊や装備(武器)を編入し、勝つべくして勝つ必勝体制を組みでしょう。その上で周到に計画した総攻撃を開始するでしょう。この新司令官はシリアのアレッポやチェチェンのグロズヌイでそうであった様に、与えられた命令、達成目標を達成するためには手段を選ばず、愚直なまでに徹底した敵の殲滅を測ります。
総攻撃の様相は次の様な物と考えられます。
事前に一応の避難勧告を実施。人道回廊の設置で一応の避難措置を取ります。これを逆手にとって、以降は「残留市民なし」とみなします。そして総攻撃開始。まず、攻撃目標地域に対し、事前に完膚なきまでの攻撃準備射撃をします。空爆、精密誘導ミサイル、クラスター弾、等々、効果のある砲爆撃による市街地の破壊の後、猫の子一匹いない状況になってから戦車・装甲車を先頭に歩兵部隊の掃討戦をする形で攻撃前進をします。一般市民もヘチマもない、見敵必殺、見たものは全て敵と見なして倒し、完全掌握を追求するでしょう。そこに人道に反する戦争犯罪だの憐憫の情などの要素は1ミリも入る余地なし。これがソ連軍仕込みのロシア流の軍事的合理性であり戦術的妥当性です。それを圧倒的な個性で徹底的に遂行する司令官をプーチンが任命したのですから。
総攻撃が開始されたら、ロシア軍は今度という今度は、これまでと違って統制の取れた周到な攻撃にギアチェンジするでしょう。これまでウクライナ軍の妨害電波等の電子戦にやられて、ロシア軍の指揮通信は寸断されていましたが、恐らくは電子戦能力を是正しているでしょう。今度はウクライナ軍の指揮通信を無力化し、サイバー攻撃も使ってウクライナ軍のお株を奪う戦闘をするでしょう。今度という今度は、善戦を続けてきたウクライナ軍も、あちこちで分断孤立化し、殲滅されることになるでしょう。ドゥボルニコフ将軍のことですから、目標線が東部2州からクリミアを結ぶ線であったとしても、恐らくドニエプル川東岸の線くらいまで進出線を引いているかも知れません。結果的に、ウクライナの東半分に当たるドニエプル川東岸の線まで制圧地域が広がるかも。これを上限とすれば、最低限の下限の成果がクリミアからマウリポリの回廊を経て東部2州の線までの制圧。上下限の間で停戦協議に臨み、ウクライナにロシアの望む条件を飲ませるのがプーチンの腹です。
今後の、(静かにもう始まっているかもしれませんが)戦闘の結果として、マスコミが喧伝する「残虐行為」は不可避的に起きます。懸念すべきは残虐行為の前に総攻撃です。
もうひとつ、マスコミが喧伝している「5月9日のロシア戦勝記念日までに成果を上げて勝利をPRし停戦に臨むのではないか」説をあまり信じない方が良いと思います。「プーチンも早く紛争を終わりにしたいはずだ」という思い込みは、前述の「残虐行為への懸念」と同様に西側の常識人の論理です。プーチンに当てはめない方が良いでしょう。
彼の発言通り、「目標を達成するまで軍事行動は続ける/やめない」のです。決して時期が目標ではありません。
(了)


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無免許で不動産仲介ピタットハウスの経営者逮捕
市関係者によると、受給者は昨年4月、同法人関係者に伴われて区役所を訪れ、保護を申請。家賃4万2000円を含む月約12万円の支給が認められた。入居時の契約では、家賃は家主の口座に振り込むことになっており、受給者が同法人の関係者に口座番号を尋ねたところ、「家賃は我々に渡して」と言われ、同5月、約8万円を請求された。
受給者が「生活できない」と支払いを拒むと、同法人関係者らが受給者方を訪れ、ドアをたたきながら「支払わなければ、保護を打ち切るよう市に言うぞ」などと詰め寄ったという。深夜2時や3時にやって来ることもあり、受給者は同6月、区役所に相談した。
2022-04-21 20:59 無免許ピタットハウス経営者、横領で逮捕 URL 編集