北朝鮮が「これまでにない差し迫った脅威」とは?
「防衛白書」をザックリ解説: ②北朝鮮情勢(前編)
- 北朝鮮が「これまでにない差し迫った脅威」とは? -
○ 本年度防衛白書から、第1部「我が国を取り巻く安全保障環境」の主要ポイントである「北朝鮮」に対する情勢認識についてザックリとした概説を試みます。

<「北朝鮮」情勢認識のポイント>
まず結論から言うと以下の3点です。
① 北朝鮮の核・弾道ミサイル開発の進展は、
「これまでにない重大かつ差し迫った脅威」である。
② しかし、米朝交渉の進展、特に北朝鮮が共同声明にて
「完全な非核化に向けて取り組む」と表明した意義は大きい。
③ とはいえ、北朝鮮が核・ミサイルの廃棄について
誠実かつ具体的に取り組むか、今後十分な見極めが必要だ。
<白書における書きっぷり>
○ 今年度の白書では、北朝鮮情勢について20ページ費やしており、
米国10ページ、韓国・在韓米軍4ページ、中国30ページと比較しても、
脅威認識の気合いの入れようが知れますね。
しかも、20ページのうちの16ページが核・弾道ミサイル開発関連です。
北朝鮮の核・弾道ミサイルの脅威について、
囲み記事で解説や図表を使い、
過去3回の核実験や40発に及ぶ弾道ミサイル発射実験があり、
ミサイルの種類・射程(北朝鮮を中心とした世界地図を添えて)・発射手段など,
その能力を着実に高めてきたことを丁寧に解説しています。
使われている図や表も、
北朝鮮の核・弾道ミサイルの脅威を説明する上で
非常に有用なものばかり。
防衛省や自衛隊の幹部がどこかで説明する際、
これらが定番として使用される1級資料になっています。
では、上記の北朝鮮情勢認識の主要ポイント3点について概説します。
<①何が「これまでにない差し迫った脅威」なのか?>
北朝鮮のこれまでの核・弾道ミサイルの開発の進展状況から、
・ 推定出力が広島型原爆の約10倍に及ぶ規模の核爆弾
・ ICBM級と言える新型弾道ミサイル
(※火星15号及びテポドン2派生型については、
日本、グァム、ハワイどころか米国本土に届く
射程10,000km以上の可能性も指摘されいる)
・ 弾道ミサイルの発射手段として車両積載型(発射台付き車両)の運用
等が可能になったことが推測され、
もはや核戦力といえる能力を有し、
この能力を使用しかねない企図を有していると言えます。
もはや能力と企図を持った非常に危なっかしい核保有国として、
我が国は勿論のこと、
周辺国や世界に対する「これまでにない差し迫った脅威」
となっている、と白書は説明しています。
私見ながら一言。
もっと深刻な核戦争の脅威下にあった米ソ冷戦時代に
核戦略を学んだ感覚から言わせていただきます。
なぜか、白書ではあまり強調していませんが、
上記の3点に加えて、着目すべきは
①終末誘導機動弾頭(MaRV)を実用化、
②ロフテッド軌道のミサイルを発射、
③しかも潜水艦発射弾道ミサイルの実用化、
等の能力を持ったかもしれないこと
という地味ながら腹に効くボディーブロー的な技術を
既に北朝鮮が有しているとしたら、
これはもうただ事じゃありません。
およそ核戦力とは、核爆弾を運搬手段に乗せれば成り立ちます。
しかし、使い物になるかならないかが勝負です。
例えば、核弾頭を乗せた弾道ミサイルを例に挙げれば、
その核爆弾をミサイル等の運搬手段に乗せられるように弾頭化できるか、
・特に、大気圏の中を再突入するような熱や衝撃に耐えて爆発が機能するのか、
・かつ、残存性と命中精度を高めるために多弾頭化し終末誘導が機能するのか、
えっ?終末誘導機動弾頭できてるの?
・更に、敵の迎撃ミサイルからの残存性を高めるためロフテッド軌道ができるのか。
何?ロフテッド軌道やっちゃったの?
更に更に言えば、核戦力としての縦深性・柔軟性の確保として、
北朝鮮本土から発射する弾道ミサイルであれば、
米国からの先制攻撃に耐えられるかどうか
という残存性がものをいいますが、
(※固定発射だと先制攻撃でやられてしまう)
・TELという車載発射型を開発して実用化していること
あ!テレビで見たな、射ってるの。
仮に先制第一撃を受けたにしても、
・最後の手段としての潜水艦発射弾道ミサイルが実用化していること、
えっ!潜水艦から射ってるのテレビで見たな。まだ怪しいけど・・・
等が地味ながら深みのある技術的裏付けなのですが、
今見てきたように、もうできるかもしれないのです。
⇒ 結論、これはもうあかん!
北朝鮮の脅威は、これまでになく差し迫ってますよ。
(つづく)


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<「北朝鮮」情勢認識のポイント>
まず結論から言うと以下の3点です。
① 北朝鮮の核・弾道ミサイル開発の進展は、
「これまでにない重大かつ差し迫った脅威」である。
② しかし、米朝交渉の進展、特に北朝鮮が共同声明にて
「完全な非核化に向けて取り組む」と表明した意義は大きい。
③ とはいえ、北朝鮮が核・ミサイルの廃棄について
誠実かつ具体的に取り組むか、今後十分な見極めが必要だ。
<白書における書きっぷり>
○ 今年度の白書では、北朝鮮情勢について20ページ費やしており、
米国10ページ、韓国・在韓米軍4ページ、中国30ページと比較しても、
脅威認識の気合いの入れようが知れますね。
しかも、20ページのうちの16ページが核・弾道ミサイル開発関連です。
北朝鮮の核・弾道ミサイルの脅威について、
囲み記事で解説や図表を使い、
過去3回の核実験や40発に及ぶ弾道ミサイル発射実験があり、
ミサイルの種類・射程(北朝鮮を中心とした世界地図を添えて)・発射手段など,
その能力を着実に高めてきたことを丁寧に解説しています。
使われている図や表も、
北朝鮮の核・弾道ミサイルの脅威を説明する上で
非常に有用なものばかり。
防衛省や自衛隊の幹部がどこかで説明する際、
これらが定番として使用される1級資料になっています。
では、上記の北朝鮮情勢認識の主要ポイント3点について概説します。
<①何が「これまでにない差し迫った脅威」なのか?>
北朝鮮のこれまでの核・弾道ミサイルの開発の進展状況から、
・ 推定出力が広島型原爆の約10倍に及ぶ規模の核爆弾
・ ICBM級と言える新型弾道ミサイル
(※火星15号及びテポドン2派生型については、
日本、グァム、ハワイどころか米国本土に届く
射程10,000km以上の可能性も指摘されいる)
・ 弾道ミサイルの発射手段として車両積載型(発射台付き車両)の運用
等が可能になったことが推測され、
もはや核戦力といえる能力を有し、
この能力を使用しかねない企図を有していると言えます。
もはや能力と企図を持った非常に危なっかしい核保有国として、
我が国は勿論のこと、
周辺国や世界に対する「これまでにない差し迫った脅威」
となっている、と白書は説明しています。
私見ながら一言。
もっと深刻な核戦争の脅威下にあった米ソ冷戦時代に
核戦略を学んだ感覚から言わせていただきます。
なぜか、白書ではあまり強調していませんが、
上記の3点に加えて、着目すべきは
①終末誘導機動弾頭(MaRV)を実用化、
②ロフテッド軌道のミサイルを発射、
③しかも潜水艦発射弾道ミサイルの実用化、
等の能力を持ったかもしれないこと
という地味ながら腹に効くボディーブロー的な技術を
既に北朝鮮が有しているとしたら、
これはもうただ事じゃありません。
およそ核戦力とは、核爆弾を運搬手段に乗せれば成り立ちます。
しかし、使い物になるかならないかが勝負です。
例えば、核弾頭を乗せた弾道ミサイルを例に挙げれば、
その核爆弾をミサイル等の運搬手段に乗せられるように弾頭化できるか、
・特に、大気圏の中を再突入するような熱や衝撃に耐えて爆発が機能するのか、
・かつ、残存性と命中精度を高めるために多弾頭化し終末誘導が機能するのか、
えっ?終末誘導機動弾頭できてるの?
・更に、敵の迎撃ミサイルからの残存性を高めるためロフテッド軌道ができるのか。
何?ロフテッド軌道やっちゃったの?
更に更に言えば、核戦力としての縦深性・柔軟性の確保として、
北朝鮮本土から発射する弾道ミサイルであれば、
米国からの先制攻撃に耐えられるかどうか
という残存性がものをいいますが、
(※固定発射だと先制攻撃でやられてしまう)
・TELという車載発射型を開発して実用化していること
あ!テレビで見たな、射ってるの。
仮に先制第一撃を受けたにしても、
・最後の手段としての潜水艦発射弾道ミサイルが実用化していること、
えっ!潜水艦から射ってるのテレビで見たな。まだ怪しいけど・・・
等が地味ながら深みのある技術的裏付けなのですが、
今見てきたように、もうできるかもしれないのです。
⇒ 結論、これはもうあかん!
北朝鮮の脅威は、これまでになく差し迫ってますよ。
(つづく)


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