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2022/08/03

引き潮ロシア:東部2州確保を断念、ウクライナの反撃に応じ南部ヘルソン正面に部隊を転用

BM21 grad MLRS
ウクライナ軍のBM21多連装ロケット発射システムの射撃。米国はじめ西側供与の強力な火砲が大きな戦力となっている。(Ukrainian servicemen fire with a BM21 Grad multiple launch rocket system in a frontline in Kharkiv region, as Russia's attack on Ukraine continues, Aug. 2, 2022.)(2022年8月2日付VOA記事「Latest Developments in Ukraine: August 2」より)

8月3日現在(日本時間)のウクライナ戦争の戦況
 -ロシア軍の主作戦正面である東部戦線ドネツク正面において、ロシア軍はスロビャンスク北部やシヴェルスク及びバハムートへの地上攻撃は偵察に毛の生えた程度、いずれも攻撃自体は頓挫している。他方、この正面のロシア軍東部軍管区の部隊を南部戦線ヘルソン正面に転用すべく、部隊の大移動が確認されている。
 -ロシア軍の支作戦正面である北部戦線ハルキウ正面において、ロシア軍は東部と同様、偵察程度の地上攻撃のみで頓挫し、ハルキウ周辺の市街や集落への砲撃のみ。
 -ロシア軍の支作戦正面である南部戦線ヘルソン正面において、ロシア軍はウクライナの反撃攻勢に備えた防御の強化に力を注ぐとともに、東部戦線からの転用部隊の受け入れを準備中。
 -ロシアの占領地域、特に南部ヘルソン正面では、親ウクライナ/反ロシア住民によるパルチザン活動に手を焼き、これを弾圧するため、親ロシア協力者の募集、密告制の推奨、占領政策のPR放送などに力を注いでいるが、住民の親ウクライナ/反ロシア感情は根強く、効果は見られていない。他方、占領地域内でのロシア軍及び行政機関は、占領地域をロシアに併合する国民投票の準備に最大の努力を傾注。
 -南部ヘルソン正面でのウクライナ軍の反撃攻勢は、じわじわと推進。既にロシアに占領されていた46コの集落を奪還した模様。今後、反撃の勢いは増大する模様。
 -7月28日、ロシア軍がマリウポリで徹底抗戦したウクライナ軍アゾフ大隊の捕虜を収容していたオレニフカ刑務所が出所不明の砲撃を受け53名が死亡した件について、ロシアはウクライナ軍によるHIMARSの砲撃と主張。国際的な調査にて、米国当局の査察官は、HIMARSを使用した形跡なし、近隣に砲撃で生じる凹み状の穴もなくウクライナ軍のHIMARS以外の砲撃でもないと確認。ロシア軍の精密誘導ミサイルもしくは仕掛け爆弾と思われる。
(参照:2022年8月1日付ISW記事「Ukraine Conflict Updates」ほか)

ついに潮目が変わった!引き潮、ロシア
①東部戦線に勝ち目なし
 ウクライナの反撃攻勢は慎重に進んでいる一方、主作戦正面のはずのドネツク全州の占領を諦めたようで、むしろ奪還される恐れのある南部ヘルソン正面に虎の子の東部軍管区の部隊を転用しました。戦史は勿論のこと、軍事作戦の常識から言っても、「取る」と内外に宣言していた主作戦正面の攻撃を一時停止して、もっと危ない他正面に部隊を振る、なんてあり得ません。これは、もはや「東部戦線に勝ち目なし」と見極めをつけた証左です。さぁ、いよいよロシアに引き潮の予兆が見えました。
(参照:2022年8月1日付ISW記事「Ukraine Conflict Updates」)

②トルコにもイランにも見限られる
 引き潮の予兆の二つ目は、プーチンがNATO加盟国トルコと中東の台風の目イランと協議し、四面楚歌状態から脱却し新たな局面を打開しようと試みたが、イランからのウクライナ侵攻の容認取り付けとドローン調達くらいしか成果がなく、イランを実質的に巻き込むことはできなかった点です。
 プーチン大統領は、7月20日にイランのテヘランを訪れ、トルコのエルドアン大統領、イランのライシ大統領と「アスタナ和平プロセスサミット」にて、主たる議題だったシリア情勢に加えてウクライナ戦争の話も取り上げて協議した模様です。各国とも、それぞれの思惑があった訳で、ロシアは当然ウクライナ侵攻への理解と支援の取り付け、できればイランをいずれかの形で巻き込みたかったと思いますし、イランは米国とイスラエル主導の(対イラン)中東防空同盟への対応、及び核開発問題で四面楚歌状態なのでロシアの理解と支援を得たいこと、トルコはシリア北部のクルド勢力の掃討のための軍事作戦をロシアとイランに容認してもらいたいこと、等々です。サミット後の記者会見の内容から、ウクライナ侵攻関連における成果はメディアを通じ「イランからのウクライナ侵攻の容認取り付けとドローン調達。トルコネタは特になし」という話は漏れ伝わってきましたが、私見ながら、この成果以外にも内々にはあったのだろうと推察し「今後イランはウクライナ情勢に新たなワイルドカードとして乱入してくるのではないか?」と懸念していました。例えば、「イラン革命防衛隊のボランティア部隊がロシア勢として対ウクライナ戦に加わる」、とか、「イラン革命防衛隊の海軍艦艇が黒海に派遣される」とか、少なくとも「米国・イスラエル主導の中東防空同盟に対抗したイラン・ロシア間の防空共同対処構想のぶち上げ」など、ウクライナ情勢が複雑・混迷化することを懸念しましたが、最近の報道で同サミットの内容は既に報道されたもの以外にはないことが分かり、安心しました。
 ということは、プーチンはトルコ、イランも交えた協議で何か打開を試みたものの、既述の成果以外にはなく、実質的にはほとんど戦局を打開するような一手にならなかった、ということです。つまりイランもトルコも、負け馬に乗ろうとはせず、見限られたということです。
(参照:2022年7月26日付wedge記事「プーチンのイラン訪問で反米同盟強化の路線は鮮明に」、下の画像も同記事より)
プーチン大統領、ハメネイ師、ライシ大統領
イランの最高指導者ハメネイ師(中央)とライシ大統領(右)と会談し、ウクライナ侵攻の「お墨付き」をもらったプーチン大統領

③兵力不足を少数民族から志願兵を金で釣っておいて金払えず
 引き潮の予兆3つ目は、しょうもないヨタ話のようで、こういう話がロシア国内の市民の口コミで広がると、市民レベル・草の根的に国家や政府に対する信用・信頼が落ちるだろうな、という話です。
 ロシア政府は、兵力不足のため、ロシア連邦内の少数民族の共和国にボランティア部隊への志願を募り、高給支給を約したようですが、その志願兵部隊は約束された給料も支給されておらず、不平が出ている模様です。その高給?というのも、入隊時の一時金が3000ドル(1ドル133円として約40万円)、日給30ドル(約4千円)ですから、大した高給ではないのですが、少数民族からすれば高給なんでしょう。それが払えなかったというのですから、ウクライナに送られた志願兵は士気が相当落ちているでしょう。
(参照:2022年8月1日付ISW記事「Ukraine Conflict Updates」)
 
 勿論、まだまだ南部戦線のみならず、東部でも北部でも戦闘はしぶとく続き、秋から冬まで苦しい時期は続くでしょうが、ロシアは今後ジリジリとウクライナに押され始めます。強気のプーチンも益々苦境に立たされ、打開を求めて悪あがきするでしょう。それに対し、日本も含めて、西側は大同団結して「力による現状変更は許されない」という国際社会の当たり前のルールを教えてやらねばいけません。そして、ウクライナ侵攻の戦後の平和維持のため、国連平和維持活動に自衛隊も積極的に参加すべきです。日本なんか、あの地域に国益がないので丁度いいにではないかと思います。まぁ、戦後を語るのはまだ早いですね。

 ともあれ、先が見えたぞ!頑張れウクライナ!

 (了)


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