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2022/08/08

断末魔のロシア:原発攻撃など支離滅裂な作戦展開、縦割り組織の成果PR競争か

Zaporizhzhia Nuclear Power Plant
攻撃を受ける直前のザポリージャ原子力発電所 (A view of the Zaporizhzhia Nuclear Power Plant near the Ukrainian city of Enerhodar, Aug. 4, 2022.)(2022年㋇8日付VOA記事「UN Chief Calls for Access to Ukraine Nuclear Plant After New Attack」より)

2022年8月8日現在(日本時間)の戦況
 -ロシア軍の主作戦正面である東部戦線ドネツク正面において、イジュームの南西と南東、シヴェルスクの東、バハムートの東と南で限定的な地上攻撃を行うとともに、ドネツク市の北西と南西の郊外を地上攻撃し、その一部で攻撃が進捗し、アヴダイフカ・ドネツク市の接触線にてウクライナの防御陣地線を破ることを企図している模様。(東部2州の確保を諦めていないことをPRしているものと推察。)
 -ロシア軍の支作戦正面である北部戦線ハルキウ正面において、ロシア軍はハルキウ周辺の市街や集落への砲撃のみ実施。使用火砲は、防空用のS-300対空ミサイルなど本来の用途と違う火器を使用。(武器弾薬が枯渇している証左と推察。)
 -ロシア軍の支作戦正面である南部戦線ヘルソン正面において、ウクライナ軍が今後の反撃の足がかりにする橋頭堡を推進しつあり、ロシア軍はそうはさせじと東部戦線から相当数の兵力転用を受けたほか、空中偵察に基づく砲撃を加えたり、異軸からウクライナが支配するミコライウ市東部を地上攻撃で反撃を試みて失敗するなど、防戦中。
 他方、同南部戦線でロシア軍が支配下に置いているザポリージャ原発において、5日、6日と連続して出所不明の砲撃があり原発機能が一部損傷を受け、核惨事が国際的に懸念されている。ロシア軍は、大型兵器を原発近傍に保管して原発を盾にしており、ロシア軍が自作自演型の原発砲撃でウクライナ軍の仕業とPRしている可能性大。
 -ロシアの占領地域では、占領地をロシア連邦に併合する国民投票を準備しており、9月11日のロシアの統一投票日に合わせ、占領地域でも国民投票にかけて併合を推進する模様。占領下のメリトポリ市長によれば、ウクライナ住民の頑強な抵抗とパルチザンによるテロ攻撃でロシアの国民投票準備は遅々として進まず。それに業を煮やしたロシア軍は、パルチザンの攻撃を最小化するために武装兵士が各家庭を訪れてインタビューする「自宅投票」に切り替える模様。武装兵士のインタビューは、ロシア併合の是認を銃で強要するもの。これは、南部のみならず、東部ルハンシク州でも同様で、ルハンシク州では国民投票に積極参加する者のみに、食料・水・住居補修資材などの人道援助が与えられるなどの施策がとられている。
 -イランから導入されたドローンは、既に各作戦で運用されている模様。これに関連して、8月9日にイランの衛星をロシアが代行打ち上げし、その衛星を数ヶ月間ロシアがコントロールし、衛星情報をウクライナ侵攻作戦に使用する、とロシアが発表。これに国営イラン宇宙衛星機関が猛反発し、打ち上げ直後からイランのコントロール下に入るのであって他国の軍事目標のためには使用させない旨を8月7日に発表した。
(参照: 2022年8月7日付ISW 「Ukraine Conflict Updates」、2022年8月6日付BBC時事「Any attack on nuclear plant 'a suicidal thing' - UN chief.」 ほか)

支離滅裂な作戦・施策が暗示する縦割りの成果競争
 上記の各作戦正面の展開ぶりを見ていると、私見ながら、もはやロシアは各正面がそれぞれ分断孤立されたかのような別々・勝手な作戦をしているように見え、支離滅裂もいいところ、と推察します。ザポリージャ原発の件も然り、恐らく上層部の命令で自作自演したのではなく、南部担当指揮官の考えでしょう。場当たり的で、政治・外交との連携は全く考えていない。元々自作自演だから、原発への砲爆撃と言っても、一応核惨事には至らないように爆破被害はコントロールしていて「大丈夫、大事には至らない」と計算づくの作戦だったのでしょう。彼らが原発の核物質の安定的な管理のために壊してはいけない部位や機能を正確に理解していたかは甚だ疑問です。しかし、砲爆撃後の国際的な反響の大きさ・批判の大きさは計算外だったのではないでしょうか。「ウクライナの犯行だったのだ!」と主張しつつも、プーチン大統領から「本当にウクライナ軍の仕業か?お前たちがやったんじゃないだろうな?」と詰問されているのではないでしょうか?イランの軍事衛星の発射や衛星情報の軍事利用の発表についても同様、政治・外交との連携、イランへの配慮も全く考慮しておらず、こう発表することによるプーチンへのPR度しか考えていないのでしょうね。仮に、担当者間で軍事衛星の情報をウクライナでの作戦に使う内諾を得ていたとしましょう。だったら秘密にしておいて衛星情報を活用すべきですよ。言う必要なかったのに公表されてしまったら、そりゃイランは激怒して全否定しますよ。下手をすれば、使わせてくれるはずだった軍事衛星は使わせないでしょう。なぜなら、イランは西側とのイラン核開発問題の協議で制裁解除が念願ですので、殊更に対立軸を深めることになるのを避けたいと考え、ウクライナ侵攻に親ロシアとして関わりたくないのです。先般のプーチンとハメネイ師・ライシ大統領の首脳会談後の声明でも、ポーズの上で「反米」姿勢はロシアと協調していますが、ウクライナ侵攻への実質的支援としては「ドローン数百機の提供」が関の山でした。それ以上の深入りは拒んでいます。

 上記のような各正面の支離滅裂さを見ていると、ついに負ける国が終末期に見せる「断末魔」の景況を呈してきた、と推察します。

 言葉足らずなところがあるので、少々補足します。
 戦略・戦術の定石的な考え方、戦術的妥当性からすれば、主作戦正面の東部での作戦目標の達成を第一優先とし、他の支作戦正面はひたすら主作戦正面に寄与する作戦を展開するものです。例えば、東部ドネツク州全土確保が主作戦正面なら、支作戦正面の北部や南部は、敵戦力を吸収することで主作戦正面に寄与することが役割であって、多少の犠牲となってもいいわけです。南部でヘルソン市が奪回されそうで、ウクライナ軍の主努力が南部に集中するとすれば、それはロシアの主作戦正面である東部にウクライナ軍が手薄になるわけで、その間にドネツクを陥落させればいいのです。(にも拘らず、ロシア軍は危機に瀕する南部ヘルソン正面に東部から兵力を転用しています。)仮にヘルソン市がウクライナに奪回されても、肉を切らせて骨を断つことができ、以前から内外に宣言していた軍事目標「東部2州の解放」ができます。奪回されたヘルソン市については後で対応すれば良いのです。
 ロシアはそれをせず、各正面がそれぞれ分断孤立されたかのような別々・勝手な作戦をしているようです。

 思えば、昨年12月から今年2月の電撃侵攻の初期までのロシアの一連の行動は、政治、外交、経済、資源政策から軍事(特に部隊のウクライナ国境への事前展開に至るまで、全てがプーチンの描いた一途の戦略のもとで、戦略目的から戦略目標を達成するためのlines of operationという一連の作戦として、軍事作戦を基軸としつつも政治、外交、経済などの各作戦はそれぞれの正面で役割を果たすべく作戦展開していました。ところが、当初の戦略目的、戦略目標が何度も書き換えられ、その度に、基軸となる軍事において時の軍事作戦指導者がプーチンの求める成果を上げることが出来ず更迭されて、・・・今や、統一された指揮官なく、各正面毎とりあえず与えられた任務を果たすのみ。この際、プーチン大統領の要求が高いので、何とかPRできるように各個が勝手に成果競争をしているようです。隣接正面との作戦連携や相互支援、いわんやシナジーなんて知ったこっちゃない。いかに自分の正面は成果を出しているかをPRすることに全集中しています。

もはや優れた将官はいないかも
 英国国防省の情報では、ロシア軍は2月のウクライナ侵攻開始以来、唯一の統合指揮官だったアレクサンドル・ドヴォルニコフ陸軍大将を含め、少なくとも6名の軍管区司令官以上級の指揮官を解任した模様です。全般状況に睨みを効かせ、各正面の地位・役割から作戦の優先順位や戦力配分を定め、各正面担当部隊に対して適時適切な命令を与えてその作戦遂行を律する統合司令部が存在しません。その上、各正面の指揮官でさえ、度々更迭されています。もはやロシア軍には、指揮系統の一貫性が欠如しています。これでは戦場での作戦指導は断末魔の状態になっているでしょう。戦場にいるロシアの将校たちに多少同情したくなります。
(参照: 前掲2022年8月7日付ISW 記事)

 ロシア軍には歴史的・伝統的な底力があります。劣悪な環境に耐え、武器・装備・弾薬・食料・医療品の困苦欠乏にも耐え、それでも黙々と与えられた任務の達成を我慢強く追及するミリタリーマインドが息づいています。だから、相当手ごわいでしょう。西側装備のウクライナ軍も相当にこれから手こずることでしょう。
 しかし、 It won’t be long…… もうそう長くはないでしょう。
 せいぜいこの冬一杯までは持つかな。しかし、じりじりとウクライナが失地を回復していくでしょう。
 It won’t be long……

 頑張れ!ウクライナ

(了)

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