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2022/08/13

続・断末魔のロシア:各正面で打つ手なし、占領地も混乱。ウクライナの総反撃への期待と不安 

爆発前後のサキ航空基地
爆発前後のクリミアのサキ航空基地(2022年8月12日付BBC記事「Crimea blasts significantly hit Russian fleet」より)

2022年8月13日現在(日本時間)の戦況
 -ロシア軍の主作戦正面である東部戦線ドネツク正面において、現在の接触線に沿ってシヴェルスクの東、バハムートの北東と南東、等において限定的な地上攻撃を行ったものの、バハムート北東部の一部で進撃するも、その他は概ねウクライナ軍に撃退された。今後もバハムートへの進撃を試みると見積もられる。この地上攻撃以外の正面では、接触線沿い及び内陸の都市部への砲爆撃を続けている。
 -ロシア軍の支作戦正面である北部戦線ハルキウ正面において、ロシア軍はもはや地上攻撃を実施せず。ハルキウ市とハルキウ北東及び南東の市街や集落に対する砲爆撃を続けた。
 -ロシア軍の支作戦正面である南部戦線ヘルソン正面においても、ロシア軍は地上攻撃を実施せず。ヘルソン州の行政境界に沿い、及びヘルソン州に隣接したミコライウ州とドニプロペトロウシク州の市街地に対して砲爆撃を続けたのみ。他方ウクライナ軍は、限定的な地上攻撃の他は、かなり継続的に実施しているヘルソン正面のロシア軍の兵站拠点と弾薬庫を標的にしたHIMARSによる徹底的な兵站壊滅作戦を続行。ロシア支配地域のヘルソン州行政顧問が、8 月 12 日のウクライナの砲爆撃により、ロシア軍がノヴァ⁻カホウカ水力発電所を確保しようと軍事装備と弾薬を輸送するために使用した橋が全て使用不能になったことを認めている。
 -米国国務省は8 月 11 日、ザポリージャ原子力発電所への出所不明の砲爆撃があった件について声明を発出し、同原発周辺におけるロシア軍の軍事活動を停止し、原発の管理権をウクライナに返還し、非武装地帯の創設するよう求めた。ちなみに、ロシア軍は同原発に悪名高い民間軍事会社ワグナー(ワグネル)の部隊を配置しており、原発周辺への地雷の敷設など、要塞化を進めている模様。
 -ロシアの占領地域では、①パルチザン活動の脅威化、②アゾフスタリ製鉄所で強靭に抵抗したアゾフ連隊の捕虜に対する見せしめ公開裁判、の2点の動きあり。
  ①占領地をロシア連邦に併合する国民投票を準備中のところ、そうはさせじとパルチザンによるテロ攻撃が数多く起きており、そのテロ攻撃の標的がロシアの占領当局の要員や親ロシア派のウクライナ住民協力者であるため、国民投票準備を阻み占領当局を悩ます最大の要因になっている。8 月 8 日夜、メリトポリの統一ロシア党本部で起きた爆破事件(選挙責任者が標的)、 11 日、ロシアのパスポートとロシアの自動車登録を配布していたロシア内務省のサービス センターの自動車爆破事件(地区登録検査局局長が標的)、また10日にマリウポリの中央地区でも大規模な爆発があったなど、枚挙に暇がない。占領地域のロシア当局の要員にとってパルチザン活動は日常的恐怖の存在であり、駐留ロシア軍の行動も対パルチザン活動に相当な戦力を割かれており、もはや無視できない勢力となっている。
  ②マリウポリのロシア占領当局は、アゾフスタリ製鉄所を拠点に強靭に抵抗したアゾフ連隊の捕虜を「裁判+処刑ショー」とすべく、マリウポリ市立交響楽団ホールを裁判所兼捕虜拘置所に改造し、見世物として公開用の法廷と捕虜を拘置する公開用のオリ等を準備し、これをビデオで公開。この公開法廷は 8 月 24 日、31 日に開かれる模様。これに合わせ、占領当局はロシア国民へのPRとして、「マリウポリでの反ロシアの過激ウクライナ人の抵抗に対処するためにロシア軍は行動を起こしている」というロジックで演出しており、市中ではアゾフ連隊の部隊章付きの制服を着た民間人の逮捕劇をPR用に行っている模様。
 -ロシア軍の人事については、8日米国防省が発表した数値ではウクライナ侵攻開始以来、ロシア軍の戦死傷者の総数は7万~8万に達するとのこと(参照:2022年8月9日付朝日新聞「ロシア軍の死者・負傷者『7万人~8万人に達した』」)。この穴埋めのため、ロシア国内の少数民族共和国への志願者募集キャンペーンを実施しているが、実はかなりサバを読んだ充足率らしく、大隊規模(500数十名)と称して100名そこそこの中隊規模だったりしているのが実情の模様。戦場にいるロシア軍の 約60%は、こうした短期契約の志願兵で構成されており、しかも契約金も支払われておらず、ロシア軍の士気は非常に低い模様。この人員損耗をカバーする要員確保のため、ルハンシク州などの占領した地域のウクライナ住民にて強制動員をかけており、占領下の召集ウクライナ住民のみで8000名を確保する計画がある。また、こうした部隊を指揮する将校を養成するため、本来の将校を養成する士官学校ではなく、急造の将校養成コースを設置し、軍曹経験者を消耗品的な将校・小部隊指揮官として大量生産している模様。そんな中、8 月 11 日に黒海艦隊司令官イーゴリ・オシポフが更迭され、ヴィクトル ソコロフ中将に交代した模様。主要指揮官の更迭はまだ続きそうだ。
(参照: 2022年8月12日付及び11日付ISW記事 「Ukraine Conflict Updates」、ほか)
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ロシア軍に打つ手なし
 上記の動き、特に本来の侵攻作戦の主作戦正面の東部戦線、支作戦正面の北部及び南部において、もはや主要な攻勢作戦は影を潜め、「攻撃は続けてまっせ」という内外へのPR用の地上攻撃以外は、脈絡のない砲爆撃のみ。私見ながら、このPRとは、もはや「内外へのPR」というよりもプーチン大統領へのPRかもしれない。そのくらい、全船を預かる現地ロシア軍部隊に打つ手はない状況です。何より、侵攻作戦の継続には十分な兵力(兵隊さんの数)が最低条件です。今回の場合、東部2州の完全制圧や現在の占領地域の確保のためには、部隊として数十コ大隊規模が必要ですが、後続戦力がもうありません。仕方なく、貧乏な少数民族をお金で釣って志願兵としたり、占領地のウクライナ住民を強制動員したりしている状況です。動員されたウクライナ住民に後ろから銃を突き付けて鉄砲を持たせて戦わせるとして、同胞ウクライナ軍と戦えると思います?少数民族にしても、急に軍事教練を受けて鉄砲を持たせられたくらいで、まともな戦闘ができますか?人数の問題ではなく、これでは戦えません。まぁ、彼らの運用用途は最も不足している最前線の戦闘要員ではなく、後方地域の兵站・補給整備などでしょうけど。

占領地内も混乱
 ロシア占領地内のパルチザン活動の活発化は目を見張るものがありますね。パルチザンの構成要員の方々も命懸けでやっているわけだから大変だと思いますが、イラク戦争やアフガン戦争における米軍を標的としたテロ攻撃と同様、反占領当局・反占領軍に対するテロ攻撃って、弱者の戦法ながら非常に効き目があるんですね。今や、占領地の占領当局の要員は、日常的なテロ攻撃にビビりまくり、ロシア軍の行動も大いに制約を受け、占領政策の推進も遅々として進んでいない模様です。これをロシア国内の国民に覆い隠すため、アゾフ連隊の公開裁判のようなPR策をいろいろやる訳です。恐らく、その公開裁判、そしてその先の公開処刑は、ロシア国内では一定の支持者がいるかもしれませんが、心あるロシア国民やウクライナや欧米をはじめとする国際社会の目にどう映るでしょうか?ISIL(いわゆる「イスラム国」)が中東ででかい面をしていた頃、拘束した西側や敵対アラブ諸国の軍人・民間人をオレンジ色の囚人服を着せ丸見えのオリに入れて、斬首処刑したり体に火をつけて焼死させたり、そんな処刑ショーをネットで垂れ流していました。あの頃と同様、ロシアが公開する裁判や処刑は、国際社会の目には暗澹たる残酷ショーにしか見えないでしょう。

ウクライナの総反撃への期待と不安
 既述の通り、ロシア軍の侵攻も峠を越え、もはや打つ手がなくて断末魔の様相を呈している、・・・そうなると、ウクライナの総反撃の開始に期待がかかります。どうせやるのなら、早く、大々的に、かつ、徹底的に総反撃してくれ、と余計な期待をしてしまいがちです。総反撃をするとすれば、既に今後の反撃の足がかりを得ている南部の2方向でしょう。①ヘルソン市に20kmとほど近い北西のポサド-ポクロウスキからヘルソン市への進撃、及び②ヘルソン市から60km北東のダヴィディウ橋の橋頭堡からノヴァ⁻カクホウカ市への進撃。この2軸でスクリュードライバー的に南部ヘルソン正面でグイグイと穴をあけ、そこから後続の戦力を西側装備で突っ込ませて戦果拡張すれば、一挙に南部戦線で失地を回復していけるでしょう。いやー、期待が膨らみますね。当然、反転攻勢を開始するには十分な兵力・火器・装備・弾薬を予め準備しなければならず、西側からの供与・配分を含め、一定の時間が必要なのでしょう。

 ところが、8月12日付のニュースで、9日にロシア支配下のクリミア半島のロシア軍のサキ航空基地に出所不明の一連の爆発が起き、1名死亡、8機の戦闘機等が大破し、ロシア黒海艦隊の戦力は著しい打撃を受けた模様、との報(参照:2022年8月12日付BBC記事「Crimea blasts significantly hit Russian fleet」)。メディアの報道ぶりでは、ウクライナ特殊部隊の仕業で、これが反撃開始の狼煙であるとの見方も出ていました。ネットで爆発前と後の航空基地の写真を見て確信を持ちました。・・・これは事故じゃない。爆発ではなく、特殊部隊が潜入して爆破装置をつけるか、或いはドローンで精密誘導した誘導弾による爆撃ですね。写真のような各機離隔して掩護壕になっているわけですから、これが偶発の事故で次々と誘爆するわけがありません。当然、人為的ですね。
 この報で、私自身は現役時代を彷彿とさせるようなキナ臭い感覚を覚えました。私の独り言ながら、「クリミア半島はヤバいって。だってプーチンは激怒し、萎えかけたロシア軍の士気にガソリンをかけて火をつけてしまう…。」という不安感を苛みました。勿論、クリミア半島も元々はウクライナの土地です。しかし、プーチンは勿論ですがロシア民族の歴史観からして、「クリミア半島はロシアのもの、麗しき土地、懐かしき土地」という意識があります。もともとはウクライナ人の土地かも知れませんが、歴史的には度々(ほとんどかも)ロシアの支配下に置かれ、現ウクライナの土地になったのも、ソ連時代にウクライナ出身だったフルシチョフ書記長が当時のウクライナ共和国に割譲したことが由縁でした。つい先月にも、ロシア首相のメドベージェフ氏が、「もしウクライナがクリミアを標的にすれば『審判の日』がすぐに待っている」警告していました。

 このキナ臭い不安感は、恐らく米国をはじめ欧米諸国も共感しているのではないかと思います。欧米はウクライナの侵攻前の失地回復を支援してきた訳ですが、ここでクリミアというパンドラの箱まで開けたがるウクライナには、必ずや「ちょっと待て!」と言うと思います。既述の通り、クリミアもロシアに侵攻されて取られた土地ですよ。しかし、今年の2月下旬以降のウクライナ侵攻と2014年以降のクリミア侵攻とは絶対的な違いがあります。それはロシアの国益意識です。前者、すなわち今回のウクライナ侵攻はそもそもロシアの国益?だったかも怪しい。ウクライナの土地を強奪することに国益があった訳じゃなく、ウクライナがNATOやEUに寝返っていくことによる安全保障上の脅威観でした。他方、後者、すなわちクリミア半島は、恐らくロシアの「死活的国益」でしょう。もはや人の国の土地なのにね。イギリス領当時の香港に対する中国の感情に近いかもしれない。だから、2014年の侵攻当時にロシア国民の熱い支持もあったし、欧米の「当惑のあげく黙認」という反応に至ったのだと思います。

 いやー、ゼレンスキー大統領、気持ちは分かるけど、この際クリミアに手を出すのは控えましょうよ。プーチンの手持ち札の中には禁断の「核兵器」をはじめ「生物・化学兵器」もありますが、今のところ一応の合理的判断でそうした札を切り札として使っていません。そのキッカケを作ってしまいますよ。止めときましょう。あいつが死んでから長い目で取り返せばいいじゃないの。あいつが達者なうちは止めときましょうよ。

 頑張れ!ウクライナ‼

(了)

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