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2022/09/22

プーチン「占領地併合、予備役動員、核の脅し」と来るならウクライナに勝機!

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モスクワのセントピータースブルグにおける反戦・反動員の市民デモとそれを鎮圧する警察(Take a look at some of the scenes in Moscow and St Petersburg.)(2022年9月22日付BBC記事「Russia begins drafting new troops to fight in Ukraine」より)

プーチン「占領地併合、予備役動員、核の脅し」
 2022年9月21日、ロシアのプーチン大統領は国民に向けた演説にて、占領地の住民投票によるロシアへの併合、その領土保全のための予備役召集の必要性を説きました。加えて、この領土保全のためには核兵器を含めあらゆる手段を使うとも述べました。ルハンシク、ドネツク、ザポリージャ、へルソンの4州、(加えてクリミア)をロシアが我が領土とし、この領土保全のためには核をも使うぞ!というケツをまくった姿勢を内外に宣言することで、内にあっては予備役動員と徹底抗戦のための国民の愛国心高揚を、外にあっては(特に欧米に)核兵器使用の脅しで対ロ強硬策に二の足を踏むだろう、と考えたのでしょう。

 しかし、私見ながら、この決断では前線への戦力強化に繋がりません。予備役の動員でしかないので戦力造成までに時間を要し、兵力投入にも十分な武器・弾薬・各種補給品の再補給も成されません。こてでは苦戦している現在の戦況を跳ね返すことは出来ず、むしろウクライナ戦争の敗北を早め、ひいてはプーチン政権崩壊を早める結果となる、と推察します。

①住民投票による占領地の併合

 プーチンの決定通りに、住民投票については今後数日中に行われ、ロシアは占領地をロシアに併合する政策については割とやすやすと進捗させるかもしれません。占領地の住民投票結果で、「ロシアへの併合を住民自らが選んだのだ」という理屈で、一応の民主的手続きによるロシアへの併合を進める政策です。これが国際社会から認められず非難の的となり、厳しい経済制裁を課されるであろうことは、プーチンは百も承知なのでしょう。むしろ、既に十分厳しい経済制裁下でこの10年やってきているので、国際社会の非難や制裁などタカが知れている、というケツのまくり方なのでしょう。要するに、江戸時代の鎖国的なマインドで、「うちはうちの考えで自己完結でやって行く。うちなりの民主的手続きで正当な領土保全を図るのだ!世界にはうちと外交や経済活動で連携する国だってある、ほっといてくれ!」というケツのまくり方です。
 しかしながら、住民投票は建て付けから危うい所があります。もともと今回の侵攻前から親ロシア武装勢力が実効支配していたルハンシク・ドネツク東部2州の南東部では親ロシア系住民が多いので比較的整斉と進むかもしれませんが、その東部2州やへルソン州やザポリージャ州の北西部ではウクライナとの交戦により「弾が飛んでくる」地域です。また、へルソンやザポリ-ジャではパルチザン活動(反ロシア親ウクライナの抵抗組織)が活発ですので、住民投票はテロ攻撃の目標ですから、住民投票は荒れるでしょうね。概して、住民投票による占領地併合は準備不足の中で強行するため、杜撰な手続きによる手前味噌な併合の強行となるでしょう。また、国際社会からは非難轟々、領土として承認できないので、今後国際的な外交や経済で大きなハンデとなるでしょう。

②予備役の動員
 予備役の動員については、全予備役の数%の30万名とのことで、それでも動員できれば大兵力ではあります。プーチン大統領が期待したのは、一般市民の徴兵・招集は法手続き上及び一般市民からの反発のリスクがあるし、その新兵を戦力化するための教育訓練のスタッフも所要期間もかかるので、この手は取らず、予備役であれば軍務経験のある者たちなので、戦力化するための教育訓練所要は最小限ですむだろうというリスクの低さでしょう。
 しかし、その期待効果として求められた動員された兵士の前線への兵力投入や戦力発揮は、人数分だけ軍事力になるという「足し算」にはならず、むしろ「引き算」になると考えられます。ここにはロシアが直面する現実の壁が幾つかあります。まず予備役と言っても教育訓練の不十分、加えて軍全体で不足している武器・弾薬・装備という兵站の不十分、そして彼らを指揮する小隊・中隊・大隊等の各級指揮官が不足がしていること、これらの現実の壁が高く、およそ「戦える戦力」にならないだろうと推察されます。不十分な教育訓練のため、与えられた武器・弾薬・装備品が使いこなせなかったり、そもそもモノが不足していたり、また部隊を指揮する指揮官も不足しているのでポンコツ指揮官が無理な命令で無理な任務を要求してくる、そんな戦場ですから、予備役30万の兵力は通常の軍隊の30万ではなく、3割引きとか4割引きした戦力でしかないのです。前線の兵士の士気、すなわち戦う気力も、そもそもウクライナ侵攻に「大義」がないので、「自分の郷土を、家族を守る」という祖国防衛の大義すらない状況です。士気が低い、ということは任務や命令に従わず、陣地や武器を置いて敵前逃亡したり降参したりすることが起きるわけです。
 ちなみに、そもそもの予備役招集の段階から別の問題が立ちふさがっているようです。数%の確率で予備役登録のある市民に召集令状が送付される訳ですが、それを受けて召集に応じて出頭して来るのか?という問題です。予備役登録のある市民とその家族は気が気じゃない状態ですよね。今回の予備役動員のニュースを受け、航空機国際便や列車の国際便の予約ブースに予約が殺到し、受付電話もネット受付もパンクしたそうです。この示すところは、召集前に国外に逃亡しようという予備役の方とその家族が沢山いる、ということです。この様子だと、30万揃わない可能性が極めて高い、と言えるでしょう。

③核兵器による恫喝
 核兵器保有国の伝家の宝刀、「あらゆる利用可能な手段」という言葉でオブラートに包みながらも「核使用の威嚇/脅し」をプーチンは使ってきました。
 現在ロシアにある核弾頭は5,977発(米国の推定値)、このうち約1,500発が旧式で退役・解体される予定、残りの約4,500発のほとんどが戦略核兵器(弾道ミサイル、または長距離ロケット)です。万が一、今回プーチンが「核兵器を使う」とすれば、戦略核ではないでしょう。ロシアとウクライナでは地理的に近すぎますから。使う可能性があるのは、いわゆる戦術核という近距離のミサイル等で目標に爆発する小型で破壊性の低いものと考えられます。もちろん、核兵器ですから爆発による熱線、爆風、放射能という核兵器の3大威力は揃っていて、破壊性が小さいと言ってもその絶対的な威力は通常爆弾とは比較にならないほど大きいでしょう。使うとすれば、例えばロシアとしては、守りたい核心としては元々の親ロシア勢力の実効支配していた(ロシア系住民の多い)東部2州の南東部やクリミア、そこを守るためにバッファゾーンを取って「この線から絶対下がるな!」という作戦上の外郭となるライン、具体的にはへルソン市(ドネツ川北岸)の攻防で、いよいよ北岸からロシア軍が撤退しなければならない時期に、占領するためにへルソン市占領のために進軍・集中してきたウクライナ軍に対し、「へルソン市の使用の拒否」及び「進軍してくるウクライナ軍の殲滅」を目的に戦術核を使用する、というようなことは十分考えられます。この1発で、へルソン正面のウクライナ軍の出足は必ずやストップします。負傷した市民や将兵を後方に下げるのが精一杯で、東部戦線などの他正面での反撃攻勢もストップするかもしれません。国際的な非難は受けるでしょうが、この1発でウクライナの反撃攻勢を止め、ここから先は中国が仲介に出てきて停戦交渉に入ることも十分あり得るわけです。なぜなら、ロシアにとって有利な今の接触線を半ば境界とすることを前提に、停戦交渉を有利に展開できる訳です。
 しかし、核兵器のサガとして、使ってしまったら最後、逆に使った瞬間にロシアの「負け」でもあります。「核兵器を使用した国」という消えない烙印が押され、国際社会からは徹底的な経済制裁を受け、孤立します。未来永劫とも世界の指弾を受け、何世紀たっても悪行として語り継がれることになります。普通の神経なら核兵器使用という判断は避けますが、今、プーチンはその瀬戸際を歩いている状況です。

ロシアは敗戦を早め、プーチン政権崩壊も早める
 ①②③の占領地併合・予備役動員・核兵器使用発言に関連して、プーチンの今回の決定直後から、これまでサイレントマジョリティだった静かなる一般市民が反対の声を上げ始めました。このブログの冒頭の画像がまさにそういうシーンです。反対デモをやると、すぐにロシアの官憲が鎮圧し、身柄の拘束・収監をしているようですが、今回ばかりは「もう黙っていられない」とメディアの取材に毅然とした態度で答える活動家ではない一般市民の声が多く見られます。「プーチンにNOを」の声を上げ始めた一般市民のムーブメントは燎原の火のように、ロシア国民の水面下に広がっているでしょう。いくらなんでも…と。他方、プーチンにしてみれば、今回の決定を国民も重く受け止めて領土保全に賛同し、予備役も喜んで応召するものと思っていたのではないでしょうか。ところが現実はさにあらず、笛吹けど踊らない国民に苦々しく思っているでしょう。それと同時に、逐次追い込まれつつある自分に気がついているでしょう。

 私はこれまで、この戦争は冬を越す長い闘いになると読んでいました。ロシアのサイレントマジョリティのロシアの一般市民は誰も戦争継続を望んではいないでしょう。しかし、プーチンは侵攻をやめる気は毛頭ない。だとすれば、私はこう思っていました。プーチンはウクライナの反撃攻勢を阻止し戦勢を取り戻すため、「ロシア本土がウクライナに攻撃され侵略されつつある」と解釈できる偽旗攻撃を捏造して、これをキッカケに、第2次世界大戦の独ソ戦争に勝った「大祖国戦線」を国民に想起させ、国家非常事態宣言を発令して国家総動員体制と戒厳令を敷くだろう、そして強烈な国民大動員をかけて、総力戦でウクライナ戦争に臨むのではないか、と思っていました。まさかそんなことはすまい、と皆さんは思うかもしれませんが、プーチンならその位の思い切ったことをするだろうと思っていました。ところがビックリ、今回の決心と処置は中途半端もいいところ、何とも踏ん切りの悪い、ケツの穴の小さい結論でした。前線のロシア正規軍の将校達は陣地の中で絶望しているでしょうね。
 だとすればチャンス到来!プーチンがこういう手で来たからには戦闘は流動的に動きます。思っていたより早く決着がつく可能性が出てきました。

 そうしたことを背景に、私見ながら一案があります。
 ウクライナ軍は反撃攻勢を今のうちにイケイケドンドンで進めるべきです。今の接触線をぐいぐいと押して行くのです。接触線の攻防戦で住民投票を阻みます。どうせロシアは住民投票は無理くりに強行するでしょうから、それでも併合は起きてしまうでしょう。しかし、それでも押せ押せで反撃攻勢を進めましょう。ドラスティックな戦闘力強化のない、戦力造成まで時間のかかる今回のロシアの政策なら、前線は当面は増援部隊も再補給も得られないままです。今がチャンス!行けるとこまで押して押して押しまくりましょう。
 と言いますのも、ロシア軍の将兵の心を読むに、陣地で死ぬまで頑強に戦って死守するつもりだったロシア正規軍の将兵たちは、今忸怩たる思いで前線の陣地に身を置いている、と思うのです。予備役が30万?しかも教育訓練不十分で、武器装備も追加で来ないのかよ、と。戦えない兵士が追加されても返って始末が悪く、士気も低くて敵前逃亡してしまう。これでは戦えないじゃないか、と。なぜもっとドラスティックな増援や再補給で前線に希望を与えてくれないのか?…と、ロシア軍は今、浮足立っている状態です。
 今がチャンス!ロシア軍はそれでも予備役を前線に送ってくるでしょうが、どうせ直ぐに揃わないし時間がかかり、来援したところで大した戦力ではないので、アウトオブ眼中です。今のうちに押せるところまで押してしまいましょう。冬を越すどころか、クリスマス前に終戦となるかも。
 そして、そのうまくいかない戦況にロシア国民はついにプーチンを見限るでしょう。もはや、多くの国民の信を失っているでしょう。いや、政権の側近かFSB(旧KGB)が宮廷内クーデターでプーチンを暗殺するかも。待ちに待ったプーチン帝国の崩壊が今始まっている…。
 It won’t be long…..

頑張れ!チャンスだウクライナ!

(了)

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