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2022/11/26

なぜ攻めない?ドネツ川を渡河して南部戦線へルソンのロシア陣地線を突破せよ!

Nov 25 2022
最新の戦況全般図(2022年11月26日付ISW記事「Ukraine Conflict Updates: RUSSIAN OFFENSIVE CAMPAIGN ASSESSMENT, NOVEMBER 25」より)

戦況:やや膠着、ドネツ川渡河・東岸ロシア陣地線の突破はまだ先かも
 今のところウクライナ軍は、当初見せていた渡河攻撃はISWの分析でも言及がなく、西岸を占領、攻撃築城で同地を確保したまま、ロシア軍と川を挟んで睨み合い状態です。
 11月26日付ISWの分析では、どうやらロシア軍は南部戦線よりも東部戦線ドンバス平原正面での攻勢に重点を置き、バハムートとアウディイウカ等の局地攻撃で現接触線を西に押し広げる動きを見せています。一方のウクライナ軍は、バハムート正面はロシア軍の攻撃を阻止しつつ、それより少し北部のスヴァトゥヴェ~クレミンナで攻撃をしています。
 ウーム…。11月中旬以降のISWの分析を見ていると、どうやら南部戦線も東部戦線も既述のような現接触線での局地的な押したり引いたりの状況のようで、一言で言えば「膠着」しつつある模様です。要するに、全般的には現接触線のラインで、ロシア軍は防勢転移して陣地線での防御を中心に局地的に攻勢を試み、一方のウクライナ軍は全般的に反撃・攻勢作戦を続けているものの、ロシアの陣地線を押しきれず、その陣地線の手前の線で当面身を守るための攻撃築城を施して、…要するにウクライナ軍とロシア軍はこの線で対峙したまま膠着しつつある、という感じです。

このまま戦線を膠着させたらロシアの思うつぼ
 しかし、私見ながら、前回・前々回のブログでも申しましたように、ここで止まってはいけない。今、戦線を膠着させたら、これから厳冬期を迎えるため、このまま春の凍土が解け始める時期まで戦線は膠着したままになります。ウクライナ軍のこれまでの攻撃は、囲碁のような自軍の線を合わせた布石でジリジリと態勢上の優位を得て、敵は仕方なく後退する、という作戦志向です。このままの状況であれば、厳冬期もあって東部・南部戦線とも膠着戦となり、この間にロシア軍に戦力回復の機会を与えてしまいます。それこそが、まさにロシアの思うつぼ。春までの間に、ロシア軍は動員した予備役兵達の増援を受け、各正面で兵力が増強され、冬の間にイラン、北朝鮮、中国等からの装備品の再補給を受けて、パワーアップして春攻勢をかけてきます。厳冬期の戦線の膠着や和平交渉の素振りを見せるのは、ロシアの常套手段です。これに騙されてはいけない。

主攻撃は南部へルソン正面!ウクライナよ突破せよ!
 特に、南部ヘルソン正面で、ドネツ川を挟んで膠着させることなく、12月中旬以降の厳冬期スタートの前に、渡河作戦を敢行し、ドネツ川東岸に橋頭堡を設けて、いち早くロシアの陣地線を突破する衝撃力を見せなければいけません。ヘルソン正面のロシア軍陣地を突破し、突破口を拡大し、後続部隊をどんどん押し出してドネツ川東岸(南岸)のへルソン州に放てば、薄皮一枚で守っていたロシア軍は、一挙に東部ドンバス正面、またはクリミア半島に後退するしかありません。こうした攻撃がロシアに取ってどういう意味を持つか?実に、ロシア本土と陸続きの東部2州と違って、へルソン正面でこのスクリュードライバー的攻撃でロシア軍を分断すれば、ロシア軍はヘルソンに分断孤立化してしまいます。へルソン州に所在のロシア軍は東部2州まで後退するでしょう。更に、ヘルソン正面でロシア軍を分断するということは、クリミア半島はロシア本土から陸続きではないため、ヘルソンで分断孤立化されることになります。ちなみに、クリミア半島は慢性的な真水不足であり、飲用、生活用水から農業用水を含め、85%の真水をドネツ川ノヴァ・カホウカからの北クリミア運河に依存しています。2014年のロシアのクリミア併合以降、ウクライナはこれを閉じましたが、今回のウクライナ侵攻でヘルソン州を獲得したロシアは運河を再開しました。北クリミア運河は、クリミア半島の生命線になっており、この攻撃はこれを再び断つことになります。これはロシアにとっては大きな痛手になります。この攻撃が成功すれば、クリミア半島を特に重視してきたプーチンにとって、これが一番の戦略的な打撃となるでしょう。
north cremean canal
クリミア半島の生命線=北クリミア運河(North Crimean Canal)

 ボクシングで言えば、強烈な右フックのようなこの南部正面からのスクリュードライバー的なねじ込み攻撃は、必ずやロシア軍の侵攻作戦の鼻を挫く打撃となります。また、第2次世界大戦の戦例で言えば、ノルマンディー上陸後のパットン将軍指揮の米第3軍のスクリュードライバー的な攻撃です。ノルマンディー上陸作戦で、ヨーロッパの地に橋頭堡を築いたものの、当時、欧州戦線では依然ドイツ軍は強大でした。橋頭堡の線で戦線を膠着させることなく、一挙に均衡を破ったのは、連合軍の最右翼(南)を担ったパットン大戦車軍団の右フック的な突破~電撃戦的な進撃による敵部隊の大包囲です。これを、ヘルソンでやって欲しい。へルソン正面で薄皮一枚の防御陣地線を維持しているロシア軍に対し、一点突破で突破できたら、ここで突破口を広げて、どんどん後続部隊を投入し、留まることなく、一気通貫して敵の後方のクリミア半島や東部ドネツク正面に突進したら、突破されたロシア軍は一挙に瓦解するでしょう。北部戦線ハルキウ正面でロシア軍が後退する時にそうであったように、突破されて後方に回り込まれたのを知るや、慌てふためいてその場に全てを置いたまま、潰走・敗走するでしょう。

今だ、攻めろ!ドネツ川を渡河して南部戦線へルソンのロシア陣地線を突破せよ!
 ・・・という私の作戦志向はウクライナには一顧だにされず、恐らくウクライナは長考の年寄りの囲碁のように、時間をかけて敵後方の後方・補給基盤を長射程砲でじわじわと潰しながら、じわじわと手堅く布陣を進めていくのでしょう。じわじわでもいいから、せめてドネツ川を渡る渡河作戦で、ドネツ川東岸に橋頭堡を確保する作戦を始めてくれてもよさそうなものなのに、どうやらストップしています。
 なぜウクライナ軍は渡河作戦を本格化させないのだろう?…と訝って(いぶかって)いたのですが、どうやら西側諸国、特に米国からの武器等の主要装備品が揃うのを待っている模様です。
 しかし、聞いてよウクライナ、時間は待ってはくれないよ。早くしないと厳冬期がやって来る。春まで待つつもりかい?ロシア軍が回復しちゃうよ。
 「今だ、攻めろ!ドネツ川を渡河して南部戦線へルソンのロシア陣地線を突破せよ!」と、老兵は思うのです。

 それでも頑張れ!ウクライナ

(了)

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