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2018/11/14

「イージスアショア」ボロクソ論に反論します

「防衛白書」をザックリ解説: ⑥イージス・アショアの逆襲(前編)

「イージスアショア」ボロクソ論に反論します


○ 前回、核・弾道弾防衛の話を書かせていただいた直後に、陸自OB市川元将補が週刊新潮11月8日号に「イージス・アショアの不都合な真実」と題して、イージスアショアを防衛省が導入を検討していることについてボロクソに批評されたことを知りました。論旨は理解しますが、核・弾道ミサイルについて意見が大きく異なりますので、反論させていただきたいと思います。
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<市川元将補のイージスアショア批判のポイント>
  市川元将補のご批判の要旨は次の5点です。
①速度と精度の観点から迎撃困難
 「速度」: ミサイル防衛の難しさは「敵がライフルを発砲した瞬間、こちらも銃を発砲し、弾丸で敵の弾丸を撃ち落とす」ようなもの。弾道ミサイルの最大速度は秒速5,000メートル、マッハ15であり、迎撃は困難。
 「精度」: 地対空ミサイルなら敵航空機の近傍で破裂すれば破片効果で撃墜可能。しかし、核弾頭に対しては破片では迎撃できず。核弾頭に直撃を要し、迎撃は困難。
②SM3の射高上迎撃困難
 「射高」: イージス艦のSM3ブロック1Aで最大高度は500キロ、イージス・アショアのブロック2Aでも1,000キロ。これでは届かない。特に、北朝鮮が17年に実施した火星シリーズの発射実験においてロフテッド軌道の最大高度2,000キロ~4,000キロ越えするものまで打ち上げたとの情報があり、もはやSM3では届かない。更に、北朝鮮が多弾頭化している可能性(17年5月の実験)があり、迎撃すべき目標が分裂してくる条件も加わり、SM3では迎撃できない。
③北朝鮮のミサイル数による飽和攻撃を踏まえ現実性欠如
 ブロック2Aで1発40億円、1Aでさえ16億円と高額なため、イージス艦へ装備は8発が精一杯(本来米軍イージス艦には各種ミサイルを90~96発を装備)。北朝鮮がミサイル100発を発射し、うち10発に核弾頭を装着させたとして、ブロック2Aの命中率を90%と仮定しても、我が方は300発は必要な計算。我がミサイル代は1兆円も要することとなり、現実的でない。
④高高度核爆発による電磁パルス攻撃で我が弾道ミサイル防衛は無効化
 仮にイージスアショアも含めた弾道ミサイル防衛の体制を整備したとしても、北朝鮮に高度30キロ以上での高高度で核爆発をされたら、遍く電子機器は使用不能に。対象物を導電性の金属で覆うことでシールドする手はあるが、レーダーの機能上さもできず、電磁パルス攻撃から守ることは不可能。
⑤取得経費に加え、イージスアショア部隊の維持運用、教育訓練等、予算上非現実的
 取得経費は2基で2,679億円。部隊の維持運用と教育訓練費を踏まえ4,664億円。これらは低めの見積であり、故障修理、バージョンアップ費、基地の施設整備費、更に更に、実はミサイル本体は別計算なので更なる高額の予算が必要になろう。
 以上を総じて、核攻撃の企図を持つ北朝鮮に対して、我が方がどれほどお金をかけても「至難の業」とのご指摘。

<反論させていただきます> 
 まず、私も自衛隊出身ですので結論から行きましょう。
 イージス艦SM3、陸上配備イージスアショアSM3、+ペトリPAC3での北朝鮮弾道ミサイルの迎撃体制及び態勢は、非常に有効な弾道ミサイル防衛の体制・態勢だと思います。
 市川元陸将補のご指摘のポイントを反芻しながら、反論させていただきます。

①速度と精度上迎撃困難か?
 「敵にライフルで撃たれた弾丸を撃ち返して命中させる」という表現は、それを読んだ方々に技術的困難性を理解させる上では言い得て妙ですね。しかし、例え話が与える困難性のインパクトが強すぎませんか?今や、弾道ミサイル防衛の技術的水準は速度も精度も克服しつつありますよ。今や、SM3ブロック2Aの開発や実験を日米協力してやっていますが、ハワイ沖での実験も迎撃成功していますよ。今や、我が国の共同開発チームはSM3ブロック2Aのノーズコーン部や第2及び第3弾ブースターを担当するほどアメちゃんチームにも頼りにされています。昔、レーガン大統領が「スターウォーズ計画」なんてぶち上げた頃は、掛け声ばかりで技術的には本当に先の見えない開発でした。湾岸戦争の頃、イラクのイスラエルに対するスカッドミサイル攻撃に対し、ペトリオットで迎撃態勢を取りましたが、果たして迎撃率は1割以下だったと酷評されました。しかし、弾道ミサイル防衛の検討は、徐々に成果を上げ進化していきます。TMD(Theater Missile Defense)開発を経て、今やイージススタンダードミサイル開発は確たる成果を収めつつありますよ。勿論、開発は順風満帆ではなく、開発系の皆さんにとっては実証実験をしては改良に改良を重ね、血と汗と涙の努力の結果で何とかここまで技術的に克服してきています。敵の撃ったライフルの弾丸を撃墜できる段階まできていますよ。詰めの段階として、本年(2018年)2月のハワイ沖での実験では、概ね成功しつつも一部に不十分な点があり、9月の実験では「成功」したようです。これらの概要(細部ではないですが)は防衛省や米海軍のしかるべきHP等で一般に公開されています。およそ開発とは、いわゆるイタチごっこ、敵も進化するので我も進化を続けねばなりません。しかし、市川元将補ご指摘のような「迎撃困難」というのは言い過ぎではないでしょうか。
 論より証拠、下のHPにビデオクリップがありますので、ご覧あれ。まず、もはや当たる段階の技術的領域ではありますから。
(2018年10月26日のハワイ沖でのUSSジョン・フィン(DGG113)からのSM-3ブロック2Aの実証実験)
 https://thedefensepost.com/2018/10/26/us-successfully-conducts-ballistic-missile-interception-test-mda-says/

②SM3の射高上迎撃困難か? 及び ③飽和攻撃に対応可能か?
 標記の②と③は、私の反論の要点部分が被るので、併せてご説明します。 
まず、②の射高の話から。ブロック1Aは確かに高度500kmまでです。2Aであっても高度1000kmのオーダーです。ご指摘の通り。また、例えば火星12号がロフテッド軌道で日本を攻撃してきたとしたら、その最高高度にSM-3ブロック1Aでも2Aでも届かない、というのもご指摘の通り。なぜ最高高度が重要かと申しますと、弾道ミサイルを迎撃するなら、努めて早い段階の方が得策であり、弾道=放物線を描いて落下してくるわけですから、弾道・放物線の頂点=最高高度を過ぎると、あとは重力で落ちてくるので、加速度もついて超高速で落ちてくることになり、更に、この最高高度以降に多弾頭化している場合はカバーがパカッと外れて、多弾頭に分かれて落ちてくるので、目標が増えてしまうわけです。要するに、最高高度までに迎撃しないと迎撃しづらくなるわけです。この、多弾頭化の話が絡んでくると、多種類かつ多数のミサイルで攻撃される話と合わせて、いわゆる「飽和攻撃」の話にシフトしてきます。高度もしかり、要するに飽和攻撃に対応できないでしょう?ということです。
大前提である、北朝鮮の核・弾道ミサイルの脅威について、彼らの開発した、彼らが有する多種多彩な弾道ミサイルを、高さも含め、いろいろな形で同時多数発射して攻撃してきた場合、対応できますか?と問われたのであれば、 ⇒回答します。そりゃ対応できません。勿論、我が方も、できる限り対応しますよ。努めて多くのミサイルを迎撃し、努めて多くの国民の命を守ろうとするでしょう。しかし、迎撃できなかったミサイルの攻撃(最悪の場合核攻撃)を、受けることになるでしょう。そこは全て迎撃できる!なんて無責任なことは言えません。
 しかし、その話って仮定の話では理解できますが、「核兵器」であるからには、現実的には「核抑止」を前提に考えなければいけないと思います。核兵器は、これまで人類が開発してきた殺傷兵器の中で、根本的に次元の違う無差別的かつ破滅的な威力を持った最終兵器です。それが故に、これまでの人類の歴史の中で、偶発や事故によるものも含め、核兵器を持つ国も最高度の管理をし、最高度の意思決定を持って取り扱っているものであります。ゆえに、これまで一触即発の危機を迎えたこともありますが、広島・長崎以降はついぞ使われることなく過ぎてきました。核兵器を持てる国も、持たざる国も、「抑止」を前提にしてきたわけです。よーく考えなければいけないと思うんですけど、なぜ北朝鮮が、その持てる核兵器の全てのアセットを日本への核攻撃に使うんでしょうか?そんなことはありえない。北朝鮮が核兵器の使用を意思決定するとすれば、主正面は米国との関係においてであって、その対米戦の一環として、支作戦正面として対日作戦があるのではありませんか?藪から棒に、対日核戦争をするというのは非現実的ですよ。もし、日本に対して飽和攻撃してきたとしたら、日本は壊滅的なダメージを受けますが、その瞬間、北朝鮮は世界を敵に回し、米国主導にて核の使用を含めた徹底した報復を受けますよ。自殺行為ですよ。ですから、ある日北朝鮮が突如として全ての各アセットを日本を目標とした飽和攻撃をかけてくる、という想定は現実的ではありません。
 もっと、現実的な戦い方、すなわち具体的な各種弾道ミサイルの運用の観点から言うと、北朝鮮の開発する/保有する各種の弾道ミサイルには、それぞれの射程(短射程~長射程まで)、燃料(液体か固体か)、発射形態(発射のプラットホームとして、固定式発射台/発射台付き車両/潜水艦発射)などの特性を最大限に生かすよう、運用の用途があります。例えば、北朝鮮が開発の最終目標としてきたのは、とりもなおさず米国の主要都市を直接狙える大陸間弾道弾(ICBM)です。射程、射高、弾頭の核爆弾量、多弾頭化など軍事科学技術の粋を極めて開発し、必然的に大型です。しかも、最大の敵=米国は、最強の核戦力を有する国でもあるので、米国から先制第一撃を受けないように、そんなことしたら生き残った核兵器で第二撃で報復できるぞ、という能力を保持できる潜水艦発射弾道弾(SLBM)、発射台付き車両等を多種多様に装備しているわけです。これらの残存性を担保する核兵器は、大型の大陸間弾道弾には射程や搭載する弾頭においては小型化するために、射程、射高、弾頭の核爆弾量、多弾頭化等において縮小せざるを得ないものになります。各種の弾道ミサイルには、それぞれの特性に応じた、発射の時期、目標(都市人口等のソフトターゲットか、軍事施設(敵の大陸間弾道弾の発射基地、司令部など)等の特定のハードターゲットか)、発射の形態、等を幅広くかつ懐深く、かつ柔軟に確保することが核抑止力を高めるのです。この際、対米作戦を前提に持てる核兵器をいかに運用するかを考えるわけで、その中で支作戦正面たる対日作戦があるわけです。虎の子の最新最強装備を日本にいきなり使いますか?使いませんよね。支作戦正面の日本に使うマイナーなものに対して、日本の弾道ミサイル防衛の態勢で非常に有効に機能すると思いますよ。そして、これこそが、アジア太平洋正面の同盟国日本がしっかりと守りを固めておくことで、同盟国米国は日本を頼りにし、かつ、日本の防衛を同盟国として果たしてくれるわけではないでしょうか。そして、こうした盤石の態勢をとっておくことが、核抑止をより確かなものにするのです。
 イージス艦SM-3とイージスアショアのSM-3とで大気圏外のミッドコースフェイズにおける弾道ミサイルの迎撃を、それでも撃ち漏らした最終段階のターミナルフェイズの迎撃をペトリ部隊のPAC3で迎撃する。ほとんどの弾道ミサイルはロフテッド軌道なんてできません。この弾道ミサイル防衛の構えはかなり強敵ですよ。この態勢がどれだけ北朝鮮にとって手ごわい防御体制か、って言う話だと思います。

(後編につづく)

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