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2023/03/16

激戦バハムート第3弾:ロシアの攻撃ピーク越え、ウクライナが勇み足的春季攻勢でバハムートを辛勝と読む!

Bakhmut 3
ウクライナ軍のバハムート守備隊の必死の防戦(2023年14日付BBC記事「Ukraine war: Heavy losses reported as battle for Bakhmut rages」より)

バハムートを諦めないウクライナ
 バハムートの激戦は続いています。ウクライナのバハムート守備部隊は今やマリウポリのアゾフスタリ製鉄所の地下施設で戦ったアゾフ連隊と同様、バハムートの地下施設に籠城して孤立無援的にギリギリの戦いをしており、ロシアの攻撃が下火になったとはいえ、戦闘が長期化するほど先細ることは避けられません。ウクライナ軍としては、マリウポリの時のようにこの英雄達を見殺しにはできず、早く救いたいと思っています。ゼレンスキー大統領の言葉の端々に、ウクライナ国民の総意「バハムートを諦めない」という言葉を表明しています。
その頑張りが功を奏したのか、ここ最近のISWの分析や他の信頼できる報道から推察するに、日本時間3月16日現在の時点でどうやらロシアの冬季攻勢はピークを越えており、ウクライナはバハムートを守り切れると、私見ながら読んでおります。

ロシアの冬季攻勢はもはやヤマを越えた模様   
 ISWのここ最近のロシア軍の動きの分析によれば、ロシア軍の攻撃行動の1日当たりの頻度を比較すると、ここ数週間で100回規模から逓減しており、ここ数日では20回規模にまで落ちています。攻撃の焦点も、これまでは明確にバハムートでしたが、ここ数日の動きではバハムートへの攻撃は砲撃と地上攻撃が散発的にあるだけで、むしろバハムートの北40キロに位置する要衝ライマンを目標としているような攻撃が、スヴァトーベ(バハムートの北100キロ)〜クレミンナ(バハムートの北75キロ)の線で行われています。(参照:2023年3月15日付ISW記事「Ukraine Conflict Updates: RUSSIAN OFFENSIVE CAMPAIGN ASSESSMENT, MARCH 15, 2023」、同年同月同日付Reuter記事「Explainer: Bakhmut: Why Russia and Ukraine are battling so hard for one small city」、同年同月14日付BBC記事「Ukraine war: Heavy losses reported as battle for Bakhmut rages」、ほか)

 全般的な攻撃頻度が逓減していること、及びバハムートへの攻撃が下火になり攻撃指向が更に北の要衝に変わったかもしれない兆候があること、これをどう見るか?
 ある分析では、これをロシアの「戦術的停止」と読み、元駐ロシア米国大使のマイケル・マクフォール氏は、「ロシアの戦術的停止による時間稼ぎは、戦争の長期化を望まない西側にとって致命的な効果を発揮し『支援離れ』をきたす」と懸念を表明しています。(参照:2023年3月9日付Newsweek記事「Putin's Military Gains Raise Concerns Ukraine Will Fall: Ex-Ambassador」)また、別の分析ではライマン方向の攻撃にウクライナ軍が対応できるのか憂慮する向きもあります。

 しかし、私見ながら、これは戦術的停止ではなく、「もはやバハムート攻略作戦の攻撃衝力が維持できないため、バハムートより戦略的価値の高い要衝ライマンへの攻撃に目移りしたもの」と見ています。要衝ライマンは、つい数ヶ月前まではロシア軍が占領していたドンバス平原でも有数の都市であり、ライマンを攻略できればスロヴィヤンスクまで幹線道路で南西25キロ、クラマトルスクまで更に20キロなど、ロシアが渇望する東部2州の完全制覇都も容易になります。ただし、バハムート攻略を諦めて更に北の要衝ライマン攻略に鞍替えするというのは、初めから無理な話です。攻略一歩手前まで行ったのに攻撃衝力がなくて攻めきれなかったクセに、要衝ライマンが落とせるワケがありません。攻撃衝力とは、敵の防御に対しぶちかまして第一線を突破するだけの攻撃戦力、及び敵の第一線を突破した直後にその突破口を拡げ、後続の新戦力を投入して戦果を拡大するだけの継続的な戦力の維持、これを可能にする武器弾薬の継続的な補給などの兵站力のことです。現在のロシア軍には、もはやそれだけの兵力も兵站力がありません。戦力は戦闘損耗で疲弊し、武器弾薬も枯渇し、後が続かない状況です。要するに、甚だ私見ながら、「ロシアの冬季攻勢はもはやピークを越えて右肩下がり」と見ています。

今後の展望:ウクライナは辛うじて維持しているバハムートを春季攻勢で逆包囲して解放、ロシアに奪われた東部2州をエグる!
 ウクライナは、一時は西側諸国が撤退を勧めたほど陥落一歩手前まで行ったバハムートを守り切るでしょう。これはウクライナがバハムートでロシアを撃退するというわけではなく、ロシアがこれ以上進展のないバハムート攻略にこれ以上の将兵の損耗に耐えられず、「これ以上の攻撃はできなくなった」というのが正しい理解だと思います。

 ここで、ウクライナは先手を打つと推察します。
もはやウクライナ、ロシア両国にとって両国民レベルでその攻防戦に注目し政治課題になっているバハムート攻防戦に勝つため、いや、バハムート守備隊を守るため、ウクライナが「今が戦機だ!」と春季攻勢に打って出るのではないか、と推察しています。ロシアの攻撃が下火になる中、まだバハムート攻防戦は細々と続いているのですが、このロシアの停滞状況を「戦機」捉えて、ウクライナの春季攻勢が始まると読みます。西側の大方の分析では春季攻勢の開始は西側供与の主力戦車などの新戦力がウクライナの第一線に揃う「5月」と読んでいますが、私は「戦機」を捉えてウクライナは恐らく4月、早ければ3月下旬に始めるのではないかと推察しています。ウクライナは全ての新戦力が揃うのを待たずに、やや勇み足的に春季攻勢を掛けるだろう、と思うのです。
 恐らく、ウクライナの春季攻勢は、バハムートではなく東部戦線の異軸からバハムートを北または南から逆包囲する形で、ロシア軍の薄皮陣地を破ってスクリュードライバー的に戦果を拡張するでしょう。この春季攻勢の攻撃は、戦力を半ば展開し切り疲弊したロシア軍の薄皮防御を打通して、占領された東部2州をエグる形に進撃するでしょう。ロシアは尻に火が付いた状態になり、ワグネルをはじめとするバハムート攻略部隊はもはや退かざるを得ません。これで事実上バハムートを回復でき、ウクライナは世界に「バハムートを守りきった。ロシアに勝った!」と宣言するでしょう。まだ戦争に勝ってはいないのですが、こう高らかに勝利宣言することがロシアに対する破壊的な攻撃となるのです。私見ながら、ここにウクライナの勇み足的春季攻勢開始の意味があると推察します。

 世界中の注目の中、ウクライナが要衝バハムートで辛勝するということは、内外に大きなインパクトがあります。まずウクライナ国内、「ロシアに勝った!」とウクライナ人の団結、規律、士気はダダ上がり状態になるでしょう。他方、ロシア国内では国民レベルで士気が落ちますよね。ワグネル総帥のブリゴージンやロシア連邦内のチェチェン共和国の首長カディロフなどの右派陣営や有力な軍事ブロガー達が国防省や軍指導部を酷評し、憂国の炎上状態になるでしょうね。ロシア国民も大きく動揺し、怖いから名指しを避けていたプーチン大統領への不信感や反戦運動も必ずやあちこちから火の手が上がるでしょう。もはやこれは避けられない。また、西側諸国のウクライナ支援は「勝ち馬に乗る」或いは「バスに乗り遅れるな」状態になるように拍車がかかるでしょう。焦るプーチン大統領は核兵器使用をチラつかせたり、モルドバのクーデター画策、ベラルーシ方向からの首都キーウ攻撃の脅威など、いろいろ揺さぶりを掛けてくるでしょう。しかし、もはや春季攻勢のインパクトの方が凌駕しているでしょうね。プーチンが地団駄踏んで悔しがる姿が目に浮かびます。

 勿論、上記は私の勝手な推測に過ぎません。
 さぁ、どうなるでしょうか。

 頑張れウクライナ!
 頑張れバハムート守備隊!
 春季攻勢で東部2州をエグったれ!

(了)

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