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2023/03/23

激戦バハムート第4弾:ロシア軍猛攻で包囲進む中ウクライナ軍は弾薬不足でギリギリの戦い

激戦バハムート
 2023年3月23日(日本時間)現在、ウクライナ戦争における203高地、戦闘の焦点となるバハムート攻防戦ではロシア軍の冬季攻勢のピークと見られ、ロシア軍の猛烈な砲爆撃と戦車と徒歩兵によるバハムート市内への浸透が続き、ウクライナ軍バハムート守備隊は弾薬の枯渇の中で善戦し、バハムート市街戦の戦闘は危機的状況の中、益々激しさを増しています。
 昨日3月22日、ウクライナのゼレンスキー大統領は、隠密裡に激戦地バハムートを訪れバハムート守備隊の将兵の奮戦敢闘の労を労い激励して帰りました。
(参照:2023年3月22日付BBC記事「Ukraine war: Zelensky visits front line near Bakhmut as Russia targets cities」、下の画像も同記事より)
Zelenskys visit to Bakhmut
最前線バハムートを訪れたゼレンスキー大統領

各正面でロシア軍が猛攻、ただしイタチの最後っ屁かも
 ISWの分析によれば、ロシア軍は現在、戦闘の焦点バハムート正面に加え、バハムートの北のスヴァトーバ〜クレミンナの線、及びバハムートの南のアウディウーカ正面において作戦テンポを上げて攻勢を強めている模様です。加えて、キーウをはじめとするウクライナの主要都市へのドローン攻撃を行っています。とりわけ、バハムートを含めとする東部戦線の各地の正面で攻勢を強め、一定の攻撃進展が見られています。特に、バハムートでは図に見られるようにロシア軍の包囲の輪が縮まりつつあり、ロシアの傭兵部隊ワグネル総帥のブリゴージンは「バハムートの44%をワグネルが占領した」と喧伝していますが、彼は常に戦果を誇張しているので話し半分に理解した方が賢明です。それでも、バハムートの奪取を目指してロシア軍が猛攻していることは間違いありません。
 他方、緻密な戦況分析で定評のある米国のISW(戦争研究所)の分析では、このロシア軍の猛攻について、継戦能力(兵力+後方補給能力)及び後続の新戦力の欠如から、猛攻を仕掛けているものの今実施中の攻勢がピークで、もはや後が続かない模様です。要するに、イタチの最後っ屁的な最後の猛攻を見せている模様です。
(参照:2023年3月21日及び22日付ISW記事「Ukraine Conflict Updates: RUSSIAN OFFENSIVE CAMPAIGN ASSESSMENT」,
下の図も同記事より)

Bakhmut Mar22

ウクライナ軍のバハムート守備隊ももはやギリギリ:バハムート市街戦の実相
 対するウクライナ軍バハムート守備隊も、ウクライナ軍の春季攻勢の準備のため再補給は最小限に制限され、撃つ弾薬に事欠く状態でギリギリの善戦をしております。ここ数日のロシアの猛攻で、戦闘はついにバハムートの中心部周辺に及んでいます。上の図をご覧ください。赤いエリアは既にロシア軍に取られており、黄土色のエリアは最近ロシアの支配下に入ったと宣言しているエリアです。ついにここまで来ています。
 ロシア軍がバハムート市街の中心部周辺に北と南からジリジリと迫る中、ほぼ包囲されたバハムート守備隊は、数ヶ月にわたる激戦を経て、兵力や武器弾薬の補給を受けているものの、戦闘疲労が著しく、武器弾薬が枯渇しつつあり、火力を使い果たしています。特に、装甲車両と榴弾砲等の野戦砲の弾薬が不足し、ロシア軍の市内への侵入を防ぎきれない状況で、それでもギリギリの状況で同地を死守しています。
(以下参照:2023年3月20日付MilitaryTimes記事「Ukrainian forces running out of shells, equipment in fight for Bakhmut」、下のドローンに手榴弾をつける兵士の画像も同記事より)
 
 苦戦している最大の要因は、ロシア軍の拠点や前進を叩く野戦砲や多連装ロケットなどの「砲弾」、市街戦を戦うための小銃・機関銃・携帯肩撃ち対戦車弾などの「弾薬」、バハムート市街での銃撃戦で身を守る「装甲車両」が不足しているためです。今必要なのは十分な砲弾、弾薬、装甲車両の再補給ですが、ウクライナ軍指導部としては、春季攻勢のための兵力と武器弾薬の確保を重視しており、バハムートへの再補給を制限している模様です。バハムート守備隊の将兵は、砲弾、弾薬、装甲車両の不足を不満に思いつつも何とか士気を保って潰走することなく持ち堪えている状況です。
 バハムート市内には、ロシアの砲爆撃により雨あられと砲弾が炸裂、その間隙を縫ってロシア軍の戦車と歩兵が射撃しながら侵入してきます。特に、最近のロシア兵は動員された訓練不足の市民兵が小銃だけの武装で次から次へと出てきては、ロシアの砲爆撃の開けた穴に身を隠しながら躍進してきます。これを廃墟となった町中で迎え撃つ訳ですから、結構な至近距離であり、ロシア兵の死傷者は非常に多く、一方のウクライナバハムート守備隊の死傷者も相当出ています。ロシアはウクライナより人口が大きいので、訓練不足とはいえ動員すればまだまだ兵力は造成できます。ウクライナは限りある人的資源で戦っているので、そのギャップを埋めるのが欧米のハイテクの最新装備/武器弾薬(※)になっており、ウクライナ軍はゆっくりと着実にNATO軍の標準装備の部隊に生まれ変わりつつあります。とは言え、ハイテク装備を持っていても、戦場の負傷に関しては第1次世界大戦当時からあまり進化はなく、バハムートの市街戦で負傷した将兵は仲間が引きずって後方に下げ、衛生兵の応急処置を受けます。傷ついた将兵の多くは銃撃や砲弾の炸裂した破片によって引き起こされた外傷と、直近の砲弾爆発などによって引き起こされた脳震盪とその後遺症であり、衛生兵の持つ傷の消毒、止血帯による止血、輸血、縫合、モルヒネなどの応急処置以上のことはしてやれず、バハムートから後方の安全な野戦病院に後送されるのが遅れると生命に関わります。ロシアの砲弾落下が激しいときは当然後送してやれません。
drone.jpg
※ハイテクにもいろいろあるその一例、バハムートで結構有効な即興の武器:ドローンに手榴弾を装着して、敵を発見したら上から手榴弾を落とすもの

ギリギリの激戦、消耗戦で勝敗を決するのは「執念」だ、頑張れウクライナ!
 バハムートの攻防戦も事ここに至りました。相当厳しい状況です。
こうしたギリギリの戦闘では、以前から申し上げているように、時代錯誤と思われるかも知れませんが、精神力がものを言います。要するに、激戦のシーソーゲームを制する決め手は絶対に勝つという「執念」です。
 ロシア軍にも意地があるでしょうが、自分の国土が侵略されつつあるウクライナ軍にとってみれば、国家/国民の存亡を賭けた死に物狂いの戦いです。バハムート攻防戦は、本来のバハムートの戦略的価値以上に、今や両国の意地の焦点となっています。国を守る執念において、ウクライナの方が執念の質と苛烈さが違うでしょう。我々第3者はその執念の差に期待し「頑張れ!」と祈るしかありません。
 
 頑張れ!ウクライナ
 バハムートを守り切れ!

(了)

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