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2023/03/28

激戦バハムート第5弾:バハムート中心部維持するも満身創痍、ロシア攻勢失速とはいえ予断許さず

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要衝バハムートの戦闘は終わっていない。衛生兵チームが負傷兵を部隊の救護所に搬送する場面(2023年3月24日付VOA記事「'Just a Typical Day': Rescuing Wounded Soldiers on Ukraine Front」より)

要衝バハムートの戦況が「安定」との発言あり
 状況が動きましたね。
 2023年3月25日(土)(現地時間)にウクライナ総司令官ザルジヌイ中将がフェイスブックで明らかにしたところによりますと、「.. due to the tremendous efforts of the defence forces, we are managing to stabilise the situation.(=ウクライナ国防軍の多大な努力のおかげで、(バハムートでの戦闘は)我々は安定した状況を維持している。)」と、バハムート攻防戦は峠を越えた旨のコメントを表敬しています。同中将は英国軍参謀総長のラダキン提督とも意見交換し、英国国防省は同日、「ロシア軍のバハムート攻撃は極端な消耗のため大部分が行き詰まった模様であり、作戦の焦点をバハムートの南北に転換した模様」との分析を公表しました。

 とはいえ、バハムートでの戦闘が終わったわけではありませんのでご留意を。バハムート攻防戦はまだ激戦が続いており、決してロシア軍を撃退し、バハムート市内のロシア軍に占領された地域を取り返したわけではありません。バハムート市の状況について、ウクライナ軍地上部隊司令官シルスキー准将はこう語っています。「… (ロシア軍は)… had not given up hope of taking Bakhmut at all costs despite losses in manpower and equipment... they are losing significant strength …(= ロシア軍はいまだにバハムートをいかなる犠牲も厭わずに奪取したいという願望を諦めていない。単に兵力を失っているだけだ。)」

 実際、バハムートのウクライナ軍とロシア軍の接触線の状況は下図のように、数日前と大きな変化はなく、ウクライナ軍はバハムート市の中心部分を保持しているものの、市内の相当部分をロシア軍に占領されたままの状態で、この接触線のまま攻撃・防御が散発的に起きている状況であって、両軍ともに戦闘による死傷者が続いている状況です。また、バハムートのすぐ南にある隣町アウディイウカではロシアの猛攻で市街が破壊されて月面のような状況で、市当局は全面避難を決定しています。
(参照:2023年3月27日付ISW記事「RUSSIAN OFFENSIVE CAMPAIGN ASSESSMENT, MARCH 27, 2023」、同年同月23日付BBC記事「Ukraine Evacuating 'Post-Apocalyptic' Frontline Near Bakhmut: Official」ほか)
Bakhmut as of Mar27 2023
バハムート市の戦況図(2023年3月27日付ISW記事「RUSSIAN OFFENSIVE CAMPAIGN ASSESSMENT, MARCH 27, 2023」より)

バハムートのウクライナ軍守備隊の満身創痍の戦い
 2023年3月24日付VOA記事「'Just a Typical Day': Rescuing Wounded Soldiers on Ukraine Front」にバハムートでの「典型的な日常」の1コマが報道されていましたのでご紹介します。VOA(米国の国営報道機関)の特派員がバハムートの最前線の衛生兵チームに同行取材した内容です。

 また最前線の兵士が負傷したとの連絡があり、衛生兵チームは最前線のすぐ後方の患者集合点に救急車両で向かい、負傷兵士受け入れのため日暮れの瓦礫だらけの街角で待つ。最前線から同僚兵士が負傷兵を引きずってくる。衛生兵はゴムの手袋を装着し、負傷兵を受け取る。負傷兵は引きずってきてくれた同僚兵士にVサインをする。衛生兵チームは負傷兵の負傷状況、バイタル等を確認し、救急車両の中で応急処置をする。救急車両が最前線後方の部隊救護所に着く。部隊救護所には負傷兵が次々と運ばれ、既に救急処置を受けた負傷兵達はその負傷の状態により、更に後方のクラマトルスクの野戦病院に後送するかどうかの判断がなされる。また、砲弾が自分のすぐそばに落ちた衝撃で脳震盪になった者が力なく横たわる。中には救護所で既に大量に出血し手の施しようがなく、やがて息絶え、黒い遺体袋に入れられて静かに後送を待つ者も。衛生兵は、次々と担ぎ込まれる負傷兵の処置委追われながら、先ほど大量出血で息を引き取った兵士への処置を思い出して、「彼はまだ若かった。」と肩を落とす。
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衛生兵に搬送される負傷兵がここまで引きずってきてくれた同僚兵士にVサイン(前掲VOA記事より)

 こんなことが日常的に起きているのがバハムートです。そしてこれはバハムートに限らず、ウクライナの前線のあちこちで同様の状況です。

ロシア攻勢失速といえども予断許せず
 「バハムトでロシア軍失速」、「東部要衝バハムト安定」などの報道がなされ、もはやバハムート攻防戦は戦闘が終わったかのような印象をお持ちの方が多いと思いますが、既述のウクライナ地上部隊司令官の言葉のように、ロシア軍はバハムート攻略を諦めていませんし、ウクライナ侵攻もまだまだ続きます。
 ウクライナの春季攻勢が待望される中、ロシアはメドベージェフ元首相がクリミアへの攻撃があれば核兵器使用も辞さない旨の恫喝発言をしたり、プーチン大統領が隣国ベラルーシに戦術核を配備する決定をしたり、
・・・まだまだ風雲急を告げるウクライナ情勢。余談が許せません。

それでも頑張れ!ウクライナ
春は必ずやって来る!

(了)

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